皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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この話あんまり意味なかったなぁと、反省。

でも楽しかった!


朱の竜騎士と最新古代兵器

街にたどり着いたルイズ一行。

 

ゼロセンは『ギャ!』とだけ言って飛び去り、ルイズとシエスタ、サイトの三名は街の中心部に向かう。

 

と、街の中心部に物々しい雰囲気の石壁があった。

 

石壁は砦のように街の中心を囲んでおり、銃で武装した兵士の見張り台や水堀まで備えている。

 

「……ってか砦じゃねえか。なんで街の中心に砦?」

 

「それはね、街よりもこの中にある物が重要だからさ」

 

門番と話をつけていたルイズが振り返った。

 

「こんなところに何があるってんだよ?」

 

「『可能性』だよ」

 

跳ね橋が降ろされ、砦の扉が開かれる。

 

と、サイトの顔に火の気を含んだ風が吹き付けてきた。

 

そのまま三人は正門をくぐる。

 

内部の一際大きな建物に入ると、そこにはハルケギニアにおいて『異質』といえる光景が広がっていた。

 

「見たまえ、これが正しい『火の可能性』だ」

 

いくつもの大きな炉が火と熱を吹き、どろどろと真っ赤に溶けた金属を型へ流し込んでいく。

 

2メイルはあるゴーレムが、固定された円筒状の青銅に、同じく固定されたドリルをぐりぐり埋め込み、筒に変える。

その大筒は別の場所で他の部品と組み合わされ、一度砲弾を出し入れするチェックを受けた後、大砲として運び出されていく。

 

鉄を曲げ、細長い筒となったものが箱に詰められ、別の部屋へと運ばれていく。

 

隣の一室では、作業着を着た婦女子達が固い紙や柔らかい油紙を筒上にくるみ、火薬を詰めて組み合わせ、細糸で連ねて箱に入れている。

 

鉄と火薬、焔の熱気がそこら中に広がり、サイトはこの距離からでも汗が噴き出るような思いを抱いた。

 

それを背景にスィと腕を拡げ、まるで舞台役者のようにルイズはニヤリと言った。

 

「ようこそ、ヴァリエール兵工廠へ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

ヴァリエール領には複数の村が点在しているが、その中心あたりにそれぞれを繋ぐように街がひとつ存在している。

 

ヴァリエール公爵家邸宅、つまりガリア国境城塞への補給点ともいえるこの街には、もともと武器防具などの製造設備が備えられていた。

それが数年前より拡充され、小規模ながら戦列艦の建造も行うようになった。

 

表向きは『仮想敵国(ゲルマニア)への備え』だが、その実態はルイズの『場違いな工芸品』研究所と言っていい。

 

「ははは、父上も手広くやっておられるようだ」

 

別棟の中で建造されている、新型砲のための戦列艦を見てルイズは上機嫌。

 

「ここは火気厳禁だよ。まぁ悪意ある工作を行われても大丈夫なように、火薬はまた別棟で造ってる。完成品はあっちだ」

 

指差した別棟、というよりも倉庫に行き、倉庫番に扉を開けさせるルイズ。どうも顔パスのようだ。

 

中には大量の木箱が積まれており、完成した大砲がずらりと並べられて出荷の時を待っていた。

 

ルイズは木箱の一つを開けると、中から新品ぴかぴかの長銃を取り出す。

 

「新式の銃だ。苦労したがライフリングもつけてある。射程は既存のマスケットに比べてなんと五倍の250メイル。装弾はこいつだ」

 

ジャラっとルイズが持ち上げて見せたのは、硬く細い縄で胴を縛られ、いくつもの紙薬莢弾丸が連なっているモノだ。

 

「こいつをこうやって……」

 

ルイズが銃の引き金側にある金具を後ろに引くと、金具の左右に口が開いた。

左側から連なった弾丸の一つ目を突っ込み、金具を前に押し込んで閉じた。

連なっている細い紐を金具が噛むような形になったが、気にせずルイズは倉庫から出ると、たまたま飛んでいた真っ白な鳩を撃ち落とした。

そしてルイズは、銃の金具を再び引き、破れた紙薬莢を紐を引いて右側から排出、そのまま連なった弾丸を装填した。

 

「こんな感じで連射する」

 

「手動ベルトリンクか……」

 

「『場違いな工芸品(オリジナル)』に比べるとずいぶん簡略化されてるし、造りも荒い。射程も短くなってしまったけど、これでもかなり改善されたんだよ」

 

そういって今度は、並べられていた大砲に近づく。

 

「これはド・ヴァリエールカノンと言ってね。砲口内部をドリルで後から作ることで、砲身と砲弾の隙間を正確に小さくしたのさ。これで砲身を軽量小型化、さらに射程距離までアップしたんだよ!すごいだろ!」

 

「ふーん……」

 

いまいち驚かないサイトに、ルイズは興ざめといった具合の溜息をついた。

 

「……はぁ、君はつまらん男だね。これがどれだけ画期的な開発かわかるかい?戦列艦にしこたま大砲が積めるってだけじゃない。ゴーレムが大砲を持って移動する時代が来たということなんだよ?それも命中率に乏しい砲丸ではなく、広範囲の人間の殺傷を目的にした散弾や火竜弾だ。戦争が変わるよ?」

 

「後は軽量かつ頑丈なゴーレムの開発なんだが……」とぶつぶつ呟き出すルイズを呆れた目で見ていたサイトだったが、ふと、気になることがあった。

 

「なぁルイズ」

 

「でも可能かな?最低でも早足くらいは……ん?なにかな?」

 

「こんだけのモノを短期間で開発しようと思ったら、それこそひとつやふたつじゃすまない量の現物がいるんじゃないか?」

 

「そうとも。見るかい?……と、その前に」

 

サイトに気絶したまま抱えられていたシエスタを受け取るルイズ。

そう、この瞬間までずっとシエスタは気絶したままサイトに抱えられていたのだったりする。

もちろん、かなり奇異なものを見る目で見られていた。

が、この工場で「ピンク色の髪した女」に意見したり逆らったりする輩はいない。いたとしたら新人だけだ。

 

とにかく、受け取ったシエスタを横たえ、ルイズはシエスタを揺さぶり始めた。

 

ゆさゆさ、ペチペチ

 

「シエスタ、シエスター、起きろー」

 

ペチペチ、ムニムニ

 

「うぇいくあっぷ、うぇいくあっぷシエスター……おお、いいぞ、冴えてきた」

 

むにむに、むにゅうむにゅう、むにぃ……

 

「見てくれサイト、この服の上からでもわかる弾力!」

 

「そろそろやめとけ」

 

ぐにゅんくにくにもにゅんもにゅん、ぐにゅんくにくにもにゅんもにゅん

 

「あぁクソ妬ましい!!これがほしい!私にもこれがあれば!!」

 

「いきなりどうした?!」

 

鼻息荒く一部を執拗に揺さぶり始めたルイズにサイトは驚きを隠せない。

 

「っん、あっ……?…っ?!……っっっきゃああああああああああ!!!!!?」

 

意識を取り戻したシエスタが最初に見たのは、自分の一部を思いっきり揺さぶって鼻息荒くしているルイズだった。そりゃ悲鳴も上げる。

 

だが揺さぶっていた張本人はシエスタが目覚めるとともにスッと離れ、何ごともなかったように話しかけてきた。

 

「おはようシエスタくん。早速だが君に頼みがある。拒否権はもちろんない」

 

「きょ、あ、はい」

 

何か言いかけて止めたシエスタに、ルイズは三枚の羊皮紙を渡す。

 

「この紙二枚持ってこっちの紙の指示に従いたまえ」

 

「えっと……ちょ!?これ、む、無理です!!」

 

「はっはっは、そのための紙だよシエスタくん。その薄っぺらな紙が君を守ってくれる。頑張りたまえよ」

 

「こ、これこそサイトさんに頼めば……」

 

「残念ながら彼は字が読めない。赤の他人に任せるにはその紙ぺら二枚は価値が重すぎる。だから君に任せる。私の信頼を裏切らない方がいいぞシエスタくん?」

 

にぃっこりと濁り切った瞳を細めてルイズは微笑んだ。

その笑顔は、ただの平民であり、善良な一メイドとして慎ましく暮らしてきたシエスタには恐ろしすぎた。

 

「ふぁ、ふぁいぃぃ……」

 

ぷるぷると子犬のように震えながら、シエスタは渡された紙束を抱き締めた。

 

「さて、お使いも頼めたし、サイトは私と来てくれ。私の自慢のコレクションを見せよう」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

工場奥にある管理棟の一室。

 

一室まるごと固定化をかけ、扉も戦闘用ガーゴイルに守らせると言う徹底した警備の部屋に、ルイズはサイトを案内した。

 

「見たまえ、ここにある全てが私のコレクションだ」

 

とても楽しそうに指し示す先には、武骨な鋼の黒い輝きがあった。

 

丁寧に磨かれ、綺麗に整理されているこの部屋には、様々な『工芸品』が展示されている。

 

壁には様々な形の銃が―――サイトになじみ深い拳銃や機関銃だけでなく、この世界で初めて見た、木と鉄を組み合わせたようなライフルもある―――かけられており、発射機構の辺りが一目でこの世界よりも『発展している』と理解できる代物ばかり。

視線をずらせばそこには別々の形の大砲が4門もある。

よく磨かれたのガラスケースの中には数種類の弾丸が綺麗に立てて並べられ、薬莢も金属からなんと紙まである。

 

「どうだい?素晴らしいだろう?」

 

「おう、よくこんだけ集めたな」

 

「苦労したよ、何せ金はあってもモノがないからね。闇市とかで探し回ったのさ」

 

「しかも、なんか魔力を感じるってことはこれ……」

 

「もちろん“固定化”してるよ♪」

 

わかる人にコレクションを見せるのがよほど楽しいのか、ルイズは今までで一番と言っていいレベルで上機嫌だ。

 

「とにかくだ、これらを解析し、どうにかそれっぽいのを作ったりしたわけだよ。中でも一番参考になったのはアレだ」

 

ルイズの指差す先には、サイトもルイズも知らないが、世に言う『モシン・ナガン』と呼ばれる狙撃銃である。

 

「非常に簡単に次弾を装填できる『引き出し機構』、弾丸を火薬と一緒に纏めておく発想、それらを纏めて用意しておく『箱』……どれも手を伸ばせばなんとか届く代物だ。例えば、薬莢(やっきょう)というのだったかな?これは紙で代替できた。幸い現物も見つかっていたしね」

 

ルイズはガラスケースの『鍵穴のない錠前』を爆破して開けると、中から金属製の弾丸と紙でできた弾丸を取り出す。さらに薬莢単体のモノも。

 

「撃つ前の薬莢と、撃った後の薬莢だ。見ればわかる通り撃った後の薬莢には頭がない。つまり飛んでいく弾丸はこの小さな部分だけで、残りは全て火薬なんだ。で、ここ、よく見ると胴体も二つに別れている。きっとここにも何か意味があるはずだ。そう考え撃つ前のやつを金属と紙両方バラさせた。結果火薬とは違う何かが……サイト?」

 

サイトはぼんやりと窓の外を眺めていたが、呼ばれたのに気付いてようやく視線をルイズに戻した。

 

「……んあ?終わった?」

 

サイトは殴られた。

 

「殴ったよ?」

 

「事後承諾かよ……だってよぉ」

 

サイトは手を何かを持つ形にした、と思うと光が瞬き、そこには無骨なデサインの拳銃『試製九号突撃拳銃-ティナカスタム-』が握られていた。

とても小さな鉄塊だが、そのスペックは最高に廃ってやつだ。

銃身は大戦期の白虎が使用した七号突撃拳銃の流れを汲む九号突撃拳銃。内部機構は魔導技術を取り入れたことにより一新され、内部に複雑に掘り込まれた魔方陣により魔力供給で徹甲炸薬弾を形成、発射を可能にするといったモノだ。

 

「これが普通の世界から来たんだぜ?お前の創意工夫はすげえと思うけど、どうしても……なぁ?」

 

ちなみに『普通』というのは装填機構の話であり、この銃自体はティナによるワンオフなのであしからず。

 

「ふん……いつか追いつくよ。技術は日進月歩し、いずれ兵器は進化を迎える。戦争の主流を兵器が取って代わる時、貴族の時代は終わるだろう。今でさえメイジは雇えるんだ、もっとすればメイジが奴隷に落ちる時代さえ来る」

 

若干ふて腐れながら、ルイズは弾丸をケースに戻し、棚から『鍵穴のない錠前』を取出し、それでケースを封印する。

 

「金属薬莢を作ることができればさっきの装填ももっと楽になった(バネで押し込める)んだけど無理だった。自動拳銃も腕利きの鍛冶師と土メイジを組ませてやらせたが大失敗、二度としたくないと言われたよ。だから紙薬莢を、組紐で繋いで、手動で押し込む形になった。あそこの銃を参考にね」

 

ルイズが示したのはMG42。映画などでもよく登場する、ベルトリンク形式の機関銃だ。

 

「それでも装填速度は跳ね上がったよ。数を揃えればメイジも蜂の巣さ」

 

ルイズの説明を聞きながら、サイトはこれから赴く戦場について考える。

 

いくらルイズの戦法が『遠距離から一方的にえげつなく惨たらしく』をモットーにしていようと、戦場では何が起こるかわからない。

何の殺気も乗らない流れ矢が背を貫くかもしれないし、突発的な遭遇戦が起きるかもしれない。

それに他にもこういった『場違いな工芸品』で武装した兵士がいないとも限らないのだ。

 

「やっぱり要るか……」

 

「何が?」

 

振り向いたルイズに、サイトは己の空間魔法『アイテムボックス』からひとつの古ぼけた指輪を取り出して見せた。

 

「こいつは『揺るぎなき指輪』っつってな。俺の世界の防具のひとつさ。大昔の技術で造られた希少品で、使用者の魔力を使って弾丸を弾き防御を高める力がある。こいつをお前にやるよ」

 

掌に乗せてルイズに差し出す。

 

ルイズはそんなサイトを見て、指輪を見て、またサイトを見た。

 

「……」

 

「……?」

 

何のリアクションもないルイズにサイトは首を傾げるが、やがてルイズはあらぬ方向を見ながらぽつりと。

 

「……は、嵌めてくれ」

 

「ん?」

 

小さくて聞き取れなかったから聞き返せば、ルイズはギロォ!とサイトを睨みながら(しかし何故か顔が赤い)叫んだ。

 

「それを、私に嵌めろぉ!」

 

「嵌めろって、自分でできるだろ?」

 

「くっ!い、いいから!はやくしろ!」

 

ぐいと差し出された左手には、重厚な皮のグローブが着けられており、ある程度魔法でサイズが変わるとはいえ、どの指にも入りそうにない。親指くらいなら嵌まるかもしれないが、あまりそこにつける人も見ない。

 

「ちょ、どこに嵌めろってんだよ」

 

「そ、それを私に言わせるのか……!」

 

ますます悔しそうに顔を赤らめていくルイズ。

 

どうも怒らせてしまったようだ、やっぱり親指に嵌めるべきか?とサイト。

 

その時だ。

 

部屋の扉が乱暴に開かれ、シエスタが飛び込んできた。

 

「駄目ですサイトさん!こんな時間に……って、あれ?」

 

「シエスタ?」

「シエスタくん?」

 

彼女には珍しくノックもせずに飛び込んできたことに、二人は驚いた。

 

「どうしたんだシエスタ?」

「シエスタくん、ノックくらいしたまえ。それにそんなに慌てていったいどうしたのかね?」

 

「え、あれ?だって、ハメてくれって……」

 

「……?」

「……?…ッ!?」

 

やはり首を傾げるだけのサイトだったが、ルイズはシエスタが何を言っているのか気づいたようだ。

 

「こっこここの!この下賎な犬がぁ!!」

 

ルイズは一瞬で熟れたトマトのように真っ赤になり、シエスタに掴みかかった。間違いなく殺る気だ。

しかしシエスタまでの距離は広い部屋なこともあり8メイルちょい。有効爆破半径は5メイル。

3メイルもあれば余裕でサイトはルイズを捕まえることができる。

 

「待てルイズ!落ち着け!」

 

「フーッ!うぅ〜、うーくぅ〜……!」

 

「ルイズ、火気厳禁、火気厳禁、STOP爆破、NO爆発、OK?」

 

「う〜……OK」

 

実のところ、彼女の『爆破』は熱も炎も出ない純粋な『消滅』なので、例え(謎な状況だが)彼女が全身油まみれで火薬樽抱えて『爆破』を行っても一切影響はないのだが。

しかし彼女は、後ろからサイトに抱き留められてそれどころではない。

まさに『頭がフットーしそうだよぉ!!』状態だ。

 

ゆえに離れようとしたのだが……やめた。

 

何故ならシエスタが、羨ましげにこちらを見ていたから。

にぃやりと勝ち誇った笑みを浮かべるルイズ。

ますます悔しそうにしているシエスタ。

いずれにも全く気付かないサイト。

 

「それにしてもシエスタ、君にはいろいろ言いつけといたはずだよ。どうしてこんなところで油を売っているんだ」

 

「油を売っているんだなんてひどいですわミス!私はちゃんと仕事を終えて来たんです!」

 

「そうかそれは結構……ちょっと待った。もう終わったのか?かなり面倒な手続きを踏まないと駄目なはず……」

 

そのために女王勅命状と、ヴァリエール公爵家ルイズのサインを渡したのに……と続けようとしたところで、シエスタは何でもないように爆弾を落とした。

 

「あの、たまたまここの責任者が町に嫁に行った姉の旦那の兄だったので、便宜を図ってもらいました」

 

「よし、シメにいくぞ」

 

スッと無表情に戻り、サイトの腕から出てスタスタと部屋から出ていくルイズ。

 

「え、ええぇええ?!何でですか!?」

 

「規律が全てだ。守らなくていいのは私だけだ。やれやれ、前回のみせしめが足りなかったか……」

 

「そんな!?待ってください!工場長はとってもいい人なんです!ここの人たちみんなに慕われてるしよく働く誠実な人です!ちゃんと言えば二度としません!それにこれは私の責任じゃないですか!」

 

シエスタはルイズがやると言えば必ずやる人間なのを知っている。

「シメる」でどうなるかわからないが、碌なことにならないのは確実だ。

 

「ここは機密の塊だぞ?結果的に私に都合がいいとはいえ、こうも身内だからと安直に便宜を図られてたまるか!あとこれは君の責任ではなく工場長が自身の責任を理解していない行動が原因の……ん?」

 

にべもなくあしらっていたルイズだが、急に立ち止まった。

そして後ろから追いかけてきたシエスタに、振り向くことなく問うた。

 

「なぁ、シエスタくん?たしか君は、その弟の妻の父は慕われていると言ったな?」

 

「姉の旦那の兄です!それにそうですすごく慕われてます!従業員ひとりひとりと家族みたいな関係を……あの、例外も、あります……」

 

必死に姉の旦那の兄を擁護しようとしたシエスタだったが、最後の方で尻すぼみになっていった。

 

何故ならルイズの視線の先に、明らかガラの悪い三人組が、数名の職員を脅して金銭を徴収している光景があったから。

見ればひとりはメイジなのか、杖を持っており、マジックアローを職員に当てて笑っている。

どうやら威力を調節し、殺傷能力はないようだが、それでもここまで肉を叩く音が聞こえてくる。

 

くるっと振り返ったルイズは、シエスタが「ひっ!」と後ずさるくらいにイイ笑顔を浮かべていた。

 

「よかったなシエスタくん。君の町へ嫁に行った父の夫のアニキは厳重注意だけで済みそうだ」

 

「ミス、わざとやってますね?」

 

ジト目のシエスタをさっぱり無視し、ルイズはサイトに向き直る。

 

「サイト、頼みがある」

 

「何だ?」

 

「あそこのボケどもをボコボコにしろ。殺さないならどこまでやっても構わん」

 

「アイアイサー」

 

そう言ってサイトが拳を握ると、拳が光に瞬き、蒼い鱗で出来た手甲が現れた。

同時に左手が輝き始める。

 

そうして三人組に近づいたサイトは、一番近くにいた男に気軽な様子で話しかけた。

 

「ヘーイそこのお前ら、運が悪かったな」

 

「あん?なんだお前?」

 

男は振り返りサイトを睨み付ける。

 

製鉄によって煤けているはずの男は、何故だか小綺麗なままだ。

 

少なくとも、誠実に仕事をしていないのは明白だろう。

 

「ウチのご主人様がお前らが不快なんだと。だからまぁ、アレだ。来世はうまくやれよ」

 

男はしばらく考え込んでいたが、やがて喧嘩を売られていると理解し、光の早さでキレた。

 

「ガキが……大人に喧嘩売るなら相手を選ぶべきだったなぁ!!」

 

手にしていた鉄棒をサイトに降り下ろし、カウンターでみぞおちを抉られ、顎にも入れられて意識を飛ばした。

 

男が崩れ落ち、手にしていた鉄棒が妙に騒がしい音を立てて跳ねる。

 

男のあげた怒声で振り返った残りの二人が見たのは、倒れた男と、その側に立つ朱い服の黒い髪の少年。

 

サイトは拳をぷらぷらと振って苦笑した。

 

「おぉおぉ、ガンダールヴってのはホント便利だ。訓練サボりたくなっちまう。なにせ、使えなくてボックスの肥やしにしてた武器も、達人のように使いこなせるんだからな」

 

そこから撃ち出された弾丸のように彼らの中へ飛び込み、手前にいたもう一人の男の鳩尾へ拳を抉り込んだ。

 

「おごぉ……」

 

肺から空気を全て搾り取られ、意識まで消えかかった男に張り手がされる。

 

それにより絶妙に意識を保ったまま先頭の男は倒れる――――――寸前に膝蹴りがこめかみに打ち込まれてやっぱり気絶した。

 

その瞬間、後ろにいた雇われメイジが本気のマジックアローを放った。

サイトの速度に対応したというより、ほとんど反射のようなものだったが、二本のマジックアローがサイトに向かって飛び、拳によって撃墜される。

 

「へ?」

 

阿呆のような声を出した雇われメイジは、先ほどと同じく弾丸のように突っ込んできたサイトに壁に向かって蹴り飛ばされた。

 

「ぐっぁ!?」

 

壁に叩き付けられ、杖を取り落しかけたが、そこは腐っても元傭兵、すぐさま次の攻撃に移るために呪文を唱え、サイトに杖をもぎ取られた。

 

「『ウインドカッ……んな?!」

 

「お前はさっきの奴より丈夫そうだが、まぁ手加減はするさ。あ、プロテスは使えるか?」

 

そう言って杖を捨てざま前傾姿勢をとり、ゆらぁと拳を引くと、杖を取られ体勢を崩した男目掛けて――――――

 

「『疾風の型』、その一。デンプシーロール!!」

 

ラッシュ!ラッシュ!!ラッシュ!!!

 

一撃目の左は男の腕を内側に折り、二撃目の右でアバラを叩き、三撃目で顎を、四撃目も顎。

ここでようやく杖が地面に落ちる音。

そこからは壁に押し付けて全身まんべんなくドツキまわす。

 

先ほどよりももっと耳を塞ぎたくなるような殴打音が、しばらく辺りに響き続けた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「―――というわけで、勤務者各員には『規律正しくルールを守って明るい職場』を目指してほしい。彼のように職場の空気を乱し他の職員の仕事や貴重な休息を邪魔してあまつさえ工場内でいじめのために魔法を使うような阿呆は誰だろうと罰を受ける。特にメイジ職員は危険な戦場に出ることなく毎日の食事にありつけるのだから、周囲への気配りを大切にしてほしい。いつまでも貴族の暮らしや荒れた傭兵生活を引きずってないで平民どもと肩を並べてあくせく働け。でないとコイツと同じく」

 

カチッとスイッチが押し込まれ、荒縄で簀巻きにされていたメイジの男が消し飛んだ。

 

それを見た、広間に集められたベテラン並びに新人職員たちは、ある者は悲鳴をあげ、ある者は息を飲んだ。

 

「この世から消えてもらう。ライン程度の雑魚の分際で、たかが戦争経験があるだけの傭兵ごとき、いくらでも代わりがあるんだ。身の程をわきまえろ」

 

ギロリと濁り切った瞳でルイズに睨み付けられ、職員はメイジも平民も関係なく震え上がった。

 

「あとな、ここはトリステインにおける最新兵器の研究所だ。諸君が酒場で酔っぱらって『これくらいかまわないだろう』と漏らした欠片ぽっちの情報すら砂金の価値がある。もしかしたら命でも購えないかもしれない。もし、今後機密が漏れていると私が判断したら―――」

 

もう一度、スイッチが押し込まれ、残り二人の男が消し飛ぶ。

 

それを横目に、底冷えするような笑みを浮かべてルイズは言った。

 

「残念だが職員を全て雇い直さないといけない。何せ全員行方知れずになるからな」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

真っ青のまま固まる職員たち。

 

「……ここまで聞いた諸君は、私のことを恐ろしいと思うかもしれない。自分が雇われているところは独裁と死が渦巻く地獄だと勘違いするかもしれない。だがそんなことはない。私はただ、ルールを守れと言ってるだけだ。誠実な人間として当たり前のことを守ればトリステイン、いや、ハルケギニアでここほど労働条件のいい場所もないと、私は自負しているよ。もちろん誠実に働く者には誠実に報いると誓おう。そうでない犬にはそういう対応を取るともね……以上だ」

 

シーンと静まり返った広間の壇上からルイズは降り、下にいた工場長の前に来ると、

 

「工場長。……な?」

 

こんな重い一文字は、生まれてこの方聞いたことがなかったと、後に工場長は語ったという。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

夜、ルイズ一行は街の宿屋に泊まっていた。

 

三人とも同じ部屋であるが、鈍感系主人公属性持ちのサイトでは間違いが起きようはずもない。

 

ベッドに寝転び、日記を書いているルイズは、疲れたような溜息を吐いた。

 

「はぁ、まったく。製造にメイジを使うのはそれなりにいいアイディアだと思っていたんだが……失敗だったか?だが結果は上々だしなぁ。視察(みせしめ)を増やすべきか……」

 

「でもすっげぇ大昔に邪神崇拝して民を恐怖で支配した大王は、最後は滅多切りにされて死んだらしいぜ?やりすぎはやっぱダメだろ」

 

「そ、そうですよミス。昔から夫婦円満のコツは財布の口を締めすぎないことって決まってます!」

 

「……例えはよくわからんが、気に留めておくよ」

 

パタムと日記を閉じ、ルイズは横になった。

 

と、サイトがはたと思い出したようにルイズに質問する。

 

「そういやもう一個気になることがあったんだ」

 

「ん?」

 

「何でお前こんなに兵器を研究して開発して量産してんだ?言っちまえば良家のお嬢様なお前が」

 

「……別にいいじゃないか。趣味が高じてだよ。『場違いな工芸品』集めのね」

 

そう早口に返し、ルイズは毛布を被った。

 

 

 

何故こんなに過剰に兵器を産み出しているのか?

 

というかそもそも、『どうしてそれができるほどに兵器を理解しているのか』?

 

それが自分でもわからなかったから。

 




サイトくんとルイズちゃんを優遇しすぎてる気もしますが、なに。

( ◉◞౪◟◉)<ジェットコースターは高いほど楽しい。だろう諸君?

さて、原作の二人と改変された二人の最大の違いは、実は能力だの性格だのではなく、『人を殺傷することへの忌避感』が欠片もないってことです。
あと、ルイズは平民を見下しているわけではありません。自分とサイト以外どうでもいいだけです。
サイトは赤の他人はどうでもいい派。

……その点とか、能力とかを抜けば彼らは割と原作に近いと思いませんか?
思わない?やっぱりかー……

サイト君の武器は零式の「竜の~」シリーズです。
ちなみに私の考える朱雀の防具は、「僅かな魔力で強力な防御魔法を展開するアクセサリ」です(指輪とか)。
だからジャマーであんな簡単にボロボロにされるんですな。
そう考えるとロリカ跡地のアイテムがシェルだのシールドだので、皇国の装備らしきものは装甲・装備、蒼龍(青龍ですが)は兜と、その辺でも特徴出してるあたり、製作陣のこだわりが見えますね。

エレオノール嬢のことをルイズは選民思想に固まってると言いましたが、どちらかといえば彼女の思想は「ノブレスオブリージュ」です。そしてやっぱりルイズの大嫌いな思想です。
「国家に殉じてうんぬん」とかは彼女なりのジョークですよHAHAHA
ところで、二次作品って何かにつけヴァリエール家をゲスく書きますけどアレ何なんでしょうね。ちゃんと読んだら家族としても貴族としてもまともなこと言ってるってわかるのに。(高圧的なのはうっとうしいですがw)
サイトとルイズに共感しすぎるからですかね?ちぃ姉さまが悪く書かれるのは見ないところからすると。

ちなみに作中の銃とか、あまり深く考えちゃ駄目ですよ!素人考えなんだから!
ミニエー銃を参考にしましたが、深く考えるとボロが見えるので。
あと大砲ですが、こちらは『グリボーバルシステム』によって造られています。
本来は『ヴァリエールカノン』に代わって登場する画期的生産法だったのですが、ここではド・ヴァリエールカノンとして登場しました。
が、やっぱり深く考えてはいけません。感じてください。

あと、零式オンリー二次創作の方でクラスゼロの復活方法を小説に合わせることにしましたので、こちらの方も少しだけ変えました。
「零式オンリーなんざ興味ねえ!」って方は探してまで読む必要はまったくありませんし、「ひゃっはーオンリーだぁ!」って人もそこまで重要なシーンではないので、やっぱり探さなくていいです。


話は変わりますが、ヴァリエール(父)、彼は何メイジなんでしょう?土?火?
もう土で書いちゃってますが。
……そもそもあの人、原作で本名出てこない…奥さんは出るのに…(汗
※追記
と思ったら感想でピエールさんだと教えてくれた方がいました!そして水メイジだそうです!……ちょっと書き直さないと。

ちなみに今後の予定

・朱の竜騎士とピンクの魔女とその家族(25%完成)
・朱の竜騎士と戦場(10%完成)
・朱の竜騎士と竜と剣VS七万(40%完成)
・ピンクの魔女と……(1%完成)

ですかね。これより長くはなっても短くはなりませんな。
全部終わったらいよいよガリアと皇国でしこたま戦争ですよ!(一話目60%完成)

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