皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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いわゆる小話集です。

視点が入り交じります。


あと、独自設定も混ざります。


~幕間~

~~准将に迫る手~~

 

 

 

sideカトル

 

 

ここ最近非常に忙しい。

 

フィニスの時を乗り越えたと思った矢先の異世界転移、休む暇などあろうはずもない。

 

しかもこれが前線で敵と闘うならまだしも、将校にもなると前線勤務のみが仕事ではなく、書類仕事も加わってくる。

 

これが中々につらい。

 

カードキーをスライドさせ自分の執務室へ。

 

さて、少しだけ仮眠をとってさっさと次の仕事にかからねば。

 

全く、本当に忙しいものだな。

 

……フッ、“忙しい”か。

 

あの頃には想像も出来なかったほど、今の私は充実している。

 

私は今、皇国のために動いている。動けている。

 

昔は皇国の衰退を指を加えて見「お、おかえりなさいにゃん……」……。

 

 

……。

 

…………。

 

………………ハッ!

 

 

一瞬だが意識が飛んだらしい。

 

気を取り直して、だ。

 

従卒が、猫耳つけて、メイド服。

 

つまり、アリアがヒラヒラのメイド服を着てしかも猫耳を頭に着けての状態で"ニャン"みたいなポーズをとっている。

 

目をグッと瞑り、開く。

 

「……にゃん」

 

まだいる。

 

つまり幻の類いではなさそうだ。

 

「熱は……無いな? ここも腫れていない。む、しかし顔が赤いな……疲れているのではないか?」

 

あまりの出来事に思わずアリアの額に手を当て熱を測る。

 

どうやら熱は無いようだ。扁桃腺も腫れていない。

 

だが頭に血が上っているのか顔が赤い。

 

いかんな、彼女は粗雑な口調と年齢とは裏腹にとても気のきく優秀な従卒だったが、やはりここ最近の激務はキツかったか。

 

む?やはり熱があるのか、急速に熱が「触んなァーーーッ!!!!」うぉっ?!

 

突如『怒り』状態になったアリアを何とかなだめ話を聞く。

 

「しかしいったい何故こんな格好をしている?」

 

「だってよぉ……この格好が准将の好みだって」

 

「デタラメだ! 誰が言ったのだそんなこと!?」

 

くっ! こういうことで私をからかいたがるものといえばカロンか?

 

そう私が当たりをつけていると、アリアが爆弾を放った。

 

「元帥様が教えてくれやがりました」

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

~~元帥の苦悩~~

 

 

 

side三人称

 

 

シド・オールスタイン執務室。

 

中ではシドが苦渋の決断を迫られていた。

 

(これだきゃあ……やりたくなかったぜ)

 

鏡の前に立ち、眉間にシワを寄せ、彼は唸る。

 

これから行うことは、皇国の未来に関わる。

 

だが、前世と合わせて100を越える年月を生きた彼でさえ、躊躇わざるおえないほどの所業……。

 

その苦難に心折れ、被った帽子を、元師の外套を脱ぎ捨ててしまいそうになる。

 

しかし彼は、

 

(いや……誓ったじゃねえか)

 

必ず、立ち上がる。

 

不屈の炎を瞳にたぎらせ、決して曲がらぬ己の決意を思い出す。

 

(皇国を、必ず豊かな国に、明日が当たり前に来る国にしてみせるってよ! そのためなら―――)

 

軍帽を被り直し、元師の外套を羽織って立ち上がる!

 

(どんなことだろうとやる! 泥ぐらいいくらでも被ってやる!!)

 

鏡にうつる己の姿を睨み付け、マントを身体に巻き付けるように引っ張り!

 

(やァッてやるぜ!!!)

 

突然執務室の扉が開きカトル准将が入ってきた。

 

「シド様!お聞きしたいことが―――」

 

『ニッポンポン!!!』

 

「ご、ざ……?」

 

この時、カトル・バシュタール准将は異次元に迷い込んだかと錯覚した。

 

目の前に、軍帽を覆面のように被り、元師のマントを奇声とともにバサァするこの国の最高権力者がいたのだ。

 

『……(クルッ』

 

しかも 目 が あ っ た 。

 

 

「し、失礼しま『まぁ待て』うっ!」

 

慌てて廊下に戻ろうとしたカトルだったが、いつの間にか真後ろに接近してきたシドにガッシリと肩を捕まれる。

 

『いいところに来た。お前もやれ』

 

「じ、自分は結構です!」

 

『はっはっは! 君ィ、これは『提案』ではなく『命令』だよ」

 

と、シドは軍帽覆面を外しながら和やかに、実にイイ笑顔で笑う。

 

 

『ヤバイ光景があらわれた!』

 

カトル HP36378 MP0

 

どうする?

 

たたかう

どうぐ

にげる←

 

しかし回り込まれてしまった!

 

シドは 仲間をよんだ!

 

ノア01があらわれた!

 

ノア01のこうげき!

 

カトルは拘束されてしまった!

 

 

いつの間にか現れたノア01ことトリガーは、持っていた『黒く塗装された工事用ヘルメット』『黒い大きめの布』をシドに渡す。

 

その間カトルはトリガーの背負う『パンドラボックス』から飛び出したオクトパスアームに捕まっている。

 

「ファザー、要望のもの、揃いましたよ」

 

「よし、カトルに着せろ」

 

「よ、よせ!やめろ大佐!」

 

「申し訳ありませんが命令ですので」

 

『パンドラボックス』の側面の一部がさらに四ヶ所パカッと開き、大人の腕より少し太い、海蛇のようにしなやかなマジックアームがスルスルスルと伸びて瞬く間に怪しい装備を着せていく。

 

『それで……いったい何なのです?』

 

修羅のごときオーラを立ち昇らせながら、カトル改め『黒マント仮面』は聞く。

 

それに対しシドは、手を後ろに組み、非常に重々しく告げた。

 

「カトル准将……これより行うことは非常に高度な軍事機密だ。いつものようなただのおふざけとは一線をかくす」

 

そのただならぬ雰囲気に『黒マント仮面』カトルも気を引き締めた。

 

ちなみに彼らは真剣だ。

 

「すまんが詳しくは話せん。何も聞かず、今俺がやっていたように『バサァ!』しながら『ニッポンポン!』と叫んでくれ」

 

『「バサァ!」しながら「ニッポンポン」……わかりました』

 

シドの思いが伝わったのか、カトルもそれに応えんとする。

 

重ねて言うが彼らはとても真剣だ。

 

カトルはマントを身体を包むように引っ張り、

 

『……ニッポンポン!!』

 

バサァした。

 

シドはそれを余すことなく瞬きすらせず隅々までしっかりと完璧に完全に丁寧によくよく観察し、

 

「クッ! 駄目だぁ!!」

 

ガックリと膝をついた。

 

(クソゥ、いったい何が足りねえ! 確かにこんなポーズする奴が『ゼロ』に関係する主人公だったはずだ! なのに思い出せたのが『にゃーん』する少女と暗黒微笑の小僧、土下座する親友を踏みつける小僧に揺れるオ○パイ……だというのに最終的に高速で踊る仮面の主人公に繋がるのは何故だ!)

 

『あの、シド様、そろそろ脱いでも?』

 

「あぁ……無理を言って悪かった」

 

ここまでやったにも関わらず原作知識を思い出せなかったシド。

 

さすがに少々凹んだようだ。

 

(もういい……そもそもこんな馬鹿デカイ『イレギュラー』が混じった時点で原作崩壊してるだろ。それで足元掬われるよかマシだ)

 

そうさっさと頭を切り替え、シドはカトルに意識を向け直す。

 

「で? ノックもせずに入って来たんだ。それなりの内容だろうな」

 

キリリと表情を引き締め、全身に覇気を纏う。

 

そのあまりの切り替えの早さに頭痛を抱えつつ、カトル准将は口を開く。

 

「……私の従卒に、何を吹き込みましたか」

 

「あん?……あ」

 

シドは一瞬怪訝な顔をし、次いで『ヤッベェ』という顔に。

 

「……(ジト目」

 

珍しいカトルからのジト目に若干パニックになったシド。

 

「い、いやたまたまなんだ!昨日夜たまたま『あぁ今日も一日仕事頑張ったなぁ頑張り過ぎて身体の固まり具合ッベェわー』とか言いながらほぐしがてら散歩してたら迷子の少女を見かけてな!話しかけたらなかなか気が合っていろいろ相談とか乗ってやってたんだ!」

 

「昨日、アリア従卒は私の仕事先に挨拶回りをしていたら元師に呼び出されひどく吃驚したと。その時に『ぬこみみ冥土セット』を渡されたと」

 

さらさらと流れるように犯行を暴かれるシド。

 

まさに『犯人はお前だ』な状況。

 

「……おうとも俺が呼んださ!悪いかってんだ!!」

 

実にアッサリと犯行を認めた。

 

そのまま身振り手振りを加え、無駄にカリスマオーラをばらまきながら演説。

 

「いいか!?元師なんてヤクザな仕事は大変なんだよ!ひがな一日中机仕事で休み無し!周り野郎ばっかで癒し無し!下手に愛人も作れねえし最近じゃ息子に食事制限をかけられてる始末だ!だから!」

 

少しタメ。

 

「少しくらい癒し求めてもいいだろうがああぁぁぁ!!!」

 

魂の慟哭が、完全防音の執務室に響いた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

~~クンミの追憶~~

 

sideクンミ

 

 

ひゅうと、荒野の乾いた風が私の頬を撫でた。

 

薄れていた意識が何かの気配、いや予感のようなものを感じて顔を上げる。

 

「んっ……あ」

 

遠く彼方、山脈を越えてミリテス艦隊が飛行してくるのが、ここからでも小さく見えた。

 

「ハハッ……最悪……」

 

希望持っちゃうじゃないか。

 

わかっている。

 

彼らの任務はおそらく『玄武クリスタル』の確保だ。

 

私はたぶん、使命を果たし『昇華』したと思われているだろう。

 

そして今の皇国はクリスタル化したルシは回収しない。

 

理由は色々あるが……まず余裕が無い。

 

下手をすれば、いや、確実に『朱雀』と『蒼龍』が同盟を組んで来る。

 

西から海を越えて『空の覇者』が、東から『ビッグブリッジ』目掛けて特攻兵器『召喚獣』が。

 

二方面から同時に攻めてくる可能性がある。

 

……まぁあの人曰く、『蒼龍』の参戦の確率は低いらしい。

 

次に白虎のクリスタルの扱いだ。

 

『クリスタルに対する依存からの脱却』。

 

これをあの人は近々打ち出していく方針なのだ。

 

そこへ、“一人で仇敵『玄武』を滅ぼしたルシ”なんか出てみれば。

 

実に鬱陶しいことこのうえない。

 

それに人は形あるものを信じたがる。

 

クリスタル化したルシなんて格好の的だ。

 

まぁクリスタル化していようが『アルテマ弾』のあの威力だ、欠片も残ってないと思われているだろう。

 

実際は、『アルテマ弾』の爆発の余波エネルギーでこうやって無様に岩と融合してるわけだが。

 

こんな風になっても生きている、『ルシ』ってのはほとほと化け物だ。

 

 

それにしても、『空の覇者』……か。

 

「ククッ……」

 

もう違う。

 

これからは違う。

 

視線を巡らせる。

 

空の向こう、『空中戦艦』から兵士を満載しているであろう航空機が飛び立つ。

 

それを護衛するように飛ぶ影。

 

飛行型鋼機『ヘルダイバー』だ。

 

あの人と私と、私よりも優秀な後輩と、鋼室のみんなで造り上げた傑作。

 

人間の作り出した、人間の力だ。

 

これから空は、我ら皇国のものだ。

 

「さて、『使命』を果たすか」

 

私の『使命』。

 

それは、『ルシとしての力と記憶をふさわしきものに与えること』。

 

……そうだな、カトル准将辺りが相応しそうだ。

 

彼なら、この『限界を越えて機械を動かす能力』を上手く使ってくれるだろう。

 

 

……最期に、故郷を見たかったな。

 

 

みんなに、会いたかったな。

 

 

鋼室のみんな。

 

初めて出来た後輩のあの子。

 

出来の悪かった弟。

 

カロン曹長。

 

シャルロ中佐。

 

フェイス大佐。

 

カトル准将。

 

そして……あの人。

 

……ククッ。未練がましいな。

 

さあ、始めよう。

 

唯一巻き込まれていなかった左手に、ルシの紋章が現れる。

 

そこに力を集める。

 

私の、全てを……!

 

『クンミ……聴こえるかクンミ』

 

ククク……最悪、未練がましいにも程がある。

 

あの人の幻聴まで聴こえる。

 

『クンミ様ぁああああ!!!!!!』

 

ハハッ、あの子のも。

 

……でもまあ、悪くない。

 

そうこうしてる内に準備完了。

 

力の波動の余波か、辺りが酷く鳴動する。

 

後はこの力を解放するだけだ。

 

そうすれば私は死に、新たにカトル准将がルシとなる。

 

「皇国の未来に……」

 

眩い光を放つ左手をーーーもう目が限界なのだろうーーー暗くなった空へ掲げる。

 

「シド·オールスタインに……」

 

 

 

 

「栄こ『それちとタンマ』うぁ……え?」

 

 

 

 

轟音、砂ぼこりが舞う。

 

目の前に降ってきたソレがすぐさま九つの尾を広げ、緑白色の光の柱を空へと建てる。

 

すると解放されようとしていたエネルギーが制御を失い、自分の中へと流れ込んだ。

 

これは、この機体は、私の造った……!

 

「クリスタルジャマー?! 何故ここに…!」

 

こいつはまだ私でないと制御出来ないはずだ!

 

オリエンス中に満ちるクリスタルの微細な波動、それを正確に探知、相殺するのは巨大な演算機械が必要だ。

 

私はその壁を能力で無理矢理突破したが、まだ皇国にそこまでの技術は……ん?

 

土埃が晴れてくると、その機体の背面に太い、私の胴ほどもあるケーブルが。

 

その先は、上に伸びている。

 

さらに辿れば、いつの間にか真上に来ていた空中戦艦に繋いである(どうりで暗いわけだ)。

 

これはいったい……?

 

……ッ! そうか!!

 

「演算機を空中戦艦に乗せてきたのか……!?」

 

なるほど、これならジャマーを発動させられるだろう。

 

実験段階の機体でも持ってき……なんだこの鳴動、というより…振動?私の力じゃないぞ?

 

何かが近づいて……。

 

 

『見ぃつけたぁああああああ!!!!!!!!』

 

土煙をまき散らしながら目の前で大型の鋼機が停止する。

 

昆虫のような六本の脚部、最新型の連射式ランチャー砲、高性能カメラ、そしてなによりも目立つ蠍のごとき尾。

 

これは、あの子の……!!

 

 

『無事ですかクンミ様!!』

 

「イネア!? どうしてお前がここに?!」

 

『この「ヴァジュラ」の実戦演習に来ました!』

 

「これ、お前の開発していたヤツだよな! 完成したのか!」

 

『いえまだです。しかし戦闘能力は十二分に備えており、実戦は可能です! 今回はクンミ様の地上探索部隊に加えてもらいました!』

 

相変わらすスゴい行動力だ……。

 

む、昔はもうちょっと内気なヤツだったのにな。

 

『姉さん! 無事か!』

 

と、そこにもう一機『ヴァジュラ』が駆け込んできた。

 

ていうか、この声……最悪だ。

 

「無事なものか……お前が来たから最悪な気分だ」

 

『っく! 弟との感動の再開にその態度は最低だぞ!!』

 

「あぁもうわかったわかった。私は無事だからさっさと前線に行け。残党はまだまだいるぞ。……ソイツの力、見せてくれるな?」

 

『っ!は、はい!! 了解しました!玄武の残党どもに引導をくれてやりに行ってきます!! オイ! 行くぞ!!』

 

『姉さん……あまり指揮系統を乱さないでくれ。まあ元々その指令もあるからな。行ってくるよ』

 

そのままガシャガシャと走って行った。

 

やれやれ、なんだかなぁ。

 

ついさっきまで死ぬ覚悟を決めていたのに……どうなるかわからないもんだね。

 

空、蒼いなぁ……あ、リフト降りてきた。

 

 

 

テキパキと、自分の周りに仮設本部が置かれ、体制が整っていく。

 

ぼんやりと、何だか気が抜けた私の視界の隅で、目の前の量産機に強化兵が上る。

 

と、背面ハッチが開き中からも強化兵のパイロットが出てくる。

 

交代か。

 

 

 

ん……?

 

あの降りてきた強化兵……なんか、おかしくないか?

 

腰を伸ばしたり体をひねったり、妙にオヤジ臭い。

 

さらに何をするでもなくうろうろとしている。

 

ていうか、腰に下げてるあの刀、あの人(・・・)のだよな?

 

それにさっきあの人の幻聴が聞こえたよな?

 

……い、いや待て。

 

確定するのはまだ早い。

 

そうだ、普通に考えてあの人が変装して生きてるかもわからないルシの回収に来るはずがない。

 

もう少し様子を見よう。

 

そいつは傍にあった機材の上に、

 

 

「あ゛ぁどっこいしょ」

 

確定。

 

あんなオヤジ臭い座り方する皇国兵がいるか!

 

「おい……!」

 

「あん? ッ! ハッ! いかがされましたかクンミ様!(裏声)」

 

「こんなところでなにやってやがる」

 

「……元帥閣下よりルシ・クンミ様の捜索を「な に や っ て や が る ?」」

 

白々しい裏声に、自分でもびっくりするくらい低い声が出た。

 

するとソイツは、

 

「いいじゃねえか別によ! 俺だってな、特攻命じた手前どの面下げてとは思ったぜ!? でも心配だったからいてもたっても居られなかったんだよ! 納得しろ!!」

 

なんと逆ギレしてきた。

 

心配されていたのは嬉しいし、実際この人が本当は投下を自動機械にやらせようとしていたのは知っている。

 

だがそれを遮って立候補したのは自分だ。

 

何故なら『アルテマ弾』はまだまだ実験段階の兵器だったからだ。

 

そしてあの作戦、『玄武の殲滅』だけは失敗する訳にはいかなかった。

 

ゆえに確実を期すため、私が行ったのだ。

 

……私が『魔導院殲滅』に失敗した償いと、完全にクリスタルに意思を奪われ、傀儡となる前に恩を返したかったのもある。

 

あ。

 

『だぁあちくしょう!!! 言うと思ってたんだ! それに俺が反論出来ねえのもな!! クソッ、これが歴史の修正力か……まあいい、全く備えはしとくもんだぜ。……クンミ、理論上ルシなら絶対生きて帰って来れる機体を出す。パッと投下して、さっさと帰って来い』

 

あの時私は、気休めだと、この人もわかってるはずだと思っていた。

 

アルテマ弾は防げない、文字通りの決戦兵器だ。

 

投下すれば、投下した者も助からないって。

 

……信じて、くれていたのか。

 

 

 

 

 

いやまて。

 

 

「ッだからって!立場わかってンのか!!」

 

流されかけたがそれとこれとは話は別だ!!

 

それに喉まで出かかった台詞を何とか飲み込む。

 

あまり大きな声では言えないが、ぶっちゃけよう。

 

今の皇国は、この人のカリスマでもっている。

 

国土は痩せ、農耕機械の発達は限界に達し、皇が治世を投げ、あとは皆で滅びを待つのみという厭世感が蔓延していたあの時代。

 

それをこの人は、腐り切っていた空気を吹き飛ばし、古い時代を破壊して、希望の未来を掴み取らんと立ち上がった。

 

言い方は悪いが半ば自暴自棄になっていた皇国民を扇動し、渦巻き腐るだけだった不満と緩やかな絶望を前へと、希望へと吐き出させたのだ。

 

つまり、皇国にとってこの人こそが希望なのだ。

 

それが……!

 

「アンタがホイホイ前線に出向いて討ち取られでもしろ! 終わっちまう(・・・・・・)だろうが!!」

 

キレた私にシド様はバツが悪そうに反論した。

 

「あーもーわかっとる! ちゃんと護衛にハンマと■■■■連れてきとる! あと影武者(トリガー)に政務代わってもらっとるし」

 

「ハンマに■■■■……『レーヴァテイン遊撃隊』ですか」

 

「その通り!」

 

ッ!……最悪、このやたら仰々しい声、あのバカだ。

 

「ファザーよ、だから言ったのだ。ファザーのカリスマは変装程度では隠せんと!だが安心しろ。この我と我のレーヴァテイン■■■■カスタムある限り、例えルシが来ようが返り討ちにしてみせよう!!」

 

「おい■■■■、ファザーはお忍びだっつってんだろ? お前作戦の趣旨理解してんのか?」

 

緑白色の光を放ちながら、ふわりと空から人間が降り立つ。

 

対召喚獣用特殊強化服『レーヴァテイン』。

 

シド様がほとんど一人で設計、開発した戦略兵器。

 

……これ一着でシド様がどれだけ天才かがよくわかる。

 

大量の空気の吸収と圧縮機構、使用者を守るための新型耐衝撃素材、空中での姿勢制御ユニット、ソレを可能にする多機能なマイクロチップ、空中戦艦に繋いでの超長距離通信機能。

 

少なくとも百年は先の技術だ。オーバーテクノロジーの塊と言ってもいい。

 

「おーぅ、お前ら作戦変更な。このままここで俺の護衛についてくれ。あと上にいる技術者たちと工作部隊も呼べ。クンミの発掘開始だ」

 

そう言ってシド様はヘルメットを取り、ニヤリと悪役のように笑った。

 

……もう、好きにしなよ。

 

 

 

 

 

白衣の研究者どもが非常に楽しそうに働いている。

 

機材をいくつも岩と私に取り付けて検査を行っている。

 

そのうち調査が終わったのか、シド様の周りに集まって報告を始める。

 

 

「クンミ様の取り込まれている岩は玄武岩(ゲンブいわ)ですね……」

「通常の掘削機では歯が立ちませんよ」

「しかもコレ、完全に“融合”してます。クンミ様のみを取り出すのは不可能かと……」

 

う……わかってはいたが改めて言われるのはつらいな。

 

シド様は黙考し、顔を上げて指示を出す。

 

「……よし、上に繋げろ。“アレ”を出せとな」

 

「な!アレをですか!?」

「無茶です! まだアレは構想段階で」

 

「この場にはクンミがいる。ならばアレの性能を底上げできる」

 

何やらシド様が始めるようだ。

 

また何か新型を……?

 

と、空中戦艦からゆっくりと、リフトが降りてくる。

 

 

 

そこにあったのは……コロッサス?

 

 

『両腕に、ぶっといドリル、くっつけた。Byシド』

 

「これぞ! 鉱山での掘削作業効率化と自衛力の強化を目的とした、ド・コー八型新型掘削鋼機『ドリュー』だ!」

 

 

……。

 

 

…………。

 

 

………………。

 

 

とりあえず、私は大きく息を吸い

 

 

「アホかぁあああああああああ!!!!」

 

 

魂から叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

意識がゆっくりと浮上する。

 

 

いつのまにか寝てしまっていたようだ。

 

突っ伏していた机から身体を起こす。

 

視界にまず入るのは、白衣の長袖から覗く自分の新しい手。

 

あの後、ドリューで最低限の部分まで岩を削り、そのまま研究所まで帰還した。

 

そこで私は―――右手と両足を切除した。

 

そして代わりに研究段階の義体を装着し、研究に復帰したわけだ。

 

 

「クンミ様!」

 

「どうしたイネア?」

 

「元帥がお呼びです」

 

シド様が?

 

アルテマ発電のことか?

 

エネルギー出力の安定に課題が残ってるんだが……いや、報告にあげたな。

 

また何かオーバーテクノロジーを発明してきたのか?

 

「わかった。すぐに行く」

 

 





これにて一旦更新停止。

詳しくは活動報告にて。


















男がいた。

成人男性が見上げるほどの巨躯、頭と体を赤銅色の鎧兜で覆い、背には丸い大盾、剥き出しの両腕は筋骨隆々。

片手で肩に担ぐように手にしているのは、大剣を通り越して巨剣。

その男は、無人の要塞となった『ビッグブリッジ』をさ迷っていた。

そして男は、

「ここは……どこだ……」

理性を失っていた。

眼には暗く狂暴な光が宿り、さ迷う足取りは獲物を求めていた。

「余は、だれだ……」

呟きは己への問いかけ。

「知らぬ」

霞掛かった思考は応えない。

「わからぬ」

それにとてつもなく苛立った。

じわじわとつのる怒りと何かへの焦燥、そして深い喪失感。

数歩歩き、急激に苛立ちが溢れだす。

そのまま噴火してくる激情を爆発させ叫ぼうとし――――――


「わぁかっっっっ!!?」


唐突に、思考が透き通る。

男は思い出す。

自分が誰なのかを。

自分が何なのかを。

自分が何を守れなかったのかを。

そして、それが二度目(・・・)であるということを。


「そうだ……」

男は思い出す。

「余は……」

自分が、

「俺は……」

前世で何と呼ばれていたのかを。

その時、突如として男の前に奇妙な物体が現れた。

男は直感的にそれが“扉”だと感じた。

何故ならば、その光の向こうから、忘れようもない“邪悪”の気配を感じたからだ。

「…………感じるぞ」

男は迷うことなく光へと進む。

「奪い、貪り……喰らい尽くしに行ってやる」

その瞳に、憎悪の炎を宿して。

「魔王……!」

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