完結は必ずいたしますので気長にお待ちください。
「バカが……!」
ヴァンダム少尉は降りて来た文官を睨む。
既に文官は相手方と接触していた。
(来るなら来るで連絡を回さないか!! クッ! 仕方ない!!)
駆け足で文官と、相手方五人のもとに向かう。
しかし――――――
「イル・ウィンデ!」
突然目の前に竜巻が現れ兵士たちが木の葉のように吹き飛んだ。
「ぐあああああ!!」
「野郎ォ!!」
「ぐハァッ!! グッ、ま、待ってください! わ、我々は!!」
咄嗟のことに撃ち返そうとする者に血の気が引き、いきなり攻撃されそれでもまだ必死に説得しようとする文官には呆れつつも尊敬してしまうが、ヴァンダム少尉がとったのは、
「撃つな退却しろォ!! 撃ち返すのは許さん! 突撃兵盾を出せ! 」
速やかな退避だった。
吹き飛んだ隊員と文官を無理矢理立たせ、撤収する隊員たち。
誰よりも先に退避する鋼機(鋼機は一機で最低一般兵10人以上の戦力になるため)。
そのしんがりに突撃兵が前面に盾を出しつつ下がる。
「ふん、腰抜けめ。お前たち! 手を出すなよ、私がやる!!」
戦闘にいた高級な恰好をした貴族が後の四人に言う。
これを聞いた四人は「やれやれまたか」と肩をすくめた。
実はこの四人、全員この男に雇われた傭兵で、メイジ崩れ二人とメイジ殺し二人であった。
四人は度々この男に雇われるのでこの男のことをよく知っていた。
先頭の貴族の男はいわゆる戦闘狂で、逃げたオークを執拗に追いかけていたのだ。
しかしオーク殺しも飽きてきた男は、新たな獲物を求めていた。
そこに現れた異国風の人間。
メイジも居なさそうだったので深く考えもせずに魔法を放ったのだ。
ちなみに、男は頭上のフネの大砲は警戒していない。大砲は人間に当てようとも当たるものではないと知っているのだ(ただし彼の考えるその砲弾は爆発しない)。
そしてヴァンダム少尉は、この男が戦闘狂の類だと、自分と本質を同じくする者だと見抜いていた。
(殺すのはまずい! 何とか無力化を……いや囮になるか?!)
ヴァンダム少尉は銃を部下に預けナイフを抜いて走り出す。
「ぬ! ラナ・デル・ウィンデ!!」
(来るッ!)
詠唱とともに杖を向けてくる相手に、磨かれた勘のまま右へ飛び転がるように体勢を整える。
不可視の力が確かに己の横を通りすぎていったのを少尉は感じた。
「こちらに交戦の意思は無い! 攻撃を中止してくれ!!!」
必死に呼び掛けるも、
「問答無用!」
意味なし。
(クソこのバカが!!)
忌々しげに舌打ちひとつし転がりまくる。
不可視の攻撃が村の家の壁を破壊するのを見て少尉は肝を冷やす。
「撤収完了ォ!!」
少尉の視界の端にゆっくりリフトが上昇を始めるのが映る。
「ハッ! 貴様見捨てられたか!」
嘲る貴族に、しかし少尉は答えず、
(強化剤投与システム起動!)
走りつつ迷わず強化剤を使用した。
首筋にチクリとした痛みとともに身体が熱くなる。
対し頭は恐ろしいほど冷たくなる。
動機が速まり湧き出す力の奔流を冷静な思考が制御する。
「な! 速い?!」
突然の加速に貴族は驚くが、それでも嘲りの笑みは消えない。
何故なら既にリフトは空高くに――――――
「隊長! これを!」
リフトから鋼線が降ろされ、ヴァンダム少尉はそれに捕まり驚異的な速さのままよじ登る。
「お……おのれ逃がすかァ!」
貴族が再び馬を走らせるがもう遅い。
少尉は既に鋼線を登りきっていた。
「隊長!」
「お疲れさまです隊長!!」
無事に帰還した隊長を口々に褒め称える隊員たち。
ヴァンダム少尉も上機嫌に“にぃ”と手を上げ笑い、
「当然だ。全員無事だな? 無事でなかったら次の訓練は倍だ」
「「「「「全員無事であります!!!」」」」」
少しの間も置かずに返ってきた返事に苦笑しつつ、少尉は作戦の終了を告げる。
「よし、これにて状況しゅ」
瞬間、水っぽい音とともにヴァンダム少尉の胸から赤黒い氷が生えた。
「かっ……は…………!」
胸から突き出た氷は、血に濡れ赤黒く輝いていた。
「隊長ぉおおおおおお!!!」
「クソッタレがぁあああ!!!」
「待て撃つな!! ちくしょう撃つんじゃない!!」
一人が引き金を引こうとするが、周りにいた隊員がそれを止める。
「こちら第三装甲小隊! 重傷者一名!! 至急治療の用意を求む! 繰り返す!」
「急げ急げ急げ急げ急げぇ!! 何でこんなゆっくりなんだよォ!?」
「しっかりしてください隊長! 隊長!!」
焦る隊員達の心に反し、リフトはゆっくりと上がっていった。
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「オイ治療出来ないってどういうことだよ!?」
まだ若い兵士が医官に掴みかかる。
対し医官は黙って首を振るのみ。
「まだ、まだ
オリエンスでは、死んだ人間の記憶を覚えていられない。
それは死んだ人間に残された人々が縛られぬようにするための、クリスタルからの恩恵。
だがその呪縛《おんけい》は、もう無い。
クリスタルの消滅とともに無くなった。
別の医官が血を吐くように怒鳴る。
「心臓を貫かれて死なない人間がいるか?! 死んだんだよ、少尉は!!」
「ッ!……くそォ……クソォッ!!」
「そんな……隊長ッ……」
彼らは人目も憚らずに泣いた。
この哀しみを、どう処理すればいいのかわからなかったからだ。
『……状況終了、本艦は『ドーム』に一時帰投する』
放送が、静かに艦内に響いた。
今回貴族がアレだったかもしれませんが、流してほしい……です。
自然な戦闘の入り方がわからなかったのです。
あと、いくつか強化兵や部隊のなんやかんやについて独自解釈入ってます。
あぁこの思いを文字に出来たら……!
それでは皆様の感想、ご意見お待ちしております。