アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA 作:雨在新人
第一話
ー舞い降りる流星ー
「……デストルーク!」
警報の響くなか現れたのは、10機程の黒い化け物だった
ヨウタは、一週間前を……最初にこの街を襲ってきた時を思い出し、苦々しく奥歯を噛む
あの時は、ファルセイバーというロボットが何とかしてくれた。けれどもあの後、君と融合しても誰も護れない、もう君を戦わせる訳にはいかないと、あの日とは逆の言葉を告げたファルセイバーは機体を何処かへ消し、黙ってしまったのだ。ユキの石を通して今も会話は出来る。だが、何も語ってはくれない。だから、何か知ってそうなナガセPに会えば何か事態が変わらないかと探していたのだ
けれども、一週間経てども出会うことは出来ず、ファルセイバーは黙ったまま、二度目のデストルークの襲来を迎えてしまった
「どうしよう、ヨウタ」
腕は離さず、ユキが少し心配そうに問う
ファルセイバーに関しては何も言わない。目の前に、
「に、逃げないと」
藍子が動こうとし……
此方を見ている気がする一機に、気が付いた
「君ではとか言ってる場合じゃないだろ、ファルセイバー!」
考えてられず、ヨウタは叫ぶ
けれども、あの日輝いた石は、静かに光を反射するだけ
ビームが放たれる。だが、それは此方へ向けてでは無かった。街へ向けて放たれたそれは、ビルを撃ち抜き、多くの窓ガラスを割り、その一部を地面へと崩れ落ちさせる。その瓦礫の下になって、避難のために乗り捨てられた車が修復不能な程に潰れた
「くっ、ファルセイバー」
その瞬間、されども響いた爆発音は、デストルークの黒い機体からのものだった
『な、何だ!?』
黒い機体から、驚く声。デストルークにとっても、その一撃は予想外だったのだろう
『悪いが、お前達は此処までだ』
其処に立っていたのは、フォトン・ライフルを構えた一機の巨大な影。白いPTだった。その全体的な姿はヨウタ達も何度も空を飛行する姿を見掛けたことがある軍でも正式採用された緑のロボット、量産型ヒュッケバインMk-Ⅱに酷似していて、けれども明らかに違う場所がある巨神。本来は頭部バイザーに隠れているはずのツインアイが黄色く点灯する。白い巨神はその背に背負われた巨大な日本刀……参式獅子王刀、シシオウブレードを背部ジョイントから鞘ごと取り外し、左腰にマウントし直した
明らかな特注機。ヨウタの知る量産型ヒュッケバインはツインアイではないし、シシオウブレードなんて装備も無い。けれども、何だかんだ有名な特集部隊にも、白い
『とっとと去るが良い、デストルーク。此処は、私の……そしてお前らの世界ではないのだから』
外部回線を通して、白い凶鳥のパイロットらしき男が吐き捨てる
それが、戦いの合図だった
背に背負った浮遊機関……テスラ・ドライブを駆動させ、凶鳥の名を持つだろう白い巨神が浮かび上がる
『結局は一機だ!』
『教えてやろう。機体性能の差は、数の差を凌駕する決定的な差だとな』
数を頼みに、デストルークの黒いロボットは、その腕に装備されたビーム砲を凶鳥へと向ける。だが、飛行する相手に向けて直ぐには的を絞りきれない。腕はフラフラと白い機体を追い続け、なかなかビームを放てない
とはいえ、逃げ回らなければいけないのは白い凶鳥の側。止まれないならば、此方も攻撃行動には移れない
「ファルセイバー」
膠着状態を見てヨウタは、ユキの耳元でささやくように、もう一度その守護者を呼ぶ。膠着を打ち破ろうという意志を込めて
「駄目だ、ヨウタ」
だが、石から漸く響くのは否定の声
「君の体は、私との融合に耐えきれないかもしれない。君の適正はあまり高くない。そんな君を戦わせる訳にはいかない」
ヨウタがこの一週間で何度か聞いた何時もの否定
「それに……彼に手助けは不要だろう」
その声に、ヨウタは再び、空を見上げた
空気を裂く音と共に、突如白い凶鳥を追うデストルークの前に光が現れる。それは、緑色のビームを纏った、水色の円形ブーメラン
『空間湾曲!リープ・スラッシャー!』
『んなっ』
突然の事に、デストルーク達の統率が乱れる。爆発に気を取られ、機体が敵ではなく
明らかな隙。均衡は確かに崩れた。数的に明確な不利であったはずの、白い機体の方へ
『チャクラム・シューター、GO!』
その作り出した隙を、凶鳥は逃しはしない。その左腕に装備されていた小型の有線ビームチャクラムが加速され放たれる。それは隙を見せた一機の周囲を飛び回ると、線でもって絡めとり……
『そこっ!』
硬質の有線で切り裂くのではなく、凶鳥の腕の振りに合わせて黒い巨体を投げ飛ばす
『な、何だなんだ!?』
同僚と激突させられ、混乱する黒いロボットの乗り手達へ、解答として凶鳥はシシオウブレードを抜き放つ。機械故の正確さで投げ放たれたそれは、目測を誤ることなく二機を纏めて串刺しにした
『鋼鉄粉砕!シシオウッ……ブレェェェェェド!』
凶鳥はそのまま加速、自身を狙うデストルークの露払いは未だ飛び回るリープ・スラッシャーに任せて串刺しにされた二機へと突撃する
『デッド・エンド・流星斬りぃぃっ!ってな!』
そのままシシオウブレードの柄を掴み、刃の方向に合わせて斜め上へ切り上げ、返す刀でもって傷口を抉るように切り下ろし。その二太刀でもって、二機のロボットを両断した
『『バ、バルギアスさまぁぁぁっ』』
当然のように、両断された二機は爆発。その爆発に追い討ちをかけるように凶鳥は頭部に仕込まれたバルカンを放つ。脱出しようが逃がすまいとするように。ヨウタ達が白い凶鳥に見惚れている間に、両の腕をブーメランに斬り落とされた一機が爆発した
「頑張れー!白いロボットー!」
呑気に、ヨウタの横でユキが応援する声が聞こえる。気が付けば、10機は居たはずの黒いロボットはみるみるその数を減らし、気が付けば6機まで減っていた
「あ、あれ?本当に助ける必要がない?」
だが、その声によってヨウタ達の存在を確認したのか、凶鳥を追うのを止め、一機のロボットがヨウタ達を狙い……
『ちっ』
更なる追撃を中止し、凶鳥は動きを変える。一直線にヨウタ達の方へ
逃げ遅れた……というか、逃げ忘れた彼等をその巨体で庇うように
その背部に、ピンク色のビームが突き刺さる。いや、刺さっては……いない。その直前で、凶鳥を覆う謎のフィールドに阻まれた
だが、その動きは止まる。幾らフィールドで防ぐから自分は無事でも、動けば後ろのヨウタ達に被害が及ぶから
「どうしよう、わたしのせい?」
「ど、どうすれば……逃げないと」
女性陣が、突然の危機に混乱する中、ヨウタ一人は冷静だった
「ユキ、石を貸して逃げてくれ」
「あげないよ?だから返してね、ヨウタ」
生きて帰って、と言外に言って、けれどもユキは大人しく藍子を連れ、白い凶鳥が護ってくれている間に路地へと逃げ込む。見つかりにくいように、ターゲットにされにくいように
「ファルセイバー。俺は言ったよな
父さんが居ない間は、俺が家族を護る。それが父さんとの約束だって」
ユキから預かったペンダントに、ヨウタは言葉を掛ける。不可思議なフィールドは、揺らぎながらも残っている。回り込もうとするデストルークは、飛び回るリープ・スラッシャーがまだ牽制してくれている。だが、1vs6では、流石にリープ・スラッシャーを使ったとしても全員のビーム照射を止められない。逃げるユキ達には狙いを付けさせないのが精一杯だろう。凶鳥は動けない
「ヨウタ、だがそれは」
「それは俺にとって、他人に任せられるようなものじゃないんだ」
「だが、君との融合は」
「あの日は戦えた」
「あれは、幾つかの幸運が重なっただけだ。融合出来ても、君は戦い抜ける程の適正は無い」
『……ファルセイバー、本当にそうか?』
外部スピーカーを通して、白い凶鳥のパイロットが言葉を掛ける。今までとは……恐らくボイスチェンジャーを切ったのか別の声
「……君は」
「カムイさん……」
その声は、392プロダクションの神威流星のものだった
『ファルセイバー、あの日ヨウタを認めたから手を貸した、違うか?』
「だが、戦いを続ければヨウタは」
「そんなので諦めてたまるか!」
ヨウタは、それでもと叫ぶ
「お前と一緒に戦う事にハンデがあるとしても、それを乗り越えられるだけの男に変わってみせる!」
ナガセ・カムイの戦いは鮮やかだった。誰かを……ユキ達を護る必要がなければ、あのまま勝っていただろうと思うほどに。だから、そんな相手を目の前にして、今の自分はまだまだでも、そうありたいと心からの声をぶちまける。無力感からも来る、自分の手で大切な皆を護りたいという叫びを隠さずに
「使命があるなら、それを果たすまで一緒に戦い抜いてやる
だから……っ!」
「お前も、力を貸してくれ、ファルセイバァァッ!」
連続稼働を続けて残存エネルギーが底をついたのか、リープ・スラッシャーが6つの扇形のパーツに分かれ、背部のシシオウブレード用ジョイントへと接続される。リープ・スラッシャーの脅威から解き放たれ、残されたデストルークが動きを再開し……
『ペンタクルショット!』
その先頭一機が、エネルギーの弾を受けて爆散した
伊達隆聖とガオガイガーさん御免なさい。けれどもシシオウと聞いてやらずにはいられなかった
参考楽曲:勇者王誕生!