アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA 作:雨在新人
天井まで来ない藍子は悪い藍子。300連目でお待たせしました!カワイイボクの登場ですよ!待ちました?とやって来る幸子はわるいぶんめい
……それから、幾日かの日々が過ぎた
「……皆、体調の問題は?」
昼の寮の、その一階
集まったアイドル達の眼前で、金髪の青年がそう問い掛ける
「問題ありません、折角このボクを呼ぶなんてお目が高い事をしたのに、カワイイボクが見れないなんて可哀想な事させませんよ!」
フフーン、どうですか!と意地を張り、輿水幸子は元気を振り絞ってそう応えた
しっかり寝れた……訳はない。寮の電気は消えていても、皆が寝静まる事は無かった。そわそわとした気配は、幾つもの部屋から漏れていた。そんなこと、何度か水を貰いに一階に降りた幸子を始め、寮の皆が知っているだろう。結局の所空元気、と。それでも、アイドルとして初の大仕事だからと、意地を張る
それは、他の皆も同じだったのだろう
「プロデューサー。君にも響かせようか」
「ナナ、頑張っちゃいますよー!」
「プロデューサー様、準備は万端ですわ」
「そうか。それは良かった
皆、行きの車ではしゃぎ過ぎないように。疲れて本番に動けない、は無しだ」
「車ですか?」
「当たり前だろう。今から向かうのは軍施設だ。鉄道なんて通ってないさ」
そう、レンタル車のキーを器用に小指で回して、金髪の青年は笑った
392プロダクション寮から、途中でナガセPが招待したという少年少女を拾いつつ車で一時間半ほど。其処に、プロデューサー、ナガセ・カムイが用意したライブステージは存在した
地球連邦軍、小田原基地。そこまで広くもないその軍事施設こそが、彼の取り付けたライブステージであった
厳重に閉じられた門をナガセPによる多少の応答で潜り抜け、基地内部へとレンタルのマイクロバスは滑り込む
窓際の席を確保し、外を眺めていた幸子の目に飛び込んできたのは、巨大な威圧感であった。整列する、白い巨人の一団
「量産型ヒュッケMk-Ⅱの一団。随分な歓迎だ。そうは思わないか、飛鳥」
「ボーナススコアだ、と言いたいのかいプロデューサー
それは、毒され過ぎだろう?」
「思わなかったか、飛鳥?」
「少しだけ、考えたさ」
笑いながら、マイクロバスは滑走路に滑り込み、止まった
其処に用意されていたのは、仮説のライブステージ。野外である為、照明などに凝ったものはない。機械的な歓迎の言葉が記された看板がステージ頂点に掲げられているくらいだろうか
「そなたー、此処で良いのですかー?」
「良いのさ、芳乃
今の小田原基地の主力はPTだ。元々航空基地であったことから滑走路はあるけれども、現状それを活用するような機体の配備はない。ステージに使ってしまっても、問題ないさ」
「そなたー、伝えたい言の葉は、そのようなことではありませぬー」
「……大丈夫。ステージ右横に車を止めるようにという向こうの指示に、私は従っただけさ
着替える為の控え室は用意したらしいけれども、入り組んだ場所にしか十分な空き部屋が無いらしくてね。軍の機密を通る必要があるから、外で案内を待つ必要がある訳さ」
そんな事をワイワイと話すうちに、3分ほどして、一人の女性が、皆の前に現れた。しっかりと軍服に身を包んだそう若くはない女性士官である。わざわざ女性を選んだのは、アイドルという女性を迎える事の配慮なのだろう。詳しくは知らなくとも、幸子が見る限り胸の階級章はあまり高い地位のものには見えなかった
「ナガセ・カムイ様と高垣楓様に、392プロダクションの皆様ですね
私は、今回のライブにおいて案内役を任されました寺門と申します」
「392プロダクションプロデューサー、神威流星です。本日は宜しくお願いします、寺門衛生准尉」
金髪の青年と、黒髪の女性が握手を交わす
「寺門衛生准尉、楓さんの事は……」
「職務中なので、回答は控えさせて戴きます」
その返しに苦笑して、ナガセPは言葉を続けた
「ライブ中は慰問、職務を忘れて楽しんで下さい。その為に、私達は来たわけですから」
「……では、控え室にご案内します
それと、神威プロデューサー、貴方に関しては司令から部屋に来るようにと。その案内は別の者が」
「了解
飛鳥、藍子。前に言ったように、答えは今日、ライブの後で聞かせてもらう。その事は忘れないように
全力を、皆。こんな時代だからこそ、輝く希望の星のように」
それだけ告げるナガセPと別れ、幸子達は控え室に通される
「飛鳥さん。話って何だったんです?」
「интересовать、気になり、ます」
各々、自身が持ってきたアイドル衣装ーサイズを計り、千川ちひろにより特注された専用のものーに腕を通すなか、幸子はそう問い掛けた
「何でもないさ。藍子と二人、特別なユニットを組んでみないかと言われていてね」
「怪しいですね!カワイイボクの目は誤魔化せませんよ!」
「ムムムーン、さいきっく・緊張ほぐし!」
「って、煩いですよ裕子さん!」
バァン、と音を立てての手の打ちあわせに、少しだけ幸子は怯んで
尚も話を続けようとしたその時、けたたましいサイレンの音が響き渡った