キリカは調整屋を襲い、噂を聞いてやってきた暁美 ほむらを襲う。
「あの有名な店が襲われたとなれば、誰かしら魔法少女が心配になって来ると踏んだはいいものの、まさかいきなり大物が食らいつくなんてね」
調整屋のあるビルの屋上に立つ白いドレスのような服を着た魔法少女は、そこから夜の町を一望していた。
調整屋で戦うキリカが帰ってくるのを待って・・・
★
(やっぱり強い!)
私は苦戦していた。時を止め、銃弾を撃ち込んでもすぐにキリカは状況を把握して、自身の能力を使って銃弾を遅くする。
それをずっと繰り返しだが、時間停止が少しでも遅れると、彼女の爪が私を攻撃していた。
「ほらほら、その力で止めてみてよ!私の攻撃をさ!」
時間停止。確かに普通の魔法少女相手なら強いけど、時間を操るもの同士になると、有利とは言えなくなる。
特にあの周囲の時間を遅くする能力は銃弾さえも遅くして、キリカが銃弾を避けるための時間を作り出してしまう。それがキリカの身体能力もあってさらに不利な状況だ。
(これなら!)
私は次の時間停止で、キリカに向かって手榴弾を投げた。
いくらキリカでもこれなら避けられない。
カチッ!
盾はまた時を刻み始める。
キリカは足元に現れた手榴弾を見ると、すぐに後ろへ跳ぶ。だが、
「ッ!」
逃げ切れなかったかキリカを手榴弾は吹き飛ばし、爆風で壁に叩きつけた。
「っててて・・・」
「もう終わり?呉 キリカ。」
私はキリカのこめかみに銃を突きつける。キリカの後ろは壁。もう逃げられない・・・はずだった。
「誰かがケーサツに電話をかけたみたいだね」
この騒ぎに誰かが警察に電話をかけたのか、外からサイレンの音が聞こえる。
「・・・命拾いしたようね」
私はしょうがなく、銃を盾にしまう。
それが私の油断だった。
「まだ勝負は終わってないよ!」
キリカは私が盾の方に視線を向けた瞬間、自身の能力を使ってその一瞬を数秒に延ばした。
(間に合わない!)
盾の上を通るキリカの爪は私の頭を抉る。そしてキリカは扉の外へ逃げていった。
「キリカ・・・」
「じゃあね、暁美 ほむら」
私は頭をひどく損傷したのか、朦朧としてその場に倒れる。きっと爪が脳にまで達していたのだろう。
「突入!警察だ!動くな!・・・・・・なんだ、これは」
銃弾が撃ち込まれ、三本の爪痕が刻まれている壁や床を見て、部屋に入ってきた警察はおもわず入り口で立ち止まってしまう。
そして私の姿を見て、一人がこちらへ走ってきた。
「君、大丈夫か!ケガをしているのか!」
「犯人・・・は、窓から・・・ッ!」
「!・・・犯人は窓から逃亡したようだ!辺りをくまなく探せ!それと救急車を頼む!」
警官のほとんどがその場から消え、検察らしき人達が中へ入ってきた。
「安心しろ、すぐに犯人を捕まえるからな」
私はその言葉を信用できるわけがなかった。ただの人間に対して、相手は魔法少女だ。敵うわけがない。
朦朧とした意識の中、色々なことを考えたのもあってか、私は意識を失ってしまった。
★
「れんちゃん、その子は・・・?」
「えっと、その・・・ふぇ、ふぇ、」
「オレはフェリシアだ。よろしくなー!」
梨花さんはフェリシアさんを見て、嫌な顔をした。
「れんれん!今すぐにこの子を捨てて来なさい!」
「え・・・?」
木崎さんは私の両肩を持つと、威圧するようにそう言った。まるで拾ってきた犬や猫を捨てるように怒鳴る母親のように。
「どうして・・・です、か?」
「その魔法少女は悪い魔法少女なの。傭兵って言われてて報酬によってはコロコロ主を変えるし、すぐに裏切るの」
「そ、そうなんですか?」
「・・・うん。」
フェリシアさんは頭を下げる。
「えっと、じゃあ・・・フェリシアさん。ひ、一つだけ、いいですか?」
「なんだ?」
「私と・・・その・・・友達になって、くれませんか?」
フェリシアさん以外の周りのみんなが私の言葉に驚く。私自身も驚いていた。
私は中学生まで友達はほとんどいなかったし、梨花さんのときも梨花さんの方からだった。
「友達?いいぞ!・・・というより、昨日は友達じゃなかったのか?」
「え、えっと・・・いや、その・・・はぃ」
「れんちゃんおめでとーっ!」
梨花さんが後ろから私に覆い被さるように抱きついてきた。
「これも成長だよ!何か涙出てきちゃったよ」
「な、泣かないで・・・ください」
「あんなことを聞いてもフェリシアと友達になるなんてね・・・勇気あるな、れんれん!・・・よーし!今日はみんなでパーティーだ!」
「おぉー!パーティー!・・・で、何のパーティーなんだ?」
「れんれんの成長記念だよ!れんれんにとって、これは大きな一歩なんだから」
衣美里さんはケーキの用意と外へ飛び出していく。それを追いかけるように私と梨花さんも外へ出た。
日は既に暮れ始め、街がオレンジ色に染まり始めた。
走る衣美里さんを追いかける途中、夕方のニュース番組が電化製品の店のテレビ全てに映っている。
「嘘・・・」
「どうしたの?れんれん。・・・これってまさか」
繋がりのあった衣美里さんもすぐにこれがどこかがわかった。
「みたまさんの・・・調整屋さん・・・」
何があったのかステンドグラスが吹き飛び、壁や床がボロボロになったみたまさんのいるはずの調整屋さんが映っていた。
ニュースによると昨日の17時頃に大きな爆発があったと言っていた。
「爆発?いったい何があったのかな」
「みたまさん、大丈夫かな?」
「あ・・・あの、私・・・昨日あそこに」
「れんちゃん本当?みたまさん何かやってたの?」
「たぶん・・・、私が、か、帰ったあとだと、思います・・・はい」
「それにしても心配だね・・・私もみたまの調整には世話になってるからね」
「わ、私もです」
「まぁ、あの人なら大丈夫でしょ、たぶん。みんなー、パーティーの準備行くよー!」
「・・・みたまさん」
★
「なかなかハデにやったのね。キリカ」
「あれはほむらのせいだ。私は抵抗したまでだよ」
織莉子の作ったハーブティーを飲みながら、織莉子の作ったクッキーを食べて私は昨日のことを話していた。
織莉子はニュースを見ながら私に色々と聞いてくる。
「そのほむら、というのは暁美さんのこと?」
「うん、そうだよ。あの黒い髪の左腕に盾付けてるやつ」
「やっぱりあの魔法少女・・・」
織莉子は何か考えている。
「どうしたの?織莉子。」
「・・・なんでもないわ。ただ、」
「ただ?」
「あの子は私たちの邪魔になりそうね」
「・・・殺す?瀕死だと思うけど」
「魔法少女は三日もあれば戦えるくらいには回復するわ。・・・やるならすぐに支度しないとね」
「やるのか!やるのか?」
「うーん・・・」
織莉子は一度目を閉じて少し考えた後、イスから立ち上がり、
「いいえ、今回はやめときましょう。また邪魔になったらお願いするわ」
私の頭を撫でながらそう言った。
「わかった!今は、
「そう、野蛮なことは言わないで優雅な時を過ごしましょうってこと」
「でもさ、ほむらを野放しにしておくのも厄介だよな。確かアイツの仲間も面倒なやつばっかだし・・・。ほむらを倒すなら今のうちじゃないかなー、なんて」
「それもそうね・・・今回はあなたの案でいきましょうか」
「ま、どうせ戦うのは私だけなんだけどね」
「嫌?」
「ぜんぜぇーん。むしろ、織莉子の役に立てて大歓迎だよ」
「頼りにしてるわ、キリカ。」
「任せてよ。とりあえず、ほむらの居場所を探るところからだね」
私は織莉子の入れたハーブティーをぐいっと飲みほすとすぐに外へ出た。
「お行儀の悪い・・・。キリカが頑張ってるんだ。私も頑張らなくちゃね」