三国クエスト   作:賀楽多屋

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サラサラヘアーは悪魔の子の印(XI)

 

 陸遜は途方に暮れていた。何故ならば、目の前で水賊崩れとポニーテールが激闘を繰り広げているからだ。

 

「今日こそ蹴りをつけようじゃないか! 甘寧!」

 

「応ともよ! 俺もそろそろ堪忍袋の緒が切れそうな所だ。ここで一発、白黒ハッキリさせようじゃねぇか、なぁ?」

 

「お二人共、今はそんなことをしている場合じゃーーー」陸遜の制止の声は、二人の得物が交わる音によって掻き消された。まだ目的地である港町についたばかりであるのに、何故か血の気の早い二人の間では火花が散っていた。不味いと思った瞬間にこれだ。何故、こうも血の気が早いのだろうかと陸遜はいつも思うのである。

 

「陸遜、殿を頼むぞ。儂は宿を取ってくるからな」

 

「は、はい! 黄蓋殿。お気をつけて」

 

 カラカラと二人の喧嘩っぷりを気にしてもないと言うふうに笑って、お年の割には頑健な体をした黄蓋がこの場を去る。

 

 陸遜は黄蓋から任された孫権の居所を探すべく視線を走らせた。いた。孫権はメイン通りを闊歩している。この世界は不思議なもので溢れているからメイン通りに居並ぶ市場が孫権の好奇心に触れたのだろう。普段は生真面目に一団の中から勝手に飛び出したりしない良い大将であるのだが、どうも今日ばかりはそんな大人しい大将で居てくれることはないらしい。

 

 陸遜は未だにガルルルとお互いに唸りあっている凌統と甘寧を放置することにして、孫権の下へと足を走らせた。

 

「殿、あまり遠く離れては危険です」

 

「おお、陸遜か。街の中ゆえそう危険はないと思うのだが駄目だろうか?」

 

 最近は父と兄から大将を任され、威厳が出てきた孫権であるがこういうプライベートになるとやはり歳相応の顔が出てくる。子犬のような目をして陸遜の様子を伺う孫権に、陸遜は胸中で苦笑する。

 

 ーーー私の顔色を伺う必要などないのに。この人はいつだって下々を無碍に扱わないのだから。

 

「分かりました。私が付き添いますので、殿のお好きなところへと赴いてください」

 

「陸遜・・・! 有り難い、私はこの世界に来てから気になることが山ほどあるのだ」

 

 陸遜の色良い声に両手を広げ、珍しく楽しそうに笑う孫権に陸遜もつられて笑う。大将の重責により、眉間に山ばかり拵えていた孫権がこんなにも楽しそうなのだ。この異界旅行も一時の休息と思えばいい。そう、これは一時の羽休めなのだ。

 

 現在、陸遜達がいる場所はダーハルーネという港町であった。多くの連絡船や漁船の中継地点となっていることもあって、人々の活気は江東にも劣らない。

 

「しかし、海を見ていると江東を思い出すな」

 

「はい。江東は川の近くにありましたが、それでも此処のように多くの船が水面に浮かんでおりましたからね」

 

 このよく分からない世界に迷い込んでからというもの、陸遜達は知恵を振り絞って生活をしてきた。元の世界とは少々勝手が違う故、戸惑うことも多くあったが今は旅を楽しめる余裕も出てきて上々と言えるのではなかろうか。

 

 初めは父と兄から受け継いだ孫呉の国を意図的ではないが、出奔していることについて気が咎めたようで孫権は暗い表情ばかりを浮かべていたが、沈んでいても元の世界には戻れないのだと察してからは悄気げることを止めた。

 

 孫権はこの世界に来てからも日々成長している。まだまだ偉大な父の孫堅、兄の孫策には遠く及ばないものの江東の虎の片鱗は覗かせてきているのだ。

 

「うおっ! なんだあのでっかいスルメ!? 大王イカのスルメって何だそれ?」

 

「煩いよ、もう少し静かに売り物を見ることは出来ない? あ、ねえねえ、彼処に猫の被り物売っているよ。折角素敵な鈴を付けているんだから被ったらどうだい? 鈴の甘寧さんよ」

 

「ほーう、またお前(オメェ)は俺に喧嘩売ろうっていう腹づもりかよ。いいぜ、買ってやろうじゃねぇか」

 

「だから貴方達はどうしてそうも喧嘩腰なんですか!! 殿の御前でもあるんですよ!少しは落ち着きませんか?」

 

正直言って孫権の前だからと言って止まるような連中ではない。密偵を頼んでもこの通りに喧嘩をして敵にバレるような二人である。

 

 ーーーああ、早くあの方が帰ってこないものか。私にはとてもこの二人を纏めることなどできそうにも無い。

 

 陸遜達よりも一足早く、ダーハルーネへと向かった人物につい縋るような思いを抱いて、陸遜はメンチを切り合うこの二人の仲介に入る。

 

 そして、孫権と陸遜を追ってきた先でも喧嘩を勃発させようとする凌統と甘寧に陸遜の手も得物を握った。こうなれば力づくでと考える辺り、陸遜もまだまだ青いのであるが此処には残念なことに青二才しかいない。

 

 とうとう三つ巴戦が勃発するのかと、孫権と周りにいた通行人達が顔を引き攣らせたその時、天の救いは訪れた。

 

「くおら! お前らこんな往来で喧嘩なんぞやるんじゃない!!」

 

 スパッスパッと血の気逸る若人三人の頭を平等に叩き倒したのは壮年の男だ。肩ほどまで伸びたボサボサの髪を鬱陶しそうに払いながら壮年の男は青二才達を順繰りに見渡す。

 

「殿が困っているだろう。ったく少しは礼節を弁えろ、お前たちは」

 

「おっさんに礼節とか言われてもなぁ」

 

「全くだ。俺等よりよっぽどのことやってたって魯粛様から聞いてるっつーの、俺達は」

 

「ほう、よっぽどもう一発が貰いたいと見えるな、甘寧、淩統? 遠慮はいらんぞ」

 

 こめかみに青筋立てて作った拳をほれほれと二人に見せびらかす呂蒙に、孫権がハハハッと苦笑いし、陸遜は頼みにした呂蒙が来たところで静かにはならないかと両肩を落とす。

 

 現在、この一団は孫権、黄蓋、呂蒙、甘寧、陸遜、凌統で構成されていた。他の呉の人間達が別のところにいるのか、それとも元の世界で生活しているのかは誰も知らない。

 

 ただ、一刻も早くこの訳のわからん世界から元の世界に戻らなければならないことだけが判明しており、孫権達は元の世界への手掛かりを求めて宛もなく旅をしていた。

 

「殿!! 先程興味深い話を宿屋から聞いてきましてな」

 

 黄蓋も宿を取り終えてこの場に戻ってきた。此処にいる誰よりも年老いている人物であるのだが、此処にいる誰よりも若々しく元気が有り余っている。黄蓋は早足で皆の下へと戻ってくると黙っているのも息苦しいと早々にその興味深いことを話し始めた。

 

「近々この街では『海男コンテスト』とやらが開催されるそうでしてな、しかもその優勝賞金は十万ゴールド。どうでしょうか、ここは一発江東の火男と呼ばれた儂がーーー」

 

「よし。甘寧、淩統。出番だ」

 

 黄蓋の話を最後まで聞き終わらないうちに呂蒙は甘寧と淩統に出場してこいと告げた。どうやら、賞金の額を聞いてここは一発旅金を稼ごうと策士の血が囁いたようである。幸い、甘寧も淩統も見目の良い男である。甘寧は昔、水夫であったことから日焼けが目にも鮮やかな海の男らしい容姿であるし、淩統も最近流行りの塩顔である。よし、行ける。これは勝算のある戦だ。

 

「・・・まぁ、金がないのはガチの話だしな」

 

「ああ、本当は土壇場で名前をおっさんにすり替えたいくらい嫌だけど、金がないのはマジな話だよ」

 

 何時もは顔を見合わせてはガアガアガチョウのように言い争っている甘寧と淩統であるが、いざっていうときの団結には目を見張るものがある。今がまさにその時であるようで、二人は金、金、金と口にしては目を昏くさせていく。

 

「私は案外、金のない旅も楽しかったぞ。石の上で直に寝るのもひんやりとして心地が良かったし、蜘蛛も食べてみると普通に美味かったぞ」

 

「殿・・・あまりあの二人の心の傷に塩を塗らないほうが良いのでは」

 

 流浪の王と呼ばれる劉備が率いる蜀であれば、この旅程もそう苦にはならなかったのだろうが船の上で育ってきた甘寧と出陣以外にサバイバル経験のない淩統にしてみれば、今回の旅は悪夢に等しいらしい。

 

「陸遜もあまりこの旅を苦にしているようには見えなかったが、やはりそなたも嫌だったのではないか、この旅は?」

 

「いえ、なかなか楽しい経験でした」

 

「陸遜は思ったよか肝が座ってるからなぁ。こんな顔して彼奴らよりよっぽど武人らしい」

 

 ニコニコと旅は楽しかったと頷く陸遜に同士を見つけた孫権が瞳を輝かせてそうだろうそうだろうと旅であったアレコレの話をしてくる。そのアレコレに臣下の若い武人達が更に空気をどんよりさせていくのが何とも情けなかったが、この金のない野性味溢れた旅をやめる為にもあの二人は死にものぐるいで海の男コンテストを頑張ってくれるだろう。

 

 と、呂蒙が思った瞬間にあの生気のなくなった男達が行動を開始した。

 

甘寧は陸遜に、凌統は呂蒙の肩に手を掛ける。

 

「そう言えば陸遜。お前、この前女官からなんか饅頭貰ってなかったか?」

 

「え、えーと。それは私と誰かを見間違えているのでは?」

 

「おっさん。おっさんってよくよくよくよく見たら格好いいよな。うん、この俺でもイケメンだと思うレベルだぜ」

 

「淩統、お前自分が何を言ってるのか分かってるのか?」

 

「分かってるって」

 

 甘寧と淩統は仄暗い笑みを浮かべた。そう、そもそも自分達だけが頑張らなければならない道理はないのだ。兵法にもあるではないか。『要は物量だ。物量さえあれば物の暴力で押し潰せ』と。数撃ちゃ当たるとか大は小を兼ねるだとか色々偉人が残した言葉があるのだ。ここは一つその偉大な格言に沿ってみるべきではないだろうか。

 

「俺達『江東の四人組』で華々しく優勝を飾ろうぜ。そうすれば十万ゴールドもすぐ様手に入る」

 

「珍しくコイツとは意見が合うな。俺もそれには賛成だ。なぁ、おっさん、陸遜。二人だけが安全圏に居られると思ったら大間違いだぜ」

 

 この時、陸遜と呂蒙は強く思ったと言う。日々の戦でこの二人がこれ程に団結力を強くしていれば、勝てた戦は幾つあっただろう?と。そして、その団結力を組み込んだ戦略の勝敗率はどれ程に上っただろう?と。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 ダーハルーネに到着したのは孫権ご一行だけではない。潮風に揺れる肩まで伸ばした癖のない髪がダーハルーネの長いトンネルから姿を表した少年の視界を掠める。祖父のお下がりを身に纏い、何故かこの南大陸の地を踏むことになった少年は賑やかなツレ達に目元を緩める。

 

一緒に国を追われ、指名手配されることになった相棒。追われた先で出会った古の伝承を受け継ぎ、その守り手となっている一族の双子。砂漠の国で競い合い、果てには共闘することにもなった旅芸人。

 

少年の仲間は少年の無実を信じ、今日まで少年と旅をしてきた。未だに己の身に起こったこと全てを処理出来ずに過去を顧みては心が凍える思いをする少年にとって、その仲間達の存在は命綱にも等しい拠り所でもあったのだが少年は未そのことを自覚していない。

 

「女共は観光だとよ。ったく呑気な連中だぜ、全く」

 

 ぼんやりと煩雑で活気に溢れているダーハルーネの大通りを眺めている少年と少し離れたところで、ワイワイと騒いでいた仲間の一人が少年の下へ肩を竦めてやってくる。逆立てて後ろへ水色の髪を流している少年の仲間ーーーーーーカミュの「全くあいつらは・・・・・・」と言いたげな態度に少年は柔和な微笑を浮かべた。

 

「仕方ないよ。最近は虹の枝を追って強行軍だったから。たまには羽目も外さないと疲れちゃうよ」

 

 砂漠を強行軍で抜けてきた先で辿り着いた町なのだ。各々、疲れが溜まっていることは確かだし、その疲れのせいで魔物相手に遅れを取ってしまっては堪らない。少年は至極冷静に羽休めのメリットとデメリットを考えて、今日くらいは休んでも師匠は出ないだろうと結論を出したのだ。

 

 しかし、カミュは少年の冷静な決断をいつものお人好しの決断だと判断したらしい。手の掛かる弟でも見るようにカミュは少年を生温かい目で見詰める。

 

「お前は本当に・・・。ああ、そうだ。なぁ、イレブン。俺達もたまには羽目を外さないか? 分かってる、虹の枝も探しながらだ。それくらいは俺達だって良いだろ?」

 

 少年、イレブンが断らないだろうと知って聞いてくるカミュの顔には不敵な笑みが貼り付いている。彼等は世界樹の枝だろうと検討を付けている虹の枝を追って世界を旅していた。しかも、追う旅であるのと同時に追われる旅でもあった。デルカダールの兵達が今もイレブン達の姿を探して行方を追っている。イレブンにとってその追われる理由は納得のいかないものであるし、異論しかないわけなのだが相手がイレブンの異論を聞く耳持たないのだ。相手がそうである以上、今は彼等から逃げる他無く、イレブン達は逃亡者として世界を巡っている真っ只中なのだ。

 

「そうだね。俺達もたまにはーーーそういうことをしても良いかもしれない」

 

 この相棒には辛い思いばかりをさせているとイレブンは思う。デルカダールの地下牢を共に脱してからは過酷な命運を重ね合ってしまった。一か八かの瞬間が何度も訪れ、その度に精神を細く尖らせてきた。

 

 だから、たまには羽休めをしても良いのかもしれない。この終わりがあるのかどうかも分からない旅にはそういうものも必要だろうから。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「悪魔の子・・・だと?」

 

 黄蓋が取った宿屋の一室で、孫権ご一行は思い思いの体制で寛ぎ、呂蒙が得た情報の吟味を行っていた。黄蓋と呂蒙と凌統はまだ孫権を意識して姿勢を正していたが残りの二人は壁に背を付けて呂蒙が齎した情報について吟味している。

 

「そうなのです。何でもデルカダールより逃亡を図った凶悪犯らしく、今も逃亡を続けているとのこと。勇者の印である痣を身に宿し、この地に産まれた厄災。勇者がこの地に産まれるということは、魔王がこの地に降臨する兆しでもあるからと」

 

「面妖な話であるな・・・。まるで、あの黄巾党の説法を聞いてるような心地だ」

 

 黄蓋が顎にびっしりと生え揃った髭を扱きながら、考え事をするように視線を宙に漂わせる。まだ某大陸が諸葛孔明の三分の計により三国に分かれていなかった頃、その大陸で幅を利かせていた宗教団体がいた。『蒼天已に死す、黄天当に立つべし。歳は甲子に在りて、天下に大吉ならん』と言葉を巧みに繰って長きに渡る戦乱の世を開幕させた黄巾党である。

 

「デルカダールと言うのは確か、この世界に存在する五つの国の一つでしたね。そのうち、二つの国は魔物によって滅んでいると聞きましたから、実際に現存する国はデルカダール、サマディ、クレイモランの三国。まるで私達の世界のような話ですね。まぁ、此処三つの国は協定関係にあるらしいので私達の世界とは遠く及ばない平和なものですが」

 

「そりゃ、人間同士で争っている暇なんかねぇだろ。外には分けわかんねぇ魔物がうじゃうじゃ居るんだぜ」

 

「戦をしようにも魔物が居るんじゃ陣すら満足に張れないしねぇ。昼夜人間よりも魔物の奇襲に怯えなきゃならないし」

 

「人間同士が争わなくて済む代わりに別の脅威が身近にあるのだな、この世界には。どちらが幸せなのか計りようもない」

 孫権がポツリとベッドに腰掛けた状態で零し、暫く重たい沈黙がこの部屋を支配した。孫権の問いかけはこの世界に来た誰もが一度は考えたことのある疑問だ。孫権も今日初めてその疑問が浮かんだ訳じゃあるまい。つい、ポロッと今まで抱えていた思いが口からこぼれ落ちてしまっただけなのだ。

 

「今は、悪魔の子について考えましょう。この世界で世を沸かせている話題です。もしかしたら、私達のことと何か関係があるやもしれません」

 

 静寂を切り裂いて、話題の転換を行った呂蒙に皆頷く。今、考えなければならないのは帰還方法であった。この世界と元の世界の幸福論など、帰ってからでも考えられる問題だ。

 

「その悪魔の子って人はどんな方なんですか? 指名手配しているのあれば、容姿の特徴くらいは伝わっているはずですが」

 

「陸遜の言うとおりだ。その悪魔の子の容貌も把握しておる。まず悪魔の子の容姿だがな、驚く程に髪がサラサラらしい」

 

 漸くここで悪魔の子の容貌が明かされることになったのだが、固唾を呑んで一体どんな凶悪な容貌をしているのかと呂蒙の口から各々の想像する悪魔の子像が飛び出してくることを待っていた呉の一団は呂蒙のその一言で引っくり返りそうになった。

 

「さ、サラサラ。その悪魔の子は髪がサラサラしているのか?」

 

 止せば良いのに孫権が生真面目にその部分を追求する。

 

 ーーー殿、今ここでその生真面目さを発揮するべきじゃない。

 

 これは呂蒙と孫権を含まない呉の一団の心境だ。目元を引くつかせながらも、呂蒙に深追いする果敢な孫権に応えるように呂蒙が「ええ」と首肯する。

 

「滅多に見ないほどのサラサラっぷりだそうです。肩口で切り揃えられた髪がなんとも様になる御仁だとか」

 

 サラサラヘアーが特徴的な悪魔の子。皆の想像の中で作られていた凶悪な容貌をした悪魔の子が途端に江東にでもいそうな優男風になる。

 

「実は陸遜、お前が悪魔の子なんじゃねぇのか?」

 

「そんな筈がないでしょう! 私の髪も確かに癖が無いですけど肩口まではありませんよ!!」

 

 甘寧の吃驚するような提案につい陸遜も声を荒げてしまう。これには何故か「なるほど」と淩統が拳を掌に打ち付けた。

 

「じゃあ、周瑜様が悪魔の子だ。あの方、めちゃくちゃサラサラヘアーだし」

 

 美周郎と名高い周瑜も凌統のこれには飛んだとばっちりだ。しかし、呉の一団は一様に何故か納得してしまうのである。確かに、周瑜はこの辺のみならず、元の世界でも滅多に見られないくらいサラサラヘアーであった。女子も羨む艶と癖のない黒髪は、周瑜が女であれば触ってみたいと思う程のサラサラ具合なのだ。

 

「バレたら俺達あの棍で打ち据えられそうだな」

 

 呂蒙の尤もな発言にこれ以上サラサラヘアーのことについては考えないようにし、話は振り出しに戻る。

 

「体の何処かに痣があるんですよね。その痣が悪魔の子の証明なのであれば、私達もその痣を持つ人物を探せば良いのでは・・・?」

 

「しかし、体の何処かにある痣を探すのは大変だぞ。痣なんて服とか布でも隠せるだろう」

 

「そうじゃな。儂でも痣をもとに探されるのであれば隠すわい」

 

 しかし、話はこれ以上進展しないようにも思えた。グツグツと話は煮詰まってきたものの旨みがこれ以上出るようにも見えない会議に孫権がパンと手を叩く。

 

「悪魔の子も大事だが、今は海男コンテストも控えている。優勝を狙うのであれば、そちらのことについても考えなければならないのではないか?」

 

「いっけね。すっかりそっちのこと忘れたわ」

 

 孫権の鶴の一声に甘寧が忘れていたと後頭部を掻く。甘寧と凌統に巻き込まれた陸遜と呂蒙はあまり考えたくないとそれぞれあらぬ方向を向いている。しかし、あらゆる戦で策を巡らせてきた二人もこの運命には抗えないらしい。

 

「この海男コンテストはこれからの旅に必要な旅金を稼ぐために皆は出場するのだろう。私も参加するべきではないかと思うのだがーーー」

 

 孫呉の頂点となってからは責任感も増した孫権が恐る恐るとそんな提案をしてきた。これには、配下たちが大慌てする。まさか、主君をあの様な見世物に出す訳にはいかず皆が皆説得に掛かる。

 

「殿が出るような催し物ではありません! 流石に四人も出れば何かしらの成果は得られるとおもいますよ!!」

 

「そうじゃそうじゃ! 殿、この儂も出る予定ですしの。何の心配もいりませんぞ!!」

 

「これで五人になりましたし大丈夫ですよ。最悪の場合、この半裸男が全部脱ぎますし」

「おまっ! 何勝手なこと抜かしてんだ!?」

 

「大丈夫だって。半裸が全裸になるくらいの差だから」

 

「おいこらお前っ! 表出ろや!! やっぱお前とは早々にケリをつけねぇとなれねぇみてぇだな!!」

 

「こんな狭い所で喧嘩をするでない! 甘寧、凌統!! なんでお前らはそうやって一々喚かないと気が済まないんだ!?」

 

 いつの間にやらまたガアガアと甘寧と凌統が喚きあって火花を散らし合っていたが呂蒙が二人の頭に鉄槌を下す。頭に瘤を作った二人は痛みに呻いてその場に蹲ったのでこれで少しは静かになったのだが、陸遜はこの前途多難な様にいつになく不安を覚えた。

 

 ーーー私達、本当に元の世界に戻れるのでしょうか?

 

 その問に答えてくれる誰かは勿論いなかった。

 

 終わり

 

 





三國無双を知らない方へ



孫権
兄、孫策の跡を継いで孫呉を引っ張っていくことになった孫家次男。真ん中であるためか誰かに引っ張られて行くことに慣れており、急に自分が頂点に立つことになった際は当惑しまくったが今では立派な主君に。でもやっぱり時たま卑屈な部分が顔を出す。実はこう見えてボンキュッボンに恋する漢。


黄蓋
還暦は超えていると思われるお祖父ちゃんだけどそこらの若者よりよっぽど元気。赤壁の戦いでは火の付けられた船で敵の船に突っ込むという策を躊躇なく実行。孫呉に数多くいる火計魔の一人。孫呉三代の臣下として仕えた重臣でもある。



呂蒙
通称名オッサン。三國無双の数いるツッコミの中でも随一のツッコミ師。今では保護者枠だけど、若い頃はかなり無茶苦茶やってた『昔は相当の悪でした』を地で行く人。蜀のことをあまり信用してないので、蜀ともよく戦う。魏は言わずもがな。軍師だけど拳で語ることがよくある。


甘寧
鈴の甘寧の名で知っている方も多いと思われる。孫呉に降るまでは水賊だったので柄が悪い。凌統とはしょっちゅう喧嘩する。と言うのも、凌統にとって甘寧は父親の仇でもあるのだ。実はここ二人の関係はなかなかに複雑。



凌統
線が細く、髪をポニーテールに結っている塩顔。常に飄々としているが、熱くなると熱い人。甘寧に常に突っかかりその度に呂蒙から鉄槌を下される。どさくさ紛れに甘寧を殺そうとしたこともあったが、なんだかんだと二人で組まされることもあって同じ密命を受けて行動すること多し。



陸遜
人好きのする笑顔を浮かべる割りには黒い部分がチラリズムする軍師。言葉遣いも丁寧で謙虚かと思えば結構慇懃無礼な部分も目立つ人。背も低く、童顔なこともあって人畜無害そうな容姿をしているが孫呉の火計魔達の筆頭。最近では策の中に火計を仕込むだけにならず、戦中に火計の練習をしている姿も見られる。






ドラクエを知らない方へ


イレブン
ドラクエXIの主人公。名前は公式から引用。類まれなるサラサラヘアーの持ち主で作中ではしょっちゅうそのことを弄られている。ドラクエでは珍しく主人公がイケメン設定。でも顔より髪のことを弄られる。おっとりとしていて、そのぼんやり加減を仲間達から心配されることが多い。ただ頑固屋でもあるので一度言い出したら聞かない。複雑な出生と運命を持っている。


カミュ
主人公の相棒として時に崖っぷちから共にダイブしたり、敵と馬チェースをしたりした苦労人。普通に盗賊稼業をやって牢屋にぶち込まれていたところで主人公と遭遇し、それから数奇な運命をたどることになる。VIの主人公と髪型が似ていることもあって主人公より主人公らしいと言われることもある。面倒見の良い質で、結構身なりには気を使っている。






ネタが新鮮過ぎるかなとも思いましたが、私の記憶の都合で決行致しました。もし、XIから始めてもいいなと思った方がいらっしゃればドラクエはどのナンバリングでも予備知識が要らないのでオススメします。



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