本屋で五十鈴 れんはとある魔法少女、アリナ・グレイに出会う。
イライラしていたアリナはれんを自分の作り出した結界に入れ、れんを攻撃する。
絶体絶命のそこにヒーローみたく現れたのは深月 フェリシアだった。
ドーンッ!
フェリシアさんのハンマーはアリナさんの手で作った箱をことごとく壊していく。
「諦めろよ!クソーッ!」
「フールガール・・・この程度でブレイクできると思うの?」
一度壊れた小さな箱は四角い破片からまた、一つの四角い箱へ戻る。
フェリシアさんのハンマーの振り終わりを、アリナさんは確実に攻撃する。
「ジ・エンド。」
「フェリシアさん!」
フェリシアさんのお腹から背中へと、箱から放たれたビームが貫通する。
「く、クソ・・・」
「ま、アリナならこの程度の魔法少女を倒すの朝飯前だケド・・・さぁ、次はあなたデスネ」
「戦いたく・・・ありません・・・」
「はぁ?」
「どうして・・・魔法少女と戦わなければ、ならないのですが?」
「・・・全く。あなたもこのクレイジーガールみたくなりたいの?」
そういい、アリナさんは倒れたフェリシアさんを指差す。
「それでも・・・アリナさんは間違ってる!絶対に・・・」
「あっそ。じゃあ、これで・・・」
「喧嘩はやめるの!」
結界に入り込んできた黒い影は私たちの間で止まる。
紫色の髪に、大きな黒い帽子、ハロウィンの仮装のような服を着た女の子。
「はぁ~・・・。またきたワケ・・・」
「アリナ先輩、私が悪かったの・・・。もう許して欲しいの」
「今、アリナはこのクレイジーガールとシャイガールと・・・」
「私が悪かったの!私がアリナ先輩のイチゴ食べちゃったの!」
ハロウィンの服の女の子の話を聞いて、アリナさんは大きなため息をつくと、結界を解いた。
結界が消えると、私たちはいつの間にか文房具屋の建物の屋上にいた。
「フールガール・・・」
そして近くに置いた鞄を持つ。
「もういいわ、アリナ帰る。シーユー」
「帰るの!?・・・待って欲しいのー!」
「あ、待って・・・!」
私はお礼を言うために彼女だけでも引き留めようと声をかける。
「え?」
「ごめんなさい・・・あっ」
『ありがとう』よりも先に『ごめんなさい』と言ってしまう。私は慌てて声が出なくなる。
相手も私を見て慌てる。
「こちらこそごめんなさいなの。アリナ先輩、怒るといつもあんな感じになるの。」
「そうなんですか・・・」
「私は御園 かりん。あなたは?」
「れん・・・五十鈴 れんっていいます、はい。」
「れんちゃん!よろしくなの!」
「よ、よろしくお願いします・・・。」
「・・・わわわ、大変なの!」
かりんさんは、フェリシアさんが倒れているのを私よりも先に気がついて近寄る。
「こんなときはこれで・・・!」
かりんさんはフェリシアさんのソウルジェムに、ポケットから取り出したグリーフシードを使う。
「これで大丈夫なの!安心なの!」
フェリシアさんは目を覚ます。
「ってて・・・あ!あの緑野郎は!」
目を覚ましたフェリシアは飛び起きるとハンマーをぶんぶん振り回した。
「うわわ、いきなりハンマーを振らないで欲しいの!」
「・・・誰?」
「私は御園 かりんなの!」
「オレはフェリシア、よろしく!・・・って、こいつあの緑野郎の仲間じゃねーのか?」
フェリシアさんは一度は握手を求めたけど、事実に気付いてすぐに手を退いた。
「アリナ先輩、怒ってるの。全部私のせいなの」
フェリシアさんの態度にかりんさんは涙ぐむ。さすがのフェリシアさんもその姿には動揺しているのか、魔法少女の姿を解き、かりんさんにハンカチを渡す。
「ありがとうなの・・・ぐすっ」
「で、あの緑野郎は何でキレてんだよ?人に当たるくらいによ」
「それは・・・」
「アリナ先輩・・・今日も部室にいないの。」
私は美術部で、今日も部室でいつもどおり絵を描いてたの。アリナ先輩は私の絵の師匠であって、同じ美術部の部員だったの。
だけど、アリナ先輩はいつも自分の描きたい絵を描いたらすぐ帰ってたの。
でも今日は違ったの。
「イチゴ!・・・これ、私の分かな・・・?」
アリナ先輩は先に食べて帰っちゃったと思ってテーブルの上にあったイチゴを全部食べちゃったの。そしたら、
「フールガール!イチゴ全部食べたの!?」
アリナ先輩はただトイレに行ってただけだったの。
「それで私とアリナ先輩で放課後、イチゴを探してたの。でも、どこいっても売ってなくて・・・」
「こ、ここには、画材を買いに?」
「そうなの・・・。そしたらアリナ先輩がまた怒って」
「あの緑野郎、気が小せーよな!たかがイチゴくらいでさ!」
「・・・あの。イチゴじゃなくて、ショートケーキなんてどうですか?」
「それならアリナ先輩も喜んでくれるはずなの!」
「うっし、なら今から買いにいくぞー!」
フェリシアさんは拳を黒い空に突き出して立ち上がるが、すぐに勢いを失って倒れる。
「その前にご飯・・・」
「あ!も、もうこんな時間・・・怒られる・・・」
「じゃあ、明日集まるの!」
★
「すごい回復力だ・・・今日中には退院できそうだ。」
そう言われて私は病院を出た。
鞄の中にストックして置いたグリーフシードを使って回復した。
親が迎えに来ると嘘をつき、一人で夜道を帰る私はいつ襲われても対処できるように、手のなかにソウルジェムを握りしめていた。
「噂をすれば・・・ね」
私は後ろからの気配を察知し、すぐに振り返る。
「あれ?バレてた?」
そこにいたのは美樹 さやかだった。
「いやー、アンタも誰かのお見舞いかい?」
思わず私は安堵のため息を漏らす。
「・・・美樹 さやか。」
「な、なんだよ、改まってさ」
「・・・なんでもないわ。忠告だけしておく、黒い魔法少女に気をつけて」
「アンタらしくないな・・・。黒い魔法少女の噂は聞いてるよー。神浜で結構被害出てるらしいね。いつ見滝原が襲われるか怖くてたまらないよ。ま、見滝原にはマミさんがいるし、もしものときはあたしや杏子がいるから大丈夫っしょ」
「・・・」
私はこれ以上の会話は無意味だと思い、ちょっと返事をして家に帰ろうとする。
「それよりも、まどかが心配してたよ。ほむらちゃんにここ最近会ってないなー・・・とかね。」
「話を聞かせなさい。」
私はさやかの胸ぐらを掴む。
「アンタ、まどかのことになると釘付けになるよね。ま、たまには会ってあげなよ。神浜の魔女大量発生と、黒い魔法少女は気になるけどさ」
「・・・とりあえず家に帰らせて、今日は家ですぐに寝たいの」
「わかったよ、じゃあね」
「また・・・」
私は静かに寄り道をせずに帰った。
☆
「おはよう、キリカ」
「おはよう・・・織莉子。もう朝?」
織莉子の声が耳に入ってくる共に、美味しい臭いが鼻に入ってくる。
周りを見ると、私はソファーの上で仰向けになって寝ていたみたいだ。
「何言ってるの?まだ夕飯も食べてないじゃない。」
そうだ。私、疲れて寝ちゃったんだ。
「・・・夕御飯は!?」
「私一人で作ったわ。」
「ごめん・・・手伝えなくて。」
「大丈夫よ。ボソッ・・・(キリカの寝顔が可愛かったから頑張れたの)」
織莉子は小さな声で何か言ったけど、私にはよく聞こえなかった。
「その代わり、ご飯食べたらちょっとお散歩に行きましょ。夜のお散歩に」
「いいよ!織莉子とお散歩、楽しみだなー!」
「まずはご飯、今日はハンバーグ作ったみたの」
テーブルの上に置かれた二つの大きなハンバーグを見て、私はお腹が鳴ってしまう。
「あ・・・」
「もう。キリカったら・・・いただきましょう。」
「うん!いただきまーす!」
私はすぐに椅子に座ってナイフとフォークを持った。
夕御飯を食べた私は織莉子と一緒に夜の町に出た。
町と言っても今日は、ビルのそびえ立つ、人や店で賑わううるさい街ではなく、公園や住宅街といった静かな町に。こっちには私と織莉子がよく行く場所がある。
「どうしたの?織莉子から誘ってくるなんて」
公園についたところで私は織莉子に聴いてみた。織莉子が散歩に行こうなんて、滅多に言ってこないから気になっていた。
「ごめんなさい・・・私じゃ魔女一体倒すのも無理みたい」
織莉子は涙を流しながら、私に抱きついてきた。
「今日の昼間、あなたが寝ているときに私は近くに現れた魔女を倒そうと結界に入ったの。でも、魔女を倒すはおろか逃がしたの・・・。キリカばかりに面倒事を押し付けて、私はただ後ろから命令するばかり」
「私は面倒事なんて思ってない!織莉子の命令は神の言葉と言っても過言ではない!」
私は泣く織莉子の涙を手で拭う。
「私は不安で仕方ないの。私に愛想尽かしてどこか消えてしまうんじゃないかって」
「私は織莉子と一緒にいればそれだけで嬉しいし、散歩って聞いたとき、とっても高揚した。織莉子の言葉ならなんでも言うこと聞く!」
「キリカ・・・。ごめんなさい、なんか酷いこと言っちゃって」
「じゃあ、行こう!まだいつもの景色見てないし!」
私は織莉子の手を引っ張ると、公園の奥の夜景が一望できる場所へ走る。
「織莉子、君、生きてたのかい?・・・それにキリカも」
そこには