天江衣の場合①
須賀衣は龍門渕高校に通う女子である。身長がかなり低いため、そうは見えないが立派な高校生だ。
本来は家庭環境故、龍門渕みたいなお嬢様学校に通うことが出来ないのだが、龍門渕家の娘の推薦により通うことが出来ている。一応従姉妹らしい。
らしいというのはとある事故の葬儀の際に会ったことがあると義父から聞かされているが、覚えていないのだ。
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朝日が昇り始めた頃、義父の部屋に忍び込む影が一つ。
「ふっふっふっ……今日こそは潜り込ませてもらおうぞ」
義父を起こさぬよう小声でつぶやく小さな影。
彼女の義父である須賀京太郎はプロの麻雀師である。その職業柄家にいることが多く、彼女はたくさん甘えることが出来た。その結果としてファザコンを通り子とした何かへと変貌を遂げたことを京太郎は知らない。
「よおく寝ておるのう」
彼女は古めいた口調でしゃべる。それは義父によるものではなく、かつて失った両親たちから受け継いだものだ。京太郎はそれを注意することなく育て上げたので、昔から変わらず古風なしゃべり方をする子に育った。
義父の布団をめくると寒いのか包まる義父の体。それを見て少し笑いが漏れ出すが起きだす気配はない。それに気をよくすると彼の体に抱き着く。京太郎の匂いに包まれながら彼女は安心して眠りについた。
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ピピピピピ
予めセットしておいた目覚まし時計が部屋に鳴り響く。今日の目覚ましは確か10時にセットしたはずだ。休日なので衣も俺を起こしに来る気配が……ん?
「あれ?なんだ布団が温かい」
布団を捲ると俺の義娘である衣がくっついて寝ていた。
「久々に潜り込んできたか……はぁ」
衣もう高校二年生になる。そろそろ親離れとは言わないが、甘えてくるのはどうなのかと思う。
それでもこうして頭を撫でてしまうのだ。
衣を起こさないようにゆっくりと動かす。なんとか動かせたのでそのまま部屋を出る。
リビングにやってくると昨夜のうちに沸かしておいたコーヒーをカップに注ぐ。
朝起きた時はブラックを飲むのを習慣付けているので慣れた味だ。
玄関近くに設置されたポストから新聞をとるとテレビを見ながら見る。
特に気になる記事がないので、新聞はたたんでテーブルの端に置いておく。後で衣が読むだろうからな。
簡単に朝食を作っていると衣が起きてきた。
「おはようキョーターロー」
「おう、おはよう衣」
フライパンに掛けていた火を止め衣の頭をなでる。昔は子供ではないと抵抗していたのだが、最近は大人しくなでられている。というか目を細めて嬉しそうにしている。
「朝ごはんもそろそろ出来るから、部屋に戻って着替えてこい」
「うん、わかった」
まだ眠そうに目をコシコシこすりながら自室へと戻っていった。
その間にできた料理を皿へと持っていく。
皿をテーブルに運び終えたので席に付き、衣を待つ。
暫くすると完全に目が覚めた衣がやってきた。
「「いただきます」」
我が家の朝食はいつもこんな感じだ。
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今日は昼過ぎから仕事が入っているので衣に告げておく。
「むぅ……」
「そんなにむくれるなって。その代わりと言っては何だが、夕飯は衣の好きなレストランにでも行こうか」
「本当か!?」
先程までほほを膨らませていたのが嘘のように目を輝かせた。衣は昔両親に連れて行ってもらったレストランのエビフライが好物だったりする。
勿論、うちでも作っているのだが思い出には敵わない。
「仕事が終わったら一度帰ってくるからその前に連絡入れるよ」
「分かった。ならば衣はそれまで本でも読んでおく」
「結構溜まってたもんな」
衣は俺の影響か麻雀をするがそれ以上に読書をする。基本的には古本屋にしか置いてないような昔の本を好んで読む。先月たくさん買ってきたのを思い出したのか、今日の予定を決めたようだ。
「じゃあ、俺は仕事の準備するから皿洗いは任せた」
「うむ、任されよ。衣にかかれば皿洗いの一つや二つ電光石火の如く終わらせて見せよう」
「ははは。それは心強い」
彼女に仕事を任せ俺は部屋に戻った。
実はこの案はあわあわ編を書いていた時に思い浮かびました。
京太郎大人シリーズは主要キャラにしようかなと。(具体的には咲、照、小蒔、淡、衣の5人)
活動報告にてアンケートやってます。