須賀京太郎という雀士は想像以上に人気だったりする。
彼の昼過ぎからの仕事はテレビによる取材関連なのだが、彼が出演する放送は毎回高視聴率を叩き出している。
それは彼の麻雀へのひたむきな思いと、取り繕わない性格故なのだろう。
ともかく彼は人気なのだ。
「お疲れ様でした須賀さん」
「そちらこそお疲れ様です」
「どうです?仕事終わりの一杯でも」
「あー、残念ですが家族サービスをする約束がありますので」
彼が子持ちだという事は周知の事実だ。その言葉を聞いたテレビ番組の関連者はなら仕方ないと笑った。
さて、思いの外遅くなってしまった。衣に持たしている携帯電話へ掛ける。
「もしもし衣?」
「京太郎、遅いぞ」
「すまん。こんなに遅くなるとは思わなかった」
時刻は既に9時に近い。早歩きで車を停めてある駐車場へ向かう。ドアロックを外し車に乗り込む。
俺の愛車は親父のお古なので、割と年代物だったりする。しかし手入れをしているのできっちり動いてくれるのだ。
衣に急いで帰るからと伝えて車を走らせた。
京太郎と出会ったのは、大好きな両親が亡くなってすぐの事だった。
死因は別の車との衝突事故だったようだ。勿論過失は相手の方にあると判決が下された。
前に聞いた事があるが、当時は衣を何処に引き取らせるかと親戚間で揉めていたらしい。衣の両親は考古学者だったこともあり、親戚にはあまり良い目で見られてなかったのだ。
そこで衣の両親が勤めていた大学の生徒の一人だった京太郎がやって来た。恩師が亡くなったのは本当なのか確認しに来たらしい。
両親が亡くなった事を確認した京太郎は親戚が揉めていた事に気付いた。それから衣の所にやって来て、親戚の元で生きるか少し苦労するが俺の元で暮らすかと聞いてきた。
衣は京太郎のことを全く知らなかったが、両親が亡くなったと急いで駆けつけてくれたのを見ていた。だから京太郎について行くと決めたのだ。
「遅くなったな」
「本当だぞ!衣はお腹がペコペコだ」
車の助手席に座った衣は不貞腐れながら言う。勿論本気ではない。
彼が人気がある事は情報として知っているし、彼の雀士としての実力が高い事も知っている。
でも衣にとっては今や唯一の家族なのだ。だから構って欲しいとついつい不貞腐れて接してしまう。
京太郎はそれに気付いたのか苦笑いしながら悪い悪いと頭を撫でてくれた。
大好きな両親と何回も訪れたレストランへ着いた。
京太郎と此処に来たのは既に両親と来た以上だ。入店すると夜も遅いのかあっさりと席に付けた。
衣は既にメニューが決まっているのでデザートの欄を見ている。
今日はお昼食べて以来、水以外口にしていないのでお腹が空いている。なので結構がっつりのハンバーグを頼む事にした。これなら衣が一口欲しいと言ってきてもあげることが出来る。
衣はジュースとかよりも玄米茶やほうじ茶といったちょっとジジ臭いものの方が好きなのでドリンクバーを頼まなかった。
ベルを鳴らしやってきた店員に注文頼むと衣が話しかけてきた。
「それで京太郎。今日の取材は何だったのだ?」
「ん?今日はな来年行われる世界大会への意気込みについての取材だったよ」
「ほう、もう世界大会の事を話題として来たか」
「まぁ、話題性としては良いだろうよ。見た感じネットでも大騒ぎだ」
「ふふん。京太郎が出るのだから当たり前だ」
「そう言って貰えると嬉しいよ」
そう京太郎は世界大会に出場する事が決まっている。男女混合のチームで団体戦の次鋒として起用された。勿論個人戦にもエントリーされている。衣としては大好きな京太郎が参加する事を心から喜んでいるのだ。
「そうだ、麻雀といえば衣の方はどうなんだ?」
「む?大丈夫だぞ。とーか達と今年も出場する事が決まっている。一番気をつけねばならぬのは風越の先鋒だな」
「風越の先鋒といえば……福路さんだっけか」
「うむ。彼奴の卓を見るセンスはピカイチよ。勿論衣も負けておらんがな」
「衣は先鋒で出るのか?」
「いや、オカルト的に夜に近づく方が有利だからな。大将を任された。衣が戦えば百戦百勝よ」
「ほう、なら俺とやるか」
「むむむ、京太郎相手には満月で無ければ難しいからな」
「まだまだ子供に負けてやるつもりはないさ」
「子供じゃない衣だぞ!」
「おっ、久々に聞いたなその言葉」
そんな風に家族団欒をしていると注文したメニューを店員さんが持ってきた。
「じゃあ食べるとするか」
「うむ」
京ちゃんの強さは淡編と同じぐらいです