アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA 作:雨在新人
「やあ、高森さん
今日はどうしたんだい?仕事は、無いだろう?」
全体練習の翌日
392プロダクション二階で一人プロデューサーの部屋から拝借したものを手に寛いでいた飛鳥は、自分の事を棚にあげてそう呟いた
「飛鳥ちゃん
実は、プロデューサーさんにお願いがあって」
「プロデューサーに、かい?」
「ちゃんと直接言わないとって思ったから」
藍子が言葉を続ける中、ふと飛鳥のスカートのポケットで、スマートフォンが振動した
開いてみると、プロデューサーからのメール。件名は、【緊急】全体連絡
「……これかい?」
「はい、たぶん」
ならば、と多少の好奇心と共に、飛鳥はメールを開く
「……今更、だね。けれども、悪くない話さ、これは
歓迎するよ、高森さん」
読み終えて、飛鳥は呟いた
内容は、非常に簡単な事。高森藍子が大事業……つまり、軍部の慰問ライブに追加参加を表明したということ、それに合わせてのスケジュール変更等々の連絡だった
「ふふっ、何だか、昨日からやりたくなっちゃって」
「恐かったんじゃないのかい?」
「はい。今でも怖いけど……」
と、藍子は飛鳥が弄っていたものに眼を止める
「それって」
「ああ、これかい?
プロデューサーから借りたものだよ」
そのブツの胴部を持ち、壊さないようにして飛鳥は軽く振ってみせる
その手から鈍く光るものがこぼれ落ち……けれども、結局はメッキしたプラスチック、机には刺さらずに跳ねた
「……折れてませんよね?」
「多分、ね」
そう言って、飛鳥は腕を伸ばし、机上に落ちたもの……1/144参式獅子王刀を拾い上げる。借りてきた最初から装備されてはいたけれども明らかにオーバーサイズなそのプラモデルの刀を、白いプラモデルに持たせなおす
「プロデューサーさんから、借りてきたんですか?」
「参考にしたいといったら、貸してやるから好きなものを持っていけと言われてね
奥に隠していたこれを」
と、今度は落とさないように飛鳥は指だけ指しす
「借りてきた訳さ」
「飛鳥ちゃん、楽しそうで……」
藍子が、ふと頭を抱える
額には汗、噛み締めた唇が震え、歯が軽く当たって音をたてる
「……飛鳥、ちゃん」
数秒の後、藍子はゆっくりと、飛鳥へと問い掛けた
「どうしたんだい、高森さん。顔が青い」
だが、その空気は一瞬にして崩壊し、元の何でもないものへと戻る
「あれ?何でしたっけ?」
「プロデューサーさんに関して、何かはっと気がついた事があったような……」
「……呼んだかい?」
その声は、背後から聞こえた
「「プロデューサー?」」
「ああ、そうだ」
「どうしたんだい?君らしくもない」
「いや、それがね」
問い掛ける飛鳥へ向けて、飛鳥の知る限り仕事以外来ることがほぼ無い彼には珍しくアイドル用にと用意した2階へと降り立ったナガセPは、手にした銀のタブレットをくるりと回し、二人へと向けた
「唐突に仕事が決まった」
「プロデューサー、突然だね」
「そうとも。突然さ、飛鳥。テンサイというものは気紛れなもの。どんな天才も、天災も、その動きを推し量ることなんて出来やしない」
「それで、プロデューサー」
「そんな天才の一人が、知り合いでね
それはもう唐突に、私に話を投げてきたという訳さ」
やれやれ、と老けたその青年は首を振る
「彼女にも困ったものだ。収録自体は今週って、何だそれは早く言えと」
「……彼女?恋人さんか」
「違う!
……私は、あの人についてはいけないよ。そこまで私の頭は、人間を止めてはいない。彼女も知っていて、私で遊んでいるだけさ」
「その彼女とは?ボクはサイキックではないんだ、言われなければ、伝わらない。最も」
「言葉にしたら伝わるなんてものは幻想、か?飛鳥
それは一理あるけれども、流石に今回は伝わるさ、絶対にね」
「それで、誰なんですか?」
「346プロダクションの誇らない制御不能、失踪複数回の前科を持つ天才児、一ノ瀬志希さ」
「……クイズ番組への出演?」
ナガセPから言われた仕事内容に、飛鳥は目をしばたかせた
「本当かい、プロデューサー」
「本当だ」
「テレビ出演じゃないか。突然にもほどがある。まだ、ドッキリ企画だと言われた方が自然だね
だってボク等は、テレビに出たことは無いだろう。そんな企画が」
「来たから困っているのさ」
言って、ナガセPはタブレットに表示された資料を見せる
「……確かに」
「指定は三人一組、向こうから既に誰を出すかは言われている」
「それで?」
「あのニュージェネレーションとぶつけたいらしくてね。対応するようなアイドルを、という話さ
飛鳥、出れるか?」
「……ボク、かい?」
呆けたように、飛鳥は聞き返す
「そうだ。蒼の少女渋谷凛、彼女に家で対抗しようとすれば、妥当な線だろう?アナスタシアは似合わないからね」
「……残り二人は?」
「……高森藍子、そして……」
「ナナですね!」
その声は、扉の後ろから聞こえ
「違う。というか、ナナ、新米アイドルがNGsに挑むクイズ企画でナナが出てどうするんだ」
即座に、ずっこけた自称17歳が見えた
「じゃ、じゃあ誰が……」
「……幸子だ」
事も無げに、ナガセPは告げた
「まあ、分かる判断だね」
「プロデューサーさん、これって」
「……断れる。今週やるから、ではいそうですかと調整が効くか!と言えば何とかなるだろう
……幸子は参加するだろうし、二人次第だ」
「参加するよ、プロデューサー
これは、好機だしね」
「はい。私も」
「……有り難う、二人とも」
安堵したように、ナガセPはふっと息を吐く
「何とかなりそうだ」
「……あれ?ナナを呼んだ理由は?」
「別件
悪い、ナナ。ウサミン星について何か知らないかと聞いて回ろうとはしたんだが……」
ふと、青年は眼を遠い空へと向ける
「そもそも、
「……プロデューサー、まさかウサミン星なんて信じてるのかい?」
「う、ウサミン星はありますよ!遥か銀河の何処かに」
「電車で向かえば一時間、じゃなかったのかい」
「それはナナの家です。ウサミン星人であるナナの居る場所、すなわちそれは出張ウサミン星」
「……いや、飛鳥」
そのナガセPの声は、何処までも真面目だった
その目に悪戯っぽい光はなく、しっかりとしていて
「
その日、二宮飛鳥と高森藍子は理解した。自分をアイドルにした物好きなプロデューサーは、やはり阿呆だと