万華鏡後のありふれた異世界物 作:恵比寿酒
あの日、俺は死んだ。
はず、だった。
「どうしてこうなったんだろうな」
俺は転生した。正確には転生とは違うのかもしれないが、少なくともこの身に起きた現象は転生と呼ぶのが分かりやすいのだろう。
そして、転生したのは俺だけでは無かった。
「さあ?頑張ったあなたに神サマがご褒美でもくれたんじゃない?」
「君と一緒に?」
「あら。美少女と一緒じゃご不満かしら?」
「不満なんて無いけどさ。元が付くとはいえ魔術師としては気になるんだよ」
クロエ・フォン・アインツベルン。
小聖杯であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンから分離した存在。
その正体は、イリヤが幼い頃に記憶ごと封印された
そして俺に思いを寄せてくれていた、大切な少女でもある。
彼女が言うには俺が死んだ後、苦戦しつつもエインズワークスに勝利し、その際に色々あったもののハッピーエンドと言える結末になったらしい。それに俺の特攻はどうやら無駄ではなかったようだ。
その後は平和な日々が続き、クロエも老衰で死んだと思ったら転生していたとの事。イリヤ達は見つかっていないので、転生の条件はよく分からない。
こっちで再開した時には、いきなり泣きついてきて驚いたのと嬉しかったのを未だに覚えている。
こちらに転生した俺達は、現在17歳。高校生活1年目だ。
クロエは1度学んだことだし、クロエに教えてもらっている俺も成績は悪くない。
クラスのやつらもいいやつが多いし、なかなかに楽しんで日々を送っている。
数点を除きさえすれば。
唐突に教室の雰囲気が変わり、クラスの視線が今しがた教室に入ってきた生徒に向かう。
ある事情で彼はこのクラスのほとんどに嫌われている。
「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
「あ、ああ、おはよう白崎さん」
そんな彼女なのだが、とにかく南雲に構うのだ。他から見れば惚れてるって思うくらいには。
しかも南雲はそれに気づいていないという。いや、あの反応からすると、白崎本人も気づいていない可能性もある。
そして南雲は男子からは嫉妬を、女子からは白崎の言葉をきちんと聞けという視線がくるのだ。
さらには彼らが話をややこしくする。
「南雲くん。おはよう。毎日大変ね」
「香織、また彼の世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」
「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄だと思うけどなぁ」
キリッとした美少女と優男と脳筋の小説のような3人だ。さらに白崎が加わり幼馴染4人になると、ますますそれっぽくなる。
RPGでもするつもりなのだろうか。いや、むしろこいつらがRPGの主人公パーティなのかもしれない。
針のむしろの真っ只中にいる南雲がそろそろかわいそうになってきたので、助け船を出してやろうと席を立とうとすると、予鈴が鳴った。
あからさまにほっとしている。哀れな… 。
そして4時限目の授業が終わり、昼休みになったのでクロエと弁当を食べていると、
気が付いた時には、俺の足下にまで広がっていたソレ… 魔法陣は、唐突に輝きを放った。
一瞬閉じた目を開くと、見慣れない光景が目に飛び込んできた。