皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

35 / 44
今回度々おかしな魔法が出てきますが、零式原作の朱雀の魔法で、たぶんありそうという奴をイメージで書いてます。

なので、深く考えないでね!!感じてね!!


朱の竜騎士と七万の軍勢

ロサイス。

 

トリステイン・ゲルマニア連合のアルビオンへの上陸地点であり、現在は一刻も早く逃げ出そうと誰も彼もが上を下にと大騒ぎである。

 

「司令部の連中は何だって?」

 

サイトは司令部の入った建物から出てきたルイズに話しかけた。

 

「私は……」

 

ルイズは俯いたままぽつりと言った。

 

「私はアルビオンの連中を止めることになった。撤退が完了するまでこの先の丘から『虚無』の光を撃ちまくれとのことだ」

 

「はは!マジかよ、連中イカれてんじゃねえか?」

 

いくらルイズの魔法が強力だろうと限界はある。

七万もの軍勢をたったひとりで止めるなど狂気の沙汰もいいところだ。

 

何より、この唯我独尊にして邪悪と自己愛を体現したような彼女がこんな命令受け入れるはずがない。

 

例え自分が逃げたことで万の人間が殺されようと、自分に関係なければケロリとしていることだろう。

 

そしてそれは自分も同じこと。

 

「んで?いつ出発だ?ずらかるなら早い方がいいだろ。竜騎士隊の連中を焚き付けて即席の竜籠造ればシエスタやスカロンさんたちも連れて……」

 

脱走の算段を立てていたサイトは、何も答えないルイズに気づいた。

 

「ルイズ……?」

 

サイトの問い掛けに、俯いていたルイズは、やがて顔をあげて言った。

 

「…………私は、この作戦を果たさねばならない」

 

はっきりと、サイトと目を合わせてルイズは言い切った。

 

それは、サイトがたじろぐほど真剣で、本気の一言だった。

 

深い深い衝撃に、しばらく声もできなかったサイト。

 

しかし、彼はふいにハッとすると、苦笑を浮かべた。

 

「あーあーわかったわかった。ひとまずそこに座れ」

 

近くにあった木箱にちょこんとルイズを座らせ、サイトは彼女の頭に手をかざした。

 

「ったく、どこの誰にどんな魔法をかけられやがった?こちとら回復魔法はそこまで強くないんだよ。意思の改変だから〜、ファントマ解析からの……」

 

目の前で朱い歯車の魔方陣が組み立てられ、頭蓋骨の裏側にチリチリとくすぐられるように感じるルイズ。

 

しばらくして、サイトは真っ青になり、

 

「馬鹿な?!コイツまともだ!!」

 

「そんなに私が愛国を訴えるのがおかしいかい?」

 

ジトっとした目で睨むルイズにサイトは「当たり前だろう!」と力強く返す。

 

「酒でも飲んだか?!遅めの厨二病覚醒か?!クソッ!よっぽど上手い演説でも聞かされやがったのか?!!」

 

「君とは一度よく話し合うべきだったな……」

 

頭を抱えて叫ぶサイトをジトーと睨むルイズ。

 

「私は正気だよ。ただね、ここで引くわけにいかないのさ」

 

「例えば、ここにいる有象無象どもがどれだけ死のうが私も知ったこっちゃない。だけど、ここにいる連中が壊滅すると、ゲルマニアはともかくトリステインは終わる。何故ならウチには戦力的余裕などないからだ。今でさえ無理をして戦力を吐きだしている状態なんだ。負ければ奴らに大逆転を仕掛けられる。責任は、あの昼行燈に向かうかな?」

 

「次またタルブに攻め入られれば、間違いなく守ることなど不可能だ。そこを足掛かりに連中はトリステインを脅かすだろう。そうなればヴァリエール家とて無関係ではいられない。もしかしたら父や母がまた戦場に立つことになるやもしれん」

 

どこか悟ったような顔で言うルイズに、サイトは違和感を感じた。

なにか、しっくりこないモノがそこにあった。

 

「それだけじゃねえだろ?」

 

ギラリと目を光らせサイトはルイズの言葉を貫いた。

 

「そのどれも回避できる範囲だ。何とかなるレベルだ!言えよ!何を隠してやがる!!」

 

胸ぐら掴む勢いで迫るサイトに、ルイズは苦笑いした。

 

「敵わないなぁ……」

 

降参、と言うように手を上げ、ルイズは笑った。

 

「何て言うかな……『今なら死ねる』と思うんだよ」

 

「は?」

 

余りに戯けたことを抜かされポカンとしてしまったサイト。

 

だというのにルイズは、どこか透き通ったような表情で。

 

「自分でも不思議なんだ。あれだけ我欲に塗れて生きてきたってのに、今私は、『ここならば死ねる』と思っているんだ。そうまるで、すとんとあるべき場所にピースが嵌るように……ね」

 

いっそ穏やかな顔で言ってのけるルイズに、真っ青になったサイト。

 

イカレてやがる。

 

「だぁーっ!なあ!俺とお前は一蓮托生なんだろ!?俺を殺す気か!?頼むから正気になって―――」

 

 

「君は来るな」

 

 

「えっ……」

 

 

ルイズから背を向けられ浴びせられた冷たい言葉に、サイトは呆然と固まった。

 

彼女はそのまま淡々と告げる。

 

「君は、本来この国どころか世界自体に関係がない。そんなもののために命を張るなんて馬鹿な真似はしたくないだろう?君と、君のゼロセンならどこでもやっていける。そうだな、行くならゲルマニアかな?あそこなら平民だろうと取り立てられる。徹底した実力主義な所だからな、君なら機会さえあればすぐにでも貴族になれるだろうし、ほら、君の世界へ帰る手がかりが見つかるかもしれない。いや、なんなら東方に向かって世界を越える手段を探すのもいいかもね」

 

一息に言いたいことを告げたルイズは、ふと、ある建物に目が行った。

 

「教会だ、教会があるよサイ……わっ!?」

 

その建物を指さしながら振り向いたルイズは、意外なほどに近く、息がかかりそうなほどの距離に立っていたサイトに驚いて飛び退く。

 

そのサイトは自分の手を見ながら首をかしげていた。

 

そんな彼を少し不審に思いつつ、彼女はちょっと思いついた気まぐれに彼を巻き込もうと考えた。

 

死ぬ前に、ちょっとしたおままごとがやりたい、そう思ったのだ。

 

「……なぁサイト、ひとつ頼みがあるんだ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「結婚式ねえ……存外かわいいトコあるじゃねえか」

 

ニヤニヤと笑われ、顔を赤くしてしまうルイズ。

 

「うるさいな……私には縁のない話だけに興味があるんだよ」

 

「そんなに言うならアイツ、えーと……誰だっけあのお前が腕爆発させた……」

 

「ワルド?」

 

ビキィと眉間に皺を寄せて確認すれば、サイトも笑って

 

「そうそのヒゲ!アレと式上げりゃよかったじゃん?どうせ殺したんだし」

 

「冗談じゃない。一欠片も私を見ていない男と誰が結婚するか。愛のない結婚よりよほどひどいぞアレは」

 

不快も露わに吐き捨てるルイズだが、それを見たサイトは嬉しそうだ。

 

「誓いの言葉……は、知らないからな。まぁ、信じてもいない神に誓うこともない。雰囲気を味わいたいだけなんだから別にいいか」

 

どうしようかと考えるルイズに、サイトは教会の祭壇に合った杯とワインを示す。

 

「それじゃ、乾杯といこう。結婚式は誓いの杯を交わすのさ」

 

「ほう、悪くないね」

 

サイトは手早く杯にワインを注ぎ、片方をルイズに渡す。

 

そして乾杯、する前にルイズはそれを遮って

 

「……グラスを交換してくれるかな?」

 

と言った。

 

「何で?構わねえけどさ」

 

「気分だよ……ありがとう」

 

グラスを交換し、ルイズはそれを一口飲む。

 

サイトはグラスを傾け中身を飲み干すと、顔をしかめた。

 

「なんだこれ。末期の酒には相応しくないな」

 

「相応しくないって……けっこういい銘柄のやつみたいだぞ?」

 

「葡萄酒ってジュースみたいなもんじゃねえか。ったく、ちょっと待ってろ」

 

そう言ってサイトが手をかざすと、教会の長椅子に5つの光が瞬き、卵型の容器と酒瓶四本が現れた。

 

「四つも出してどうするんだい?全部飲めと?」

 

さすがに決死の作戦の前に酔い潰れるわけにはいかないので、止めようとしたルイズだったが、それをサイトは軽く制した。

 

「まぁ見てろ。カクテルって飲み方を教えてやる」

 

サイトは卵型の容器の頭を取り、中に四種類の酒を少しずついれていく。

 

「こうやっていろんな酒を混ぜる飲み方でな。ちゃんとした組み合わせを知ってりゃ単体で飲むより旨くなるんだ」

 

そして蓋を閉め、容器を上下にシャカシャカと振り始めた。

 

「大吟醸『竜の宝玉』、火酒『ゴールドタイガー』、麦酒『マスターチョコボ』、果実酒『王の酒』……かつての四大国が誇った高級酒を、全部混ぜてできた伝説の馬鹿クテル『オリエンス』。いかなる化学的、魔導的反応の賜物か、味、喉ごし、香りとどれをとっても最高の代物になった奇跡の酒だ」

 

容器のフタを開き、中身をグラスにそそぐと、何故か黄金に輝く液体が出てきた。

 

目を丸くしているルイズにそれを渡し、自分の分も注ぐサイト。

 

「作法としては、まず一杯目は一気にぐいっと飲み干す。舌で味わうのは二杯目からだ」

 

そういってチンッとグラスを合わせてくいっと飲み干すサイト。

それを見てルイズもくいっ。

 

「……っ!これは、すごいな。こんな美味い酒は初めて飲んだよ」

 

僅かに顔をほころばせルイズは笑った。

 

「まぁ唯一欠点をあげるなら、度数が高過ぎてな。飲み慣れないヤツが、ストレートでグラス一杯も空けると……」

 

ぐらり、ルイズの身体が傾き倒れていく。

 

それをサイトは優しく受けとめ、真っ赤になって眠るルイズを見つめた。

 

「一撃で潰れる。ついた渾名が『キルサイト』ってな」

 

ニッとサイトは笑い、眠り姫を抱き上げる。

 

「おやすみルイズ。元気でな」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『ギャアアアアス!!(馬鹿野郎!戦に行くんだろう!?俺をのけ者にしようとしてんじゃねえ!!)』

 

「『つってもなぁ。ルイズを連れて離脱してほしいんだ、頼むよ』」

 

教会の前で、サイトはゼロセンと話し合っていた。

 

かたや『やっぱりなぁ……』と苦笑いするサイト、かたや完全に屹立し、口の端から炎を漏らしながら猛るゼロセン。

 

『ギャァス!(アレに頼め!離脱なんざしてられっか俺は残るぞ!)』

 

「あいつ?」

 

ゼロセンの眼光に示された先を振り返ると、そこにはひとりの少年の姿があった。

 

「やれやれ、ドラゴンといったい何を話してるんだい?端から見れば怒り狂ってるドラゴンにのんきに話しかけてる狂人だぜ?」

 

美しい金色の髪に左右で色の違う瞳。

見ようによっては少女にすら見える中性的な美貌と、同じく軟派なギーシュよりもよほどカッコよく、何よりその人懐っこい笑顔が気障さに嫌味なものをなくしている。

 

彼は名をジュリオと言った。

 

「お、キザ野郎。いいとこに来たな」

 

「キザ野郎って……」

 

苦笑するジュリオには取り合わず、サイトは彼に腕の中のルイズを預ける。

 

「ルイズを頼む」

 

「頼まれた。安全にフネまで届けるよ」

 

壊れ物を扱うようにルイズを受け取ったジュリオは、そのまま出ていくサイトに声をかけた。

 

「ねぇ、君はどうして戦いに行くんだい?」

 

サイトは振り返ることなく答えた。

 

「……さぁな、後で考えるよ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

(あと)

 

そこそこの曇り空の下、長いようで一瞬の回想を終えたサイトはやはり出ない答えに頭をひねる。

 

いい加減アルビオンどもと接敵しそうだ。

 

と、デルフがカチャカチャと言葉を発した。

 

『なぁサイトよう、オレはちぃとわかんねぇんだがよう?』

 

そちらに目を向けると、デルフは心底不思議そうに聞いた。

 

『どうしてあの時、あのおっかない嬢ちゃんがお前さんに別れを告げて背を向けたときに、あの嬢ちゃんを殺そうとしたんだ?』

 

それに対する返答も、やはり心底不思議そうな様子だった。

 

「どうしてって……俺にもわからん。気がついたら俺はアイツを殺すために手を伸ばしてて、直前でナイフで首をかっ切るより首を絞めて殺すべきかで迷って、そこでようやく正気になったんだ」

 

サイトはそこに今回のカギがあるような気がした。

 

「何でだ?アイツが死のうとしたからか?じゃ何で殺すんだよ。アイツが俺を遠ざけようとしたから?俺を助けるためじゃねえか」

 

様々な観点から思考するが、どれも違う気がする。

 

というかルイズを殺そうとしたのも初めてのことだったのだ。

 

つまり、あの瞬間に初めて起きた何かが原因。

 

 

――――そこまで思考を進め、スッと答えが出た。

 

 

「あぁそうだ、アイツが俺から離れようとしたからだ。アイツが、俺の手の中から出て行こうとしたから、だから殺そうと思ったんだ」

 

思わずポンと手を打ってしまう。

 

「そうか、俺はルイズが好きなんだ」

 

気付いてしまえばなんて単純。

 

簡単すぎる話だった。

 

余りのことに、サイトは声を上げて笑い出してしまう。

 

「くくっくくくははははハハハハハハハハ!!そうだ、そうだよ!俺はアイツが欲しいんだ!あの宝石が!あの女が!!」

 

自覚した途端強く、強く感情が湧き上がってくる。

 

心が、震えてくる。

 

それに呼応するようにガンダールヴのルーンが輝きだす。

 

「ハハハハハ!!ハハハハッハハハハ!!!そうさ!俺とアイツは一心同体!俺がアイツのモノなら、アイツは俺のモノだ!誰にも渡さねぇ!アイツ自身にもなぁ!!」

 

笑う、嗤う、わらう。

 

輝きが増す。

 

燦々と、煌々と、血のように紅く、焔のように朱く輝きが増す。

 

一通りわらい終え、サイトは吹っ切れた様子で言った。

 

「っし、そうとわかりゃあ簡単だ。次ルイズに会ったらまず押し倒す。んで子供を産んでもらおう」

 

サイトはまだおかしいのか、喉の奥でグルル……と上機嫌に唸った。

 

「決めたぜゼロセン!デルフ!俺は今すぐこいつらブッ潰して、俺の宝石の元へ帰る!!ああクソ!目を離してるこの一瞬すらもどかしいぜ!」

 

吹っ切れた様子でサイトはゼロセンの背に飛び乗った

 

『グルァ……グルルル(ったく……いつまでもつがいを作らねえガキだと思っていたが、いっちょまえのこと言いやがって…)』

 

ずっと見守ってきたサイトの成長にほろりときたゼロセンも、嬉しそうに鳴いて空へ飛び立つ。

 

ただひとり(?)デルフだけはサイトの背で流れもしない冷や汗をかいていた。

 

「おっかない嬢ちゃんにピッタリの使い魔、か。まさに運命に導かれて選ばれた―――ん?誰の言葉だったかな?」

 

 

 

 

 

「ようしこの辺りだな……」

 

真下に『少しだけ』見えるアルビオンの軍勢を眺めながら、サイトはアイテムボックスから取り出した干し肉を口にする。

 

「ほいゼロセン」

 

「ギャ!」

 

それをゼロセンの口にも放り込み、かみ砕いて飲み込む。

 

その間に磨き抜かれてツヤツヤとした白い牙をサイトは取り出し、魔法で分解して吸収する。

 

すると心臓がどくどくと脈を打ち始め、彼らの精神が研ぎ澄まされていく。

 

サイトの方はより精神が高まっていた。

 

魔獣の肉という生命力にあふれた怪物の肉と、竜の牙という高位の魔法媒体。

 

それらで自分たちを強化し、サイトたちは攻撃を開始した。

 

「『プロテガ』!」

 

サイトとゼロセンは強力な護りの膜に覆われ、

 

「行くぜぇ!乾坤一擲!!」

 

人竜一体となり雲の中から急降下、軍勢の先鋒に巨大な矢のようになって突っ込んだ。

 

かたまって進軍していた人間達が面白いように吹っ飛んでいく。

 

「ぎゃあああ?!」

「グホァッ……!」

「ド、ドラゴああああああああ!!」

 

吹き飛んでいく者たちの悲鳴は滑稽と言ってもいい。

 

「あ、あれはどこのドラゴンだ!!」

 

「トリステインか?馬鹿め、たった一騎で何ができる。獣騎士隊、竜騎士隊、あれを落とせ」

 

もはや壊滅状態とはいえ、再編された航空戦力が彼らのもとへ急行する。

 

空を飛ぶことのできる幻獣、竜の背に乗るメイジ達が呪文を唱え、まず出の早い『マジックアロー』が、それを追うように風の刃や氷の槍が飛ぶ。

 

だが竜騎士は一切構うことなく突貫してくる。

 

翼を畳み、錐もみ回転しつつ魔法の雨の中へ突入し、全て銀の膜で弾きとばした。

 

「は、弾いただとぉ?!」

 

先頭にいたメイジが驚愕の声を上げる。

 

と、その時になってようやく相手の竜の背に、朱い光を見た。

 

それを見た瞬間、彼の脳内に稲妻のようにある噂が閃いた。

 

トリステインと戦った、空の者たちが皆口を揃えて言うのだ。

 

曰く、『バケモノを見た』と。

 

 

 

曰く、ソイツは蒼い竜に乗っていた。

曰く、朱い竜騎士だ。

曰く、ソイツはピンク色の魔女と一緒だ。

 

―――曰く、全身が銀に輝き、攻撃を歯牙にもかけない。

 

 

「『クリムゾン』、あれが『クリムゾン』だ!!『クリムゾン』が出たぞォー!!」

 

悲鳴を上げ、騎手を返そうとしたメイジは、真後ろに迫っていた蒼い竜のアギトで―――

 

 

『ギャアアアアス!!!』

 

乗り手ごと噛み砕いた幻獣を吐き捨て、ゼロセンは咆哮を上げる。

 

耳を抉り頭の中を揺らし腹の底から突き上げてくるような豪声は、聴いた者全てを怯ませた。

 

『グルルル……』

 

ゼロセンの閉じた口腔から小さく光が漏れだす。

 

声だけで怯んだ惰弱な獲物を睨み据え、

 

『ギャアアアアアアス!!!!』

 

口腔から雷撃が無数に枝分かれし、幻獣たちに襲いかかった。

 

その枝に貫かれた憐れな獲物は瞬く間に感電、絶命する。

 

その間に詠唱を完了したサイトが魔力を解放、自身の持つ最強の魔法を行使した。

 

「いくぜ対軍魔法!『トルネドォ』!!」

 

巨大な竜巻が聳え立ち、地にいる人間を天高くに巻き上げていく。

 

竜巻は移動しながら付近にある一切合切を吸い込み、破壊し、天にばら蒔いて地に叩きつけた。

 

あっという間に大量の屍が散乱する。

 

サイトはそれに手をかざし、ナニカを掴み奪るように握り締め―――

 

「よこせファントマァ!」

 

ぐいと引き千切るように腕を引くと、辺りにあった死体が全て弾けとんだ。

 

常人には見えぬナニカを吸収し、サイトは再び大規模な魔法を行使する。

 

「もういっちょう行くぞ!『トルネド』!!」

 

またも竜巻が発生し、先ほどのとは別の方へ向かっていく。

 

巻き上がる彼らの悲鳴が、竜巻の風とデュエットする。

 

しかしこれだけ大規模な魔法を連発して平気かと言われれば当然そうではない。

 

彼もまた魔力の大量消費にめまいを起こしていた。

 

「っく!連発は……きついな…けどよぉ!」

 

それでもサイトは気勢を上げてゼロセンの背から飛び降りた。

 

下には兵士達がひしめいているがお構い無し。

 

「『サンダガァ』!」

 

邪魔だとばかりに巨大な雷撃を降らせ、着地地点を凪ぎ払う。

 

だん!と着地し、背中に差したデルフリンガーを抜き払う。

 

持ち手を両手で握り上下に引くと、それが伸びて槍の姿をとった。

 

それを構え、サイトは疾走する。

 

「クラスゼロ、いざ参る!!」

 

槍の壁を斬り倒し飛び越え指揮官を殺す。

鉄砲の斉射をプロテガに任せて突っ切り蹴散らす。

目の前に着地し飛びかかってきた幻獣の鼻面を蹴り潰し槍で切り払って銃弾を三発撃ち込む。

 

槍を薙ぐ、銃弾をばらまく、魔法で薙ぎ払う。

 

上空のメイジは同じく『プロテガ』によって防御力を跳ね上げられたゼロセンが蹴散らし支援の隙を与えない。

 

そうこうするうちにサイトの戦い方が変わった。

 

槍の柄を片手で掴み、肩に担ぎ、目の前に『ヘイスト』の歯車型魔方陣を大中小の三つ一直線に並べる。

 

「どっ……」

 

これに慌てたのが穂先のデルフだ。

 

「相棒?相棒?!ちょちょちょ待て待て待て待てお前まさか」

 

「せぇい!!」

 

「アバーーーー!!」

 

サイトはデルフ(槍)をぶん投げた。

 

加速魔方陣三つで音速に達した槍は衝撃波で進路上のモノを吹き飛ばしながら彼方へ消えた。

 

だがそれで終わらない。

 

「おおおおオオオオォォォォォ!!!!」

 

同じ魔方陣のセットを幾つも空中に展開し、アイテムボックスに死蔵していた剣や槍や刀やハンマーをどんどん射出する。

 

その度に直線上に軍勢が割れていく。

 

もはや周囲は壊乱状態だ。

 

だが勇者はいるものだ。

 

『ブレイド』で風のように斬り込んできた全く同じ顔同じ格好の四人がサイトに襲いかかる。

 

風のトライアングルスペル『偏在』だ。

 

どこにでも存在する風を編んで作る分身で、本体と同じように思考し本体と同じように魔法が使えるという、風メイジを対人戦において最強足らしめる魔法だ。

 

彼らはサイトの強力な呪文を警戒し、下手に魔法を撃ちあうより近接戦に持ち込んで詠唱をさせないことを選んだのだ。

 

対しサイトは両手にトンファーを召喚し、まず先頭のヤツに逆に襲いかかった。

 

閃光のように懐に潜り込み顎めがけてかち上げるように垂直蹴り、踏み潰すように踵落とし。

すぐさま二人目、突き出された『ブレイド』を上体を捻ってかわしそのままの勢いで回転蹴りを放ちこめかみを蹴り抜く。

三人目と四人目の挟撃、前からの縦斬りと後ろからの横斬りを、地に伏せてかわし足を開いて独楽のように回りながら腕の力だけで跳び上がる。

その竜巻蹴りに三人目と四人目を巻き込んで吹き飛ばした。

 

最後にトンファーを引っ込め両手にナイフを召喚、振り向きざまに投げつけた。

 

音もなく忍び寄っていた本体の喉と心臓にナイフが突き刺さる。

 

喉を裂かれた本体の風メイジは、血を吐きながらパクパクと『何故気づいた』と口を動かした。

 

サイトは手元にそのナイフを呼び戻しながら、

 

「音はなかったが、そっちは風上だ」

 

と答えた。

 

風メイジは倒れ、絶命した。

 

周囲にはもうサイトに戦いを挑もうとする者はなかった。

 

サイトは投げ放った武器を手元に呼び戻しながら全てアイテムボックスに突っ込む。

 

そして周囲の死体からファントマを回収。

 

最後にデルフを手元に呼び戻して高度を下げたゼロセンに飛び乗った。

 

『ギャアアス!!(絶好調だなサイトォ!!)』

「『ああ絶好調だ!何でか知らんが力が湧いてくる!今ならアギトにだってなれそうだ!!』」

『ぁああぃぁいあ相棒ォ!!テメーふざけんなコンチクショー!!戦場の端に刺さった時はもう会えないかと思ったぞこの野郎!いきなり投げるバカがいるかよアホがぁ!!』

 

終始震え声のデルフ。

まあいきなり音速で飛ぶことになれば誰でもこうなるだろう。

 

ゼロセンに乗って移動し軍勢の奥へ、予め決めておいた間隔分移動。

 

サイトはそこでも同じように『トルネド』を上空より投下し、ゼロセンに『プロテガ』を纏わせ飛び降りると、陸と空から連携して攻撃を行った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

この七万の軍勢の総大将であるホーキンス将軍は、ひっきりなしに飛び込んでくる伝令の報告と各部隊への伝達に追われていた。

 

数百もの竜の大軍だのエルフの軍勢だのと情報が錯綜しているが、ホーキンスは相手の正体は単騎だと理解していた。

 

というか、『クリムゾン』がこちらに近づいてきているとの報を受け取っていたからだ。

 

いや、そもそもここからでも見えるあの蒼い竜、周囲一帯全ての幻獣、竜を相手に戦う姿がよく見える。

 

爪や牙を、魔法やブレスを四方から浴びせられ、それらを避け、反撃し、防ぎ、喰らい、血を流しながらまた闘う勇姿。

 

それを援護するように巨大な竜巻が槍のごとく空に伸び、朱い光が背に乗れば後ろを取ることも出来なくなる。

そしてまたあの銀の衣を纏い地上の人間を木の葉のように空へ跳ね上げていく。

 

 

ただ一騎。

 

ただ一騎の竜騎士に七万もの軍勢が蹴散らされている。

 

屈辱の極みと言える光景。

 

ホーキンスはそれに、一軍の将として憤怒を、ひとりの武人として賞賛を抱いた。

 

と、『クリムゾン』が急上昇し空へ、雲の中へ隠れた。

 

それを未だ生き延びていた航空戦力が追いかける。

 

空を翔る者たちは皆あの怪物を討ち取ろうと躍起になっている。

 

しかしヤツはいったいどこへ……まさかもう十分と判断して撤退した?

 

空に視線を投げ、彼の者を探そうとしたその時!

 

ホーキンスは視界、その上端に朱い光を見た。

 

「しまった!?上だ!この本陣に……!」

 

だん!と目の前に朱い影が落ちてきた。

 

眩しくも妖しく目を惹き付ける朱い光を手に宿す、朱い服の竜騎士。

 

よく見ればいくらか出血しており、肩で息をしながらも獲物を探すように眼光が周囲を貫いている。

 

槍を地に突き刺し、爛々と辺りを見渡していたその眼がホーキンスに向いた。

 

「お前が大将か!?」

 

若い、少年から青年になろうとする者の声がしたことに、ホーキンスはわずかに驚いた。

 

「いかにも!」

 

「その首もらう!」

 

ホーキンスはこの相手の前で呑気に強力な呪文を詠唱している暇はないと判断し、すぐさま発動可能な『ブレイド』を選択した。

 

「『ブレイド』!」

 

しかしサイトは、杖が纏った切断の光を鼻で笑う。

 

「馬鹿めッ!」

 

ルイズの父である公爵は殺すわけにはいかなかったから使わなかった。

 

だが敵には容赦なく使う。

 

サイトは拳銃を抜きホーキンスを狙った。

 

ホーキンスは光とともに現れた拳銃に顔を凍りつかせていた。

 

「あばよ!」

 

引き金が引かれる、瞬間ッ!

 

「『ウインド』!!」

 

「ぐぉっ!?」

 

横手からの突風にホーキンスの身体が突き飛ばされ、凶弾は彼の肩を掠めたのみ。

 

それを行ったのは本陣付きの護衛メイジだ。

 

「将軍を守れ!『エアハンマー』!」

 

「チィ!」

 

サイトは舌打ち一つ、その場を飛び退って風の鉄槌を躱し、護衛に向けて引き金を引く。

 

パンパンと軽い発砲音が護衛の胸に紅い花を咲かせる。

 

だがその隙に我に帰った残りの護衛達がホーキンスとサイトを隔てるように人の壁を作りサイトに襲いかかる。

 

光の矢に風の刃、氷の槍、炎の弾がサイト目がけて集中して放たれ、さしものサイトもデルフで魔法を吸収しながら後ろに下がるしかない。

 

いつもなら『ウォール』を張って魔法で反撃するが、度々の大規模魔法行使でそんな余裕がない。

 

さらに後ろからも反転した歩兵たちが突っ込んでくる。

 

荒波に投げ込まれた木の葉は容易く飲み込まれる。

 

それと同じように精鋭揃いの中央へ愚かにも飛び込んできた報いを受けさせんと、大軍がサイトを押し包み、飲み込まんとした、その時!

 

『ギャアアアアス!!』

 

人間ごと馬まで飲み込むような大火球が三つ、サイトの周囲に着弾した。

 

それは同時に破裂し、中の灼熱を解放、周囲を一気に焼き払う。

 

とっさに各々魔法で防御した本陣の精鋭メイジ達だったが、反対側の平民の歩兵たちはそうはいかない。

 

「ぎゃああああぁぁぁ……」

「うあぁ!足が、俺の足がァ!!」

 

運よく火だるまになれた者はほぼ即死できたが、運悪く手足の一部のみをボソボソの炭にされて倒れた者には、尋常ではない痛みに悲鳴をあげ、混乱した仲間に踏み殺される者すら続出した。

 

そしてすぐにあの蒼いドラゴンの巨体が急降下から着陸、幾人かが倒れるほど大地を盛大に揺らした。

 

『ギャアアアアス!!』

 

耳を貫き魂を凍りつかせる竜の大咆哮に、ホーキンス達は本能的に動きを止めてしまった。

 

「……そうだな!わかった!」

 

が、朱い竜騎士は咆哮に頷くとその背に飛び乗り、。

 

「命拾いしたな!」

 

捨て台詞を残し、周囲に風圧を浴びせながら飛び去った。

 

後には前衛から中央、指揮所までを散々に荒らされた軍だけが残された。

 

それは最早、ロサイスへの追撃が不可能であることを示していた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「足止めとしては十分だったが……」

 

サイトたちは付近にあった森の奥に飛び込み、傷を癒していた。

 

「あ゛ぁークソッ……銃創に火傷に……あ、弾丸残ってる。通りで感覚がないわけだ」

 

朱い服で目立たないが、サイトは結構ダメージを受け出血していた。

 

特に最後の方は『プロテス』をかける魔力もヒマもなく、ほぼ近接戦一本で大立ち回りをしていたのだ。

 

不思議と体が軽かったが、それでも何度か躱しきれずに被弾していた。

 

「『ケアル』!」

 

ファントマを吸収し掻き集めた最後の魔力で傷を癒す。

 

本当は極大回復魔法『ケアルガ』で一気に治すつもりだったが、魔力がスッカラカンで到底発動出来なかった。

 

じわじわと傷が塞がっていく。

 

とりあえず急を要する傷だけ癒し、後は回復薬を出して飲む。

 

「やっぱ、ここまで重傷だとキツいもんがある、な……」

 

苦いんだか甘いんだかわからない回復薬と、辛いんだか酸っぱいんだかわからない魔力回復薬を飲み干して一息つく。

 

傷と疲労、失くなった魔力が少しずつ回復していく。

 

より高性能な『ポーション』や『エーテル』、『エリクサー』の類いもあるにはあるのだが、勿体ないので使わない。

大怪我しているのに治療薬が『もったいない』とはおかしな話だが、周囲に敵がおらず、窮地を脱出したからこそこんな余裕があるのだ。

 

代わりに竜の秘薬である『金丹』をゼロセンの口に放り込み、彼の治癒力を爆発的に上昇させ、その傷を癒した。

身体の大きいゼロセンにはこちらの方が効率的なのだ。

 

『グルル……(無理すんな、今は休め)』

 

ゼロセンは翼を拡げると、サイトの傷ついた身体を隠すように覆った。

 

「心配ない……死にゃしない……さ」

 

どんどん瞼が重くなる。

 

身体が休息を求めているのだ。

 

と、ふと今の状況に既視感を感じる。

 

いつのことだったかと考え、それに思い当たって静かに笑う。

 

(そう言えば、あの時もこんくらいヤバかったんだっけ……)

 

かつて自分が召喚された時のことを思い出し、サイトは微睡の中で微笑んだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ここは……?」

 

目を覚ましたルイズは、フネの上にいた。

 

「やぁ目を覚ましたね」

「よかったよかった」

 

最初に目に入ったのはギーシュや竜騎士のルネだ。

 

同時、ズキィと頭に鈍痛、さらに吐き気も。

 

まさか彼ら二人が見るだけでこれほど人を不快にさせる能力を有していたとはとどこか感心する。

しかしそんなバカなとすぐさま否定。

 

これは……二日酔いに似ている。

 

そこでハッとなった。

 

今は何時だ?いや、いつ(・・)だ?

 

「おい!アルビオン軍の進軍は?!撤退の状況はどうなった?!」

 

ルイズはギーシュの胸ぐらを掴み下ろして問い詰める。

 

「て、撤退は完了したよ。これが最後の便さ」

 

「か、完了……?アルビオンは、奴らの進軍が何故遅れた?!」

 

「さ、さぁ……?」

 

あまり情報が入らず、舌打ちしてギーシュを放す。

 

サイトに聞こうと辺りを見渡し、空を見上げ――――どこにもあの蒼い竜が、朱い服が見えないと気付く。

 

「ギーシュ、サイトはどこだ?」

 

仕方なくギーシュに居場所を聞くと、

 

「……」

 

ギーシュは暗い顔で目を逸らした。

 

「……おい?」

 

何故だろう、ルイズは急に胸の中に不安が溢れ出してくるのを感じた。

 

背中を冷たい汗が流れる。

 

自分の中に予測のひとつとして存在した、僅か、ほんの僅かな“考えたくもない可能性”が急速に現実味を帯びていく。

 

と、ルイズの耳に兵士の会話が聞こえてきた。

 

「あのさ、別のフネに乗った友達が言ってたんだけど、何か見たこともない蒼い竜が一匹サウスゴータに向かったのを見たらしい」

「それがどうしたんだよ?」

「いや、その竜がアルビオンの進軍を止めたんじゃって……」

「バカバカしい、そんなわけあるかよ」

 

真っ青になったルイズはその二人を問い詰めた。

 

「今の話は本当か!?本当にサウスゴータに向かう竜を見たのか!?」

 

兵士達はいきなり貴族に、しかも見るからにヤバイ目付きの少女に話しかけられ驚き怯えたが、

 

「え、ええ……蒼いドラゴンがサウスゴータに向けて飛ぶのを見た奴がいるそうです」

 

と、どもりながら答えた。

 

ルイズは確信した。

 

それはサイトだ。

 

どういうわけかあの馬鹿は、自分なんぞを助けるために死地に向かったのだ。

 

「降りる!」

 

フネから飛び降りようと走りだしたルイズ。

 

だがその前に青銅鋼のゴーレムが立ち塞がり、ルイズを受け止めた。

 

「邪魔を……はッ?!」

 

素早く青銅鋼のゴーレム――――ワルキューレを爆破しにかかったルイズだが、しかしそれは叶わなかった。

 

彼女の手にガッチリと青銅鋼の手が組み合っており、スイッチを押せなくしていたからだ。

 

顔を伏せたギーシュが辛そうに告げる。

 

「すまないルイズ、僕は友の意を汲む」

 

それをギッと睨みつけて彼女は叫んだ。

 

「離せ!お前に、お前ごときに私たちの何が!何がわかる!!」

 

「わかるさ!僕だって彼の友達だ!彼は君を死なせたくなかった、だから行った!君のためにだ!!」

 

自分でもわかっていたことをギーシュに一喝され、ルイズは己の足元が崩れる思いだった。

 

「まて、私はそんなこと、望んで……こんな、こんなはずじゃ……」

 

世界が回る、世界が歪む。

 

その濁った瞳から、驚くほど透き通った涙が零れ落ちた。

 

「いやだ……嫌だよ!サイト、サイトーー!!」

 

少女の悲痛な叫びが空に響き渡る。

 

それでもフネは止まらない。

離れていく。ゆっくりと。

 

彼をそこに残して。

 

 

トリステイン・ゲルマニア連合は、アルビオンの地より完全に撤退した。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「――――――ッ!?」

 

バチッと意識が覚醒する。

 

『グルルル……(気がついたか)』

 

「『ああ、何か来る』」

 

木々によって隠された暗闇、そこに『巨大な気配』を感じた。

 

かつて一度、『キングベヒーモス』という怪物と戦ったことがある。

 

天を突くような鬣、山猫のようにしなやかで、竜のように鋭い眼光を持ち、星屑すら呼び寄せる魔力を有する、何より他を圧倒する黄金の巨体。

もはや伝説の中にしか語られぬ存在。

 

自分とゼロセン、さらに同じクラスゼロの二名が死力を尽くして戦いようやく倒せたほどの怪物。

 

 

――――――それを上回るプレッシャー。

 

 

ズシャリ、ズシャリと何か二足で歩く生き物が近づいてきている。

 

手の中の槍を感触を確かめるように軽く握り直す。

 

 

やがて木々を掻き分け、姿を現したのは――――――

 

「……」

 

「……」

 

「…………アンタは……?」

 

「…………ただの木こりだ」

 

男がいた。

 

筋骨隆々の。

 

身の丈は二メートル半ば、日に焼けて赤銅色の肌、全身の筋肉は、片腕だけでも大の男一人分の筋肉を圧縮したのではと思うほど圧倒される。

手にはそこらの木も、人間も同じように一振りで真っ二つにできそうな、城壁用に切り出した岩を取り付けたかのような石斧、いや岩斧。

こちらを見据える眼光はかのキングベヒーモスにもまるで劣らない。

 

ただの木こり?クスリとも笑えない。

 

だが敵意は感じない。

 

あるのは警戒心。

 

目の前の存在が如何なるモノか、見極めんとする瞳。

 

と、その瞳が驚愕に開かれた。

 

「お前……その朱い服、その刺繍……本物か?」

 

「……はぁ?」

 

呻くように放たれた言葉に、サイトは疑問符を浮かべる。

 

「その、胸についている紋章……四つに分かれた四角形に、蒼い瞳、朱い翼、白き腕……黒き盾。その上後ろには蒼の竜……何者だお前、何故(なぜ)何故(なにゆえ)この世界の人間が、オリエンスの印を身に着けている?!いや、何故その四つがひとところにある?!」

 

吠えるように、しかし瞠目して汗までかいている大男。

その尋常でない様子に怯えたわけではないが、刺激するのは得策ではないと考え、サイトは慎重に答えた。

 

「……俺がオリエンスの人間だからだ」

 

カッ!と先程よりも目を見開き、大男は重ねて訪ねた。

 

「なん……だと!?お前は!お前はいったい何者だ!?」

 

「……先に名乗れよ」

 

警戒心バリバリのサイトに、大男はアッサリと答える。

 

「そ、そうだな。俺はギル。ただのギルだ。元は俺もオリエンスの人間だ」

 

「……俺はサイトだ。連合の候補生、クラスゼロ所属」

 

ギルはその返答に「……ぬぅ」と唸ると、少しばかり黙り、やがて意を決して言った。

 

「ついてこい。傷の手当てをしてやる」

 




おや?サイトくんの様子が……

おめでとう!サイト君はヤンデレになった!!

まぁ猫と竜が世話の大部分を担ったせいで愛情の示し方が直球になるんです。
猫のように甘え、竜のように独占する。
富や権力をお姫様に捧げますが、逃がすことはありません。
逃がすくらいなら殺しますし奪う者は殺します。

なので、すでにジュリオ(罪状ルイズの手の甲にキス、あと頼んだのは自分だけど腕に抱いた)はブラックリスト入りしました。


今回サイト君が咄嗟に思いついてやった『王の財宝』は、後に『竜の財宝』というアビリティ技になりますw
AP消費技ですなw
彼は自覚はありませんがコレクター気質です。でなきゃ使わない小手だのは売り払ってます。
鎧は戦地で友人に譲りました。さすがに他人の命<自分のアイテムではない模様。
あと、彼はエリクサーを最後まで取っておいてエンディングに行っちゃう人ですw

しかしようやくここまで来ました。

あと一話、あと一話でワールドストーリーを一旦終え、ちょっとしたイベント挟んでメインストーリーに戻ります。

ていうかぶっちゃけ、この間章はすべて次の一話のための長い前フリだったりします。

ではでは、ご意見質問感想などございましたらお気軽にどうぞ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。