アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA 作:雨在新人
『カムイさん!』
『ヨウタ、この機体はまだ飛べるようだ
手間をかけさせた、復帰する!』
回線を通して聞こえてくるのは、飛鳥と……そして藍子にとっても聞き覚えのある声
「ヨウタさん、でしたよね」
「そう、ヨウタ・ヒイラギ。あの白い騎士の融合者さ
藍子、飛鳥。今更隠す事でもないから言っておく
私の真実はこんなもの。結局のところ、戦畑でしかまともに生きてはいけない出来損ないプロデューサー。だから、彼を自身の城に……392プロダクションに抱き込む。アシストとして、そのうち顔を合わせる事になるだろうから、その辺りは心に留めておいてくれ」
「随分と勝手だね、プロデューサー」
「そもそもプロデューサー業自体が、この手の届く範囲に居て欲しいというワガママでやっているもの。エゴイストとして当然の判断な訳だ、これがな」
「芳乃ちゃんも?」
「芳乃様は、ちょっと違う
あの方だけは、この私の根幹を知り、392を作ってくれた共犯者という訳さ、これが、なっ!」
加速、そして急旋回
アステールの名を持つ流れ星は、その力を解放し、襲い来る紅の巨体の真横をすり抜ける
「スピキュール、Go!」
そのまま、マイクロミサイルをばら蒔き、駆け抜けた場所に居る巨体を爆撃、動きを止める
「プロデューサーさん、凄い」
「話は全部終わってから、な
まあ、こいつ自体私用に調整したものだから、動かせるのは可笑しくないさ」
「でも、これで勝てるんですよね?」
「いや、無理だ」
「プロデューサー、彼女は、キミの共犯はいける、と言った
それは嘘なのかい?」
「嘘じゃないさ、飛鳥
君達二人ならば……アステリオンAXSの本領を発揮できればきっと勝てる
ただ、それこそが私がこの機体を放棄した理由。
それでなければ、後部座席に芳乃様を乗せ、私がAXSで何とかしていた」
語り続けながらも、ナガセPは機体を駆る。安定した機行で、時折迫る敵を振り払いながら
「じゃあ、どうするんだい!」
「どうもこうもない。飛鳥、お前には一人でAXSを飛ばすのは無理だ。だから私は降りることは出来ない
だとすれば、対処出来る人を待つしかない」
悔しげに、ナガセPは舌を噛む
そんなコクピットに、小さな歌声が響き渡った
藍子だ
ただ、ふと思ったままに、言葉を口ずさむ。歌うように
「……高森さん?」
飛鳥は、首を傾げた
何をしているのだろう、と
「……藍子」
「SONGと聞いたから、歌いました
違いましたか?」
「違わない。起動さえしていれば、それが正しいことなんだ
けれども、起動しない」
ナガセPの眼前のコンソールに映る起動率は、最高値09.1%と低い記録から動かない
「それでも、歌います
きっと、やる前から諦めちゃいけないから」
藍子の口が、再び言葉を口ずさむ。今度は一緒に路地裏の、と。彼女がよく知る、ナガセPが作ってもらったぞ、藍子!とホクホク顔で持ってきた藍子の為の曲を
「……ああ、諦めるなんて、駄目だ」
他には何もないアカペラ。それでも唄う藍子に、ナガセPがうなずき
その胸元で、銀色のイルカのネックレスが揺れ、飛鳥の背に当たった
『ああ、懐かしい
熱くもなく、激しくもない歌』
「プロデューサーさん?」
『歌え、藍子』
ふと、ナガセPの雰囲気が変わる
突如として、コンソールが輝き出す。起動率、75.1%
SONGシステム、稼働領域
『熱くもなく、激しくもなく。されど優しい、愛の歌。銀河を震わせる歌声
勇気を歌う必要はない。闘志を叫ぶ必要もない。戦いのGONGを鳴らす程でもない。ただ、喜びを歌う。其で良い』
ナガセPの言葉に合わせ、藍子は歌を口ずさみ続ける
飛鳥が内部から見ても分かるくらいに、機体はカガヤキヲ増してゆき……
気が付けば、飛鳥も歌っていた。藍子に合わせ、此処には似つかわしくないような、ふわっとした歌を
『希望の歌。それがSONG』
『因果地平の彼方へ去れ、アインスト・イデア!』
そして、煌めきを纏ったまま。星の名を持つ流星は、どこまでも場違いな歌と共に、エネルギーフィールドを纏い、二機の紅の巨人を貫いた
静寂が、周囲に戻る
『カムイさん!』
『二機、撃墜。追撃は不利益が大きい、帰投する
私達の勝ちだ、ヨウタ
……情けない、勝ち筋ではあるけれど』