アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA   作:雨在新人

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アイマス要素は何時もの行方不明です


神威流星ー流れ星の記憶・Ⅰ

『止めに来ましたか……ナガセ・カムイ

 けれども、全ては遅いのです』

 威厳ある女性の声が、傷付いた空中要塞に響き渡った

 

 「……は?」

 飛鳥は……その光景に、思わず口を閉じることも忘れ、ただ呆けた

 理解が追い付かない

 これは……かつて地球上であったというバラル……地球人類を全て仙人に変える事で人間同士の争いを永遠に終結させようとした者達との決戦、その場そのものであった

 飛鳥には見たことなど無いが、要塞上に両断されたり大穴を空けて横たわる三匹の白い僕(クストース)……即ち白い獣(ザナウ)白い鳥(カナフ)白い魚(ケレン)は、飛鳥もニュースで何度か見たことがあるバラルの化け物だ

 

 『……イルイ!いや、ナシム・ガンエデン!止めろ!』

 叫ばれる声は、ナガセPのもの。今よりは、少し若いだろうか

 その彼が駆る鋼の巨人は、まるで巨大な外装を着込んだかのよう。一応、飛鳥自身も見たことはあるものに良く似ていた。エクスバインボクサー。巨大な剣となる外装を着込んだ存在に

 だが、その姿は何処か異なる

 そして、対峙するのは巨大な女神。女神像のような姿を持ち、天使の如き羽根を持つ巨神。バーニングPTのアーケードモードで見たことがある、母なる星の守り神(ナシム・ガンエデン)

 

 『雀武()を喪ったあなたに何が出来るのです』

 『少なくとも、アンタを止められる、バラル』

 『反旗を翻した四神は滅び去りました

 それこそが』

 『応龍が……四霊の超機人なんてものが付いて居ながら、四神等にここまで追い込まれる事自体が!』

 『『その手段が間違っている事の証明!』』

 互いを否定する声が共鳴する

 『だから、四神の想いは俺が継ぐ!お前を止めてやる、ガンエデン!

 この……R-BLADEで!』

 

 『まだ行けるだろう。今回だけで良い、持ってくれよR-BLADE!』

 『ナガセ!』

 『リュウ!状況は、天上天下次元無双剣は行けるか?』

 『ダメだ……』

 『リュウ!』

 『……アヤが、応答しない』

 『R-3パワードは』

 『大破した』

 『クソッ!』

 

 ……状況に追い付けない

 アヤとは?そもそもリュウとは多分あのSRXのパイロット、伊達隆聖の事だろうが、彼とナガセPが知り合い?

 「何なんだこの夢」

 「さいきっくどりーむ!」

 一緒にナガセPの夢にダイブした栗色の髪を後ろで纏めた少女、堀裕子がそう返す

 「ボクには訳が分からないね

 確かに、プロデューサーの過去を見たいとは言った。けれども、こんな妄想を見たいだなんて……

 やっぱり、キミのさいきっくはアテにならないね」

 「むむむーん!さいきっく」

 「いや、無理しなくて」

 

 ふと、景色が一瞬捻れ変わる

 いや、変わってない。場所、は

 『天上!』

 『天下』

 『次元!』

 『『『無双剣っ!!』』』

 変わったのは状況。飛んだのは時間

 空間を引き裂き女神像を護るバリア内に突然出現した両の足と片腕を喪った割れたゴーグルの戦神は、その残された右腕に握った巨大な剣で、確かに巨神を斬り裂いた

 

 更に世界が捻れる

 『……誰かが、残らなければいけない』

 『けど……』

 『……悪いな、リュウ。R-BLADEの変形機構がぶっ壊れた。XNモードに飛行能力は無い。だから、そもそも俺は脱出なんて出来ない

 俺が残る、行ってくれ、リュウ』

 『SRXで運べば』

 『止めろ、お前達まで死ぬ気か

 そんな自分が飛ぶだけで限界なボロボロのSRXで運べる訳が無いだろう

 ……未来を、頼んだぞ、リュウ』

 その瞬間、ボロボロの戦神の姿はかき消えた

 

 『これが、XNディメンション最後の転移……悪いな、リュウ、ライ……アクセル……。アーニャ……』

 『……あなたは、何を』

 『アンタが切り捨てようとしていたイルイとしての部分を、リュウと一緒に飛ばした』

 『それで、自身も脱出を』

 『無理だよ、ナシム

 自分が助からない事は、誰よりも俺自身が分かってる。アンタの攻撃で、腹から下吹き飛んでてさ、持つ訳無い

 それに、誰かがガンエデンに貯まった念を抑えなければ、封印は発動してしまう

 

 それに、怪しい念も混じってるしな、一人じゃ抑えきれないだろう?

 ……何、地球の守り神と共にってなら、悪くない終わりだ』

 そう告げる彼の機体……ガンエデンに突きたったままの剣のコクピットには、どうしようもない裂傷が見て取れる。中のパイロットは無事で済むはずがない

 『最後に役目を果たさせてくれ、その想い、信じたさ、ナシム』

 『ナガセ・カムイ……』

 『星の守り神というなら、信じてやってくれ、リュウを……此処に来れなかったアラドや、そしてゼンガーさんの事を

 彼等が、この星を護る鋼の戦神だって』

 『……』

 『アーニャ。お前は、これより酷かったんだよな……

 御免な、何も出来なくて

 ……やっぱり、さ。少し……怖い、な』

 その言葉と共に、飛鳥の視界を超規模の爆発が埋め尽くし……

 

 

 

 「……起きたな、寝坊助」

 「事務所で寝ていたキミに、言われたくはないね」

 飛び起きた時、飛鳥の体は事務所にあるベッドの上であった

 「……此処は」

 「私のベッドだ

 仮眠室が無くて悪かったな」

 「だからキミよりは真っ当さプロデューサー。泊まり込みで仕事しているから、キミの部屋はこのビルにある

 だというのに、机に突っ伏していたキミよりは、ね

 

 ブラック企業の真似事かい?」

 「……何を見ていたんだ、飛鳥?」

 「大したものじゃないよ、プロデューサー」

 「大したものじゃない、か

 そんな汗をかく夢が、大したものじゃないとは私には思えない」

 ぽふりと、飛鳥の額に何かが被せられる

 冷たく濡れたタオルが、汗ばんだ額に心地好い

 

 「何より、起きてみたら近くのソファーに倒れて寝息をたてていたんだ、何があったとなるだろう?」

 「別に?ボクの行動は関係ないだろう?」

 「関係は無いな。けれども担当アイドルを心配する権利はあるんじゃないか?」

 

 どう答えたものか悩む飛鳥の脳裏に、ひとつの事が思い出された

 アヤ……アヤ・コバヤシ。彼女はあの夢で見た戦神SRXを構成する巨大兵器R-3パワードのパイロットであること。そしてその彼女は、バラルとの決戦で死んでなどいない事を。健在だと言うことを

 

 「何でもない。単なる突拍子も無い悪夢さ

 キミだって見るだろう?」

 「悪夢を見るのは疲れや不安からだ

 良くなるまでベッドは貸す、ゆっくり休め。明日は突然のクイズ番組だから、な」

 ことりと枕元に置かれるのは、ミルク入りのコーヒー缶

 

 「……プロデューサー、ひとつ良いかい?」

 「何だ?」

 「ボクがボクと呼ぶようになったように、キミも私と呼ぶようになった契機はあるのかい?」

 「急にどうした?」

 「いや、悪夢にはキミが出てきてね

 そこでの違和感のあるキミは、自分を俺と呼んでいた」

 「プロデューサーを目指す際に矯正したから私なんだ

 昔は、俺だったよ」

 「そういえば、キミが突っ伏していた理由ははぐらかされたままだ」

 「二徹しかけたから、移動すら面倒になった、それだけさ

 飛鳥もゆっくり休めよ」

 それだけを言うと、ナガセPは部屋から出ていく

 

 後には、飛鳥だけが残された

 意図せず初めてまともに見る、プロデューサーの部屋

 殺風景のような、そうでもないような部屋だ

 物は少ない。私物と言えば机の上に写真が飾られていること、二冊のアルバムがその横に置かれていること、そして棚に大量のプラモデルが飾られていることくらいだ

 

 悪いとは思いつつもプロデューサーの香りが僅かに残るベッドから降り、飛鳥は家捜しを始める

 恋愛的好意(嫉妬)からではなく、不信感から。神威流星という男を知るために

 写真は幼い頃撮ったものらしく、映っていたのは少年とロシア人らしい少女、そしてその親らしい夫妻

 ひとつめのアルバムを開く。目に飛び込んできたのは、一つの集合写真

 小樽響導学校、第18期生卒業写真と、其所にはあった。映っているのは軍服らしきものを着た100人程の若い青年

 

 「軍学校卒……ますますキミが分からなくなったよ」

 そんな飛鳥の家捜しは、そのすぐ後に音楽プレイヤー忘れた、と戻ってきたナガセPによって中断を余儀なくされた




天上天下次元無双剣
SRXとR-BLADEの合体攻撃。大剣(XNモード)に変形した状態でR-BLADEがXNディメンションを起動。SRXのトロニウム出力にものを言わせて次元を斬り裂いて転移、そのまま大剣を叩き付ける。エネルギーブレードを伸ばして凪ぎ払う事も出来るが、広域攻撃ならば一撃必殺砲で良い為、転移を絡めた対大物用の合体攻撃である。単純火力では天上天下一撃必殺砲に負けるものの、奇襲性や取り回し、そして一転突破力で勝る
SR-アルタード(バンプレイオス)が未完成の中、SRXのままレイオスプランを完成させようとしたものであり、XNディメンションは支援機であるR-BLADEに搭載されている。本来の武器名はトロニウムディメンションソードなのだが、メインパイロット二人がリュウセイ病なので天上天下次元無双剣と呼ばれている

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