アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA 作:雨在新人
そうしてクイズ大会は……
結局の所、チームNGsの勝利に終わった。自力で挑んだ幸子達だったが、支援を受けたNGsには勝てなかったという、それだけの話である
「ほー。皆、しっかりと集まっていますなぁー」
そんな声と共に、スタジオにふらりと現れたのは一人の和装の少女。その服装はこの場には不釣り合いで、けれどもそれを気にしていないように、スカートよりも地面近くでひらひらとする若草色の布がコードに引っ掛からぬように器用に、そしてマイペースに歩み寄ってくる
「芳乃さん
……負けちゃいましたけどね」
「しかしなれど、皆は十分に、頑張ったのでしょうー」
「プロデューサーさんが半分以上答えてましたけどね」
苦笑する藍子
「今度はこのカワイイボクが、自分の力で何とか勝って見せます!なんたってボクはカワイくて努力家ですから!」
ふんす!と桃色の髪の少女は暗い雰囲気を吹き飛ばすように、わざとらしく奮起する
けれども、空気は変わらなかった
「……プロデューサーは、何処へ行ったんだい?」
そんな空気の中、未だに姿を見せないナガセPの存在に、飛鳥はそう彼がもっとも信頼しているらしい少女に問い掛けた
絶対的なエース、この事務所が事務所として成り立つ最大の理由、そして飛鳥でも素敵だと思う大人の女性……高垣楓よりも、何故か彼は飛鳥と二つしか違わず、外見的には同年代であるどこか浮世離れした少女に信頼を置いている。いや、プロデューサーを演じているという、飛鳥と似た空気を纏っている。それが剥がれるのは、ふとした時か……少女、依田芳乃の前だけ
「知りたいのでして?」
「当然です!」
幸子も、その話に乗ってくる
「覚悟は、ありまして?」
その声は、何時ものんびりとした口調の少女はにしては、短く、重いものだった
「か、覚悟ですか?」
「あの方の居る世界は、暗く、熱く、そして独りぼっちなのですよー」
「……本当かい?」
「飛鳥さんも、同じような心をお持ちではー?」
少女はこてん、と首を傾げる。その頭で、リボンのような布が微かに揺れた
「でも、芳乃ちゃんは」
「藍子さん
あの方の居る世界は、依田は芳乃では、辿り着けない場所でしてー。わたくしでは、見守る事しか出来ませぬ」
「……その場所とは、何処だい?」
「鋼の救世主、人々の希望。なのでして」
その言葉に、ふと、飛鳥は思い出す
そういえばあのプロデューサーは、ゼ・バルマリィ帝国、アインスト、シャドウミラー等遥かな世界よりの敵が降り注ぐこんな時代だからこそ、人々の希望は必要だと言っていたな、なんて事を
「プロデューサーは、戦意ではない、生きる勇気。それをアイドルが為す、なんて言っていたね」
「そう、それです!ボクもそうスカウトされました」
「自分にはそれが出来ない。あの方はあいどるには向いておりませぬー。だからこそ、あの方は思うのですー
鋼の戦神達が未来を切り開き勝利する日まで、勝った後の希望を護るものであろう、と」
「それは……」
「なんて、お話をあの方と考えてみたのですが、
突然のオチに、思わず飛鳥はずっこけかけ、何とか踏みとどまる。けれども大体リアクションがオーバーな幸子だけは、盛大にすっ転んでいた
「如何でしょうじゃありませんよ!信じかけてしまったじゃないですか!」
「これはすみませぬー。気分を晴らすには、気の効いた会話が良いかとー
ですがー、楓さんの様にはいきませぬなー」
くるりと背を向け、和装の少女は歩みを始めた
「では、帰りましょうー
楓さんが、スタジオ前で待っておりますのでー」
言葉通りに待っていた楓と合流、かの方から事後処理を任されておりますのでーと其処で芳乃と別れ、家路に就く
……いや、就かない。飛鳥は、忘れ物と拙い言葉を紡ぎ、一人スタジオに戻ってきていた
直感していた。プロデューサーについて知りたくてさいきっくで見た彼の夢は、現実とは多大な矛盾を生じていて。けれども、あれが嘘だとは思えなくて
そうして、不思議と迷い……一つの場所に辿り着いていた。B1までしか無かったはずのスタジオの、B3階。どうやって辿り着いたのか、ぼんやりとした記憶しかない。まるで、ナガセPと骨董品屋に行ってみたあの日のように、少し前までの自分の行動が霧がかかったように朦朧としている
そうしてそんな謎の場所に立つ目の前には……にゃははと笑う白衣の女性が一人、椅子に座って笑い転げていた
ふと、事態を確認するために飛鳥は周囲を見回す
見つかったものは4つ
明らかに最先端の科学で用意されただろう謎の部屋
同じく目をぱちくりさせる藍子
柔らかく微笑む芳乃
そして笑い転げる……一之瀬志希
「にゃははー、怒られるよー芳乃ちゃん」
「予想済でしてー。飛鳥さんと藍子さんはあの方の真実に近いお二人、きっと来るでしょー、と思えたのですー」
「……なんだこれ」
呆然と、飛鳥はぼやいた