皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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お久しぶりです!
ようやく出来ました!!半年ぶりの更新です!

で、ちょっと後書きにて反省会を……。

あ、この間、どなたかの作品の感想欄で『後書きは読まないし表示もしてない』と言った感想を見かけました。

……あの、自分、後書きにすごい重要な情報乗っけてたりします。

…………もしかして、ノア装備の解説とか『~幕間~』とかの後書き型伏線も全然、読まれてなかったり、しちゃったり……?


討伐軍、迎撃軍

ガリア王国。

 

タバサの祖国で、始祖ブリミルの子供の1人が興した国である。

 

ハルケギニア屈指の大国で、魔法先進国でもあるこの国。

 

メイジの数が多く、それ故その軍事力は非常に高く、その規模も周辺諸国でも群を抜いて高い。

 

その強大な軍事力は二つの軍団に支えられている。

 

片や両用艦隊(空も海も渡ることができる“フネ”の艦隊のこと)を中心に編成された空中移動要塞軍。

 

片や“大粛清”の折に新設された、奇怪獣(キマイラ)部隊を頂点とした陸上機動装甲軍。

 

そしてここは、ガリア王国西部に位置する海岸要塞都市『サン・マロン』。

 

ここは空軍と陸軍両方の本部が置かれている、王国最大の軍事拠点。

 

なお、この二つの軍団の仲は非常に悪い。

内心敬意を払い合ってはいるのだが、お互いに『祖国を守っているのは自分たちである』という自負があり、『相手は新参(老害)である』という意識があるので、些細なことで決闘騒ぎが巻き起こる。

 

ならば何故本部が二つともそこにあるのかと言われれば……そこには『ガリア王の思いつき』という重大な理由がある。これ以上ないくらい重大だ。

この重大さは20ページほどかけて、洗練された表現技法と情緒豊かな美しい言葉の羅列でガリア王の御意思を解説した文書が公開されているので、死ぬほど暇ならば一読するといい。

 

 

 

陸上機動装甲軍本部。

 

その作戦司令部。

 

中央にガリア王国の巨大模型の置かれた部屋で、数人の武官がグルカ大将に報告を行っていた。

 

「グルカ大将、兵の動員は順調、空軍からの武装輸送船に軽歩兵3000、弓兵1700、銃兵800、メイジ300を乗せて送り出します」

 

「これに火竜山脈の向こう側の戦力と合わせ22000の軍団とします」

 

「総指揮は向こう側の貴族であるルーベル侯爵に任せることになりました」

 

「兵糧の四割、ならびに基本武装と矢などの物資はこちら、残りの物資は向こうに供出させることに決定しています」

 

「出立準備の完了したフネから送り出しています。間もなく第一陣が出ます」

 

これを聞き、グルカ将軍は満足げに笑う。

 

「結構! 相変わらず素晴らしい手際だ諸君!!……んで?聞きたいことがあるんじゃねえの?」

 

室内に漂う微妙な空気に、グルカ将軍は質問を促した。

 

代表して一人が進み出て質問する。

 

「グルカ様、我々は、何と戦うのですか?」

 

王より下された命令は『ガリア南部に現れし賊徒を打ち滅ぼせ』。

 

それだけだ。

 

動員令はグルカ大将が下し、自分たちはそれに従って、兵を送り出した。

 

しかし常識的に考えてたかが“賊”に二万もの軍勢を送り出すわけがない。

 

それとも“賊”とはエルフの集団だろうか?

 

それならばまだ納得できるが……それならそれでやはりわからないことがある。

 

「それにこの最低限の戦力、屑兵で出来たハリボテの軍団はいったい何でありますか?その上指揮権を預けるなどと」

 

そう、この軍は数は立派だが、参加する兵の中身は平民に傭兵に奴隷にオークなどの凶暴な亜人にと、ろくに訓練されていないうえに装備もお粗末な烏合の衆。

 

通称『屑兵』。

 

本来は最前線で使い捨てるための兵士たちだ。

 

そのうえその軍勢の指揮権の譲渡。

 

ありえないにもほどがある。

 

グルカ将軍はその疑問に対し、こともなげに答えた。

 

「試金石(おためし)だ」

 

空気が、凍った。

 

「順番に答えていくぞ。まず今度の敵サンだが『正体がわからん』。ある程度の情報はあれど、お前らじゃとても信じられん内容だ。まだ『土メイジが金山を錬成した』なんて冗談の方が真実味がある。……だが一笑に伏すには俺の知識と勘が否定する」

 

そんな空気など知ったことかとグルカ大将は続けた。

 

「まぁ現段階での情報を一言でまとめると、敵は『国家』だ」

 

「国家……?」

 

「『ゲルマニア騎士』」

 

「っ!?」

 

武官たちがざわめいた。

 

「あれと同じようなナニカが、あれと同じように唐突に現れ、今この国を脅かそうとしている……らしい。だがこれはまだ不確定な情報だ。他所にはもらすな。これがマジなら相当ヤベェ」

 

グルカ大将は室内の武官たちを見渡して言う。

 

「てめぇら、この一戦がどうなろうと気をしっかり持てよ。勝てば俺の失策、何もかも勘違いでメデタシメデタシ。俺の地位が揺らぐだけだ。だが……おそらくほぼ確実に負ける。それも大敗北で」

 

「なっ!?」

「そんな馬鹿な!」

「二万ですよ?!そう易々と負けるはずが…」

 

ない?本当にそうだろうか?

 

もし自分達が、あの『帝政ゲルマニア』を築いた『騎士団』を相手に、屑兵たったの二万で戦えと言われたら?

 

「かつて『都市国家ゲルマニア』に流れ着いた彼らはボロボロで、難民と変わらん連中だったそうだ。だが今回はぴっかぴかの国がまるまるひとつ。さて、どうなるかね?」

 

にぃと獣のごとく笑みを浮かべ、グルカ大将は楽しそうだ。

 

「まぁ結局勘違いだったらいいんだよ何度も言うが。別にこの地位に愛着もねえ。どうせ俺はあの王に気に入られてここに座ってるだけだ。この椅子に座りたきゃ、今からでも命令撤回して指揮権取って、この戦で手柄でも立てて王におねだりしな。後押しもしてやるぜ?」

 

どことなく楽しそうに、“ぜひそうしてくれ”と言わんばかりの態度に、しかし誰も頷きはしない。

 

何故なら、この男の“知識と勘”は、まず滅多にハズレを引かないのだ。

 

それを彼らは『大粛清』の際にしこたま思い知らされたのだから。

 

いや、そもそもこの陸上機動装甲軍というのは、その『大粛清』の折に活躍した者たちなのだ。

 

『大粛清』。

 

それは現ガリア王である『無能王』ジョゼフ1世が、即位の日に行った宣言に端を発する歴史的大事件。

 

ガリア王に恭順を示した貴族『だけ』を残し、すべて皆殺しにされたのだ。

 

その宣言の内容はこうだ。

 

『家名に因らず、血筋に因らず、能力に因らず、ただ余に忠を示した者のみ生きることを許可する。それ以外はことごとく絶えよ』

 

もちろん貴族は大反発。

 

王国はすぐさま真っ二つに割れた。

 

(どんな無能のカスでも)始祖の血を引いた王がいなければならんという王家派、もはやあれには国を任せておけんという貴族派。

 

もちろんそこには様々な欲望や思惑や思想が混じりあっていた。

 

例えば『無能が跡継ぎを作り次第弑してしまおう』という者、『これを機会に自分が王になろう』とする者、『どちらにも血族を散らして家が絶えぬように』する者などなど。

 

さらにその混乱を虎視眈々と見つめる諸国。

 

不安におびえる民衆を扇動できないか画策する宗教都市国家『ロマリア連合皇国』。

 

さっさと終われ!どうか飛び火してくれるなと『トリステイン王国』。

 

心底どうでもいいと『アルビオン王国』。

 

対岸の火事、でも貴族派が勝ったらこっちと同じこと考えそうだから消えてほしい『帝政ゲルマニア』。

 

戦争だ!稼ぎ時だ!!と『クルデンホルフ大公国』。

 

こうして、王家派と貴族派のかつてない規模の大内乱の火蓋が斬って下ろされた。

 

十日で終息した。

 

ひどく、あっさりと。

 

貴族派の全滅、いや、絶滅で。

 

その戦いには『魔術師の塔』より開発された、合成生物『奇怪獣(キマイラ)』が歴史上初めて実戦投入され、おぞましい戦果を挙げた。

 

そして奇怪獣を駆り、その粛清の先頭に常にいたのがこの男。

 

歴史上最強の、メイジ殺し。

 

そう、この男はメイジではないのだ。

 

どこから来たのかすらわからぬただの傭兵。

 

無能王がどこからか雇い入れた、謎の存在。

 

わかっていることは、例え今この場にいる武官全員が裏切り、杖を向けていたとしても、皆殺しにされるのは確実であるということだ。

 

「ま、シュレディンガーの猫的に今ンとこは『天下泰平、世は全てこともなし』、穀潰しの屑兵どもの一部(・・)を使い潰すにはいい機会だ」

 

この返答に、室内の男たちは血の気が引く思いだった。

 

シュレ某の猫がどうしたかは知らないが二万の軍勢、引いては二万もの命、それをこの男はこともなげに『使い潰す』と言ったのだ。

 

『無能王の鈍刀』とは伊達ではないのだと、彼らは改めてこの男の恐ろしさを認識した。

 

「し、しかし、いくら屑兵とはいえ、万一があれば、そ、それに今はレコンキスタなるものも存在します。兵力は温存して効率的に回すべきでは?」

 

あまりな言い草に、擁護と実利半々の意見が出る。

 

「んあ? あぁ、そいつらだったら気にしなくていい。連中は長くはねぇよ。それにアレは……そう!お前らも大好きな陰謀ってヤツなんだ。気にしちゃやーよってな」

 

それをさっくり一蹴し、グルカ大将は部屋から退室していく。

 

だがその直前で止まり、クルッと振り返る。

 

「あー……あれか?『もしかしたらこの国でも夢見たバカが反乱起こすかも』とか考えてたりもすんのか?」

 

それに対しグルカ大将はカラカラと笑い、答えた。

 

それはもう、『明日は晴れだって?そりゃいい!洗濯物を干そう!』とでも言うようにごく当たり前の態度で。

 

「いいじゃねえか。屑兵の補充が楽だ」

 

悪魔だ。

 

彼らは心の底からそう思った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

グルカ大将が供も付けずに廊下を歩いていると、前方から見覚えのある影がゆらゆらと近づいてきた。

 

黒いローブに全身を包んだ男だった。

 

それも“ゆったり”どころか“だぼっだぼ”に包んだ。

 

そいつは若々しい青年の、奇妙な訛りを感じる声で話しかけてきた。

 

「グルカ将軍、グルカ将軍!新しいキマイラがデきたヨ!トロールを二つ混ぜてミたンだ。今度の戦に連れてってヨ。壊してもイイからサ」

 

「ドクトル・ファウスト……いつも言ってるだろ。持っていくのはいいがそういうことは早く言ってくれ。あと運用できるだけの数も揃えろ」

 

「ダイジョブ!! 今回は全部で五十コ作ったシもうフネに乗っけたかラ!」

 

「事後承諾かよ……次やったらそのローブひん剥いて吊るすからな」

 

「ヒィッ!? ご、ごめんヨ!!」

 

「たく……」

 

そういいつつも、割りとどうでもよかったのか、グルカ大将は話を変えた。

 

「なぁドクトル・ファウスト、連射できる銃ってのを、想像したことがあるか」

 

「ン?」

 

「こっちが火球一発、矢ぁ一本飛ばす間に、十数発の鉛を撃ち返してくる。それも一人で、な。そんな便利な玩具を想像したことがあるか」

 

「僕にはヨくわかンないネ〜。ソレはボクの知りたイことと離れてル。ボクの欲望に反シテる」

 

ぐねぐねとローブを蠢かせながら、ファウストは答えた。

そこにもうひとつ、グルカは気紛れに質問を重ねた。

 

「ファウスト、テメェは何がしたい?」

 

「ボク? 僕はヤりたいことがシたいヨ?」

 

ファウストはグネグネと歩き始める。

 

「ボクは知りタイ。もっともっともっともっと、知りたいのサ」

 

熱に浮かされたような口調のままで去っていくドクトル・ファウスト、その後ろ姿を見送ったグルカ大将は、呆れた様子でぼやく。

 

「……やれやれ。この国の上層部はどいつもこいつもイカレてやがる。ロクな奴が居ねえ。空の大将みたいなマトモな奴が欲しいぜ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

場面変わってガリア王国南部、火竜山脈の向こう側。

 

ドームに比較的近い位置に存在する、特に特徴もなければ特産品もない、モブ村。

 

そのモブ村の村長の家に、若者が駆け込んできた。

 

「村長、また“白の人々”が……」

 

「またか、最近多いな。今行くよ」

 

初老に差し掛かり、白くなってきた髭を撫でながら、村長は早歩きで広場に向かう。

 

他より少し大きいというだけの家から出て、村の中心にある広場(ただの空地)に行けば、そこには白尽くしの一団が。

 

「おはようございます皆様。本日はどういったご用件で?」

 

「おぉ村長殿!おはよう」

 

最近訪ねてくるようになった見慣れない格好の異国の人間。

 

一人を除いて全員が統一された、銃と剣を一体化させた奇妙な武器を持つ白い格好の男たち。

 

そして彼らを率いる、やはり白い、上等そうな服を着て、つばのある白い帽子を被った、目元を覆う仮面をつけた男。

 

マントをつけていないということは貴族ではないのだろう。

 

だが決して傭兵団やごろつき連中といった類ではないのはわかる。

 

いったい彼らは何者なのか。

 

村長は(彼らの正体なんぞ知りたくもない。面倒ごとだけは絶対にごめんだ)と考え、深くは聞いてこなかった。

 

彼らは(何のためかは知らないが)地形や動物の有無を調べ、よくわからない道具でよくわからないことをし、その際村に立ち寄って対価(それも金貨!)を払って村の者から物を買ったり世間話(天気や作物の話が好きなようだ)をしたりする人々。

 

それでいいのだと、村長はそれ以上は考えなかった。

 

それにたまに来る傭兵団や、ごくまれに現れる亜人や盗賊に比べればよほど話も通じるし礼儀もある。

 

ならばつかず離れず程度の関係にとどめておこうと、そう考えていた。

 

ある意味それは正解で、いろんな意味で失敗で、しかしおそらく奇跡的に大正解だったのだろう。

 

「今回は少し込み入った用件でな、悪いが我々に協力してもらいたい。もちろん相応の謝礼は用意する。おそらくこれから長期的に、それも大規模に我々の部隊が駐留する。それを許可してもらいたい」

 

「は、そ、それは村の中に入れろと?」

 

「そうだ。あと人手も貸してもらいたい。食料などはこちらから支給するし道具も用意する。ただこちらの指示に従ってもらう」

 

「そんな!!」

 

いつになく威圧的な態度に驚いてしまう。

 

それにこんな平凡を絵に描いたような村に住む人間に、貸せる人手などないのだ。

 

朝起きて夜寝るまで、誰もが生きるために様々なことをこなさねばならない。

 

だというのに、長期にわたってそんなことをしたらこれからの生活が立ち行かなくなる。

 

だが男は、やはり威圧的に命じてくる。

 

「残念ながら君に、いやこの村に拒否権は無いのだ」

 

貴族でもないのに、このあたりの領主でもないくせにそんなことを言われ、つい村長は言葉を荒げ――――。

 

「なっ!? そんな勝手なことが」

 

許されると思っているのか!?……と、村長は続けようとして口をつぐんだ。

 

目の前に立つ男、その仮面の奥にある冷えた鉄のような目が見えたからだ。

 

男は言った。

 

「村長、おそらくもうお分かりだろうが、我々はとある国、というか、あそこから派遣された軍隊だ。上からの命令には逆らえん」

 

巨大な鉄の山を指差しながら、男は懐から丸まった紙を取り出し広げる。

 

「そして今回我々に下された指令は『活動拠点の確保』。そしてだ、この命令書のここ、我々の言葉で『手段は問わず』と書いてある。……我々もあまり強硬な手段に訴えたくはない。数日とはいえ交流もあるし何より弾がもったいない……金を払うと言っている内に、頷いたほうがお互いのためだぞ」

 

「ッ……?!」

 

ちらと見れば、いつの間にかあれほどいた他の白い連中が減っている。

 

見渡せば、減った分は村中に散っていた。

 

一人など小さな子供と話していた。

 

武器を持ったまま。

 

目の前の男は、ギィと口を歪めて嗤った。

 

「それにだ、村長。今のうちに我々に、いや、我ら『ミリテス皇国』に恭順を示しておいたほうがいい。我々は、戦争状態に陥った敵国の捕虜を取らないことで、元の世界では有名だったのだよ」

 

もはや逆らうことはできなかった。

 

「わかり、ました……」

 

村長が頷くと、男は空気を一変させて朗らかに笑い、上機嫌に言った。

 

「その決断に感謝する。なーに村長、安心したまえ。前線はもっと向こうだから戦火には巻き込まれないし君たちは魔法が使えない。つまり『ミリテス皇国』の新たな同朋にもなり得る。もしかしたら今と同じかそれ以上の暮らしが待っているかもしれんぞ?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「弾薬の集積急げー!!」

「九〇二部隊、集合しました!」

「各隊は輸送車に乗員し迎撃線に迎え!急げよ、もうすぐ次が出る!」

「鋼機の換装作業を早めろォー?! ふざけんな!こちとらフル回転でやってんだ!ネジの二、三本トんでてもいいならやってやるよ!」

「砲型ニムロッドは車輌に、陣型ニムロッドは空中戦艦に搭載だ!間違えるなよ!!」

「オイそこを退け!! 鋼機が通る! 轢かれたいのか!!」

 

おびただしい数の兵士達が走り回り、次々に兵員輸送用車輌に乗り込んでいく。

 

もしこの光景をハルケギニアの軍人が見ていたら、その規模を理解してしまったら血の気が引いただろう。

 

数多の人間が一個の生き物のように移動する練度、完璧に統一されている武装、決して途切れぬ人の海。

 

これが意味するのは、『この人海全てが正規兵である』ということだ。

 

そしてそのカラクリを彼らが理解することは決してないだろう。

 

貴族にとっての戦争とは、『貴族がその誇りと責任をもって行う』ものであり、そのために騎士団や常備軍があり、平民は『数合わせ』に近い。

 

だが『ミリテス皇国』は『国民皆兵』。

 

老若男女関係なく国民一丸となって戦争に参加する。

 

といっても流石に碌に訓練もしていない女子供や退役老人を戦争に駆り出したりはしない。

 

そういう気概があるだけで。

 

それでもその戦力は膨大であり、オリエンスにおいては最大動員兵力数では他三ヶ国の合計を上回っていた。

 

輸送車輌の中では前線に向かう兵士達が話し合っていた。

 

 

 

とある輸送車両の内部。

 

部隊長が戦意高揚のために気合を入れる。

 

「いいか!敵は我ら皇国を賊徒と侮り宣戦布告もなく戦端を開こうとしている!!しかしッ!!シド元帥閣下の命により、すでにこの異世界各地に諜報網が展開され、その情報を事前に察知することができた!!」

 

そこまで言って、彼は車内の部下たちを見る。

ずっと昔から自分とともに戦ってきた、自慢の部隊。

 

彼らの誇りに満ちた視線に頷き、部隊長は言った。

 

「諸君!!旧帝室親衛隊、皇国一ノ盾である我々が、異界の脅威から祖国を守るのだ!」

 

 

 

とある輸送車両の内部。

 

そこには、一風変わった兵士達が並んでいた。

 

その姿は強化兵のようで、しかし見ようによっては番外者にも思えた。

 

だが明らかに強化兵より重武装で、番外者より軽装甲だった。

 

彼らこそオリエンスにおける戦役の後期に登場した、次世代型強化兵。

 

『強化兵弐型』である。

軍隊にひねった名前など不要なのだ。

 

その部隊長は床に刀の鞘先をドン!!と突きながら怒声を張る。

 

「いいか! 敵はパチモンの玄武と頭空っぽの蒼龍とクソみたいな朱雀の集合した奴らだ!! だが貴様ら一般兵どもは細かいことは何も考えなくていい! 指示通りに走って立ち塞がった奴を片っ端から撃ち殺せ!!」

「隊長! 発言の許可を!」

「許可する!」

「パチモンとはどういう意味でありますか!」

「鉄も斬れない“なまくら”と柔くて重い鎧つけて武装とほざく貧相な肉体の騎士もどきってことだ!!徹甲弾で撃ち殺せ!」

「頭空っぽとは!?」

「ろくに指揮もされてない獣の群れだ!!見慣れないモン見たら近づかれる前に撃ち殺せ!!」

「つまり敵の主力は魔導兵でありますか!」

「その通りだ!!ただァし!!」

 

ここで部隊長は言葉を区切り、獰猛に笑った。

 

「ウォールも張れない、召喚獣も呼べない、非常に原始的な魔法しか使えない……つまり、わかるな?」

 

「「「「……」」」」

 

この言葉に車内の兵士たちもギラリと笑い、全身に走った凶暴な衝動に打ち震えた。

 

「行くぞ前線猫ども……奴らに戦争というものを教えてやれ!!」

 

 

 

空中戦艦に搭載された中型艦載艇、そこに待機している部隊。

 

その降下部隊の例の隊長は、家族の写真らしきものを見つめながら言う。

 

「娘が、もうすぐ誕生日でな……必ず帰ってくるって約束したんだよ」

 

((((((……))))))

 

それを聞いた機内の皇国兵たちは指を一本立てる。

 

と、今度は部隊長が煙草をくわえ、取り出したライターで火をつけようとする。

が、なかなかライターから火が出ず、数度こすってようやく火が付いた。

 

「チッ……親父の形見なだけあって気難しいガラクタだ。覚えちゃいないが、な」

 

そういってライターを胸ポケットにしまう。

 

((((((……))))))

 

皇国兵たちは今度は指を一本折る。

 

その後も隊長が言葉を発したり何かするごとに指を立てたり折ったり。

 

そして最終的に人差し指一本だけが立っていた。

 

それを見て車内の皇国兵たちは安堵の息をついた。

 

(一本……か。よし、今回は普段通りのヤバさだな)

(ついこの間なのにもうビッグブリッジが懐かしい……あの時は十本立ったこともあった、魔神に遭遇して全滅しかけた)

(なんとかしてこのクソ隊長黙らせられないかな)

(ある意味この人も『完全帰還者』だよな)

 

機内の皇国兵は、暗いような明るいような、そんな微妙な顔をしていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

帝都『イングラム』。

 

皇国元帥シド・オールスタインは、『ドーム』内のあらゆるメディア、通信を使い、演説を行っていた。

 

「過日、我らミリテス皇国は、異世界に転移した」

 

「それにより我々は、混迷の霧に包まれようとしていた」

 

「だが! それは最早過去の話だ!!」

 

「我々の展開した特殊部隊が、既に様々な情報を持ち帰っている!」

 

「我らを包まんとしていた霧は、跡形もなく掻き消えたのだ!!」

 

「これを見よ!!」

 

シドの後ろにある大型モニターが起動し、大まかな形のハルケギニア大陸が表示される。

 

「これはこの世界の地図である。この世界は『ハルケギニア』と呼ばれており、当然のことながら様々な国家が存在している」

 

「そして我ら『ミリテス皇国』は、この『ガリア王国』と呼ばれる国の南側に位置している」

 

地図の真ん中あたりに位置している国が赤く表示され、その国を二分するような山脈の南側にミリテス皇国の国旗のついた巨大な白い光点が表示される。

 

「この連中は我々を言葉も通じぬ蛮族と決めつけ、畜生を狩るかのごとく『討伐軍』を組織している。そしてそれが近日中に侵攻してくることもわかっている」

 

これを聞いた市民は顔色を青くした。

 

長き戦争を耐え抜き、世界の終焉を乗り越えたかと思えば異世界に飛ばされ、わけもわからぬままにまたも戦争。

この間の悪さはいったいなんだというのだ。

 

誰もが不安げな顔を見せる。

 

だが、シド・オールスタインは笑っていた。

 

肩を震わせ、くつくつと笑ってみせたのだ。

 

「完全に情報が筒抜けだというのに……実にいい気なものだ」

 

この言葉で皆ハッとなった。

 

他国からの侵攻を察知する。

 

言葉にすれば簡単だが、それには敵国深部に侵入しなくてはならないのだ。

 

シド・オールスタインはそれをこの短期間で成功させたのだ。

 

「軍団の規模、装備、兵種、進行ルート、使用する魔法の種類。そしてそれらへの対策。全て完璧だというのに……『討伐』!?」

 

「長きに渡る因縁の大国『玄武』を一撃のもとに粉砕し、忌々しい『朱雀』に壊滅的大打撃を与え、あの『フィニスの刻』すら乗り越えて見せた我ら皇国を『討伐』とはな……」

 

そして思い出す。

 

この国には、真なる英雄が、『アギト』が存在することを。

 

『皇国民総アギト』?

 

そんなことを思う人間は一人もいない。

 

皆内心わかっているのだ。

 

歴史に記される『アギト』は、一人だけだということを。

 

皇国元帥シド・オールスタインただ一人だということを。

 

シド元帥は演説台に拳を叩きつけ、怒りを露に宣言した。

 

「いいだろう!宣戦布告すら解さぬ『蛮族』どもを、鉄風雷火で歓迎しよう!!虎の口の中へ意気揚々と突っ込んでくる愚か者どもを噛み砕こう!!」

 

「同胞たちよ!!銃を取れ!!その手で明日を掴み取れ!!未来はもう、我らの目の前にある!!」

 

「ミリテス皇国に栄光あれ!!」

 

『『『『『『『ミリテス皇国に栄光あれええええええ!!!』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

ガリア王国西部、『サン・マロン』より出撃した討伐軍5800は火竜山脈を越え、ルーベル侯爵領に到着。

さらにルーベル侯爵は近くの領地に協力を頼み兵を召集。

これにより二万二千の軍勢となった討伐軍は『ドーム』へと進軍を開始。

 

 

これに対し『ミリテス皇国』は迎撃を決定、『ドーム』より30万の兵力を出撃させ、簡易防衛陣地に配備。

2万の軍に対し実に15倍の戦力をくり出したことになる。

 

両軍は『ドーム』より50キロに渡って張り巡らされた防衛線にて衝突した。

 




蒼龍<解せぬ


はい、『皇国の守護銃』最新話、いかがでしたか?
楽しんで頂けたら作者が小躍りします。
感想なんか貰っちゃった日には『更新優先順位』が変わる可能性すらありえます。
次回はみんな大好き蹂躙回です!チート強化された鋼機の出番だぜ!

さて、ちょいと作者困ってます。

3つほど問題が…。

『ハルケギニアにおけるメイジの戦争における割合が不明』
つまり一軍にメイジはどれくらい含まれているのか、です。
今回はかなり適当に設定しましたが二割くらいですかね?
指揮官クラスにメイジがいる?
花壇騎士団は近衛兵みたいなもの?

原作は軍紀物じゃないので曖昧なんですよこれが。

『ハルケギニアの連中が弱すぎる』
……まあ歴史的にも環境的にも過酷さに差がありますからしかたないですが。
しかし原作と同じレベルでいくと未来科学で強化された皇国と戦わせると鎧袖一触木っ端微塵。
原住民がいくら死のうが知ったことではないがこれでは埒が開かない。何より面白くない。

というわけで思うように埒を開けるためアルハンブラに伝達じゃなくてハルケギニアも強化しました。
さながらEXハルケギニア。
これにより原作キャラの崩壊は確定しました。特にキュルケとギーシュ、ルイズは誰おまレベルで強化だ!でもイチャラヴはやらせたい!
サイト君は…どうしよう。最終どうなるかは決まってるんですが出だしがなあ。

しかしガリア、ドーピングし過ぎたかな?
でも元々キメラドラゴンだの兵器の開発だのしてたんだからそれをすごい発展させたとすれば……ダメ?

オリキャラがわいてますがあまり気にしないで下さい。ただの渡り人ですから。

『あらすじ変更のお知らせ』

エネルギー問題について感想でもいくらか頂いてますが……結構あっさりと解決しちゃいそうです。

あと孔雀という呼称、言わせる機会がない。

というわけで近々変更します。


次回はたぶん年内にもう一回か二回更新できるはずです。

それでは皆様、また次回に!

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