皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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戦場の神・後編

開戦の号砲とともに始まった防衛戦は、終始、皇国軍に優位な状態で展開していた。

 

しかし、前線中央では、討伐軍の突撃の主力である『屑兵』、そのうち『混成亜人部隊』および『奴隷兵部隊』とぶつかった部隊は、一進一退の戦闘を強いられていた。

 

「ガア゛ア゛アア!!!」

 

「う、うわギャァ!?」

 

「クソッタレしぶといぞこいつら!!」

 

「撃て!撃ちまくれ!!」

 

たった今、一人の皇国兵をこん棒で殴り殺したトロールが、数人の銃撃によりようやく倒れる。

 

それにさらに飛び掛かり、全体重をかけて銃剣を何度も突き立てる。

 

そこまでしてようやくトロールは息絶えた。

 

「クソ!敵の攻勢が強い!!」

 

「砲兵何をしている!押し込まれるぞ!!」

 

最前線で敵と交戦している部隊長が、後ろに随伴している砲兵中隊に苛立つ。

 

だが随伴している彼らとて遊んでいるわけではない。

 

肩が外れるような頻度で無反動砲を撃ち続ける皇国兵は、土砂煙を巻き上げながら突っ込んでくる亜人たちに冷や汗を流す。

ニムロッドも砲撃を繰り返すが、敵の勢いを殺すことができないでいた。

 

 

『屑兵』には事前に特別な食事が振る舞われる。

狂暴性を跳ね上げ、痛覚を鈍らせる薬入りの。

 

それにより、ただでさえ強靭な生命力を持つオークなどが、その命の一滴まで搾って暴れるのだ。

 

さらに極度に興奮し、凶暴になったオークなどは生存本能すら停止している。

 

つまり、砲撃に恐怖しないのだ。

 

自分のすぐ横で爆発がおき、石礫が散弾のごときすさまじさでぶつけられても怯まない。

 

目の前で味方がバラバラになっても気にも止めない。

 

腕が飛ぶ鈍い痛みは憤怒で塗り潰される。

 

そして『屑兵』を構成する『奴隷兵』。

 

こちらも厄介な存在だ。

 

「こ、こいつら痛みを感じてないのか?!」

 

「何でだよ、倒れろよ!」

 

全身血まみれの重傷で、それでも立ち上がり剣を振り回す男。

 

既に精神力を限界まで使い切り、土気色になりながらそれでも魔法を唱え続ける女。

 

『ギアス』と呼ばれる水の魔法の禁忌。

 

癒しの力を持つ水の魔法は、同時に心を操る禁断の力を秘めている。

 

彼らに付けられた首輪にそれがかかっており、命じられたことを愚直に実行する人形にされているのだ。

 

その命令が、例え自身を滅ぼすようなことになっても、だ。

 

腹に穴が空いてようが腕が千切れかけてようが、なりふり構わず襲ってくる。

 

もはや歌って踊って戦えるゾンビと言い換えてもいいだろう。

 

こういった非人道兵器の活躍により、ガリア王国側前線の一部は皇国側の攻勢を押しとどめていた。

 

無論これは、戦場全体から見れば、わずかながらの抵抗のようなものだ。

 

このままいけば遠からず皇国軍の勝鬨が上がるだろう。

 

しかし、それに直接対面する兵士にとっては最悪と言っていい。

 

運が悪かったといえばそれまでだが、あまりに救えない話だ。

 

例えば、かつてのことで言うならば、『朱の魔神』と対面してきた兵士たちのように。

 

 

だが忘れていないだろうか。

 

 

そんな救われない話を粉砕し、敵を殺して味方を助ける、特殊部隊がいることを。

 

 

 

「化け物めえ!!」

 

ここでも皇国兵が己の自動小銃を乱射する。

 

17mm口径から弾丸が吐き出され、眼前に迫るモンスターの肉体を抉る。

 

しかし薬で極度に興奮しているオーガは止まる様子はなく、全身血塗れになりながらも突っ込んできた。

 

「う、うわあああああ!!」

 

絶叫しながらそれでも撃ち続ける兵士。

 

その兵士にオーガが激突する、寸前。

 

「ヴン゛ッ!!」

 

その皇国兵の頭上を、拳が通過、興奮したオーガの顔面を潰した。

 

ゴぎんッ!という骨が砕ける鈍い音が響き、オーガはその太い首を支点に動かなくなった。

 

「あ、あ?」

 

弾の切れた小銃を構えたまま、茫然としていた兵士は、おそるおそる振り向いた。

 

そこには、視界いっぱいの金属の壁。

それは、白銀に輝く巨大な鎧。

 

「無事が?」

 

「うわ!」

 

ひび割れた声に驚き飛び退くと、そこには見上げるほどの巨漢の姿。

 

「ノ、ノア・コマンド……」

 

「俺が行ぐ。あどにづづげ!!」

 

鉄塊のごとき巨漢が、重金属の足音を響かせながら前進する。

 

「ノアだ!」

「ノアが出るのか!?」

「ハハハ!ノアが出るならこっちのもんだ!」

「行くぞォ!准佐に続け!!」

 

敵の勢いにもう少しで恐慌状態にされるところだった皇国兵たちは、『ノア・コマンド』が応援に来たと聞いて息を吹き返した。

 

そして彼らは、今日も前線名物『目を疑うような行進』を見るのだ。

 

 

両脇からガトリング砲が、両肩からロケット砲が、両腕上部からマシンガンが、両脚部にはミサイルポッドが。

 

それぞれが生物を確実に粉々にできる重火器、その試作品。

 

強化兵ではなく、一般兵でも扱えるように威力を調整する、その前段階の強力過ぎる作品群。

 

それが、セフティー准佐の鎧から一斉に展開された。

 

そして傍にいた数人の兵士が弾帯をそれらに繋ぐ。

セフティーの腰には太い鎖が巻かれる。

それら全てが、後ろの『弾薬コンテナ』に繋がっている。

 

そして――――――

 

「死ね゛ぇ」

 

強烈な弾幕を張り、前進を開始した。

 

全身から広範囲に猛火線を展開しながら、なお進撃は止めない。

 

発砲の反動を完全に無視し、多岐にわたる弾薬を満載したコンテナをひとつ引きずりながらどんどん前進する。

 

さらにセフティー准佐の兜に搭載された『スフィア・アイ』が、その嵐に敵を正確に巻き込む。

 

近づく輩は木端微塵。

 

鎧袖一触獅子奮迅。

 

立ち塞がる全てを薙ぎ払う鋼鉄の嵐。

 

それに付随するように皇国兵士も前進する。

 

先ほどと違い、嵐からこぼれた獲物に弾丸を集中させ、確実に殺していく。

 

敵の圧力が減ったことで、比較的落ち着いて狙えるようになったのだ。

 

しかし―――

 

「む゛?弾切れだ」

 

どんな嵐もいずれ止む。

 

この嵐も弾切れにより『一旦』停止した。

 

「パージ」

 

ちゃっかり運用データを送信した後、セフティーが装備していた武装が全て地に落ちた。

 

さらに腰に巻いた鎖を引きちぎる。

 

そしてセフティーは、背中に背負った二本のデフォルト武器を手にした。

 

「突っ込む゛。俺ごど撃で」

 

「はっ!」

 

その場にいた、強化服装備の兵士が躊躇い無く命令を受諾する。

 

「よ、よろしいのですか?!いくらなんでも……」

「ん?貴様後方勤務か?では知らんのだな?」

 

そういって、彼は笑いながら、

 

「あの方は、無敵だ」

 

セフティー准佐に畏敬の眼を向けた。

 

「ヴォオオオオオオオオ!!!!」

 

鼓膜が破れるような大咆哮。

 

一振り。

両断。

 

一振り。

両断。

 

一振り。

両断。

 

やっていることは単純かつ明瞭だ。

なんの超科学も関わっていない。

ただの物理だ。それも小学生でもわかるような。

 

もんだい

すごく つよい へいたいに すごく おもくて すごく かたくて すごく でっかい けん で きられたらどうなりますか?

 

こたえ

しにます。

 

手にした武器――――“頑丈さ”だけを追及した、鉄板のごとき巨大な肉切り包丁――――を敵目掛けて全力でブチ下ろす。

 

右手に握ったそれが、防御しようと構えられた金棒ごとトロールを両断し地を穿つ。

 

左手に握ったそれが、オークを三体纏めて凪ぎ払う。

 

腹に叩き込まれた蹴りによって悶絶するオーガを、頭突きで頭蓋をかち割る。

 

「『ブースター起動』」

 

背中に積んだ『ブッ飛ぶ』だけのブースターが爆炎を吹きセフティーを前方へ突っ込ませる。

 

進路上にあるものを撥ね殺しながらさらに突貫。

 

突出する危険性?

 

囲まれて袋叩き?

 

そんなことは関係ない。

 

「オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオ!!!!」

 

有象無象の抵抗など意に介さず、鋼鉄の巨人は虫けらを踏みにじる。

 

オークのこん棒が打ち込まれた。

鎧に弾かれた。

 

オーガが掴みかかった。

容易く振り払われ斬り倒された。

 

トロールが三匹走ってくる!

逆にこちらから出向き一匹一匹斬り殺した。

 

縦横無尽に暴虐無慈悲に突撃し、殺戮を行う。

 

「無反動砲用ォ意!!」

 

と、先ほどの強化兵が砲兵に指示を飛ばす。

 

「なっ!?爆風にあの方を巻き込みます!!いくらノアでも!」

 

その指示に驚愕する若い兵士。

だが強化兵は、楽しげに笑うのみ。

 

「まぁ見ていろ……たまげるぞ?」

 

そして前線の対岸、つまり討伐軍『砲亀』陣地では、指揮官が顔を青くしていた。

なにせあのおぞましい『屑兵』の群れを、ものともせずに真っ直ぐ突っ切ってくる化け物がいたからだ。

 

「な、なんだあの化け物は!!」

「砲亀を向けろ! あれを撃て!! 撃つんだ!!」

 

半ば恐慌状態で指揮官が怒鳴る。

砲兵たちは日頃の訓練を発揮し、非常に素早く砲口を怪物に向けた。

まわりに『屑兵』がいる? 運が良ければ助かるだろ?

 

そして、両岸で号令が重なる。

 

「「撃てぇええ!!」」

 

強力な無反動砲が容赦なくロケット弾を撃ち込み、ニムロッドの榴弾が落ちてくる。

砲亀の砲弾はたまたまセフティーへの直撃コースを描く。

 

爆発に巻き込まれるセフティー。

直撃する砲弾。

炎上し、炎を上げる着弾地点。

 

まさか殺してしまったのではと蒼白になる若い兵士。

 

間違いなく殺したと安堵する指揮官。

 

 

だが―――――――。

 

 

ずしゃり、ずしゃりと炎の中から足音がする。

 

「こ、この音は……まさか!!」

「ハハハ、さすがだ」

 

徐々に、紅蓮の中に影が浮かび上がる。

その頭部に、白緑に輝く十字の光が揺らめく。

 

そして、多少土で汚れた、しかし傷一つないセフティー准佐が現れた。

 

「馬鹿な!直撃したはずだ!!」

「も、もう一度! もう一度だ!!」

 

砲亀による再びの砲撃。

 

砲弾はまたも奇跡的に直撃コースを飛び、セフティー准佐の鎧にあっさり跳ね返された。

 

「は、はぁ?」

 

指揮官はあまりの光景に呆けたようにうめく。

 

「ム゛ダだ」

 

またも爆炎があがる。

今度は大砲ではなくセフティーの背中から。

 

つまり――――

 

「え?」

 

砲亀の指揮を執っていた男は、次の瞬間空高くを舞い、皮肉にも砲弾のように飛んでいった。

 

かなり遠くに着弾した男は、ピクリとも動かない。

 

「さあ゛、行進だ。敵は全部ゴロ゛ゼ。捕虜はい゛ら゛ん」

 

「「「「オオオオォォォォォォ!!!!」」」」

 

 

 

 

一方こちらはバヨネット大尉。

 

こちらにも敵の突撃が集中しており、『陣型』ニムロッドによる防衛線が築かれていた。

 

そんな中、バヨネット大尉はバリケードの内側で防衛に加わっていた。

 

「ぅおるぁああああ!!」

 

自動小銃を二丁持ちして乱射する。

 

「しゃらあああああ!!」

 

弾が切れたらそれを槍投げする。

 

「オラオラオラアアアア!!」

 

背中にあるもう一丁を構えてさらに撃つ。

 

撃ち尽くしたらさっと屈みながら腰にある弾倉を手にする。

 

「……」

 

ドラムカートリッジ入れ替え。

 

「装填は静かなんですね……」

 

完了、再び立ち上がって撃ちまくる。

 

「だらっシャアアアアア!!」

 

「撃つ時テンション高いなー」

 

「あれで全弾ヘッドショットだから、やっぱ兵隊は顔じゃないよなー」

 

若干呆れを含んだ様子で、周りの兵士が呟く。

 

「た、隊長!弾が切れました!!ストックもありません!」

 

と、一人の若い兵士がバヨネットに報告する。

 

「あ゛ぁ?!弾切れだァ?!てめえの目は飾りか!くれてやるから貸せ!」

 

その新兵から突撃小銃を引ったくり、自分の突撃小銃を押し付けると

 

「手本を見せてやる!お前ら援護を頼む!!」

 

「「「「了解ッ!!」」」」

 

バリケードを飛び越え、姿勢を低くし、滑るように前へと走る

 

「おおおおおおおおお!!!!」

 

「ブギィイイイイ!!!」

 

血走った眼のオークが棍棒を振り回す。

 

それをすり抜け懐に飛び込む。

 

その豚バラに銃剣で刺突、さらに蹴りつけて刀身を抜く、その勢いで回転しつつ逆袈裟に腕を切り落とす。

後ろに逸れかけた体勢を無理やり引き戻して踏み込むようにもう一太刀、頭をかち割りトドメ。

 

そこへ横ばいからオーガ、人の頭ほどもある拳がバヨネット目がけて打ちおろされる。

しかしバヨネットは首をひねり回避、ついでにその軌道に銃剣を置いて肘まで割る。

それを手放して今度は前転、後ろから放たれた蹴りを回避、それを行ったトロールも確認。

今更悲鳴を上げはじめたオーガをバヨネットは無視、腰に差した二本の鉈を引き抜く。

腕に差し込まれたままだった銃剣を抜こうとするオーガの足を斬り裂く。そいつが膝をつく前に背骨に片方の鉈を刺し込み離脱。

 

オーガごと殺ろうとしたトロールのタックルを回避、オーガ巻き込まれ死亡、トロールは姿勢が前に崩れているので、低い位置にあった目を切り裂く。

トロールはそのまま転倒。

とどめ、背中に乗り頸椎に鉈を突き立てる。

 

最後に後ろポケットから手榴弾を二個引き抜き前方へ投擲、近づきつつあった虚ろな目をした人間を三人吹き飛ばした。

 

その爆発を確認することなく、バヨネットは先ほど投げつけた小銃に走り二丁とも回収、味方陣地に取って返しバリケードの内側へ。

 

「っていうふうにやるんだよド新兵が!!」

 

ここまでやった後、バヨネットは猛烈な勢いで小銃を点検しつつ先程の兵士にそう怒鳴りつけた。

 

「補給です!小銃、無反動砲の追加弾薬です!!」

 

「ご苦労!!待ってたぞ!こちらに小銃のマガジンをくれ!!」

 

と、ちょうどよくやって来たウォーリア輸送型(突発的な戦闘にも耐えられるように製造された、という名のリサイクル品)に、バヨネットは労いをかけつつ補給を頼んだ。

 

「……」

 

しかし件の新兵は、ぽっかり口を開けたままバヨネットを見たままだ。

 

と、そこへ陣にいた強化兵装備の部隊長が彼の肩を叩いて言った。

 

「新兵、覚えておけ。アレ真似しようとしたら死ぬからな?」

「……バヨネット様の動きが見えなかったんですが。途中からぶれてましたよアレ」

「あの方は『ノア・コマンド』の中で最も我々に近い戦いをされる。訓練すればいずれあそこにいけるのではと思わせてくれる」

「とんでもない方ですね……アレ? しかしノア装備は?」

「それは……あまり見ないな。一説には味方も巻き込むのであまり使えないんだそうだ」

「はぁ……隊長はご覧に?」

「……眩しかったことと、目が点になるような光景だったことは覚えている。あれは『朱の魔神』から我々を逃がそうとした時だったか」

「はぁ、それはいったいどのようなものだったのですか?……隊長?」

 

と、ここで新兵は隊長の返事がないことに気付いた。

 

振り返ると、部隊長は強化兵用ヘルメットで何かの通信を聞いていた。

 

「……まずいな」

 

「どうされましたか?」

 

新兵が問いかけるが、部隊長はそれを無視し、バヨネットの傍に走る。

 

「大尉!!」

 

「あぁ、指令はこっちにも来ている。悪いがここからは俺が指揮を執る」

 

「了解しました。聞いたな!我々は大尉の指揮下に入る!!」

 

各所から了解の応答が返ってくる。

 

バヨネットは息を吸い、よく通る声で伝達した。

 

「こちらに敵の特殊部隊が近づいている! 我々は援軍到着までこれを足止めする!! 各員誇りをもって任務を果たせ!」

 

「「「「ハッ!!」」」」

 

十分に弾薬を補給した彼らは、その『特殊部隊』を待ち構える。

 

やがて、近づいてくるナニカの群れが見えてくる。

 

「なんだあれは……?」

 

銃座についた兵士は、そのナニカ―――ここからは赤い点に見える―――を見て呟いた。

 

だがその点は、かなりの速度で移動しているのか、みるみるうちに大きくなっていく。

 

ナニカは、赤黒い、肉の塊のように見えるモノが十個ほど。

 

バヨネットの指示が飛んだ。

 

「銃座、牽制射撃! ニムロッド、榴弾装填、目標肉塊!!」

 

一斉に銃座から鉛玉が撃ち出され、ソレに向かっていく。

 

強力な機銃弾は肉塊を容易く抉っていくが、肉塊の勢いを少し殺しただけにとどまる。

 

その殺された勢い目がけて発射された榴弾は、放物線を描き、まっすぐに肉塊へと向かっていく。

 

と、肉塊が動いた。

 

花開くように肉塊が四つに分裂し、迫っていた榴弾へと肉花弁が飛んだ、いや、『投げられた』。

 

投げられた肉花弁―――オークの死体は榴弾と接触、爆発した。

 

そのスキをついて肉塊がさらに距離を詰めてくる。

 

「あれはまさか!?」

 

肉塊の正体、それは、オークの死体をぶら下げて走るキマイラだった。

 

爆発と銃撃で血と臓物を垂れ流した死体を纏う姿はおぞましく、皇国兵達は青ざめる。

 

「う、うわぁ!!」

 

本能的に銃を向け、撃ちまくる。

 

が、キマイラが盾にしている肉塊に当たり、キマイラに届いていない。

 

「落ち着け!足だ、足を狙え!!」

 

バヨネットからの命令、それが伝わるより一瞬早く、キマイラが銃座にオークの死体を投げつけた。

 

砲弾のように飛んでくる肉塊は、銃座についていた数人を巻きこんだ。

 

「なっギャアアア!!」

「わぁああグェb」

「ぐぁあ!!ほねが、かたがァア……」

 

その致命的なスキに、バリケードを突破された。

 

骨を数本やった先ほどの新兵は、自分の頭上に影が差したことに気づいた。

 

「あ、ヒッ?!」

 

見れば、そこにはバケモノがいた。

 

先ほどから攻め寄せていた怪物の一種類(トロール)を二匹、背中合わせに無理矢理より合わせたかのような姿。

 

四つ足で、足の間から尻らしきコブが四つ見える。

 

腕も四つあり、肩は二つずつ溶け合ったかのよう。

 

頭は一つだが、顔にあたる部分に覆面、『逆さ五芒星』のマークの入った覆面をしている。

 

「うっ……!」

 

おぞましい。

 

生理的嫌悪感をもよおす姿だ。

 

ここで彼の意識は途絶える。

 

その命の終わりとともに。

 

 

 

「…………」

 

バリケードを突破したキマイラの一匹が、新兵を撲殺した。

 

霞むような速度で拳が振られる。

その度に皇国兵たちが二、三人纏めて弾け飛ぶ。

文字どおり、赤い果実か何かのようにぱん!とだ。

 

「ひ、ヒィ!」

「な、何だコイツら?!」

 

弾けた味方の血を浴びた赤い兵士が真っ蒼になる。

動揺のあまりほとんど狙いの定まらないまま小銃が乱射される。

 

機銃はもう役に立たない。バリケードの内側に入られては何もしようがない。

 

だがここでバヨネットが混乱を打ち消す新たな命令を飛ばした。

 

「落ち着け!当たれば即死などいつものことだろう!!一般兵は下がれ!後方から援護しろ!強化兵は前に出て撹乱だ!!後続はすぐに来る!足止めするんだ!! ニムロッド、状況一一、状況一一!」

 

動揺が深い時こそ命令はすぐさま浸透する。

一般兵装備の歩兵は全速力で距離を取り、追いすがろうとしたキマイラの前にバヨネット他数名の強化兵が立ちふさがる。

さらには輸送用として来ていたウォーリアがそのまま加勢する。

キマイラの後ろでは陣型ニムロッドがバリケードとの接続を解除し、くびきから放たれた。

 

『化け物ども、かかってこい!!』

 

その場で素早く足をたたみ、大きく跳ね上がる。

 

その巨体がバッタのように飛び、さらに向きを変えて落ちてくる。

 

『ニムロッド搭乗時間500超えのベテランのプレス!喰らいなァ!!』

 

落ちてくる足は寸分違わずキマイラをとらえている。

 

ニムロッドはその体重をもってキマイラを踏み潰そうとし―――

 

『っぐ!? 何ッ!?』

 

受け止められた。

 

足の一本を四本の腕で受け止め、さらに四本の足で支えるキマイラ。

 

『この、ならこいつをうグアアァ?!』

 

胴体部の機銃を向けようとした直後、横っ腹に衝撃。

 

別のキマイラがニムロッドを横倒しにしたのだ。

 

パイロットは横倒しにされた機体をすぐに立て直そうとするが、さらに乗りかかられ拳を何度も叩き付けられ、遂には大きく放電したのち爆発した。

 

「まだだァ!!被撃墜込みで500なんだよ俺は!」

 

と、その直前ニムロッドの搭乗口からパイロットである強化兵が転げ出た。

 

その強化兵も他の強化兵とともに攪乱に加わる。

 

だが強化兵の身体能力をもってしても回避が精一杯、いや、回避に集中せねばあっさり死ぬ。

 

そんな拳を、三体から同時に行われ、それでも避け続けるバヨネット。

 

(ファザーのッ!鬼特訓にッ!似てるなコレ!!)

 

曲芸じみた動きで攻撃をぬるぬる躱すバヨネット。

 

だが心中ではわずかに焦りが出始めていた。

 

(どうする……力を使うか? だが味方が多過ぎる!)

 

こんな迷いを見せたのは、大きな失態だった。

 

―――致命的な、失態だった。

 

突然、生物の関節を無視するような回転攻撃により、裏拳の要領で殴られ吹っ飛ぶ。

 

裏拳とは言え人間の頭ほどもある拳での攻撃だ。

 

簡単に肋が数本砕け、内臓が潰される。

肺に折れたあばらが突き刺さる。

 

そのまま一般兵のところまで転がって止まった。

 

「(不覚、情けねぇ!!)」

 

「バ、バヨネット大尉いいいぃぃぃ!!!」

 

「(だが、時間は稼げた、よな―――)」

 

ちらっとヘルメットに内蔵されたモニターに表示された内容をみて、バヨネットはホッとする。

 

「いそげ!大尉を、大尉を回収しろ!!」

 

だがこんなセリフを聞いては落ち着いていられない。

 

「総員持ち場を離れるなァ!!」

 

一瞬で大喝、盛大に血を吐き散らしながら、バヨネットは叫んだ。

 

集まりかけていた一般兵がとどまる。

強化兵は全員目前の死を回避せんと必死だ。

 

「し、しかしその傷は!」

「やかましい!ゲブッ一人の命ではなく任務を、任務を果たせ!!撃ちまくれェ!!」

 

「ぐっ、りょ、了解しました!」

「よし、ぐっ、それに、これで巻き返しだ」

 

後ろに迫っていたキマイラの攻撃をローリングで躱しながら、バヨネットは笑った。

 

大空から声が、援軍の声が降ってくる。

 

『独立機動装甲部隊、応援に来た!!』

 

それは戦線の戦力の薄い個所に集中投入される鋼機、『ヘルダイバー』―――ではない。

 

足回りのバランスを改修され、手荒な運用にも耐えられるようになったアレ。

 

しかし相変わらず機動力は劣るアレ。

 

そして、『ヘルダイバー』の開発により、めっきり輸送以外で姿を消した『中型艦載艇』。

 

その二つが、合体した。

 

中型艦載艇の下部にアンカーで固定されたアレ―――『コロッサス』が解放され、勢いよく落下してくる。

 

そしてそのまま―――蹴りを放った。

 

『■■■?!』

 

ニムロッドよりよほど重い90トン超えの重量に、耳障りな悲鳴を上げて蹴り飛ばされるキマイラ。

 

それが体勢を取り戻す前に近づき、さらにパンチを叩き込む『コロッサス』。

 

工場用重機を彷彿とさせるクローが回転し、キマイラの筋肉を抉り取る。

 

『ミンチになるまで殴ってやる!』

 

腰部を回転させ右回りにパンチ、返す勢いで裏パンチ、そしてカウンターパンチを食らった。

 

強く揺れる機体、そんな中でパイロットはニイと嗤う。

 

『ぐっ!?やるな……だがなぁ!!』

 

キマイラの真後ろからもう一機コロッサスが現れ、その背をクローで引き裂いた。

 

『もう一機いるんだよボケが!!』

 

さらに、

 

『追加だ!』

 

もう一機追い討ちで真上に降ってきた。

 

数トンもの重量がのし掛かり、キマイラの足関節をへし折りそのまま押し潰した。

 

『ハハハどうだ悔しいか!?』

『油断するな! まだ息がある。バラバラにしてやれ!』

『『了解!!』』

 

のし掛かったコロッサスがマウント状態でキマイラの頭を殴り、残りの二体は至近距離から蹴り、火焔を浴びせ、機関砲を撃つ。

 

その間にも『コロッサス』の追加と、対地支援を開始した『中型艦載艇』によりキマイラは駆逐されていく。

 

キマイラを完全にミンチよりひでえ姿にしてから、彼らは離れた。

 

『急げ!敵はまだまだいるぞ!』

『ハッ!』

『了解しました!』

 

操縦幹を引き、フルスロットルでコロッサスを動かす。

 

コロッサスは徐々に歩行速度を上げ、小走りするような速度まで上がった。

 

小走りとはいえ人間のそれではない。

二足歩行する5メートルの鋼鉄巨人のだ。

 

それはコロッサス自体の質量を上乗せし、凄まじい運動エネルギーの塊となった。

 

そして最初に目についたキマイラの後頭部に

 

『くたばれぃ!!』

 

スクリューパンチを放った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『独立装甲部隊』が前線に駆けつけ暴れていた頃、そこにとあるキマイラがいた。

 

このキマイラは、バヨネット大尉を殴り飛ばしたキマイラだ。

 

キマイラは恐怖など感じない。命令のみを従順に実行する。

 

キマイラは疑問など感じない。命令のみを従順に実行する。

 

ゆえに先程殴り潰し、虫の息だった男が無傷で立っていることに僅かな恐怖も疑問も感じない。

 

その男―――バヨネットは、凶暴な笑みを浮かべて近づいてくる。

 

「よぉ、お前はさっき俺をボコってくれたバケモンか? まぁバケモン違いでも殺すがな」

 

強化服の胸部分に、キマイラの拳くらいの範囲に罅が入り割れている。

が、それは割れているだけで、陥没などはしていない。

無造作に近づいてくるバヨネットの足取りはしっかりとしたもので、ふらつきなどは一切見られない。

 

「さっきはちぃーっと油断したが……」

 

疑問も恐怖も抱かぬキマイラは、ただ『確認した敵へ攻撃を行う』ことにした。

再び拳を叩き込む。

今度は裏拳ではなく、万全の体勢からの右ストレートだ。

 

それをバヨネットは片手で受け止める。

 

受け止めた腕がべきべきと折れ、砕ける。

 

すかさず追撃にもう一発、打ち込んだ左。

それもバヨネットは片手で受け止める。

 

両腕を破壊した。

 

とどめを刺さんと、キマイラは腕を引こうとし、理解できない現象にぶつかる。

 

動かないのだ。

 

がっしりと受け止められた己の拳が、ピクリとも動かない。

拳の中に、バヨネットの指が食い込んでいる。

この小さな男に、姿勢が前のめりになるほど引っ張られている。

 

「この距離なら味方を巻き込むことも無いよなァ?」

 

だが理解できなかろうと動揺はしないキマイラは、残った二本の腕を組み合わせ、アームハンマーにしてバヨネットの頭に振り下ろす。

 

鈍い殴打の音、頭に被っているモノは壊れなかったが、代わりに首の骨が折れる音がする。

 

確実な手ごたえ。

 

だが。

 

それでも、バヨネットは凶暴な、狂暴な笑みを浮かべたまま―――

 

「死にな」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「よっと!」

 

「んー、一応、せいっ!」

 

「もしもーし?……ほっ!」

 

本日は快晴、場所は“元”のどかな丘陵地、“現”戦場跡。

 

そこでは勝利者側である皇国による、敗者側であるガリア王国の残敵掃討が行われていた。

 

まだ息がありそうなきれいな死体に銃剣を突き立て、生死の確認をする。

 

敵の潜めそうな森を包囲し、自動機械を突っ込ませる。

 

あとは、今回は例外的に『“ある条件”に当てはまる人間の探索』も行っている。

 

「ん? こいつ……隊長! 来てください!」

 

と、ここでも一人の兵士が、銃剣を振り上げた体勢で止まり、自らの部隊長を呼ぶ。

 

「どうした」

 

「探索対象と思われる存在を発見しました!」

 

呼ばれた部隊長は気絶している敵兵を見る。

 

「マントを羽織った身なりのいい兵士、確かに選別基準に合うな。よし、装備を改めろ。魔法の媒体になりそうな杖、剣は没収しておけ」

 

「ハッ! すでに発動媒体と思われる杖を確認しました。こちらです」

 

「ご苦労。ふん、こんなちんけなモノで魔法が使える、ねぇ?」

 

つまらなそうにその杖を一瞥し、

 

「伍長、ひとつ魔法を使ってみてくれ」

 

「は?…了解しました。ではこれより魔法を使用し、コイツを叩き起こします」

 

隊長からのフリに一瞬驚いた兵士は、杖を受け取ると、対象に向かって

 

「チンカラホイ!!」

 

助走をつけて蹴りを鳩尾に叩き込んだ。

 

「ゲブゥッ!!? ごふ、ごほ……」

 

気絶していたメイジ、アントンはえづきながら目を覚ました。

 

カロン曹長操るコロッサス、その砲撃をぎりぎりで回避し、気絶したままだった彼は、なんと運よくスルーされていたのだ。

恐らく圧倒的死の恐怖によりラインだった魔力がトライアングルに、それにより存在が空気になったから……かもしれない。

 

「ふむ。伍長、君には魔法の才能があるやもしれんぞ?」

 

「その賛辞は謹んで辞退させていただきます」

 

「「HAHAHA!」」

 

「うぐ……こ、ここは?」

 

と、アントンがしっかりと顔を上げる。

 

「おっと、手をあげろ」

 

「お前は魔導兵か?」

 

「ま、魔導兵? ぐは!!」

 

聞きなれない呼称にアントンが首を傾げると、もう一撃、今度は銃床での殴打が喰らわされた。

 

「質問に答えろ! 魔法が使えるのかと聞いている!」

 

「僕はメイジだ! 魔法を使えるにきまってるだろ……」

 

「よし、立て! 伍長、こいつを頼む。アキム! ヴィクトル! 二人は伍長につけ!」

「「「ハッ!」」」

 

三人の兵士によって、アントンは捕虜輸送地点に連れてこられた。

 

「乗れ!」

 

輸送車輌には、彼の他にも数人のメイジが乗せられていた。

 

皆、程度の差はあれど負傷しており、土で汚れた姿は正しく敗残の兵であった。

 

と、アントンは見知ったメイジを見つけた。

 

「カールか?」

 

「ん……アントン? 生きてたのか」

 

カールは、アントンと同じく下級貴族の出で、学生時代からの友人でもある。

 

「何とかな。運がよかった……のかどうかはわからんが」

 

「運が悪く、悪運が強かったんだろ」

 

「違いない。しかし……雑な扱いだな」

 

彼は車内を見渡しながら、カールにのみ聞こえる声で言う。

 

「下級も中級も、それどころかメイジなら従者も放り込んだという感じだな」

 

そう、車内には自分より身なりのいい貴族もいれば、従者らしき少年もいる。

 

普通こういった場合、例え捕虜でも貴族としての扱いが約束されるはずだ。

 

こんな風に纏めて閉じ込めたりはしない。

 

しかしカールは、軽く肩をすくめ、くいっと顎である場所を示した。

 

「貴族としての扱いは期待しない方がいいぞ。さっき騒いだ奴が、そこに『ある』だろ?」

 

そこを見れば、青ざめて震えている少年の隣に死体がだらんと座っていた。

 

身なりから推測するにそれなりの地位の人間だったのだろう。

 

「惨いな……」

 

「ま、捕虜なんだから空気読めってトコはあったがな」

 

カールは溜め息をひとつ漏らし、疲れた表情のまま言う。

 

「とにかくせっかく生き残れたんだ。お互い生きあがこうぜ」

 

「……そう、だな」

 

(……これからどうなるのだろう)

 

先の見えない不安に、アントンは少しだけ目眩と吐き気を覚えた。

 

 

 

一方そのころ別の場所では。

 

「こいつ生きてるぞー!!」

 

その声に、周辺の皇国兵が集まる。

 

そこには緩慢な動作で立ち上がる一匹のトロールが。

 

本来凶暴なモンスターだが、『屑兵』用の薬物効果も切れ、全身の痛みがそのトロールから精彩を奪っていた。

 

「麻酔を撃ち込め!拘束しろ!」

 

手近にいた兵士たちが一斉に射撃する。

 

さらに特殊ロケット弾が撃ち込まれる。

 

大量に麻酔を喰らい、ふらつくトロール。

 

着弾し炸裂したロケット弾は、内部の硬化性ジェルをトロールに浴びせかける。

 

空気に触れたジェルは瞬時に固まり、強固なゴムのように変質し、トロールより自由を奪う。

 

そうこうするうちに麻酔が効いてきたのか、トロールは動かなくなった。

 

「よし、大人しくなったな。こいつもリフト行きだ」

 

トロールはロープで縛られ、ストライカー輸送型に引きずられ、『空中戦艦』のリフトに乗せられる。

 

そのトロールは内部でさらにコンテナに突っ込まれ、本国に輸送される予定だ。

なお、コンテナには定期的に睡眠ガスが流し込まれる。

 

 

また、別の場所では。

 

「隊長、降伏を申し出ている部隊があります」

 

呼ばれた隊長が見てみれば、離れた場所に、白い旗を揚げて武器を捨てた者たちがいる。

武器を構えた部下たちに囲まれて震えている。

それを見ながら、彼は副官に問いかけた。

 

「捜索対象は?」

 

「いえ、対象の姿はありません」

 

これを聞き、彼は副官に呆れたような視線を送ると、確認するような質問をした。

 

「命令の内容は?」

 

「『モンスターハ可能ナ限リ捕獲。人間ハ魔導兵ヲ。生死問ワズ回収セヨ。ソレ以外捕虜ハ要ラズ』であります」

 

「ならそうしたまえ」

 

「ハッ!」

 

副官は銃を構えた部下たちに合図を送る。

 

「撃ち方よぉーい……」

 

「ま、待ってくれ! やめてくれ!!」

「こうふく! 降伏する! 頼む降伏させてくれ!」

「助けてくれ! 頼む助けてくれぇ!!」

 

「撃て」

 

銃声が幾重にも重なり、空へと消えていく。

 

物言わぬ屍が平原中に晒されていく。

 

隊長は、空を見上げ、その美しい快晴を見て言った。

 

「いい天気だな曹長」

 

「ええ、平和の証です隊長」

 

 

 

 

 

 

 

防衛戦は極めて皇国軍優位の状態で進み、ほぼ一方的に皇国側が勝利を収めた。

 

また、皇国はこの一戦で敵側の特権階級である魔導兵、異世界特有の兵器と思われる生物を多数捕獲。

 

 

そしてこの戦いこそが、『ハルケギニア』動乱の時代の幕開けとなるのだ。

 

 




コロッサスなぁ……やっちゃったんだぜ☆って感じだな。

もともと俺の専門はスーパーロボット兵器だからついテンション上がって……。

脚力強化、機動力強化、防御力強化、火器管制システムの刷新、不明なユニット作成、装備の拡張パック作成、電子機器入れ換え、士官機のみ脱出装置追加。

浮かれて俺専用機こっそり作ったし。

しかしコレ……なんか見た気が……あぁ、ATか。むせるな。

あそこまで紙装甲じゃねえが……近いよな、世界観的に。

だったらどっかにPS居ねえかな。

ある意味ノアがそれか?

もしくはカトル。




特S級機密文書

『【ノア・コマンド】レポート』

ノア・ナンバー13

氏名:セフティー・オールスタイン
階級:准佐
所属:『Nationalistic Oneman Army』
特殊装備:『ゴリアテ』


幼少期にシド・オールスタインに引き取られ、地獄のような訓練を受けた。


玄武との混血児で、身体能力に非常に優れる。

とくに身長は同年代と比べても抜きん出て大きく、どころかすでに大人よりも大きかった。

ただ、ぶっちゃけると俺はこいつをノアにするつもりで拾ったわけではない。

純粋にデカい図体で子猫みたいブルってたコイツがむかついたので根性叩き直しただけである。
つか普通に大人だと思ってたから一般入隊させるつもりだった。

そしたら子供だったよ……あの顔で。

んでどうも機械関係に才能がないし銃もへたくそだった。

どうしたものかと思ってたら、本人が番外者を希望した。

いや、『正しい形』の番外者、『強化兵計画』の集大成として立候補した感じか。

……俺はそれを許可した、とだけ書いておく。





さて、なんというか、うむ、やり過ぎた感は否めないな。

なんつーか、おっさん張りきり過ぎたかなーって。

肉体の強化は、当時まだ少なかった番外者と、バヨネットに使われた技術と、俺の前世知識でやったし。

あと、特別にあつらえた鎧も、……あれは大人げなかったよなぁ。

鋼室の後輩が番外者の装甲持ってきて『これぞ皇国式「王の鎧」です!』なんてドヤ顔しやがるからつい……持てる技術で再現できるモン全部ぶち込んだ鎧作っちゃって。

『NDK?NDK?先輩越えたみたいなドヤ顔で来てたけど、なぁどんな気持ちかね?』

『ぐぬぬ……そ、そりゃあ貴方のように高い地位に就かれた方なら、予算だっていくらでも自由にできるでしょうし、立派な物だって……』

『ざぁんぬぇんですがー、予算は君と同じですー。1ギルも違いませーん』

『ふぐぅ』

『あ、やべ』

泣かしちゃったんだぜ☆


……さて、物は単純だ。

ファンタジー万歳、これに尽きる。

前世じゃ超特殊方法で製造される金属がこっちじゃ普通に(といっても希少だが)造られていた。

それを使って生体金属皮膜やら衝撃浸透拡散装甲やら圧力集中球やら温度不変膜やら(省略!)を造って組み合わせて。

電子回路とあれこれの機構を組み込んで。

……トニーくん(前世の友人)との合作みたいなのが出来ちゃった。

まあいい。

で、セフティーには試験兵器の実践試験を任せている。

ぶっちゃけまともな奴には使えない武器、もとい兵器を大量に装備させてる。

弾が切れたら包丁あるし。

んー、もはやハルクに無敵の鎧着せた感じ?

……この間久々に戦場行ったら、なんかコンテナ引きずって戦う奴を見かけたんだが、うちの子じゃないよな?



まぁ倒せねえよアレは。

俺でももう年だ、さすがに刀ねぇと。

いやぁ……しかし成長したなぁアイツ(しみじみ



昔の日記

俺は、弱い。

今も昔も弱い。

自分を守るためだけに生きてきた。

幸い、玄武の血を引く俺はデカくて頑丈で強かった。

だからいつだって自分を守ってこれた。

寒さの、飢餓の、病の、暴力の、死の恐怖から自分を守ってこれた。

……路地裏で調子に乗ってお山の大将だった俺を、今でも俺は殴り殺しに行きたい。

でも俺を叩きのめしたのは、どこか胡散臭いオッサンだった。

オッサンは軍の制服を着てたけど、一般装備だった。
いつも通りマヌケ野郎をカモにしようとして、ボコボコにされた。

そしてその後ろから駆けつけたのは全員強化服だった。

ほんっとうに当時の俺はマヌケ野郎だった。調子に乗りすぎて虎の尾を踏んだのだ。

取り巻きは即行で逃げて、すぐに記憶から消えた。

ガタガタ震える俺をオッサンは睨んでただ一言、『お前は弱い』と吐き捨てた。

口から出掛けた反論は、眼光だけで叩き斬られた。

何より、自分が弱いことはよくわかっていたのだ。

『根性叩き直してやる。来い!』

そのまま引きずられていった先が、俺の家になった。

そこで取り巻きではなく仲間ができた。

貴重な食事を吐くような訓練をさせられた。

小隊行動してたとき、雪中行軍でベヒーモスと遭遇した。
この頃はまだ普通の番外者用の武装だったから死に掛けた。全員無事でよかった。


俺の力は強くなった。

だが俺は弱いままだ。

軍人になれば尚更に恐ろしい。

痛いのは怖い。

死ぬのは怖い。


という話を、オッサンにした。

もしかしたら俺をノアじゃなく、開拓方面か後方にしてくれるかもという甘えがあった。

だがオッサンは、ごく自然に、『当たり前だ、俺だって怖い。誰だって怖い。だから俺達は強い』と答えた。

『お前は恐怖から逃げて力を振り回していた。だからゴミのように弱かった。で、お前はベヒーモスが怖かったか?』

『怖かった。はっきり言って逃げたかった。漏らした』

『では何故逃げなかった?』

『■■■が負傷して動けなかった。戦うしかなかった』

『……ククッ、ほれ、お前は強い』

オッサンは面白そうに笑って言った。

『いいか、恐怖から逃げるために戦うな。それはただの蛮勇からの錯乱だ。恐怖を打ち倒すために戦え。それが勇気からくる強さだ』

勇気? そんなもの俺にはない。

俺は弱い。

痛いのも、死ぬのも、忘れるのもゴメンだ。

……そうだ、俺は決して崩れぬ壁になりたい。

内にある全てを守る壁に、強固な城壁になりたい。

俺が誰よりも前で俺を守って戦えば、それだけで味方全部を守れる大要塞になりたい。

だから俺は――――。











『コロッサスの改造』

『今日も今日とて研究だ!一日寝過ごしたから巻き返していくぞ!』
『ハイ! しかし閣下、休息はと』
『まずは(ぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺら)』
『(……なぁ、閣下はやはり……)』
『(間違いないだろう……あまりにも異常だ)』
『(ではそうするしか……)』
『(しかしまるで反逆ではないか!)』
『(だが、今閣下を失うわけにはいかんのだ!たとえ汚名を被り、処刑されることになろうと私はやるぞ!)』
『(……わかった。では明日にでも決行だ。すでに軍とは話がついている。ノアも賛同した)』




『多大な勘違い〜こち亀BGMを添えて〜』

『ターゲットは第四二通路を移動中! 二一部隊は先回りせよ!』
『繰り返す!ターゲットは最新実験兵装で武装している!油断するな!』
『重ねて言うがターゲットは無傷で捕獲だ! 装備は支給されるものを使え! 実弾および殺傷兵器を携帯している兵士は反逆罪で即刻拘束する!』

『駄目です! ターゲットロスト! ターゲットロスト!』
『見失ったで済む問題ではない!早く探し出せ!』
『第六九部隊! 警備用鋼機格納庫にて閣下を発見! 応援を求む!』
『よくやった! 至急応援を送る!』



『間違いないのか! あとコレは何のつもりだ!クーデターか!!』(物陰から大声で)
『偵察隊からの確かな報告です! 閣下! 貴方は乙型ルシである疑いがあります!』(バリケードの内側から大声で)
『なかなか早い決断だなァ! ハァ?!寝耳に水だバカ野郎!!』(牽制射撃しつつ)
『如何いたしますかァ?! そうでなければアレほどの新技術、実験もなしにその成功作品だけをポンポン出せる訳がない!! 皇国軍前進ッ!』(強化剤使用しつつ)
『こちらからは手を出すなァー! ただし警戒レベルは2まで上げておけ! ぐう正論だが俺はルシじゃねー!!強化剤まで使いやがって!』(スタングレネード投げながら)
『ハァッ! 了解致しましたァー! とにかく確認がとれるまで拘束します!ていうか使命を果たされて昇華されると終わりなので何がなんでも拘束します!』(カートリッジ交換しながら)
『このアンポンタンがぁー!!』
『ペリシティリウムの装置に異常はないだと?! バカな! 現に閣下は活動しているぞ!』
『ニンブス様、気分は?!』
『クリスタルに……異変を感じる……力が余り出ぬ』
『くっ?! どういう、ことだ!?』
『だぁーかぁーらぁー!! 俺はルシじゃねー!! てかニンブス貴様わかって黙ってるな!』
『……語る言の葉はない』
『行け!死を恐れるな!皇国の興廃この一戦にあり!!』
『クソッタレ今日も通勤が地獄だぜ!』

『ターゲット発見……』
『ぐっは息子まで来た!!』




一方その頃、0組は……


―――にゃああああ……

どこからともなく山猫の鳴き声が聴こえたかと思うと、無音の弾丸がナインの肩を貫いた。

『クソッ! また狙撃だ!』
『新型破壊に向かったみんなも、ノアに足止めされてるそうです…』
『フロスティ基地……確かにここは重要拠点です。しかしこんなに戦力が集結してるのは妙ですね。そもそも皇国軍の……』

『ピピ)クラスゼロ聞こえるか、クラサメだ』

『クラサメ隊長?!』

『コードQSEが発令された。作戦は中止だ!』

『マジ、かよ……』


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