アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA 作:雨在新人
「フフーン!やっぱりボクのカワイさは誤魔化せませんね!」
訪れたことも無いような大きなスタジオ。此方を振り返るスタッフ達を思い返しながら、控え室で輿水幸子はあまり無い胸を張った
「そう騒ぐものでも無いさ」
「そうは言いますけど二宮さん!なんたって大チャンスですよ大チャンス!カワイイボクのカワイイ姿を知らないなんて大損していた人達に、ボクらを知らせることが出来るのに、落ち着いていられますか!いられませんよね、ねぇ!」
けれども、横の同い年のアンニュイっぽく振る舞う少女……二宮飛鳥は憂いを見せる
「主役はボク達じゃない。この中で、ボク達の活躍を望む者なんて居ない
誰にも望まれることの無い……」
「少なくとも、私は望んでいるのだけれどもね
勝つなとは言われていないのだから、いっそ宣伝の為にも勝ってしまえと、ね」
「……プロデューサー」
「そう、だから誰にも望まれないなんて話は無いさ、飛鳥」
「ちょっと、ボクも、ボクも誉めて下さいよ!」
「幸子、お前は元からカワイイからアンニュイな空気なんて出さないだろう?だから無くても大丈夫だ」
「そうですよね、ボクは心配される必要が無い程にカワイイですもんね!
まあ、二宮さんだって、ボク程じゃなくても心配要らないカワイさですけどね」
フフーンと、幸子は得意がる。不安に潰されないように
「さて」
会話が途切れた時、ナガセPの手には3つのイヤリングが握られていた
桃色、青、そして黄色。三人に合わせた色の、形状の全く同じイヤリング
「……プロデューサー、それは一体なんだい?」
「これを、渡すかどうかを考えていた」
「目立たせる為の差し入れですね!まあ、このボクは何にも着けなくても十分カワイイですけど!
それでも、プロデューサーさんが着けたほうが絶対にカワイイから着けてくれって頼むなら、付けてないあげないことも無いですよ?」
さあ、さあ、と多少の期待を込めて幸子は自分のプロデューサーを見上げる
「どこまで本気で、勝ちに行く?」
「プロデューサーさん。その事と、関係はあるんですか?」
「あるよ、藍子」
言ってナガセPは、代表として飛鳥にイヤリングを渡す
「耳に押し当ててくれ」
「全く、キミは……」
苦笑しながら飛鳥は耳に青いイヤリングを押し当て
「っ!?」
びくっと、体を震わせた
「……声が……」
「声が、何なんです飛鳥さん」
「声が、聞こえたんだ。此処に居ないはずの声が」
「はい?」
「そう。芳乃に実演してもらったけれども、こいつは振動通信機になってるんだ
音声ではなく微かな振動でもって、此方から声を周囲に洩らさず伝える」
ニヤリと、ナガセPは人の悪い笑みを浮かべた
「さて、こいつ……使うか?」
「ズルじゃないですか!」
「それは、不正ではないのかい、プロデューサー」
「そうです、こんな事して」
「良いんだよ。本気で勝ちに行くなら、な」
人の悪い笑みは収めず、ナガセPはアイドル三人の抗議を受け流す
「そもそも番組自体が新人アイドル、NGsへの挑戦って事で私達にはNGsの引き立て役を期待されている。露骨に負けろという指示までは来ていないが、番組を作る側としては、出来ればNGsに勝って貰って宣伝したい、という意図がある」
「なら、何だと言うんだい」
「NGsの解答席には答えの表示機能が仕込んである。まず勝てるように、な」
「いや、そうかもしれませんけど」
「『にゃははー、見抜かれたかー
デッドヒートするなら、同じ土俵に立つのも良いかにゃー。そんな事より、臭い嗅がせて』
と。言質は取った。流石にあの一ノ瀬志希を誤魔化せるとは私も思っていなかったからな。許可を取りに行った」
「それでも、ボクは正々堂々と行きます
卑怯じゃないですか!それに、ボクだってズルしなくても」
「問、ハイペリオンの型式番号を答えよ」
「は?」
幸子は、突然の言葉に固まり……
「XAM-008-HIだ。バーニングPTの機体解説欄に載っている」
淡々と、ナガセPは返した
「プロデューサー、キミが言いたいことは分かるさ。けれども、この問題はそもそも出るのかい?」
「出るよ。鋼の救世主、鋼龍戦隊。若い子の興味を引くには良いジャンルだろ?
ミリタリー、鋼龍戦隊。此処等は選択ジャンルとして出る、確実に」
「……そう、ですね」
少し考え、そうかもと幸子は頷く
「……もし、もしですよ?ボク等がこれを使えば、勝てますか?
もし、ですからね!」
「勝てるさ。ジャンル:鋼龍戦隊なら
相手が問題文を読みあげきる前に表示された答えを言って完封、レベルのみえみえの不正をやってこない限り
エルザムさんやライといった鋼龍戦隊の中でも知識があって天才側な人間相手なら兎も角、今回のクイズ大会はチームNGsと私達チーム392、そしてレギュラーのチーム老害とチーム若手の2チーム。負ける気はしないな」
「でも。ボクは自分の力で勝ちたいですから」
少し考え、そう幸子は決めた
「良い答えだ。それも、ひとつの勇気ある選択さ」
「私も、負けても自分達で頑張りたい」
「そう、だな。それで良いよ、藍子。言質は取ったけど、不正にはちがいないし」
ぽんぽん、とナガセPは二人の頭を柔らかく叩いた
「プロデューサーのプライド、持っていくよ。キミから個人へのプレゼントは珍しいしね
ただし……」
「ジャンル:鋼龍戦隊以外口出しはしない。それで良いか、飛鳥」
「それで良い」
押し当てたイヤリングは返さず、耳に付けながら飛鳥は頷いた
扉が叩かれる。出演の時間が、訪れる
「行ってこい、初めての晴れ舞台に
……ライブでは、ないけれどもな」
「フフーン!やってみせますよ、なんたってボクはカワイイですから!」