書こうと思いつつも、中々案が出てこず放置してました。申し訳ありません
買ったばかりのキャリーバックを引きずりながら道を歩く。バックを引きずっていない右手にはスマホを握っている。
ここら辺は歩いたことが昔にあったが、最近は訪れていなかったので少し不安が拭えない。なので、彼女から送られてきた地図データを頼りに道を歩く。
「ここか……」
思わず言葉が詰まってしまう。それほどまでに大きな神社が目の前にある。新子神社―それが俺が訪れた神社の名前だ。名前の通り、俺の彼女である新子憧の実家だ。
本日は12月31日、つまりは大晦日。3が日忙しい憧の手伝いに来たのと、やはり正月に彼女に会いたい気持ちがあったからやって来た。
彼女の両親には電話越しだが、既に挨拶を済ませているので既知の仲だったりする。
石の階段を昇ると、憧が待っていた。
「世話になるぜ憧」
「いらっしゃい京太郎」
憧は笑顔で俺を迎えてくれた。
☆☆☆☆☆
憧の両親に改めて挨拶を済ませると、憧の案内でしばらく泊る部屋へ移動することに。
「ここよ。見ての通り、物が何もないのがアレだけど」
「へぇ……中々広い部屋じゃん。元は物置部屋か何かだったのか?」
「まぁ、そんなところね。さて、荷物置いたらお昼にしましょうか。お腹減ってるでしょ?」
「ああ。でも、時間的に憧達は食べたんじゃ?」
腕時計に目をやると時刻は既に昼の2時を回っている。一般家庭なら既にお昼を取り終わっている時間だろう。
「いいのよ。私が京太郎の為に作ってあげたいの」
「……そっか。じゃあ、頼んだ」
「ふふっ、頼まれました」
憧とはすでに恋人の仲になったのだが、こうして俺が赤面してしまう事が多い。普通は男の何気ない言葉で女が顔を赤くするのではないのだろうか。……まぁ、いいか。
☆☆☆☆☆
ふんふんと憧のご機嫌な鼻歌が聞こえる。俺は台所にある小さなテーブルに座って料理を作る憧の後姿を唯々眺めていた。
せっかく恋人が料理を作ってくれているのだからスマホを弄るのはなんだか気が引けてしまうので大人しく待つ。
それに、後姿を眺めるだけでも楽しい。憧は普段部屋着として使用しているであろう服の上にピンク色のエプロンを身に着けていた。正直言って可愛い。後ろから抱き着いていい匂いのしそうなうなじに顔をうずめたくなる。
料理中だからと抵抗はしそうだが、何だかんだで大人しく受け入れてくれる気がする。……やるか?
そんな風に頭の中を煩悩で埋め尽くしていると、黙っている俺を心配したのか憧が目の前に来ていた。
「大丈夫京太郎?疲れ溜まっちゃった?」
「……いや、憧の後姿に見とれてた」
「~~~っ。いきなり照れること言わないでよ。……もう」
顔を赤くして俺を見れないのかふいと顔を逸らす彼女。そんな姿もいとおしく思うほどに俺は憧に惚れているんだなと頭の片隅で考えながらも彼女を抱きしめていた。
「ちょ、ちょっと今は料理中。だからそういうのは……あとでね」
「分かった。後で思う存分抱きしめるから」
先ほどよりも顔を赤くした彼女は料理の続きをするべく台所に再び戻っていった。
またしばらく憧を眺めていたら、料理が出来たらしい。
台所中に料理のいい匂いが広がる。美味そうだ。
彼女にいただきますと言い野菜炒めを口に放り込む。
モグモグモグモグ
「うん。美味しい、ありがとな」
「そ、そう。口にあったなら良かった」
照れくさいのか髪の毛をクルクルと巻きながら喋る憧。しかし、
「もう付き合うようになってから一年か……」
味噌汁を啜りながら今からちょうど一年前の年明けの頃だ。
来年度には高校3年生になるから一年の冬か。思うと日が経つのは早いものだ。
恥ずかしいことだが、告白は彼女からされた。憧が実家の手伝いを終えてから長野に遊びに来た時にされた。近所の神社でお参りをした後の出来事だった。
思わず過去に思いを馳せていたが、何時の間にか食事は済ませてしまったらしい。美味しいとしか感想が出ない自分のボキャブラリーが悲しい。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさま。食後のお茶でも飲む?」
「ああ、頼む」
付き合うようになってから実感したのだが、憧は結構なお世話焼きだった。今のお茶も俺には手伝わせてくれない。なんでも、こういうのは女の役目だからと何時も断られてしまう。
家が神社だからか、微妙に古臭い感覚を持っているところがある。服装だけ見れば、今時の女子高生なんだけどなぁ。
憧が作ってくれた昼食を取り終えると、憧の父である渉さんと一緒に今夜の準備を行った。
大晦日の今日は、年が明ける瞬間を神社で過ごす人たちに甘酒を配るのだ。夜はかなり冷えるので、甘酒で温まってもらおうという考えだ。
甘酒のカップを置いたりする台を設置したりして、彼方此方を走り回った。
バイトの人たちも準備を手伝いに来てたのだが、年明け後のお守りなどを売ったりするための巫女のバイトさんばかりだったので、俺みたいな若い男の力は有難いらしい。これは渉さんから聞いた話だ。
準備の手伝いをしているとあっという間に時間が経ち、既に年を越すかどうかの時間になっていた。
俺も他の客と同じように、甘酒を貰い神社の外で年が明けるのを待っていた。憧はまだやる事があるらしく、隣にはいない。
甘酒を飲んでいても外は寒いので、手はコートの中に突っ込んでいる。神様に来年は何を祈ろうかと適当に考えていると、俺の腕に誰かが抱き着いてきた。
「お疲れさま。京太郎」
「ああ。憧もこんな遅くまでお疲れ様」
「年越し蕎麦の用意が出来たけど、食べる?」
「あー、頂く。夕飯は頂いたけど、この時間となると腹がすくからな」
憧に腕を引かれ、家の中に入っていく。蕎麦は既にテーブルの上に置いてあった。しかも、家族の方が配慮してくれているのか、俺と憧以外は誰もいなかった。
「お姉ちゃんか……まぁ、いいや。京太郎、早く食べよ?」
「そうだな。いただきます」
「いただきます」
蕎麦は一から打ったものなのか市販の物より、よっぽど美味い。市販も好んで食べるが、やはり手打ちが一番だな。蕎麦に乗っている海老も中々にデカくて食べ応えがある。
「海老美味しいでしょ。私が揚げたのよ」
「へぇ。良いきつね色に揚げられてるし、美味いよ」
「でしょでしょ。今回のは結構うまくいったのよ。まだ高校生だからママが揚げ物はあまり手伝わせてくれないから頑張ったんだから」
うーむ。俺のために頑張ってくれたと言外に言ってくれるのですごく嬉しくなってしまう。飯を食べているのに、思わず頭を撫でてしまう。
「ちょ、髪が乱れちゃう」
などと言いつつも満更ではないのか、笑顔を見せてくれる。うん、可愛い。
「いやぁ、嬉しくてさ。それに憧だって撫でられるの好きだろ?」
「そ、そうよ。京太郎になら何されても喜んじゃうんだから……あ、今のは忘れて。ちょっと恥ずかしい事口走っちゃったから」
顔を赤くして、俺の顔の前で手を振る憧。愛しさが溢れそうになり、遂に抱きしめてしまう。
「ちょちょちょ、京太郎!?まだ家族が起きてるから。恥ずかしいし……ね?」
「やだ」
「~~~っ、もう。蕎麦伸びちゃうから、続きは寝るとき……に」
「……仕方ないな」
心底残念に思いながら、憧から体を離す。憧の体は温かったので、心地よかったのだが、その熱も離れてしまった。
イチャ付きながら蕎麦を無事に食べ終え、残るは寝るだけとなった。
うちから持ってきた、歯ブラシを使い、歯磨きを済ませる。
年末年始なのに、家族と一緒にいないというを今更ながら思い出した。今年は憧の家に来ているので、この時期に家を離れているのは、初めてだ。
でも、憧と一緒なので寂しさとは無縁であるが。
明日は8時30分から、神社でお守りや破魔矢の販売を始めるので、起きるのは早めだ。スマホのアラームをセットし、先に布団にもぐる。
暫く、ボーっとしていると憧が部屋に入ってきた。
「……もしかして、寝ちゃった?」
「いや、起きてるよ」
「そっか。じゃあ、お邪魔します」
そう言い、俺の布団に憧が入ってきた。あー、やっぱり憧の体温は高いので心地が良い。憧は以前にお気に入りだと言っていた、ピンク色のパジャマを着ていた。
「一緒の布団に入るのに、慣れたもんだな」
「そうねぇ……前みたいに恥ずかしがったほうが良かった?」
「いや、俺はどっちでもイイさ。だって憧だし」
「どういう理由よ」
「さて明日も早いし、今日はもう寝るか」
「うん。準備で疲れちゃったし、今日は直ぐに眠れそう」
「俺も」
腕に憧をすっぽりと抱えながら、眠気に身を任せた。
欲望に身を任せて書いてみたら、3000文字を超えていた。結構な驚き。
次は、「起こしちゃった?」とアコチャーに言わせる予定です。漫画とかで好きなシチュの一つ。
活動報告で、アンケやってますので、気が向けば意見をどうぞ。
感想待ってます。