万華鏡後のありふれた異世界物   作:恵比寿酒

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No4:選択肢

 イシュタルは俺たちを戦わせたいそうだが、正直戦う理由が無い。こちらにメリットが無さ過ぎる。そもそもいきなり異世界に呼ばれた上、自分たちのために戦えと言われて「はい」と答えられる人物がどれだけいるのか。

 いや、そんなお人よし(士郎さん)もいるのだろうが、少なくとも俺にはそんなつもりは無い。

 

「ふざけないで下さい!」

 

 畑山(はたけやま)愛子(あいこ)先生が怒っているが、イシュタルはそもそも『エヒト様』が呼んだので自分たちには何も出来ないと語る。

 話していることはおそらく事実だ。少なくとも本人は事実だと思っているはず。狂信者が神の名を語って嘘をつくとは考え難い。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。」

 

 何を言っているんだ、天之川。

 そう思っている間にも話は進んでいく。戦争を終わらせれば返してくれるだろうという会話から、トータスへと来てから力を感じるという話と。

 

「人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 さらには演説を語り始めた。

 お前、それは人を殺すということだぞ?この戦争を終わらせるとは、一つの種族を滅ぼすくらいまで殺戮するということだぞ?

 やるにしても、演説をするな。お前のようにカリスマがあるような人物が言うと、中途半端な覚悟で同調する人が増える。

 

 こいつ(天之河)は正義感も人望もあり性格も良く、さらには文武両道と言うことのない人物なのだが、いかんせん思い込みが激しく『良いこと』をしている自分に酔っている節がある。

 正直に言って危険だ。中途半端にカリスマがあるので、裏切り者が出てもおかしくないし、自分に酔っているので振り返ることもしない。中途半端に周囲を巻き込み心中するタイプだ。

 それ以前に人を殺す覚悟は出来ていないようなので、心が折れて使い物にならなくなるだろう。同調して戦うと言っているやつらも同じく。

 

 それに終わったところで返してくれる保障も無い。むしろ返してくれる可能性のほうが少ないだろう。神々は常に気まぐれだと神話でも語られている。

 

 しかし人望もカリスマもそれなりにあるので、案の定賛同する者が続々と出てくる。

 正直参加などしたくもない。関係ないのに人殺しなどごめんだ。

 だがここで断るとどうなるか。追い出されるのはまだいいほうだ。最悪戦闘になるかもしれない。

 

 現在、俺とクロエはクラスカードが手元に無い。クロエの核になっていたアーチャーのカードも確認はできるが、使用はできない。つまり俺たちは通常の魔術しかつかえないのだ。

 

「クロエどうする?」

「…選択肢なんてあって無いようなものでしょ?」

 

 そう、選択肢などないのだ。この状況では。




 
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