皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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元帥の一日!

「止まるなぁ!さっさと走れェ!!」

 

この拷問器具に乗せられ、どれだけの時間が経っただろう。

 

僕は今、真っ暗な部屋で後ろへ流れる床に乗せられ、延々と走らされている。

 

目の前のガラスに数字が表れ、それが一定以下になると怒声が飛んでくる。

 

「くっ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

疲労のあまり倒れてしまいそうになる。

 

そもそもメイジは固定砲台だ。走るのは苦手なんだよ!

 

でも倒れるわけにいかない。

 

あんな、あんな風になるのだけは、嫌だ!

 

 

 

 

僕たちは捕虜となり、この何もかもが異質な場所に連れてこられた。

 

最初は気味の悪い管を刺されたり、その状態で魔法を使わされたりした。

 

その他には、狭い一室で、『ガリア』の軍の組織構成や、地理、『奇怪獣(キマイラ)』についていろいろ聞かれた。

 

僕はこの時、一言だって話さなかった。

 

僕だって貴族の端くれだ、敵に情報を話すわけがない!

 

僕がそう言うと、尋問官の男は『憐れむ』ような目で僕を見て言った。

 

『これは君のためでもあるのだよ。今のうちに素直に話したほうがいい。この世には、死ぬよりおぞましいことがあるのだから』

 

……結局僕は、何も話さなかった。

 

『見上げた若者だ。それだけに、惜しいな』

 

男はそう言って、席を立った。

 

そのあと、僕は他の捕虜たちとともに、ある一室に連れてこられた。

 

僕たちは椅子に拘束され、顔の向きも白壁の方に固定された。

 

殺されるのだろうか。そう思った。

 

だが違った。

 

奴らは悪魔だ!

 

正真正銘人間じゃない!!

 

あんな、あんなことを、よくやれるものだ。

 

室内が暗くなり、僕たちは、白壁に映し出されたある映像を、無理矢理見せられた。

 

――――人間が、細かくバラバラにされ、不気味な液体の入ったガラス筒の中に漬け込まれ飾られていくのを。

 

 

映像が消えて、一人の優男が入ってきてこう言った。

 

 

『我々はあなた方魔法を「使える人種」と「使えない人種」の違いが知りたい。ですのでこうやって細かく調べてるのです。それでですね、学問の発展のために、ぜひとも「生きたままのメイジ」も保存したいのです』

 

『ですが、あなた方は他にも利用価値はあるかも(・・)しれない。口がきけない状態にするのはあまり好ましくありません』

 

『ですので、「価値がなくなったと判断できた」方から保存させていただきます』

 

そう言って、あの男は笑った。

 

にっこりと。

 

 

心が、折れた。

 

他の全員もそうだった。

 

座ったままゲロ吐いて気絶した人や、小便洩らした人のことを、僕は笑う気になれなかった。

 

僕は恐怖のあまり声を上げて泣いちゃったしね。

 

そのあと僕らは、ひとりひとり別室であの優男に尋問された。

 

そいつは終始笑顔だった。にこにこ、にこにこと。

 

だけど怖かった。強面の軍人よりも、恐ろしかった。

 

目が、目だけが、人を見る目じゃなかった、人間の目とも思えなかった。

 

冷たい、冷たい鋼鉄の目。

心の内側に、ざっくりと剣を刺し込まれたかのような―――そんな恐怖を覚えた。

 

気づけば僕は、洗いざらい知ってることを全て話していた。

 

そしてそれから幾日かが経過したが、あんな風にされることなく、僕らは何故かほぼ一日中走らされるという日常を送っている。

 

「しかし何だってこんな走らされてるんだ?情報は話したし、いまだに変なことをやらされるがコレはマジで意味が分からんぞ」

 

同じく捕虜になったカールが、小さな声でぼやく。

 

僕らはようやく与えられた休息に、その場に倒れ込んでいた。

 

「確かに……ん?」

 

「あんな場所で延々と走るだけ?脱走防止に体力を削るってことか?それにしたってなぁ?」

 

愚痴り続けるカールの声が、僕の耳を素通りしていく。

 

『その光景』に目を奪われた僕は、ちょっと信じがたいので、カールにも見てもらうことにした。

 

「……なぁ」

 

「ん?なんだよ」

 

「あれ……」

 

「なんだってん…………」

 

僕が指さした先、ガラスの向こうでは、僕たちが戦っていた緑色の服を着た兵士たちが、僕たちと同じように怒鳴られながら走っていた。

 

「「……」」

 

……え?

 

…………え?

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

ここは『ミリテス皇国』『ドーム』内部に複数ある発電所、そのひとつである『05兵力発電所』。

 

『ドーム』には様々なタイプの発電所が存在するが、ここは『究極の自然エネルギーを利用し、さらに富国強兵にも繋がる素晴らしい発電所』。

 

つまり、人力発電所である。

 

大きなビルのような形状のここは、内部に大量のランニングマシーンが存在し、皇国の誇る人海戦術でそれを動かすことにより、『塵ツモ理論』で莫大な電力を得るのだ!!

 

これは行軍訓練などにも利用され、フル装備で延々と走る彼らの姿は実にわら……見ものだ。

 

 

そんな中、一人の強化兵が、その装備の限界に挑むかのようなスピードで走っている。

 

「フッフッフッフッフッフッ」

 

浅く呼吸しながら黙々と走り続ける。

 

と、ブザーが鳴り、部屋にいた兵士たちが速度を緩め、ランニングマシーンから降りていく。

 

「ふぃー、疲れた」

「この行軍訓練は、相変わらず、きついな」

「おい、あれ……」

「あん……あぁ、あのおっさんまた居んのか」

 

しかしその強化兵は速度を緩めることなく走り続けている。

 

「あのおっさん、毎度俺らが来た時からいるよな……」

「で毎度俺らの後も走ってる、と」

「だな。しかし強化装備で走るとか。まったく、根性あるのかないのか」

「……何言ってんだ。あれC機関無しだぞ」

「は?」

 

よくよく目を凝らして見れば、確かに小型C機関が外されている。

しかし武器は何故か刀を腰の左右につけ、拳銃とナイフを携帯している。

 

「え……ちょっと待て。強化装備ってそれなりに重い装備だよな?それをサポートなしで付けてずっと走ってんのかあのおっさん!?」

「みたい……だな」

 

と、話し込んでいた彼らに怒声が飛んできた。

 

「おいそこォ!!交代だ!それともまだ走り足りんのか!!」

「「「は、ハッ!!」」」

 

彼らは慌てて外に飛び出していき、訓練後の小休止、のちまた任務に戻るのだった。

 

彼らが去った後、発電室に交代の部隊が入り、彼らもまた、走り出す。

 

そして交代のブザーが鳴り、強化兵はマシンから降りた。

 

結局、一般兵の全速力の速さで二時間ずっと走り続けていた彼は、そのままの格好で専用車に乗り『ドーム』中心部の建物に。

 

複雑な構造の建物を、エレベーターを複数経由し、最上階に。

 

扉の前の警備を労いつつ、その部屋の生活スペースのシャワーで汗を流す。

 

ヒゲを剃り、身支度を整え、乾パンとコーヒーを流し込んだら、執務室に移動。

 

九時からが彼、皇国元帥シド・オールスタインの仕事開始時刻だ。

 

 

様々な部署からの報告書に目を通す。

 

タワー状に積み上がった書類をハンコで処理していく。

 

可、不可、可、可、可、不可、可、不可、不可、可……。

可の書類を文官に渡し、不可の書類への返答をタイプしてホチキス留めしてまた別の文官に。

 

三人目の文官が新しいタワーを机にポン。

 

可、可、不可、不可、可、可、可、可、不可、不可……。

 

以下、繰り返し。

 

四本ほどタワーを崩したところで書類は終了。

 

と、思いきや。

 

シドは佇む文官の前に立つ。

 

文官は、サッと目を逸らした。

 

「……」

 

「……」

 

「跳んでみ」

 

「は、その、いえ……」

 

「ええから、いっぺん跳んでみぃて」

 

「……」

 

文官は、小さく、本当に小さくその場でジャンプした。

 

カサリ、と紙の束の音がした。

 

「よし、出せ」

 

「ち、違います!ここ、これは本官の書類であります!」

 

「ふーむ……君、時計を見たまえ。あと十分ある。十分あれば書類をもう一束くらい処理可能だろう?」

 

「し、しかし、トリガー大佐よりノルマ以上の書類は渡すなと……はっ!?」

 

カマにしっかりかかってしまった哀れな文官に、シドがぐいと近づく。

 

「おんや〜?それは君の書類ではなかったのかなー?」

 

「い、いえ、これは確かに私の書類です!」

 

「ほうほう……エルリッヒくん。キミのご家族は元気かね?」

 

獰猛に嗤いながら『仕事させろ』と要求する真正のワーカーホリック。何かおかしい気がする。

 

「ファザー」

 

と、銀色の丸フタの被らされた皿(中はもちろん見えない)をワゴンカートで運ぶ、トリガー大佐がこちらに来た。

 

「ぬ!トリガーか」

 

(しまった!)みたいな顔になるシドに、(間に合った!)と安堵する文官。

 

「朝食ができました。食べてくださいね」

 

そういってトリガーが蓋を取ると、中には熱々のホットサンド(食パンを二枚重ねにし、シャキッとしたレタスと、とろりとしたスクランブルエッグを挟んだもの)が。

 

「ふっ、くだらん。俺はもうちゃんと朝食を済ませたあとだ」

 

軍用の乾パンをコーヒーで湿らせて飲み込むのが、彼には朝食らしい。

おそらく人は、それを『栄養摂取』とか『空腹軽減』とか呼ぶと思うが。

 

そしてそれを十二分に理解しているトリガーは、ただニコリと微笑み、

 

「食べてくださいね」

 

「それに今は公務中だ」

 

「食べてくださいね」

 

「……ほれ、視察がこの後控えているだろう」

 

「食べてくださいね」

 

「…………いただくとしよう」

 

折れるまで微笑むのだった。

 

 

 

 

 

軽食のち書類整理からの朝食を済ませると、視察のために部屋を出る。

 

数人の護衛とともに『鋼室』へ。

 

そこでは今回の戦いで得られた様々な『戦利品』(主に兵器や『フネ』の残骸や武器、防具など)を調べるチームが既に発足され、日夜交代で調査を行っていた。

 

この部署では、特にこの世界の飛空艇『フネ』についての調査を行っていた。

 

「何かわかったか」

 

「はっ! まずこちらをご覧ください。敵の飛空艇の残骸を回収したものです」

 

巨大な画面に映像が映し出される。

 

それは半ばから折れた木造船の映像で、その周囲に散る研究員の縮尺から大体の大きさがわかる。

 

「ほう……これが『フネ』、か。材質は完全な木材なのか?」

 

「はい。強度はオリエンス、ならびに『ドーム』周辺ものより固いです。これが本来の強度なのか、それとも加工段階で何らかの魔法的な工程が加わっているかは不明ですが、いずれにせよ戦艦の砲撃で簡単に貫通可能です」

 

「この飛空艇の動力部は?」

 

「……現在、調査中です。諜報部からの『資料』と捕虜の発言から『風石』という特殊鉱石を燃料にしているのはわかっており、『動力部と思われる装置』も確認できたのですが……」

 

「が?」

 

「……粉々に砕けており、原理の究明には時間がかかります。ただ、『朱雀』の飛空艇とはまた違うシステムのようです」

 

「ふむ、わかった。引き続き調査を続行しろ。こちらでも新たに無傷の『フネ』を入手できんか検討する」

 

「はっ!ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

『鋼室』視察が終わると、そこからシドは大きく移動した。

 

総督府から出て、車で移動し、広大な『ドーム』の端に位置する場所へ。

 

そこはほとんど何もなく、だというのにいくつもの関所と壁に囲われた、小型の要塞のような場所。

 

内部に入り、様々な『段階』を経て、彼はその場所にたどり着いた。

 

そこでは、『鋼室』のようにたくさんの研究員が歩き回っていた。

 

彼らはノートに書かれた数値や、資料を睨みつつ周囲の研究員と話し、己の研究と思考に埋没している。

 

そこだけならば『鋼室』とあまり変わらない。

 

だが、違う点がある。

 

彼らは、『マスク』を、とても分厚い『防護マスク』をしている。

さらに研究員の証である白衣が、赤黒く変色した血で汚れている。

ついでに、話す内容も。

 

「検体B-21はどうなった?」

「拒否反応でパン。動脈破裂だよ、やっぱり『強化剤』濃度はアレが限界か」

 

「『強化兵弐型』のメディカルチェックは終わったか?」

「ああ、報告書も提出済みさ」

「結果は?」

「『ただちに健康に影響はない』ってね」

 

「最近肉が食えなくて……」

「はは、安心しろ。もう一ヶ月もすれば元に戻るさ。僕もそうだった」

 

「にゃんこぉおおおお!!(泣」

「にゃんこおおおおおおお!!(涙」

「にゃんにゃんこぉおおおおお!!(号泣」

「にゃんにゃんこぉおおおおおおお!!(血涙」

 

「ふぅ、CWs31の毒性はやっぱり低いなぁ。何とか人を生きたまま石化できないか……」

「ん?CWsは30で完成では?」

「あれだとすぐに死に至るんですよ。目的は『石化』状態の固定であって『抹殺』ではありませんので……」

 

「なぁ、あそこの馬鹿どもはどうしたんだ?」

「また『にゃんこ翻訳機』に失敗したんだと」

「変わんねぇなー、あいつら」

 

……この他にも、壁に『ガラス柱』が埋め込まれている。

 

成人男性が余裕で入ることのできる『ガラス柱』には、今はオークなどの亜人の死体が少々窮屈そうに閉じ込められており、培養液に浸け込まれている。

 

いや、それ以外にも、『オリエンス』で発見できるモンスターなどもきれいな状態で保存されている。

 

マルドゥーク種、スノージャイアント種、モルボル種、奥にある巨大な水槽にはアダマンタイマイやベヒーモス、さらにはドラゴンなどもいれて合った。

棚を見れば様々な臓器がホルマリン漬けにされて飾られている。

 

そしてその中にはもちろん、『人間』のソレもある。

 

そして最も異なる点、それは『匂い』だ。

 

『鋼室』が鉄と火の匂いならば、『ここ』は血と薬の匂い。

 

 

この不気味な空間は、総督府の地下に存在する、皇国の闇の歴史、『帝室第六医療技術室』……だったもの。

 

今では総督府からの入り口を完全に封鎖し、入り口をドームの僻地に移動、そこからさらに迷路のようにいくつもの隔壁、洗浄室、そして許可証反応の無い動的存在を警告無しで射殺する自立兵器によって守られ―――いや、隔離された施設。

 

地下へ、闇の中へ、封じられた場所。

 

その名すらも変わり、『水銀槽』と呼ばれるようになった施設。

 

いわゆる、倫理道徳を無視した、禁忌の科学を研究する場所だ。

 

 

 

「こちらをご覧ください」

 

研究員に促され、『ハルケギニアに生息する生物』に関する資料映像を眺めるシド。

 

ちなみに彼もここではマスクをしている。

 

「まずこちらが『オーク』と呼ばれるモンスターのデータです。解剖の結果、こいつらは極めて人間に近い骨格を有していることが判明しました。しかしご覧のように全身の比率に対して腕が長く、また強度も高いです。その他、筋肉も非常に発達しており、その密度は成人男性の1.5倍です。そのうえ皮膚の下にある脂肪がゴムのような役割を果たし、ダメージを軽減します」

「そして『オーガ』、『トロール』。これらは『オーク』から進化したものかと。骨格は人間から離れますが、代わりに『オーク』との近似点が多く見られます。そして『オーク』→『オーガ』→『トロール』の順でサイズ、筋肉量、骨格硬度が上昇しております」

 

「『キマイラ』ですが、解剖の結果、『まともな生物ではありえない』、ということがわかりました。こちらをご覧ください」

「ご覧のように骨格、筋繊維、皮膚などいずれも『トロール』のものです。しかし様々な箇所が崩壊を起こしています。まるで糊でくっつけたものが剥がれたかのようです。どうも繋ぎ止めていた何かが死亡したことで無くなったようです。そして特筆すべき点は頭部です。頭の中からこれが出ました」

 

スッっと差し出されたトレーには、黒い長方形の板のようなものが。

材質のわからないその板には、赤黒い色で幾何学的な模様が刻み込まれており、『邪悪なアイテム』と自ら主張するかのようだった。

 

「これは?」

 

「脳に埋め込まれていました。命令を受け付けるための受信機、または制御装置かと」

 

「つまりこれを破壊すれば……」

 

「おそらく、キマイラは活動を停止するか、または暴走するか」

 

シドは少し思案するが、これを弱点と考えるのは早計とした。

 

「……何とか生かして捕えることができんものか」

 

「難しいと思うぜ、ファザー」

 

ぽつりと呟けば、返事が返ってくる。

 

見れば、まっすぐにこちらへ歩いてくるバヨネットの姿が。

 

彼は、何かの検査だったのかズボンだけの格好で、髪が少し濡れている。

 

曝されている上半身は鍛え上げられた兵士のそれで、鉄のような筋肉が浮いている。

 

「連中やたら速いうえに力も強い。ニムロッドのプレスを受け止めやがった。完全に包囲した状態でも被害が出るぜ」

 

グキグキと首を鳴らしながら、バヨネットは自分の戦ったモンスター、『キマイラ』を思い出す。

 

あれだけのダメージを食らったのは、『朱の魔神』と戦った時と、訓練の時くらいだと。

 

と、そこで彼は、ファザーにじっと見つめられていることに気づく。

 

同時にひどい悪寒。まるで裸で雪中行軍でもしてるようだ。

 

「そういえば、バヨネット」

 

「な、なんだよ……」

 

少しどもったバヨネットに、シドはギィと牙を剥いて笑いかけた。

 

「お前、不覚を取ったらしいな?」

 

「ッ!!」

 

指をバキバキ、首をゴキゴキ鳴らしながら、シドは上着を護衛に渡した。

 

「いやはや……鍛え方が足りんかったらしい……うむ、予定より25分ほど余裕がある。久々に稽古をつけてやろう」

 

「いや、あの、その、えっと、はは、ははは」

 

「ついてこい」

 

「はい……」

 

がっくしと肩を落としたバヨネットを連れて、シドは訓練所に移動した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

25分間無茶苦茶稽古したシドは、その日の会議に出席した。

 

「では始めよう。順に報告してくれ」

 

「水道局です。堀りあてた温泉ですが、化学物質、細菌など有害な成分は見つけられませんでした。念のため軍刑務所で試飲させておりますが、特に問題は出ておりません。飲料水にすることも可能かと。次に沿岸部で発見された河川ですが、水量は潤沢で、こちらの循環システムに組み込む目的で施設を繋ぐ計画が上がっております」

 

「兵站局です。弾薬の消費は軽微。この規模で構わないのでしたら工場を停止させても三年は戦えます」

 

「旧型鋼機の解体作業は順調です。装甲師団の解体、歩兵師団への再編成、すべて問題ありません」

 

「周辺の防衛線強化は予定通り進行中です。計画にあった防衛線の要塞化を開始してもよろしいですか?」

 

「本格的な周囲への入植が開始されました。また、現地から購入した種なども現地農民を招き試験的に育成しております」

 

「……とりあえず、水道局はそれでいい。だが温泉水の方はまだ飲料水としては利用するな。『ただちに健康に影響がない』だけかもしれんからな。計画書にはあとで担当者と話をさせてもらおう。

工場だが、こちらの資料を参考にいくつか停止させろ。余った人員はこの資料で割り振れ。これからは入植者も建築要員も人手がどんどん必要になってくる、遊ばせておく余裕はない。あとあの山、『火竜山脈』だったか?いい加減あれも掘り返したい。鉱物資源はいくらでも欲しいからな。だが工場の停止はしない。弾薬が多すぎて困ることはありえん。

防衛線の要塞化は許可する。『ビッグブリッジ』を造れとは言わんが、堅いものを頼むぞ?

入植は、とくに指示することもない。焦らず確実に地盤を築くのだ。新天地、新時代を迎えるまさに先駆けとなるのだからな」

 

その後も細々とした議題はあったが、順調に会議は進んだ。

 

それが無事に終わった後もあっちの部署やらこっちの『鋼室』やらに飛び回る。

 

節目節目でトリガーや他のノアが現れ強制休憩。

 

そんなこんなで夜の11時ごろ、総督府執務室生活スペースに帰宅。

 

一日の締めに机の情報端末をカタカタいじっていると、トリガーが紙束を持ってきた。

 

「先日の戦闘で捕えた捕虜ですが、非常に協力的です。快くいろいろ喋ってくれました。詳細はこちら資料の方に。軍にも回してあります」

 

「よし。“錆”の方はどうだ?」

 

「無事に拠点を手に入れたそうです。ただ、やはり文字の方がわからないそうで……」

 

「……捕虜から聞き出し、資料にして送ってやれ。字が読める読めないは時に深刻な問題につながる」

 

「はい。というわけで出来たのがこれです」

 

スッと追加で差し出されるチップ。

 

それを机の情報端末にスキャンすると、『ハルケギニアのたのしいこくご!』というタイトルのものが。

 

「……くっくっく、優秀だな」

 

「ありがとうございます」

 

トリガーは嬉しそうに笑って一礼した。

 

 




Q.ファザー、トリガーに背負ってもらう必要なくね?
A.初めてのギックリ腰。なんか『撃たれた?!どこからだ!?』と思ったって。

ちなみに、シドがなぜこんなにも『水銀槽』を外界から隔離しているのか?
前世での生物兵器関連の部署が、一回ヤヴァイもん作ってヤヴァイ事件引き起こしてヤヴァイほど対応に追われたから。
「キサラギなんて買収しなけりゃよかった!!『何が我々はプロです』だ!」
あと『帝室第六医療技術室』および『水銀槽』は独自設定です。
なんと言うか、『絶対に歴代皇帝は不老不死研究したよ。間違いない。強化剤や強化兵はその副産物でシドがそこを乗っ取って番外者とかを作り出したんだ』という妄想。妄想だから検証とか一切ない。

ところで、ちょーーっとだけ改訂のお知らせです。
零式二次書いてて、「ビッグブリッジだけじゃ見せ場に困るんだよなぁ…」という思いから歴史がちょいと変わるかもしれません。しかしこちらのストーリーには一切関わらないので、読み返す必要はありません。
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