万華鏡後のありふれた異世界物 作:恵比寿酒
イシュタルは俺たちを戦わせたいそうだが、正直戦う理由が無い。こちらにメリットが無さ過ぎる。そもそもいきなり異世界に呼ばれた上、自分たちのために戦えと言われて「はい」と答えられる人物がどれだけいるのか。
いや、そんな
「ふざけないで下さい!」
話していることはおそらく事実だ。少なくとも本人は事実だと思っているはず。狂信者が神の名を語って嘘をつくとは考え難い。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。」
何を言っているんだ、天之川。
そう思っている間にも話は進んでいく。戦争を終わらせれば返してくれるだろうという会話から、トータスへと来てから力を感じるという話と。
「人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
さらには演説を語り始めた。
お前、それは人を殺すということだぞ?この戦争を終わらせるとは、一つの種族を滅ぼすくらいまで殺戮するということだぞ?
やるにしても、演説をするな。お前のようにカリスマがあるような人物が言うと、中途半端な覚悟で同調する人が増える。
正直に言って危険だ。中途半端にカリスマがあるので、裏切り者が出てもおかしくないし、自分に酔っているので振り返ることもしない。中途半端に周囲を巻き込み心中するタイプだ。
それ以前に人を殺す覚悟は出来ていないようなので、心が折れて使い物にならなくなるだろう。同調して戦うと言っているやつらも同じく。
それに終わったところで返してくれる保障も無い。むしろ返してくれる可能性のほうが少ないだろう。神々は常に気まぐれだと神話でも語られている。
しかし人望もカリスマもそれなりにあるので、案の定賛同する者が続々と出てくる。
正直参加などしたくもない。関係ないのに人殺しなどごめんだ。
だがここで断るとどうなるか。追い出されるのはまだいいほうだ。最悪戦闘になるかもしれない。
現在、俺とクロエはクラスカードが手元に無い。クロエの核になっていたアーチャーのカードも確認はできるが、使用はできない。つまり俺たちは通常の魔術しかつかえないのだ。
「クロエどうする?」
「…選択肢なんてあって無いようなものでしょ?」
そう、選択肢などないのだ。この状況では。