まさか設定をろくに考えずに1日出掛けるとは……
麻雀の名門である白糸台高校の廊下を一人の女生徒が走っていた。時刻は既に放課後。部活を終えた生徒がチラホラと見えるが、少女はそれらに目もくれず目的の人物へ一直線に走っていた。
走っている少女の綺麗な金髪は宙に靡いている。白い制服のスカートも走っているのに何故か、彼女の走りを邪魔をすることはない。
暫く走る事数分、目的の人物の後姿が見えた。その姿はまるで仕事に疲れたサラリーマンの如く、哀愁を漂わせていた。
「キョータロォォォー」
少女―大星淡は後姿を見せている人物の名前を呼びながら勢いよく抱き着いた。
「うおっ!……おい、大星」
青年はいきなり抱き着かれたことでバランスを崩しそうになったが、ギリギリで耐える。抱き着いた少女の名前を少し低い声で呼ぶと、背中に抱き着いた存在がビクッと動いた。
「なぁ、俺は廊下を走るなって昨日も言ったよな?」
「……」
「それに、勢いよく抱き着くのも危ないから止めろって言ったよな?」
「……」
「そーかそーか。よし、今から生徒指導室に行くか。行くぞ、そのまま捕まっとけよ」
青年はそう言うと、背中にへばり付いた存在が離れないように手を回すと目的の場所へと足を向けた。
☆☆☆☆☆
生徒指導室と書かれたプレートが掲げられている部屋に入ると鍵を掛ける。そのまま背中の存在を近くにある椅子に座らせる。自分の近くの椅子に座った。
「それで、どうした?」
「ん?部活も終わったから遊びに!」
「……はぁ、お前なぁ。俺とお前の関係は?」
「先生と生徒じゃん、何言ってるの?」
「それ分かるなら分かれよな。ここは家じゃなく学校なの。今は家みたいな関係でいられないと何度言ってるんだ……」
キョータローと呼ばれた人物はため息をもう一度吐いた。
彼と大星と呼ばれた少女の関係は簡単だ。ご近所さんの一言で終わる。幼いころからともに遊んできた仲なので、高校生となった今でもそのままの関係だ。もっともそれは大星から見た関係だが。
「今は放課後だから生徒少ないから良いけど、昼間とかにやるなよ?一応は俺との関係は秘密にしてるんだから」
「はーい」
「ったく、返事は何時も良いんだがなぁ」
「でさでさ、キョータローは何時帰れるの?」
「今日はもう少しでだな。明日の授業の準備を簡単に済ましてからだ」
「むむむ。じゃあ、淡ちゃんは先に帰ってお料理して待ってるかな」
「おう、そうしとけ。寧ろそっちのほうが助かる」
「まっかせなさい」
胸を張る少女。余談だが、彼女は同年代に比べて女性的な肉体をしている。身長が低いことも相まって、いわゆるロリ巨乳に分類されてしまう。
そんなポーズをされたので、京太郎は目を逸らす。
「じゃあ、俺は職員室に戻るから。部屋の鍵を閉める必要もあるし、行った行った」
「はーい」
共に生徒指導室を出て、鍵を閉める。鍵がかかったのを確認すると、淡と別れ、職員室へと歩み始めた。
☆☆☆☆☆
職員室で他の教員たちと明日の授業内容を離し終えると、校舎を後にする。
教職について、2年目となる。まぁ、こんなものだろと思いながら帰路に就く。
家に入ると、美味しそうな匂いがする。今日の夕飯はデミグラスソースを使った物だろうか。リビングへの扉を開けると、エプロンをした淡が立っていた。
「おかえりー」
「ああ、ただいま」
もう2年もしている挨拶だ。大星淡の両親は現在海外で仕事をしている。
界隈で有名な人物で、年中世界を飛び回っている。白糸台に赴任が決まった際に、彼女の両親から、自宅に住んでみないかと話を受けた。
学校近くのアパートを借りようとしていた俺にとって棚から牡丹餅な出来事だったので直ぐに了承した。
淡は両親が世界を飛び回っていたため、普段の言動からは想像できない程に家庭的な少女だ。
学校に近いというよりも、この家で生活することになっての一番良かったことは淡がいる事だった。
「今日は少し寒いからビーフシチューにしてみました。デミグラスソースから手作りだよ!」
「マジか。それは楽しみだ。早速だけど、いただけるか?」
「じゃあ、テーブルに座って待ってて」
「ほいほい」
淡がキッチンに入るのを見て、リビングの椅子に座る。料理を御盆にのせ、運んでくる姿を見ながらぼんやりと考え事をする。
普段の言動がなければ、さぞかしモテるんだろうなと。淡は彼女は知らない事だが、ファンクラブというものが存在する。その多くは男子生徒構成されており、如何に彼女の容姿が高いかが窺える。
少し胸元に痛みが走った気がするが、直ぐに治まったので安心する。まだその手の病気とかに掛かりたくない年齢だしな。
「おまたせ。どーぞ」
「いただきます」
「めしあがれ」
スプーンを手に取り、一口口に運ぶ。
「うん、美味しい」
「ほんと!?」
「ああ、本当だ。というか、淡の料理で美味しくないと思ったことはないよ」
「そっか……えへへ」
淡は照れたのか頬をぽりぽりと掻いている。その姿をしり目に二口目三口目と食べ進める。というか、
「淡、お前は食べなくていいのか?冷めるぞ」
「あっ……い、いただきます」
俺の感想を待っていたのか、ずっと食べていなかったようだ。
「おー、美味しい。でも、これなら……」
自分で作った料理だからか、まだまだ改良の余地があるのかぶつぶつと改良案を口にしながら食べている。これじゃあ、食事を楽しむというか試食だな。
今回は冒頭の走る辺りは上手く書けた気がする。
次は、これの続きかほかの人を書こうかな。勿論、別verではなく別人ね。
誤字脱字・感想待ってます。