皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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少女、未知への希望

皇国元帥シド・オールスタイン執務室。

 

時刻は夜の11時。

 

現在は今日一日の報告をシドがまとめて聞いているところだ。

 

居並ぶ文官、武官が次々に報告を上げていく。

 

「付近に派遣した部隊が小規模ながら村を幾つか発見、情報の収集にあたりさらにこちらの情報封鎖にも動いています。なお、付近に凶暴なモンスターは居らず、畜産目的と思われる生物を幾つか発見、村民から購入しました」

 

「貨幣価値はこちらの金貨〈ギル〉が圧倒的に高く、安易に市場介入した場合の相手国のインフレが経済攻撃に捉えられないかが懸念されております」

 

「『ドーム』周辺の簡易防衛線の構築は第二まで完了、第三から第五までを同時に構築中です」

 

「『ドーム』周辺十数キロの範囲で装甲工作部隊により何とか水源を発見しました。が、『ドーム』北方面は火山地帯ですので温泉が出ました。現在有害物質などの有無を調査中です。しかし『ドーム』南方の沿岸地帯では小規模な河川が幾つか発見されており、水路を繋ぐ計画が現場より出ております」

 

「ルシ・ニンブス様の発見は未だ成されていません。依然行方不明のままです」

 

「火山方面の竜の巣はドーム付近は殲滅に成功。損害は極めて軽微であります。帰還した兵力は後方待機中、予備兵力は規定通りペリシティリウムへ回しております」

 

「ペリシティリウムです。火力、風力水力兵力光力などの自然発電機は通常通り稼働しております。アルテマ発電は、その……内包されたエネルギーを安定して抽出する目処が絶たず、また下手に実験する訳にもいきませんので開発は遅れております」

 

それらを咀嚼、素早く吟味し矢継ぎ早に指示を下すシド・オールスタイン。

 

「情報は逐一こちらと軍部に上げろ、どんな細かくくだらない類いでもだ。

情報の封鎖はしなくていい。『ドーム』の巨大さだ、どっからでもよく見える。あぁ、だがなるたけこちらの印象は良くしろ。

家畜はオークと同じように『水銀槽』に送れ。

市場介入の件は検討しておく、しばらくは交易もないだろうが政官達に使節団を組ませておけ。

防衛線は破棄することを前提に数を作れ。後ろから順次強化していけばいい。だいたい『ドーム』の目と鼻の先なのだ、多少の時間稼ぎで事足りる。

帰還した兵はそれでいい。軍部は第一、第二軍のみ戦時マニュアル、残りは平時マニュアルで動かせ。

河川を繋ぐ計画は下流に村や町がないか調べろ。

防衛に関する問題もある、次の会議で話に出すから早急にだ。

ニンブス探索はそのまま続けろ。だが発見してもコンタクトはとらなくていい。居場所だけ把握したい。

ペリシティリウムは発電を続行しろ。

アルテマ発電は……開発チームは、クンミだったな」

 

「ハッ! クンミ様、それにイネア大……いえ、イネア技術特佐含む第零鋼室が研究しております」

 

「…………うむ、悪いがクンミをすぐにこちらに寄越してくれ」

 

「ハッ!」

 

「よし、報告ご苦労だった」

 

「「「「「ハッ!!!」」」」」

 

 

・・・・・

 

 

高官たちが退出した後、執務室ではシドが書類をめくる音だけが微かに聞こえる。

 

そしてシドは書類に目を落としたまま言う。

 

「…………トリガーか」

 

「はい」

 

すると誰もいなかった室内、その隅に歪みが生じ、光学迷彩を解いたトリガーが姿を現した。

 

「はい、ファザー。タバサ嬢の報告、提出させていただきます」

 

スッと手渡された書類。

 

「ん。……………………マジか」

 

その報告を読み進めるうちにシドの顔に苦味が走る。

 

「マジです」

 

「……こりゃ第零空けて正解だな。わかった。トリガー」

 

シドはひとつ息を吸い、告げる。

 

「“錆”を動かせ」

 

「了解」

 

トリガーは、ただ美しく敬礼を返し、消えた。

 

シドは眉間にシワを寄せ二枚の報告書を睨む。

 

そこにはこう書かれていた。

 

『人種:翼人種

氏名:ミリィ・ウカウリア

年齢:17

性別:F

使用魔法:精霊魔法(仮称)

ジャマー:有効

 

訓練施設内で魔法を使うよう指示。

しかし本人曰く『精霊が存在しない』ので使用が出来なかった。

ドーム外へ連れだし促したところ、植物及び風を操る魔法を確認。詳細は別紙記載。

次に小型ジャマーを起動し魔法を使うよう指示を出すと『精霊が応えてくれない』とのこと。これは捕獲時の状況に酷似している。

以上のことから翼人種、ならびに精霊魔法(仮称)にジャマーは有効である』

 

『人種:人間(仮定)

氏名:タバサ・オルレアン

年齢:16

性別:F

使用魔法:風のトライアングル(仮称)

ジャマー:無効

 

訓練施設内にて魔法の使用を指示。

風を操る魔法を確認。詳細は別紙記載。

次に小型ジャマーを起動し魔法を使うよう指示。

魔法の発動を確認。本人のバイタルに変化はなし。ジャマーは何ら影響を与えていないのが判明。この世界の魔法体系に関する資料は別途記載』

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

時間は昼食後まで遡る。

 

皇国内訓練場。

 

そこには杖を構えるタバサと、その後ろに様々な測定機材を接続した『パンドラボックス』を背負ったトリガー、前方には複数の自動兵器が浮いていた。

 

トリガーが離れた位置からスピーカーでタバサに指示を出す。

 

『次、ジャマーリング起動』

 

タバサの手首につけられた枷が白緑に淡く発光する。

 

タバサはその光る枷を不思議そうにしげしげと眺めた。

 

『では、タバサさん、何か魔法を』

 

「……『デル・ウィンデ』」

 

『ッ!!』

 

その結果にトリガーが驚愕に呻く。

 

次いで黒く、暗い憎悪に似た感情が胸の内に沸き立った。

 

何故なら、不可視の風の塊が発生し、標的の自動兵器を吹き飛ばしたのだ。

 

 

ジャマーを発動した状態で。

 

 

「…………」

 

それは彼の記憶の大半を奪った“朱の魔神”そのものだった。

 

しかし暗い感情を一旦律し冷静に思考を回し始めるトリガー。

 

(ふぅむ、彼女が何故魔法を使えるのか……そして何故あの亜人の少女は使えなくなったのか……)

 

そう、タバサより先にテストに来ていた翼人種のミリィは、ジャマーによって魔法が使用できなくなた。

 

クリスタルジャマーとは、簡単に言えば『○○クリスタルの持つ特有の波長を増幅した●●クリスタルの波長で相殺する』といったものだ。

 

これにより朱雀クリスタルの波長を白虎クリスタルの波長で相殺、魔法の使えない空間を形成するのだ。

 

無論、皇国首都でそんなものを発動させれば白虎クリスタル発電設備がまるごとダウンする。

 

その対策に予めC機関にCエネルギーを貯めておいたり、クリスタルに関係のない発電設備を開発したりしているのだ。

 

(つまり、一・タバサ嬢は特別な存在である。二・この世界の魔法使いは朱の魔神と同じ存在)

 

二つ目の可能性で、ヘルメットの内側でうっすらと汗をかく。

 

(そんな最悪な世界……アルテマで耕すしかないですね)

 

 

そんな彼を余所に、タバサはあの空中戦艦からの一連の出来事を思い出していた。

 

 

(ここに、希望があるかもしれない……僅かでもいいから)

 

 

 

 

・・・・・

 

 

「この子の……治療をさせてほしい」

 

私は、あのよくわからない監視にシルフィードの治療を頼んだ。

 

思ったよりシルフィードの負傷は酷かった。

 

手足や腹の裂傷に加え折れた肋骨が飛び出している。

 

私は魔法なしでも一応の応急処置は行える。

しかしこれはその範疇を超えている。

 

故に荷物に入れてあった『水の秘薬』を媒介にした回復魔法を使うため、彼女(?)に許可を求めたのだ。

 

すると彼女は、

 

「いいだろう……少し待て」

 

そう言って虚空に向かって話し出した。

 

いや、一瞬目が光った?

 

『こちらB-8番隔壁、衛生兵を一人回せ』

 

『……了解』

 

その後いくらもしないうちに鋼鉄の隔壁が開き、そこから怪しさ爆発する存在が入ってきた。

 

グレーの鋼鉄の六角形の鉄板で全身を鱗のように覆い、頭部は丸い大きな、トンボのような硝子の目のついた形状、足にはドラゴンのように爪状のスパイク。

腰には大きなポーチ、背中の四角い箱から伸びたチューブが身体中を這い、蒸気が背部から床へ噴出し、なんかコーホー言ってる。

 

近くまで来ると、ソイツは手にしていた旅行カバンくらいの荷物を置き、ゆっくりと右拳を心臓の位置に。

 

「コー……ホー……コー……ホー……後方衛生医療技術部隊所属、シギント一等衛生技官……どいてもらおう……私は医者だ……コー……ホー……」

 

……そんなバカな。

 

私が警戒を崩さないでいると、彼女がぞんざいに声をかけてきた。

 

「心配するな……こんなのでも名医」

 

「そういうことだ……コー……ホー……」

 

しばらくシギントと名乗った男と彼女に視線を行き来させていたが、ここで害する意味がないと考え横にずれる。

 

シギントはガシャガシャ近づき、外見とは違い手慣れた仕草でシルフィードの診察を行う。

 

シルフィードはこの異形を心底警戒していたが、手を握って大人しくしてもらった。

 

「コー……ホー……この程度なら……ポーションで十分だな……」

 

やがて診察を終えたシギントが、傍らに置いたその旅行カバンのような荷物を掴む。

 

側面の一部を開くと、そこには何かをはめ込むような窪みと手回しハンドル、銀色の金属棒に繋がれた長い導線。

 

導線を伸ばし金属棒をシルフィードに握らせるシギント。

 

次に腰のポーチから一本の緑色の液体の詰まった怪しいフラスコを抜き出し、その窪みにはめた。

 

そして側面のハンドルを掴みヴイヨヴイヨと回していく。

 

ハンドルの回転が速くなるにつれて嵌め込まれたフラスコにバチバチと雷が流れる。

 

流された雷がフラスコを輝かせ、次にその光が導線を伝ってシルフィードの全身を一瞬輝かせたかと思うと、次の瞬間には

 

 

シルフィードは、完治していた。

 

 

 

その様子を唖然と眺める

 

シルフィードも何が起こったのかよくわかってない。

 

そんな私たちに、彼が陰気に訪ねてきた。

 

「……コー……ホー……まだ……痛むところは……あるか……?……コー……ホー……」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

私は今、闇の中にいる。

 

正確には袋を被っている。

 

どういうことかというと、この謎のフネに乗せられ、シルフィードを治療してもらった後少しして鉄の扉が滑るように開いた。

 

入ってきた男達は、猫耳だった。

 

じゃない、白い猫の兜を被っている。

 

……どうやら彼らにとって白い猫は特別な意味があるみたい。

 

彼らに荷物と武器を渡すように指示される。

 

大人しく鞄と杖を渡す。

 

その後ぺたぺたと服の上から身体を触られた。

 

何をしようとしているのかと思ったらどうやら武器を探しているらしい。

 

こんなことで武器を探せるのだろうか?

 

むしろシルフィードが暴れかけた。

 

でもシルフィードが立ち上がろうとした瞬間に、周りを囲んでいた山猫達が一斉に唸り、あの奇妙な存在も何かをしようとしてきた。

 

私が慌てて止めなかったらどうなっていたかわからない。

 

シルフィードは『コンテナ』という大きな鉄の箱に入るように言われた。

 

嫌がっていたが仕方がない。

 

今は反抗しても無駄、むしろ危険。

 

無理にでも入るように促した。

 

首を引っ張るようにしてシルフィードをコンテナに引き摺り、囁く。

 

(殺されそうになったらちゃんと逃げて。私は大丈夫)

 

なんだかうっかりシルフィードが喋りそうだったから無理矢理口を閉じた。

 

コンテナから出て袋を被ると、先程の兵士と思われる気配が幾つか側に来て私に歩くように言った。

 

袋越しに聞こえる複数の足音、それに混じるように金属のぶつかるような足音。

 

さっきの四つ足がついてきているようだ、本当にあれは何なのだろう。

 

何か狭いところに入らされ、座るように言われる。

 

重くて低い、響いてくるような振動音が始まり、少しの浮遊感、停止。

 

次いで馬車に乗っているときのような感覚。

 

どうやら何か乗り物に乗って移動しているみたい。

 

……私はどうやってフネから降りたの?

 

しばらくするとどこかに着いたようで、乗り物から降りる。

 

さらにしばらく、しばらく歩く。

 

浮遊感を何度か感じる度に来た道を戻る。

 

……恐らくだけど上昇する何かに乗った、シルフィードが離陸する時の感覚によく似てる。

 

そしてまた歩き、階段らしきものを降りたりした末に、ついに袋を取られる。

 

私は暗くて狭い部屋に座っていた。

 

小さな部屋だ。

 

左の壁には真っ黒な……ガラス?

右の壁には何もない。

後ろは壁。

目の前には机、椅子、ドア。

……机も椅子も、自分が腰掛けている椅子も、継ぎ目すらない金属で出来ている。彼らは余程鉄が好きなのだろう。

 

そして……どうやらここは尋問室のようだ。

 

……尋問。尋問と書いて拷問。

 

鋼鉄の家具や薄暗い照明は、えも言われぬ威圧を私に与えてくる。

 

何も見えない黒の色ガラスは、まるで闇が私を監視しているようだ。

 

こんな部屋を見たことがある。

 

ガリアにある拷問室だ。

 

軍事的な拷問室は本に出てくるような物騒で大掛かりな物は少ない。

アレはロマリアのような宗教家が使うのだ。

 

実際の拷問器具は、何気ない鞄ひとつに収まってしまう。

 

……質問には素直に答えよう。

 

私は、死ぬわけにはいかない。

 

でも、そもそも彼らが何者なのか全くわからない。

 

そうなると私がどんな立場なのかもわからない。

 

どうしよう……。

 

ガチャンと金属のドアが開き、誰かが入ってきた。

 

おそらく尋問官だろう。

 

黒髪黒目、とても柔和な顔立ちに優しげな微笑。

 

ただその身のこなしは、全く隙が無かった。

 

そして何故だろうか、その柔和な笑顔がこのうえなく恐ろしく感じた。

 

「おや……?」

 

男は、私の顔をしげしげと眺めていた。

 

「……」

 

私としてはその視線を甘んじて受けるしかない。

 

やがて満足したのか、トリガー大佐と名乗った男は私に様々なことを聞いてきた。

 

質問は多岐にわたり、そのほとんどは知っていて当然、むしろ知ってなければおかしいようなことばかり。

 

国々の名前、大陸の形、文化に学問、人種や生き物、支配者層の話に軍事的な分野から宗教、倫理観も試された。

 

一方、よくわからないことも言われた。

 

例えば、『クリスタルはどこにあるか』。

 

彼らはこの質問が最重要だったらしく、私が何のことかわからないと言ってもなかなか信じてもらえなかった。

 

シルフィードを殺すとまで脅された。

 

必死に訴えた私になんとか納得してもらえたが、そうでなかったらシルフィードは殺されていただろう。

 

やはり予感は正しかった。

 

もし信じて貰えていなければ、彼は本当にシルフィードを殺していただろう。

 

その柔和な笑顔を少しも崩すことなく。

 

その後は魔法やメイジ、使い魔に関して物凄い量をとても丁寧に聞かれた。

 

これもまた隠すことでもないことだったのでひとつひとつに答えていった。

 

それにしてもこれだけ連続して話したのは久しぶりだ。

 

少し顎が疲れた。

 

最後に彼は立ち去り際、私の髪の毛は地毛かと聞いてきた。

 

……本当に、よくわからない。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

そのあと、私はある男の前に連れてこられた。

 

男の名はシド・オールスタイン元師。

 

ここの実質的な支配者だというその男は、傍目には胡散臭いオッサンだった。

 

純白の軍服をぴしりと着て腰に見慣れない形の剣を帯びたその姿は、様にはなっていたが妙に似合っていない。

 

雰囲気からもっと気崩したほうがしっくり来そうだと、私は友人が言いそうなことを考えた。

 

でも出会って最初の一瞬、ほんの刹那の間、私はすくんだ様に身体が動かなくなった。

 

私を下から上まで見た、いや、見切ってきた視線。

 

まるて、巨大な獣の前に投げ出されたかのような感覚。

 

すぐにその空気は霧散し、一瞬過ぎて気のせいかとすら思ったけど、間違いない。

 

何故支配者の前に私のような不審者をひとり、手枷もつけずに会わせたのかわかった。

 

…………どうしてここの人々は私のドギモを抜き続けるのだろう。

 

彼は私と良い関係を築きたいと言ってきた。

 

私に何かをさせたいらしい。

 

……やはり私は、頷くしかないのだが。

 

「まぁ飯でも食いながら話そう。ちょうどここにレーションが二つ『シド様、昼食の用意が出来ました』……チッ」

 

シド元師が机の中から何かを取り出そうとした時、扉が開いてさっきの尋問官、トリガー大佐が入ってきた。

 

トリガー大佐は、美味しそうな食事の乗ったカートを押して机の上に並べていく。

 

……二人分ある。

 

何故か給持までされた、いや、護衛なのかも。

 

 

 

・・・・・

 

 

 

食事中、シド元師はずっと私を見てきた。

 

私はひたすらに出された昼食―――主にサラダを口に運び続けた。

 

食事をしながらふと、窓の外に目をやる。

 

…………?

 

「……ん? あぁ、なんだ? ミリテスの街並みが珍しいのか?」

 

シド元帥に促された私は、この建物の外―――この国の姿を、その時ようやく見たのだった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

(魔法とは違う未知の文明、未知の医療……ここならあるかもしれない……いいえ、関係無い。例えここに無くても、どんな手を使ってでも見つけてみせる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(心を治す方法を、見つけてみせる)

 

 

 

 

 

 

 




【おまけ】


「……シギント、お前最後に寝たのはいつだ?」

治療が終わり戻ろうとするシギントを呼び止めたマズル。

その問いにシギントは不気味に答える。

「コー……ホー……少佐の命令に従い、一日一回……きっちり……寝ております……コー……ホー……」

「……最後に三時間以上寝たのはいつだ?」

「……コー……ホー……」

シギントが指折り数え始める。

その折られた指が両手で足りなくなったあたりでマズルの猫パンチが飛び、シギントはぶっ飛んだ。

「そのまま寝てろ」

「……指揮系統が……違います……その命令には従えません……」

しかし重い技術工作服をズルズルと引き摺り、ゾンビのようにうつ伏せの状態から立ち上がろうとするシギント。

「防衛戦争、フィニスの時、さらにこんなことになったのです……我々は奴らと違い呆気なく死ぬ……何時如何なる時でも即時治療の体制を……その為なら強化剤漬けになろうとぉ……」

しかし呆気なくマズルにのしかかられ、尻尾ソケットがシギントの背部C機関に接続。

「私はライセンス持ちだ、従え。……『給電制御開始』」

あっという間にCエネルギーを吸い取られて動けなくなるシギント。

技術工作補助服はその多機能性ゆえに重いのだ。常人では着るだけで動けなくなるほどに。

それを何とかしていたC機関のエネルギーを抜かれれば、ただの拘束衣と化す。

「あぁ何てことを……コー……ホー……」

すぐに指一本も動かせなくなるシギント。

「うみゃあご、ニャァン(連れて行って身ぐるみ剥いで、もふり寝かせて)」

マズルの指示に従い数匹の軍用クァール達がロープをくわえて走ってくる。

それを器用に動けないシギントに引っかけ、ずるずると引きずっていった。



【B級機密文書】

【技術工作補助服】

もともとは鋼機整備用に開発された強化服の一種。

内蔵された大型C機関及び人工筋肉により玄武兵と腕相撲で勝てるほどの筋力強化に成功し、また、その多機能からくる装備の重厚化が図らずも防御力の上昇に繋がり、技官の保護に一役買っている。

これを用いて整備の効率化を図っており、医療部隊では『立ったまま仮眠がとれるし、とくに強化剤のリミッターが外しやすくていいね』と割りと好評。

ちなみにリミッター解除対策がこの後すぐに取り付けられた。

『前線でも使えね?』という意見はあるにはあったが、『チャカ持ってんのに肉弾戦は非効率』『コストがもったいない』『なにこれ、的?棺桶?』『これを前線に投入するくらいなら鋼機を造ってまわしてくれ!!』などの前線からの貴重な意見(罵倒)から戦場後方での技術士官保護及び作業短略化目的のみで支給されている。


【魔導技術科学化計画】

朱雀各地より奪取した物資の糧食を除く大半は白虎にとって無用の長物であり、意味のないものだった。

ポーション、不死鳥の羽、召喚許可証、テレポストーン、魔導式短銃、光源となるものに至るまで、魔法を使えぬ白虎にとってはガラクタ以下であった。

しかし、これを科学的に解明することにより、朱雀に対して優位に立とうとする計画が上がった。

それがこの【魔導技術科学化計画】である。


これにより消費アイテムに関してはほぼ使用法が確立されており、ヒール、ポーションなどの回復を阻害する『アンチ・ヒーリング・ジャマー』の開発にも成功している。

しかし現段階に於いて、ポーションなどクリスタルから作られたと見られる品々は複製が困難であり、これからの課題を残している。


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