アイドルマスターOG CINDERELLA XENOGLOSSIA 作:雨在新人
「ということでだ」
時刻は9時丁度。「遅刻回避、さいきっくゥ、テレポート!」と、392プロダクション最後の一人、堀裕子がドタバタと入ってきてすぐ
ナガセPは、集まった全アイドルを前にして、そう切り出した
「集まって貰った理由はただ一つ」
ナガセPが、一際大きな机の上に、何時も使っているタブレットを置いた
「一つ、割と急な仕事が入った」
そこに記されているのは、仕事の内容
アナスタシアは、少し遠くから覗き込む。その内容は……
「皆、この事務所から車で1時間程の所に地球連邦軍の基地があるのは知っているな?」
「知ってます。ナナ、工場見学の代わりに行きました!」
ナガセPの言葉に、アイドルの一人……ウサミミを付けた少女、安部菜々がそう答えた
「菜々。あれは学校で行くものなのか?とは思うけれどもそこは良い
そう、あの基地。今回の仕事は、その基地でのライブだ」
ゆっくりと、ナガセPは告げる
「まあ、所謂一種の慰問ライブという事になる。苦しい中、この日本を守っている彼等にひとときの熱狂と安らぎを、という事でオファーが来た
舞台は仮設ステージ、照明は最低限。何の特殊効果も無い、だからこそ、日頃の努力が浮き彫りになるシンプルなステージになるはずだ」
「それで、プロデューサー。全員を集めた理由は?」
飛鳥が、そう問い掛ける
「一人一人メールで聞いても良かったかもしれない
けれども、これは……多くのメンバーが参加しなければ、時間が持たない大仕事。だから全員に聞きたかった
この仕事を、受けるかどうか」
真剣な目で、ナガセPは告げる
「やりたくないならば、此処で言ってくれ。無理強いはしない」
ふと、ナガセPは一瞬目線を下げる
「私自身、軍部の慰問ライブには、良くない思い出があってね。この仕事は、あまり薦めれない。というより、一度断った事もある」
その声音は、アナスタシアには、20歳にはとても聞こえなかった。まるで、死線を潜り抜けた、30代のような……
「多くが断るならば、この仕事は受けない」
「スダヴォーリストゥヴエム、アーニャ、喜んでやります」
その言葉をナガセPが発した瞬間、何かに背中を押されたように、アナスタシアは率先してそう言っていた
それが、このプロデューサーが、何とか取ってきた久し振りの大仕事だと知っているから
「……アナスタシア。すまない、そして有難う」
「全く水臭いですねプロデューサー。このボクのカワイさで、大盛り上がりにしてあげますよ!」
フフーンと得意気に、幸子が続く
「ああ、そのカワイさで沸かせてくれ、幸子」
「瞳を持つ者よ、我が使命を果たす刻は来た(プロデューサーさん、精一杯やります!)」
「然り。かの言の葉、寿ごう、傷ついた悪姫(ああ、そう言ってくれて有り難う、蘭子)」
それに続くように、蘭子がそのロールした髪を揺らして参加を表明し
「やられたね、これが狙いか。とはいえ、この沸き上がる奔流、ボクにも響く。逆らいはしないさ……」
「悪いな、一人一人聞くよりは、と狙って」
「いや、これは、乗せられるボクの甘さだよ、プロデューサー」
「ああ、魅せ響かせてくれよ、飛鳥」
流れに遅れまいと、エクステを弄りながらも、飛鳥が乗る
「プロデューサー様。私はあなたの期待に応えます」
長く淡い色の髪をツーテールにした少女、西園寺琴歌が更に言葉を繋ぎ
「ナナ、頑張っちゃいますよー!」
安部菜々も、続く
「琴歌、期待しているよ
ナナも、全力で頼む」
「むむむーん!サイキック……未来予知!
はっ、参加こそ吉と」
「ああ、その予知を本当にしてくれよ、ユッコ」
最後に部屋に飛び込んできた少女、堀裕子も参加を決める
「プロデューサー。私は……」
そんな中、おずおずと、手を上げる少女も居た。栗色の髪の、ふわふわした雰囲気の少女、高森藍子
「参加は、やっぱり怖いか?」
「ごめんなさい」
「謝らなくて良いよ、藍子。私にも嫌な思い出があるから不安で、だから取ってきたと言えば良い事を、本当に受けて良いのか皆に聞いたんだ」
申し訳なさそうな藍子に向けて、ナガセPはそう微笑む
そして、表明していない最後の一人にナガセPは向き直る
「良い言葉は思い付きましたか、楓さん?」
「上々の冗談が思い浮かばなくて」
くすり、と書類上最年長で、皆の纏め役の事もある女性、高垣楓はそう微笑む
「当然、参加します、プロデューサー」
「あの、わたくしはどうなるんですの?」
意思表明が終わった所で、流れを切るまいと待っていたのか、桃華がそう問い掛ける
「流石に、ものにはならない時期の話だからね
……上手く仕上がれば一曲だけバックダンスで参加して貰って、後は今の皆を、392を見てもらう事になるだろうね。いや、藍子は居ないけどさ」
「……でしたら、見せて貰いますわ
……所で、ものにはならないって、そんなにすぐですの?」
桃華の問いに、ナガセPはタブレットスクロールで答えた
「すぐもすぐ、3週間後
急な仕事だって言っただろう?」
その言葉に、皆が固まる
「さ、三週間後?それは本当ですか、プロデューサー」
「ああ急な話だろう、楓さん。受けるかの返事は今日中で、本番は三週間後だ」
全く横暴な、とナガセPは苦笑する
「何時の時代も、力を持つ者は傲れるものさ」
そこはかとなく格好付けて、飛鳥が呟く
「それは確かだが、言い様があるだろう、飛鳥
彼等は確かに、皆を護っているんだ
それならば優遇されて然るべきだと、無意識に思ってしまうことは当たり前。調整が効く範囲ならば、受ける側で都合をつけるのも、仕方の無いことさ」
「プロデューサー、お仕事の」
アナスタシアが言葉を続けようとするのを、ナガセPが右手で遮った
「そなたー、用意できたのでしてー」
と、部屋に一人の和服の少女が入ってくる
依田芳乃。そういえば、居なかったですとアナスタシアが思っている間に、芳乃は手にした紙を机に置く
「配達有り難う、芳乃
ということで、芳乃に持ってきて貰ったのが……昨日用意した当日のスケジュールだ
開幕は16時、閉幕は17時半。家では大半が協力してくれないと持たない程のライブ時間になる」
「大変、です」
「ああ、大変だ、アナスタシア。なんで、皆大変なトレーニングになるとは思う
ただ、久し振りの大仕事の為だらと、精一杯の努力、そして120%の成功を期待する」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
正規参加メンバーのうち、芳乃を除く8人の声が唱和した