アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA 作:雨在新人
数十分後、飛鳥とナガセPは、ゲームセンターを離れ、街へと出ていた
「良いのかい、あんなもので」
そう問い掛ける飛鳥に、ナガセPは笑う
「良いんだ。今日は元々骨董屋に行く気だった
彼処に長居していては、厄介なものに引っ掛かる」
「厄介、キミがそんな言葉を使うとはね」
「厄介も厄介さ。何たって、スカウト活動中の相手なんだから、さ」
そう言って、ナガセPは続ける
「出会ってしまえば、暫く時間を掛けるしかない。だから、今日に限っては会いたくない」
そんなナガセPに、少しだけ冷たい視線を飛鳥は向ける。向けざるをえない
「それ、キミは何時もはその子と会う事を口実に、ゲームセンターに足を運んでる、と告白するにも等しい事だよ、プロデューサー
ボクはキミの言葉を信じて此処に居る。だというのに、キミはボクを置いて、そんな事をするのかい?」
飛鳥としても、本気で責めている訳ではない。蘭子のミニライブを取ってきたように、ナガセPがしっかりとアイドル達の為に努力している事は知っているから
「置いていったりしないさ、飛鳥。まあ、その子との接点として、ゲームセンターに行っていた事は、否定しないがね」
「それで?その子の事を、ボクは知っているのかい?」
歩みを止めず、飛鳥は聞いた
「知っているさ。2週間前の店舗大会、彼処で出会っているはずさ」
ナガセPの言葉に、飛鳥は少しだけ記憶を漁る
確かに2週間ほど前の休みの日、あのゲームセンターの店舗大会に参加した。では、そこで見かけた、プロデューサーがスカウトしそうな程の子は……
「決勝の子かい、プロデューサー?」
ナガセPは、静かに頷いた
「そう、三好紗南。あの時の子さ」
足が、止まる。目的地に辿り着いたのだ
柊骨董品店、ナガセPが立ち止まった、少し古臭い店の看板には、そうあった
「ここかい、プロデューサー」
「ああ、そうだよ飛鳥。私が何時も骨董品を仕入れてくる店さ」
飛鳥の問いに、ゆっくりとナガセPは頷いた
……そういえば、と飛鳥は思い出す。プロデューサーの趣味は、ロボット系列のプラモデル収集、ロボット系列のゲーム、そして骨董品集めだったな、と。事務所に飾られている骨董品は、全てプロデューサーが集めてきたものだった、と
「ヨウタ」
店に一歩踏み入れ、ナガセPが呼ぶと、軽い音と共に、一人の少年が店先に出てきた
ちょっと跳ねた焦げ茶色の癖毛、飛鳥の趣味ではないけれども、整った精悍な顔立ち。所謂イケメンに属するだろう少年だった
「あっ、カムイさん……と、初めての子だ」
ナガセPの後ろに居る飛鳥に気が付いたように、少年が呟く
「ナガセさんの言う、アイドルの子?」
「そう。ボクはアスカ、二宮飛鳥。キミの言う通り、プロデューサーに見出だされた宝石の原石さ。けれど、ボクはキミの事を知らないし、逆もまたほぼ然り、だ。教えてくれるかい?」
少しだけ気合いを入れた白いエクステンションを揺らし、飛鳥はそう名乗った
それを受けて、少年は……臆せず、手を差し出した
「やっぱりそうか。俺は陽太。柊陽太。ここの骨董品店で、母さんを手伝ってる。そこの……カムイさんには、贔屓にしてもらっている」
飛鳥は、差し出した手を取った
硬くて、けれども暖かく包み込む、そんな手だった
「成程ね。プロデューサーの行きつけの店だった訳だ。一つ、キミの事が分かったよ、プロデューサー
……ヨウタ、これから、道が交わることがあれば、そのときは」
そんな飛鳥の言葉に、ヨウタは手を放し、苦笑する
「カムイさん。ひょっとして……この子が、あの子の言っていた親友?」
「そう。蘭子の魂の友、二宮飛鳥だ。大丈夫、初見は取っつきにくいけれども、良い子だよ」
ああ、そうそう、とナガセPは懐から封筒を取り出す。白い封筒。として、392プロダクションのマークのシールが貼られているものだ
「……これは?」
「その神崎蘭子のミニライブが、16日にある。そのチケットさ」
「いや、貰えませんよ」
「いや、此方から来て欲しいという意思表示として、このチケットを渡すんだ。16日、この店は休みだろう?」
ナガセPは、そう言って、封筒ごとチケットを渡す
「……プロデューサー、その為に、此処に来たのかい?」
肩……は手をあげないと届かないので袖を引き、飛鳥はナガセPに問う
「そうだ。流石に2日では、良いものは増えてないだろう。だって……当日来れなくなったは仕方ないが、元から席に空きがあれば、蘭子が悲しむ。知り合いが居なければ、とても緊張するだろう?」
そう、ナガセPは微笑った
「いや、でも……」
けれども、ヨウタは渋る
「ユキの奴だって、返事を保留して」
「なになに、わたしの話?」
突然、そんな明るい声が響いた
見ると、店の奥から……銀の髪を後ろで結った、ナガセPがスカウトしてそうな少女が出てくる所だった