皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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戦場の神・前編

ガリア西南部に集められた討伐軍、その構成のほとんどは傭兵、もしくは近辺からかき集められた農民に適当な武器を持たせたものだった。

 

徴収された農民は革製の胸当てと粗雑な槍、得意な者には弓が与えられ、即席の部隊に編成されていく。

 

そんな軍勢の指揮権を任されたのはこの辺りのわりと大きな領主であるルーベル侯爵。

 

メイジとしての才能はあまりないものの、堅実な用兵を行う男だ。

 

そのルーベル侯爵は副官をともない『討伐対象』の敷いた陣を見ていた。

 

「……やってられんな」

「……ですね」

 

敵は長い長い防衛線を形成していた。

右から左へ見える限り地平線の彼方まで敵の姿があり、等間隔で大砲のついた奇妙な建造物?が。

 

さらには自分の使い魔であるウィンドイーグルとの視界共有で空から見たところ、「冗談じゃない」というレベルで人海が広がっていた。

 

 

「敵の武装は短槍か。そして砲を備えた高櫓に身を隠せるだけの壁。しかしメイジの姿はおろか弓兵も騎兵もおらんではないか。どうなっとるのだ?だがそれにしては珍妙なゴーレムがゴロゴロと……」

「いえ、よくご覧ください。あれは短槍ではありません。銃です。長剣と合体しているようです」

「ほう、考えたな……というか、画期的ではないか?」

「ええ、あれならばいちいち銃を捨てることなく素早く近接戦闘も行えます」

「……だがそれにしても兵種が偏りすぎではないか?」

「しかし敵の戦列艦、アレは侮れませんぞ」

 

「うむ……未だかつてない戦艦だ。油断はできん」

 

見上げる先には、見たこともない様式の戦艦が六隻。

 

しかし遠目からでも生半な防御力ではないのはわかる。

まさかフネをすべて鉄で作るわけにもいかないだろうから本体を隙間なく鉄板で覆っているのだろう。

 

「おそらく鉄板を張り合わせているのだろう。いったいどれだけの風石で浮いているのか想像も出来ん」

「防御力は桁外れでしょうな」

「砲戦は避けたいな……」

 

だがしかし、そこには様々な欠点がある。

 

「だが、敵の戦艦は重い。通常の艦より高くは飛べんだろう。なにより……帆も翼もない。正直言ってどうやって航行しているかわからんが機動性は低かろう。上の連中に奴等の頭を抑えて乗り込むよう指示せよ。幻獣を出撃させるためにもどこかに必ず入り口はある。無ければ土メイジを送り込んで穴を空けさせろ。それでも無理なら火メイジの出番だ」

「なるほど。しかしいったいどうやって航行しているのでしょう?それもあそこまで装甲を厚くして。……まさか骨組みにいたるまで鉄などということはないでしょうな?」

「フン、まさか。おとぎ話ではあるまいし」

 

副官が冗談交じりに言うことを、つまらんことだと鼻で笑う。

 

そして眉間に皺を刻みながら忌々しげに唸るルーベル侯爵。

 

「だがこれほどの数の敵を撃滅し、さらにあの山を攻略するだと?ふざけたことを!」

「しかしあの山は主だった穀倉地帯を覆うように存在しています。取り戻さねば……。それにやらねば我々が王家に後ろから刺されます」

「わかっている!そんなことはよくよくわかっている!!わかっていないのは、あの無能男だ!」

 

ルーデル侯爵は突如あの『鉄の山』が出来たころから、様々な手段で独自に情報を集めようとしていた。

 

だが、偵察に放った部隊はいくら日数が経てど帰ってこなかった。

 

行って帰ってくる日数を計算にいれても遅すぎる。

 

だがこんなところまで敵の防衛線が築かれていたということは、とっくに捕捉されて消されたということ。

 

そうこうしているうちに『討伐令』が降りた。

 

援軍、さらには武器の支援というなかなかの条件で。

 

「援軍要請の伝令は送ってあるな」

「はい。しかし……」

「もういい。わかった」

 

……だが援軍は死んでも構わない『屑兵』、おぞましい『奇怪獣』、戦艦とは名ばかりの旧型船。

 

そして追加の援軍は『意図的に』『間に合わない』のだろう。

 

ここまでくれば彼もわかった。

 

「なにかあるということか……」

 

おそらく軍上層部は何か情報を得ている。

 

そのうえで試金石に自分たちを使おうとしているのだ。

 

さらに言うなら、自分たちが現ガリア王ジョゼフ一世に好意的でなく、そのくせ侯爵という地位にいることもあるだろう。

 

王家派といっても一枚岩ではない。『王家』に忠実なだけであって『ジョゼフ一世』に忠実なわけではないのだ。

 

死んでくれるとありがたい存在なのだ、お互いに。

 

「だが奴らを喜ばせてやる義理はない。『屑兵』を前面に押し出せ。その後ろに付いて進軍せよ」

 

「ハッ!!」

 

走っていく副官に聞こえぬように、ルーベル侯爵は胸中の不安を漏らした。

 

「……前に進むしか道は無いのだ、『屑兵』に落とされたくなくばな」

 

『屑兵』を構成する奴隷とは、例えば貴族派の僅かな生き残りやその貴族が治めていた領民、死刑囚、例外的に身売りした者など、多岐にわたる。

 

その『多岐』の中には、“反逆罪”で落とされた者も含まれている。

 

ちなみに、反逆の定義はガリア王ジョゼフ一世次第だ。

 

ギロチンを落とされたくなくば、従順に命令に従うしかない。

 

「犠牲は押さえておきたい……彼らも必死なのだろうがこちらも必死だ」

 

これほどの数の人間を動員するのはどれだけ難しかっただろう。どれだけ無茶をしたのだろう。

 

少なくとも10万は越えているだろう。

 

おそらく彼らの全戦力を投入しているのではないだろうか。

 

だが、ここまで偏った兵種では、早まったなと言わざるを得ない。

 

何故ならメイジの姿が見当たらないのだ。

 

訓練されたメイジは、平民による兵士相手ならば数の差を質によって覆す。

 

剣や銃や大砲だけで抵抗できるほど、メイジの存在は甘くない。

 

6000年もの間、世界を支配し続けていた実績は伊達ではないのだ。

 

さらにオークやオーガ、トロールによる混成亜人部隊。

 

頭の中まで筋肉の単細胞だが、オーク一匹で訓練された兵士5人分の戦力になる。

そしてオーガはオークより数倍強く、トロールはオーガの数倍強い。

前線に突撃させて肉壁にするには持ってこいだ。

 

そして最後に、あのおぞましい『奇怪獣《キマイラ》』。

 

ちらりと見た先には、不気味な沈黙を保ったまま佇む異形の怪物の群れが。

 

怪力と強い生命力を持つ、文字通りの化け物。

トロールより強いミノタウロス、それよりもよほど厄介な存在。

ともすれば『魔法至上主義』の前提を覆すやもしれない、外道の兵器。

 

もちろんメイジも亜人もキマイラも限界はある。あまりに圧倒的な数の暴力にはなすすべもない。

 

ゆえにこの戦は反吐が出るような消耗戦になるだろう。

 

用兵を間違えれば容易く飲み込まれるのは想像に難くない。

 

いや、相手にもっと多くの兵種という選択肢があったら危なかっただろう。

 

さすがに騎兵の津波や弓兵による矢の雨を臨機応変に組み込まれたりすれば間違いなく負けていた。

 

だが相手は軽装歩兵ばかり。

 

ところどころゴーレムかガーゴイルらしきものの姿は見たが、戦局を左右するとは思えない。

 

そこで再び疑問がよぎる。

 

こいつらは何者か?である。

 

あの奇妙な鉄の山から来たのは確かだ。

 

だが何なのかは結局謎のまま。

 

……しかしいくら考えようがわからないのに変わりはなく、また何であろうと戦わねばならないのにも変わりはない。

 

「まったく……やってられんな」

 

踵を返し天幕に戻ろうとしたルーベル侯爵。

 

「ッ!?」

 

不意に彼は悪寒を感じた。

 

きょろきょろと辺りを見回すが特におかしなところはない。

 

「気のせいか……?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

空中戦艦の上部甲板、そこでは大型狙撃銃『ザイトスの銃』を用いて『バジリスク』が敵陣を偵察していた。

 

そこへ将校の制服を着た男が出てきて『バジリスク』の一人に話しかける。

 

「敵陣の様子はどうだ?」

「情報に間違いなし。連中の装備はほとんどが朱雀みたいな軽装、武器も同じく。割合は長槍が多いです。槍と弓と……骨董品みたいな銃。博物館に飾られてそうなものです」

「連中の装備がお粗末なのはわかっている。部隊規模はどうだ?」

「長槍と弓と銃がそれぞれで中規模の部隊を編成。それに30騎ほどで構成された騎兵隊が複数、離れて配置されています。こいつらは装備がマシですね。得物は槍と腰に剣。あと……大砲を背負ったカメが40ほどいます。随分小さいですね。我々の背丈の倍程度です」

「ふむ、『砲亀』だったか?“亜人”はどうだ?」

「……いました。ゴウセツ並みにムキムキです。毛が無いからグロいな。装備は……腰布でこん棒」

「……差別されてるとは聞いていたが、ひどいな」

「ゴウセツと同じ扱いなんでしょう。人食、凶暴、人間への強姦、そのうえ雄しかいないとくればそれはもうモンスターですよ。って、なんだアレは?」

 

スコープを覗いていた兵が突然驚きの声を上げる。

 

「どうした?」

「情報に無い部隊あり。数は50ほど。トロールに似てますが手が四つに足四つ尻二つ。明らかに奇形。顔に覆面、逆さ五芒星のマーク」

「……おそらくソイツらがキマイラだ。出てこないはずだったのだがな」

「急遽連れてこられたのでしょうか?」

「さあな」

 

そのあとも様々な情報を聞き、満足した将校は艦内に戻ることにした。

 

「俺は引き上げるぞ。情報は送ってあるな」

「常に送信してますよ。というか、『ヘカトンケイル』があるですからわざわざ確認にくることはないのでは?」

 

スコープを覗いたまま隊員が言えば、将校は少しだけ振り返り

 

「慣れんのだよシステム化というのは。やはり直接足を運びたくなるのだ、ロートルは」

 

苦笑しながら去っていった。

 

 

 

一方その頃艦橋では。

 

「なんだあれは?」

 

モニターに映し出された映像には敵の戦艦と思われるものが映っていた。

 

それは、朱雀の飛空挺に似ていた。

 

全長は50メートルほどで、曲線を描いた船体、上には大きな大きな……旗?が。

 

ふざけたことにそれは木製で、船体の横には翼と、大砲らしきものが一列ほど突き出ていた。

 

艦長席に座る、この迎撃軍旗艦の艦長であるウォルデン中将は、モニターに映る不可思議な光景に首を傾げていた。

 

「あの大砲、横にしかついてないが……砲撃するときは回頭するのか?」

「おそらく……なんとも不便ですな。それに地上支援が困難でしょうに……」

「上にくっついてる……旗? はなんだ?」

「情報によれば、風を受けて前に進むそうです」

「んん? 魔法で動かしているのではないのか?浮いてるじゃないか」

「“風石”と言う特殊鉱石の力だそうです。前進は風を使うそうで」

「……なんという適当な。ファンタジー小説じゃないんだぞ」

 

やれやれと呆れ顔でウォルデン中将は立ち上がり、号令をかけた。

 

「まあいい。ファンタジーの住人には、さっさと夢の国にお帰りいただこう……全艦に伝達!主砲用意!宣戦布告と同時に敵艦隊を叩く。主砲を命中させあれを全て落とせとな。『バジリスク』!作戦開始まですぐだ。用意はできてるな?」

「了解。『旗艦ヨリ各艦ヘ。主砲準備、宣戦布告トトモニ敵艦隊ヲ撃滅セヨ』」

『こちら「バジリスク」。ターゲット視認。いつでもいけます』

 

空中戦艦の背部ハッチが開き、一門の砲台が、いや、巨大な一門の砲台が姿を表した。

 

46センチ口径三連装砲。

 

戦艦の火力増強を目的に開発され、オリエンスにおける戦争では中期にはすでに搭載されていた代物だ。

 

その威力たるや凄まじく、直撃すれば召喚獣だろうがウォールだろうが飛空艇だろうがただでは済まない。

 

そしてなにより恐ろしいのはその脅威の命中率。

 

ある条件下においてその命中精度は誤差1メートル圏内。

 

発射すれば個人を砲撃で狙撃できるという、ある種ムチャクチャなことを達成している。

 

そしてそのある条件とは。

 

「火器管制システム『ヘカトンケイル』起動!」

「リンク開始!」

 

『空中戦艦』に搭載された大型コンピュータが起動し、膨大な情報の処理を開始した。

 

全ての空中戦艦、高高度に待機している偵察特化型中型艦載艇、空中も地上も関係なく戦場全体にうようよいるに索敵機械『ノーバディ』、さらには鋼機の一体一体から兵士一人一人のヘルメットについたカメラにいたるまで、全ての情報機器が近場の『通信兵』を中継し、空中戦艦に搭載されたコンピュータを通じてリンクする。

 

「環境データ入力開始」

「地上部隊からの情報を入力」

「空中部隊からの情報を入力」

 

これにより、戦場の気温、気流、風速、人員の移動、各々が見た敵の位置、砲弾の着弾地点、そこから計算される照準誤差、あらゆる情報が収集され、全部隊に反映される。

 

それは例えば密かに敵を包囲することも、敵の集合を阻止することも、壁越しに砲撃することすらも可能にする。

 

「照準ヨシ!敵艦に合わせました!」

 

「よし、では始めよう」

 

ウォルデン中将はマイクを手にすると、対峙するガリア王国の軍勢に向けて勧告を行う。

 

なお、相手側の声は最前線にいる通信兵が集音器によって拾っている。

 

「『こちらはミリテス皇国ドーム防衛軍である。これより先は我々の防衛圏内にある。そちらの所属と目的を問う』」

 

すると、思った以上に巨大な声が返ってきた。

 

どうやら相手側にも声を拡大する魔法があるらしい。

 

『我々はガリア王国南部賊徒討伐軍である。貴様らは我らの国を不当に占拠している。速やかに降伏し、我々に恭順せよ。さもなくば総攻撃を仕掛ける!!』

 

「『断る。我々はそのような理不尽に屈する気はない』」

 

『これは我が国の当然の権利である。ならば武力でもって制圧する』

 

「『それは我らミリテス皇国への宣戦布告ととるが?』」

 

『ミリテス皇国などと言う国家をガリア王国は認めない。これは我らの国土を不当に占拠する賊への討伐である!』

 

「『……理解した。ではこれより我々は任務を全うする』」

 

『全軍攻撃開始ィ!!』

 

「『作戦開始!主砲、撃ェ!!』」

 

轟音とともに砲口が火を吹いた。

 

発射された砲弾は高速で回転しつつ直進、狙い違わず敵戦艦に直撃した。

 

木造戦艦なぞ紙のように貫通し、そのままさらに飛んでいく。

 

「……ウォールは?いやウォールはではないとしても類するものはあるんじゃないのか?まさか砲撃への防御手段を有していないのか?!」

 

「拍子抜けだな……まあいい。弾種を変更、徹甲榴弾から榴弾に切り換えろ」

 

次に発射された砲弾は着弾と同時に大爆発を巻き起こし、敵戦艦を木っ端微塵にした。

 

次々に敵艦が撃沈し、後方で墜落していく中、地上の前方にいた『屑兵』による軍勢はもう動き出していた。

 

とくに凶暴な亜人と命令に絶対忠実なキマイラが真っ先に走り出している。

『強制《ギアス》』によって操られている奴隷兵もだ。

平民、傭兵の類はそれの後ろをやる気なさげについていく。

 

そんな中、敵軍中央正規兵軍は動揺から動けずにいる。

 

「よし、砲火を緩めるな、敵陣後方をズタズタにしろ!全ての空中戦艦は敵陣後方に砲撃を開始せよ!!砲兵陣地、敵陣中腹に砲撃開始!」

 

命令を受け、各『空中戦艦』が支援砲撃を開始する。

 

さらには味方陣地中央に存在する砲兵陣地からも、『砲型ニムロッド』による曲射砲撃が敵陣に雨を降らす。

 

着弾し、土砂を巻き上げながら爆裂する砲弾の嵐。

 

組まれた陣形の中心に命中などすれば、結果はもう悲惨だ。

 

「すさまじい戦果ですね」

 

「シド様曰く、『砲兵は戦場の神である』、だそうだ」

 

「ははぁ、確かに歩兵にとって敵陣で炸裂する砲弾ほど、頼もしいものはありませんからな」

 

あっという間に敵陣中央から後方は混乱し、右往左往し始める。

それを収めようとする動きはない。

 

何故か?

 

空中戦艦の上部甲板にて展開していた『バジリスク』が、事前に見つけていた指揮官らしき相手を片端から狙撃し続けているからだ。

 

「さて、前線を押し上げるぞ。第一軍は防衛線より前進し敵に追撃をかけろ。第二軍は第十一防衛線に入れ。第三軍は第八防衛線だ。補給部隊は第二軍の後方第十防衛線まで前進だ」

『了解。第一軍前進する』

『了解、第二軍前進し防衛線を強化する』

『了解。第三軍前進する』

『了解、第一軍に随伴し第十防衛線で待機する』

 

「さて、シド様のご命令は『敵戦力の撃滅』だ、徹底的にやるぞ」

 

そう言って次の手を思案する。

 

「制空権確保、指揮系統破壊、支援砲撃込みの一斉突撃。そしてとどめにもう一手……よし、『ノア・コマンド』は前線へ。斬り込め。敵の士気はすでにガタガタだろうが、完全完璧に粉砕しろ」

『了解。ノア02、突撃を開始する』

『了解、ノア゛13、突撃ずる゛』

 

短い応答、そこに含まれる凶暴な歓喜。

 

それを感じ取ったウォルデン中将は、同じように凶暴な衝動を感じながら苦笑した。

 

「やれやれ、こうなるともう憐みすら覚えるな」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

開戦と同時に行われた砲撃によりフネをほとんど撃沈された衝撃に『討伐軍』は浮き足立ち、そこへ雨のような砲撃を食らい後方から中央にかけて壊乱状態に陥る。

 

さらに狙撃によって指揮系統が破壊され、混乱が加速する。

この時、『討伐軍』の総指揮を執ることになっていたルーベル侯爵は狙撃され死亡、彼直属の部隊も集中砲火にさらされ全滅している。

 

その隙を突いて歩兵1万と鋼機800とで構成される装甲師団4個、歩兵1万5千と鋼機600で構成された歩兵師団6個、合わせて歩兵13万と鋼機6800が濃密な機銃弾幕と支援砲火を傘に突撃を開始。

 

対し組織的な反撃も撤退も出来なくなった『討伐軍』は各部隊ごとに判断しつつ後退を行っていた。

 

なお、この時最前線では『屑兵』による突撃も行われていたが、ミリテス皇国による圧倒的な物量による攻撃は随所で前線を突破、中央へ追撃を開始していた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「総員突撃! 突撃せよ!!」

 

「前進!ぜんしぃん!! 行け行け行け行け行けェー!!」

 

「ノロノロ走るなァー!!」

 

地響きすら鳴り響かせながらの一斉突撃、まさに人海という津波が押し寄せる。

 

それを最も近くで支援するのはこの機体。

 

高所に設置されたカノン砲から拡散式榴弾が発射される。

その砲弾は発射と同時に分裂し、三方向へ、広範囲を吹き飛ばす。

 

敵の足が止まったところへ先程と同様に榴弾が薙ぎ払う。

 

それを行うは二階建てのビルのような、塔を思わせる自走砲台。

 

柱のような二本の前足と、支柱の役割を果たす強靭な一本の後ろ足という、一見すれば三脚のバッタのように見える機体で、塔の天辺には360度回頭可能な175mmカノン砲を備えている。

 

『ホ-四三自走175mm加農砲』、通称『ニムロッド』。

 

本来は移動可能な高角砲台として開発された、戦前からあるこの機体。

 

これを改修した、この『陣型』と呼ばれるタイプは、胴体横に数枚の装甲板が層状に重なったものが突き出ている。

 

『陣型ニムロッド』が大きく跳ね、前方にある丘の上に着地。

 

二門ついている機銃を乱射しつつ周囲の皇国兵を呼び集める。

 

『周辺各員へ、装甲を展開する!銃座につけ!!』

 

ニムロッドが脚部を広げ、腹を地面につけるように態勢を低くする。

 

バシャンッと装甲板が横へスライドし、壁のようになる。

 

装甲板それぞれの下部についたアンカーが地面に打ち込まれて固定が完了。

 

その影に随伴の皇国兵たちが身を潜める。

 

そして装甲板一枚一枚の裏側に取り付けられた重機関砲を引っ張り出し、簡易銃座とした。

 

この装甲板は『突撃兵』に支給されているものと同等の性能であり、正面からの攻撃に非常に高い防御力を有するのだ。

その防御力はすさまじいの一言に尽き、剣撃、銃撃、魔法に果ては召喚獣の光線にすら耐えるのだ!!

ん?……光線を防いだ兵士は消し炭になった?盾は(・・)無事だろう?嘘はついてない。

 

閑話休題。

 

とにかく、これにより装甲を展開した状態での前足降り下ろしは出来なくなり、格闘性能は格段に低下した。

 

しかし、だ。考えてもみてほしい。

 

というか、シド元帥に指摘されるまであまり気にされていなかったのだが。

 

『ひとつ聞きたい。踏まれるまで突っ立ってる馬鹿がどこにいるのだ?そもそも移動性能劣悪なアレで格闘などと正気か?』

 

衝撃、鋼室に走る。

 

『い、言われてみれば確かに……』

『よっぽどの間抜けでない限りは逃げるよな』

『破壊される原因はほとんどが魔法による遠距離攻撃、ゴウセツ相手には完全に遅れをとってる現状では……』

『ひゃっほーい!前線からの連絡で、ニムロッドの轢殺数が10人越えたぞー!賭けはオレの、勝……ち…………何この空気』

 

 

というわけで、新たに『移動橋頭堡』として改良されたのだ。

 

ちなみに、他国からはよく鋼機の一種と誤解されるが鋼機ではない。

あくまで“移動砲台”であり、今は“移動橋頭堡”だ。

 

ちなみに、『陣型』に対して『砲型』と呼ばれるタイプは、通常のものより大型の200mmカノン砲を備え、反動吸収用の後ろ足も大きくなっている。

こちらは砲撃陣地から遠距離目がけて曲射を行うことを目的としている。

それにより移動性能はほぼ破綻しているが、かわりに『ヘカトンケイル』との連携で強力な火力支援を可能としている。

 

『後続が追いつくまでこの丘を守る!撃って撃って撃ちまくれ!!』

 

重機関砲の弾幕が、丘の上から周囲にばら撒かれた。

 

 

 

 

「敵騎兵接近!!」

 

「近づかせるな撃ちまくれぇー!!」

 

遠くから反転し、土煙をあげながら突っ込んでくる騎兵の部隊、それを見つけるや先頭にいた者達は前に向かって飛び込むように倒れ込み、中列はしゃがみ、後列は立ち止まる。

三段の銃口の壁が、騎兵の前に立ち塞がる。

 

それを見た騎兵は血迷ったかと嘲りながら突撃を加速させる。

 

銃というのは射程は弓に劣り、威力は魔法に劣り、使い勝手は剣に劣る、中途半端な戦場の賑やかしだ。

 

確かに銃弾は下手な鎧くらいなら貫通する。女子供でも使える汎用性の高さもある。

 

だが致命的な欠点を抱えている。

 

連射が出来ないのだ。

 

一発撃てば次弾装填まで時間がかかり、接敵されれば容易く崩れる。

 

なるほど、一撃ならば強力だろう。

 

当たれば重装甲でないかぎり先頭の騎兵は死ぬだろう。

 

だが。

 

騎兵にとって、砕け散るのも覚悟の上。

 

蹴散らすか、無駄死にか。

 

その二択しかないのだ。

 

「エアシールド!ものども突撃!蹴散らせぇええええ!!」

 

先頭を走る隊長の声が聞こえる。弾除けに風の障壁が前面に出現する。

 

銃声が幾重にも重なり、弾幕が張られる。

 

輝く壁が迫ってくるような美しい機関銃弾幕。

 

弾道を逸らすはずの障壁が貫通される。

 

バタバタと騎兵隊は崩れ、ベルトコンベアで行われる処理のように次々に死んでいく。

 

そして遂に最後の一騎が、皇国の銃列の眼前で崩れ落ちた。

 

その騎馬に乗っていた男は、瀕死の身体を引き摺るように立ち上がった。

 

「なんだ……なんなんだその武器は!銃か!銃だと言うつもりか!!」

 

血を吐きながら、落とした槍の代わりに震える手で剣を抜き、しかし再び倒れる。

 

それでも目だけで皇国兵を睨み付けていた。

 

ひとりの強化兵が、愉悦を隠し切れないといった顔で近づいてくる。

 

無造作に向けられる銃口。

 

「あばよ」

 

銃弾が彼の頭を撃ちぬいた。

 

 

 

「ガリアの地を汚す蛮賊め! 喰らうがいい!『フレイム・カノン』!!」

 

杖の先より人間大の火炎玉が発射され、皇国兵を10人ほど纏めてを火だるまに変える。

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁ…………」

 

その場に倒れこみ、バタバタと地面を引っ掻いていた皇国兵たちはすぐに動かなくなった。

 

「はっはっは……この私の前に立ち塞がるには10人では少なすぎたな平民諸君」

 

それを行ったこの男は、部隊を先の砲撃で食われておきながら運よく生き延びた貴族(メイジ)だった。

 

彼は広域殲滅に長けた火メイジ、それもトライアングルクラスであった。

 

彼は砲撃で巻き上がった土砂によりひどく汚れており、とくに貴族の誇りであるマントを泥まみれにされて激怒していた。

部隊を全滅させたことについては特に思うことはないらしい。

 

そういうわけで頭に完全に血の上った彼は、目についた敵らしき部隊に魔法を放ったのだ。

 

その威力はすさまじく、人格はともかく優秀なメイジであることは間違いない。

 

ところで、こんな言葉をご存じだろうか?

 

『皇国兵 ひとりで無理なら 百万人』

 

 

「魔導兵だ!! 囲めェーー!!」

「「「「うぉおおおおおおおおお!!!!」」」」

 

 

どこにいたのかわらわらわらわらとゾッとする量がわいてくる皇国一般兵たち。

 

一般兵とバカにするなかれ、その装備は凶悪だ。

 

手に持つ突撃銃ははっきり言って人間に向けるべき代物ではない。

オリエンスに生息する強靭なモンスターに対抗するために製造された代物なのだから。

 

そしてさらにここはゲームではなく現実なのだ。

 

現実の皇国兵は、

 

「撃ちまくれェー!!」

 

一斉に乱射してくる。

 

「なっ?! ふ、『フレ」

 

そのメイジは蜂の巣になり、文字通りバラバラになった。

 

 

 

魔法による攻撃に、運悪く部隊と分断されてしまった一人の皇国兵がいた。

 

彼は何とか本体と合流しようと戦場を駆けていたが、敵兵士の二人組に遭遇してしまう。

おそらく相手も望んでのものではないのだろう、砲撃に部隊をやられたのか土砂まみれだった。

 

即座に銃撃によって一人を射殺、しかし。

 

「クソッ!弾が!」

 

タイミング悪く弾が切れた。

 

弾倉は背嚢にまだある、すぐに装填しなければと焦りが一瞬の隙を作った。

 

「おおおおぉぉ!!」

 

そこへ残った敵兵が突っ込んできた。

 

手に持った鈍く光る剣で斬りかかってくる。

 

「ぬぉっ!?」

 

咄嗟に彼は己の銃を横向きにし剣を受け止める。

 

敵兵はさらにぐいぐいと剣に力を込めてくる。

 

「ぐぅぅぅ!」

「ぬぅぅぅ!」

 

お互い一歩も引かない。

 

だが彼は自分の有利を確信する。

 

両手で銃を槍のように持つ自分に対し相手は剣。

力学的に押し勝てる!

 

そう考えすぐにグッと力を込めた、瞬間。

 

手にかかる抵抗が消える。

相手は剣より力を抜き、彼の体勢を崩したのだ。

 

しまったと思えどもう遅い。

 

「死ねぇ!!」

 

敵兵の剣がギラリと光り、切っ先をこちらに刺突を繰り出す。

 

銃声。

 

切っ先は彼に届くことなく、敵兵は力なく倒れた。

 

「無事か!?」

 

見れば走ってくる同僚の姿が。

 

「助かった!」

「気をつけろ!!さっさと戻―――」

 

 

矢の雨が降り注いだ。

 

針ネズミの様になり、二人は何も言わず倒れた。

 

 

 

「ふぅ、なんなんだ奴等は」

 

狩人や傭兵で構成された50名ほどの弓兵部隊の隊長であるアントンは、そう言って汗をぬぐった。

 

「まぁいい。風のラインである僕の魔法とこの弓兵部隊はすこぶる相性がいい」

 

弓兵の放つ矢を『ウィンド』で威力、射程、精度ともに強化する。

ようするに強風の流れを敵に合わせるのだ。

 

「とにかく、ちまちまと反撃しながら後退だ。死にたくないだろ」

 

彼らの部隊は移動を開始し、近場にあった森に逃げ込むことにした。

 

その中を通って撤退するのだ。

 

「よし、あそこに……なんだこの音、いや振動は?」

 

それが最後の行軍になるとも知らずに。

 

アントンは音に敏感な風メイジだ。

 

その鋭敏な聴覚が何か重い物が動く音と、今まで一度も聞いたことのない音を拾う。

 

そうしているうちに森の中から、木々をなぎ倒しながらナニカが姿を現す。

 

5メイルはあるだろう異形の巨人。

鋼鉄でできた長方体のボディ、緑白に輝く一つ目、踏み出す足はグリフォンのような逆関節。

右腕は鷲のような鋭利な三爪の鉤爪と、大砲よりは小さく、しかしマスケット銃よりも大きい口径の砲。

だがそんなものよりまず目につくのは、間違いなく左腕、そこにある特大の大砲だ。

 

「な、ゴ、ゴーレム?!」

「ばかな?! まさか鉄製か?!!」

 

弓兵の動揺をよそにアントンは、素早く『エア・ハンマー』の呪文を唱えていた。

 

いきなり現れたのには驚いたが、結局はゴーレム。

しかも鉄製とあればカモだ。

 

何故かって?

 

「転べ!エア・ハンマー!!」(バランスが悪いんだよ!)

 

今日に至るまでハルケギニアでは何度か『鋼鉄製のゴーレムまたはガーゴイル』というのは作られてきた。

 

だがいずれも実用化には乏しかった。

 

まず、鉄を錬金するのがしんどい。

次に、戦略性を持たせるほど大きくすると自重で関節が砕け散る。それを補修するのにも精神力が持って行かれる。

最後に、倒れたらもう二度と立ち上がれない。

 

そして動けなくなったゴーレムは無視して操っているものを叩く!!

 

流れるように行われた思考を実行する。

 

トライアングル級の魔力による不可視の鉄槌が異形のゴーレムの足をぶっ叩く。

 

威力は十分、狙い通り足が無様に宙に浮いた!

 

『んおっ?危ねっと』

 

すたっ。

 

アントンは、頭の中が真っ白になっていた。

 

まずゴーレムが口をきいたこと。

 

そして致命的にバランスが悪いはずの鉄製ゴーレムが、まるで生き物のようにバランスよく足を踏ん張ったからだ。

 

『ほぉ、それがこの世界の魔法か!おもしれぇな。だが残念!狙いは良かったがとっくに克服された欠点、だ!!』

 

そして突き出される巨砲。

 

その暗い砲口と見つめ合う段になってようやく彼は我に返る。

 

「フラ…!」

 

轟音。

 

至近距離で放たれた砲弾は部隊の中心に炸裂し、半分以上を吹き飛ばした。

 

咄嗟に回避しようとしたアントンは直撃こそ免れたものの、その爆発に意識を刈り取られた。

 

『もういっちょう!!』

 

突き出された右腕の筒から火炎が放たれ、生き残った者たちを包み込む。

 

「ぎゃぁあああ!!!ぅアアアアぁあああ!!!!!」

 

バタバタと地面を転がり、弓を投げ捨て必死で火を消そうとする兵士を、ゴーレムは無慈悲に踏み潰す。

 

「な、なんだあのゴーレムは?!」

 

「知るか!ファイアボール!!」

 

『ぐぉっ!?』

 

少し離れたところから火球が飛んでくる。

 

どうやらたまたま近くに別の部隊がいたらしい。

 

ゴーレムに直撃した火球は爆発を巻き起こし、その身を包んだ。

 

「やったか?!」

 

すさまじい爆発、間違いなく致命の一撃に、それを行ったメイジは戦果を確信した。

 

しかし、

 

『ぶわぁはははは!!危ねえ危ねえ、障壁が間に合ってよかったぜ』

 

爆炎が晴れるとそこには、紫の光の膜に包まれた無傷のゴーレムが。

 

『ハハハハハァー! 悪いなぁこっちだけチートしちまってよぉ!!ま、みんな死んで忘れちまいな!!』

 

次の瞬間、ゴーレムの背中が爆発し、中から何かが空へ飛び出した。

 

「あれは……槍?!」

 

彼らが最後に見たのは、天高くから飛来する鉄の槍。

 

いわゆる、ミサイルだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

さて、ここで暴れまわったこの機体を紹介しておこう。

 

『コー三五二重陸戦鋼機』、通称『コロッサス』

 

開戦20年前より開発されていた、重装甲型鋼機。

ストライカー系鋼機に代わった新たな時代の主力鋼機だ。

 

主な武装は左腕の240mmカノン砲に右腕の25mm重機関砲ないしは火焔放射砲、およびクロー、そして背部に備えた垂直型ミサイルである。

なおこの機体も『ニムロッド』と同じく武装を換装可能なので、これは最も一般的な例となる。

 

そしてその開発コンセプトは、『召喚獣に勝つ』こと。

 

朱雀がオリエンスに誇る最強の力は実は魔法ではなく、人間を生け贄に、異界から呼び出される『召喚獣』という魔導兵器である。

 

その力は、弱くて小型の災厄、強ければ大型の天災である。

 

例えば、空飛ぶ要塞である『空中戦艦』と朱雀竜が戦えばどうなるか。

 

一分で撃沈されたという記録がある。

 

堅固な装甲が、朱雀竜の鋭爪に紙同然に切り裂かれ、ブレス光線に容易く貫通された。

 

流石にこれに勝とうというのは無謀では?という意見もあったが、例のごとく元帥自ら研究を行った。

 

研究が開始されたのは開戦の20年前。

 

『為せば生る 成さねばならぬ ゆえにやる』

 

これをスローガンにかなり無茶苦茶な研究開発が行われ、技術革命が三回ほど起こるという確実に意味不明な状態に。

 

制式化されてからも幾度となく改修を繰り返し、戦争後期に入ると魔法障壁は装備してるわミサイル装備してるわ、移動しながら大砲当ててくるわ足元に潜り込まれたらニムロッドみたいにジャンプするわ走るわで、朱雀兵相手ならば無双が可能な状態に。

 

候補生(注・朱雀のエリートのこと)複数人も同時に相手取れるというチート性能。

 

追加装備でバリエーションも豊富(ドリューもある意味この派生である)。

 

しかも量産体制も完璧という、まさに夢の鋼機。

 

そして肝心の対召喚獣戦はというと……

 

全敗☆である。

 

流石に一対一は荷が重すぎた。

 

というわけで原点回帰、強化剤使用して複数機で囲んでリンチした。

 

結果は『地上に叩き落とし、犠牲を度外視すれば、朱雀竜にも勝てる』だった。

 

これは、今まで『全力で退避し、召喚時間が切れるまで逃げ回り、見つかったら諦めろ』が常識だったころからすれば快挙である。

 

 

 

 

そしてこの『コロッサス』を操縦しているのは『戦場からの叩き上げ』として有名なカロン曹長。

 

前線軍人らしい荒々しい気性と、マニュアルにとらわれない破天荒な操縦を得意としている。

 

破天荒が行き過ぎて“イカレてる”というのがもっぱらの評価だ。

 

彼と彼の部隊は突撃の合図とともに真っ先に飛び出し、敵前線を食い破り、到達した森で小休止をとっていた。

 

で、カロンは周辺警戒にちょろっと森の中歩いていたら敵発見、味方に連絡をいれつつ即攻撃に移ったのだ。

 

「っと、もう死の忘却は無えんだったか……っかし、これが“忘却”しねぇ殺しか……」

 

モニターには、先程まで悲鳴をあげて必死に抵抗していた連中の屍がバラバラで転がっている。

 

そしてその様子をしっかりと覚えている。

 

悲鳴も、真っ青な顔も。

 

そしてそれは何とも……。

 

「悪くねえ感覚だ!!」

 

『突出しないでください曹長!』

 

そこへ、森の中から『コロッサス』がさらに二機、強化兵が25人ほどやってきた。

 

そして先頭のコロッサスが声をかけてくる。

 

『毎度毎度、いったいどうやったらそんな速さで移動できるのですかたーいちょう?』

 

『我々は後方が追いつくまで一時待機のはずです!何をされているのですか!?』

 

「『ワイナン伍長、こういうのは慣れだ慣れ。ジゼル軍曹、緊急時だ! 現場の判断ってやつだ!ぶわはははは!!』」

 

『あなたという人は……!』

 

生真面目な軍曹が何か言おうとした時、モニターに指示が入る。

 

ルートが表示され、次の目標が通達され、カロンはニィと笑った。

 

「『っと、指令が来た。やったな軍曹!お前の大好きな上の指示だ!』」

 

『くっ……私は、命令に従うだけです』

 

『まあまあ、落ち着いてくださいよ軍曹殿』

 

「隊長が先陣切って暴れてくださるから我々は楽ではないですか軍曹殿」

 

「この間『忘れたくないのに…何故わかってくださらないのか』って呟いてたじゃないですか軍曹殿」

 

「さっさと寿除隊できるといいですね軍曹殿」

 

『死にたいらしいな貴様ら……』

 

戦場に似合わない、いっそ和気藹々とした空気。

 

戦場という“非日常”が“日常”化すると、魔法と銃弾が飛び交う場でも冗談が言えるようになるものだ。

 

だが新たな指示はもう下っている。カロン曹長は、少し真面目な口調でスピーカーから注意した。

 

「『おい、戦場なんだから気ぃ引き締めろ』」

 

それだけで場の空気が戦場に戻る。“日常”が“非日常”に反転する。

 

自分の部隊の練度にたぎる思いを抱きつつ、カロンは怒鳴りつけた。

 

「『そんじゃあ始めるぞ!奴らに戦争を教えてやれ!!』」

 

「「「「「オオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!」」」」」

 




『ヘカトンケイル』

『やーやー諸君。ぴっかぴっかの!第九鋼室研究員諸君(超早口なリズム)、いい朝だ!早速だが資料は頭に叩き込んだかな?この分野は私を除けば君らが第一人者、つまりは時代の先駆けだ!この分野は必ずこれからの皇国を支える大黒柱となる。頑張ってくれたまえ!(すごく爽やか)』
『閣下!』
『はっはっは!ここは研究所で君は軍属ではない。ここでは主任と呼んでくれたまえ!!(すごく爽やか)』
『では主任、なぜ我々のような若く経験に浅い技術者を、そのような重大なプロジェクトに組み込まれたのですか?』
『……ロートルがC言語理解できなかったから(ボソッ)』
『は?』
『ん?いや、なんでもない。若い君たちにチャンスと遣り甲斐を与えたかったからさ!!(ものすごく爽やか)』
『そ、そうでしたか!ありがとうございますシド様!!』
『うむうむ!では!24時間働こうか(ニッコリ)』
『え……?』
『ちなみにこの部屋、外には監視カメラと警備猫が徘徊してるから、逃げても無駄だぞ(にっこり)』


『ニムロッド』改造

『しかし閣下、これでは砲の照準を素早く動かせないのでは?側面への攻撃力が……』
『砲を回頭可能にすればよかろう』
『し、しかしそれでは反動で基部がイカレて……』
『この素材でこれとこれとこの部品を作ってこっちの新しい設計図通りに組み立てろ』
『……閣下、いえ主任。これ歴史を塗り替えてませんか?』
『気にするな、自重はせんと決めたのだ』
『……閣下、乙型ルシだったりしません?目光ったり紋章光らしたりできません?』


『46センチ口径二連装砲』

『無理です!絶対無理ですこんな性能出せるわけがない!!』
『ええい!四の五の言わずにさっさと作れ!!部品も材料も加工機械の作り方から書いてあるだろここに!!』
『ほぼ全部新規パーツですよ!?よしんば作れても時間が無いです!ニムロッドの改修パーツも作ってるんですよ!?今日だって貫徹で……』
『人海戦術は我が国のお家芸だろうが!人員は廻してやる!貫徹がどうしたこちとら8日は寝てないぞ!!』
『『『お願いですから寝てくださいしんでしまいます!!』』』


『鋼機量産』

『無理です!こんな無茶な納品計画聞いたことありません!』
『いけるいけるいけるいける絶対大丈夫絶対いけるから!ドンウォーリー!』
『閣下の命でも無理なものは無理です!物理的に不可能なんです!時間が足りなすぎます!』
『この刷新した製造機と新しいシフト表(週休二日制)ならいけるから!ネヴァーギブアップ!!』
『材料もありません!』
『新しく手に入った鉱山からと使わなくなった鋼機と製造機を分解してリサイクルしたものを廻すから!3Rって大事だよな!だからこそ!エースを狙ってけ!!』
『うがぁあああああもうどうにでもなれ!!』


『栄養剤』

『あ゛ーつっかれたー。徹夜13日目はしんどいわ。ま、もう少しで一段落つく。それまではこの「労働ハ君ヲ自由ニスル(意味深)」を飲んで……』
『いたぞ!閣下だ!!』
『捕らえろ!決して傷つけるな!ノアにも連絡しろ!』
『とうっ!』
『なっ!?跳んだ!?』
『怯むな!麻酔弾の使用を許可する!』
『ふははは不合格だ!ぐほぁ?!』
『捕まえましたよファザー……』
『……逃がさない』
『ファザー!いい加減休んでくれ!死んじまう!』
『ええい離せ!働きとうござる!働きとうござる!』
『えいっ(ぷす)』
『おっふ!バ、バレル貴様ぁ……ガクッ』
『ファザー油断も隙もないからね、さっさと眠らせるに限るよ』
『そうね……最新式の強化服まで使って逃げ回るなんて予想外過ぎるわ』
『どにがぐ、ごれで万事がいげづだ』


○月×日


甘かった。見くびっていた。

朱雀も玄武も蒼龍も化け物だ。

なんつーか、ゲームのほうが弱かった。

何がって?

身体能力だよ!

何だよあの玄武の騎士ども!人間戦車か!?メタルギアのつもりか!?

朱雀の候補生、魔力で身体と武器を強化してやがる!魔力があれば玄武の下級騎士ほどの力を発揮しやがるし魔法使わせりゃ手がつけられん!

蒼龍の戦士、身軽とかそんなレベルじゃねえ!自分の身長の何倍まで跳ぶ気だ仮面ライダーか!?投げ槍で鉄板貫通とかふざけんな!!

あ゛ークソ、あ゛ぁーあクソッタレが!

もういい、もういいたくさんだ!

クリスタル武器も召喚獣もドラゴンも!超科学で全殺しにしてやらァ!!

手始めに我が社の主力製品だったスーパーロボットの『アームドピース』(ACに似てるとよく言われるけど別物)と『デイドリーム』(ナイトメアの親戚?とよく言われるけど赤の他人)造ったらァー!

あと戦闘機!ザミエル輸送機作って八万五千フィートから朱雀飛空艇にダイナミック☆着艦させてやる!!


○月×日

オジマ粒子がどうやっても造れない……何故だ、作り方はあってるはず。もう俺は二度とあの緑の光を目にすることは出来んのか……

○月×日


車輪造ったら溶けた。どういうことなの。


○月×日


(^o^ )

(^o^ )

(^o^)

( ^o^)

( ^o^)        チュドォーン!!>

(#^o^)<飛ぶどころか浮きすらしねぇ……


○月×日

つまりアレか、『世界観』ってやつか。
その世界特有の物理法則、やれやれ、なまじスパロボみたいな世界にいたから気づけたが俺じゃなかったらまだ無駄な実験を続けてたぜ。

じゃ、もうちょいこの世界に合った方法を取りますか。

○月×日

玄武クリスタルげっとぉー!

っし!これで超兵器エンジンが造れる!

かつて『ひとつ所持すれば世界がひとつ手に入る』のキャッチコピーで販売した超兵器をこの世界に投入してやる!

見てろよアリシアー!

○月×日

なるほどなー。

強化剤でどうして銃弾の威力や鋼機の性能が上がるのか不思議だったが……そういうことだったのか。

てことは、鋼機ってのはスーパーロボットの一種……カトルのガブリエルがチート性能な訳だ。

○月×日

いいか、みんな
        (゜д゜ )
        (| y |)


ウとハでは単なるカタカナでしかないが
       ウ  ( ゜д゜)  ハ
       \/|  y |\/


    二つ合わされば地雷先輩となる
        ( ゜д゜)  穴<かかったな阿呆が!!
        (\/\/


同じように
        (゜д゜ )
        (| y |)


ロとハでも単なるカタカナでしかないが
       ロ  ( ゜д゜)  ハ
       \/|  y |\/


    二つ合わさればクレイモア後輩となる
        ( ゜д゜)  只<チィーッス地雷せんぱぁいwww
        (\/\/


手段なんぞ選んでられんが、スマート地雷以外は使うなよ?
元帥との約束だ。
        (゜д゜ )
        (| y |)



○月×日

ヴォルケンクラッツァーが沈められた!

蒼龍ルシごととかアリかよ!?

百歩譲って朱雀ルシはいいさ、だが零式バハムートてめえはダメだ。

つか過度の手出しはしないんじゃなかったのかあのババアー!!

まあいい、いやよくないけどいいことにする。

所詮は超兵器、たった一隻の軍艦に沈められたなんて話も聞くし、スーパーロボットに取って代わられた旧時代の代物だ。

本当の目的派達成できたからもう用済みだったし。

戦略的には勝ってる。狙い通り秘匿大軍神もなんとかなった。

あとはフィニスの時を呼び寄せるのみ。

ババア、勝つのは皇国だ。

人間の底力を見せてやる。

でも超兵器エンジンを失ったのは痛いなぁ……もう作れねえんだよなアレ。







こっから後書き反省会


ドーモ、キノコ=サン、デス

大部強化しました。自重はしなかった。

しかし開戦の仕方に適当感がぬぐえない……実力不足が悔やまれます。
一応ルーデル=サンが皇国軍を甘く見てしまった理由とかメイジがいないと思った理由はあるんですが書き込めませんでした。

ちなみに、この皇国軍はゲームより鋼機がかなり多いです。

……戦車って一軍にどのくらいいるんでしょう?

で、零式単体の二次作りながら気づいたこの作品の致命的欠陥。

……あんだけ戦争して総兵力120万のままなわけねーじゃん!

どのくらい減らすかはまた考えます。

さて、あと一回更新できるだろうか……無理っぽいなぁ

ちなみに作者は、強化兵が25人もいっぺんに来たら『死んじゃだめ』特攻します。
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