皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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新たな時代の音

「っかぁあー! ファザーの言う通り准将カッケェなぁ!!」

 

カチャカチャと頭に白虎を模した(ぬこみみ)ヘルメットを被りつつ、バヨネットは言った。

 

それに対し皆も同意する。

 

「そうですね、僕らをちゃんと叱れる大人って少ないですから」

 

「情けない話よね~」

 

「……怒られた、あなた達、後で殴る」

 

「「ちょっ!」」

 

「あれ? トリガー先輩は?」

 

「ドリガア゛隊長な゛ら゛ファザア゛のどごろ゛だ、報告をじに行っだ」

 

「あ゛ぁ!? ずりぃぞ!!」

 

「アタシもファザーに会いたい!!」

 

「しょ、しょうがないですよ、こればかりはどうにも……この作戦が完了すればまた会えますって」

 

「やれやれだぜ……あ、揺れ止んだな」

 

「ひっ!! は、入って来ますかね……?」

 

ビクッと小動物のように怯えるバレルに対しバヨネット、ハンマはにやりと意地悪く笑う。

 

「ぜってえ入ってくるぜwww」

 

「入ってくる入ってくる、でアンタが最初に食べられちゃうwww」

 

「うわぁああん!!! 鋼機乗るーッ!!」

 

「うるさい」

 

ガッゴッドゴォ!!

 

「あうっ!」

「イダッ!」

「ゲブゥッ!!」

 

上から順にバレル、ハンマバヨネット。

 

容赦なく拳骨と蹴りを放ったのはマズルである。

 

「また怒られる」

 

「「は~い……」」「んで俺だけ蹴り……」

 

「あ゛ほやっでな゛い゛ではやぐ行ぐぞ。奴等どまども゛に戦えるのは俺達だげだ」

 

「で、でもアルテマ弾で全部殺せたかも……」

 

「あ゛ぁん? そりゃねえよ。ファザー言ってたじゃねえか、死ぬことはあっても尽きることはねえって」

 

「一日経ってまだ沸いてくるなら奴等の巣に直接アルテマるってさ」

 

「あうぅ……殺しにくいからアイツら嫌いです……」

 

「嫌いといやぁ、“朱”どもはどうしてんだろうな」

 

「忘れてないってことは生きてんじゃない?」

 

「……あの弓使い、絶対殺す。あと鎌女、猫達の仇」

 

チャリッと首から下げたネームタグの束を触るマズル。氷のような無表情の、その瞳には明らかな憎悪が宿っていた。

 

「じゃアタシはあの拳法使いね」

 

そう言って特注の、脚部を徹底強化された強化服でシャドーをするハンマ。見えない敵を蹴りつける度に空気が切り裂かれる。

 

「俺はやっぱ槍野郎だな!! 俺の斧に対抗できた奴だからな!!」

 

ギラリと笑いバヨネットは両肩から背中に取り付けてある『試製五六式鋼線電斧』を引っ張る。突撃兵に支給される手斧の刃を両側に着けて大きくし、さらに鋼線で背部C機関に接続したその武器は、バヨネットにのみ与えられたもの。

 

「僕は朱にはルルサスと共倒れて欲しいです……殺しても死なないからルルサスより嫌いです」

 

拗ねるようにヘルメットを被った頭を俯かせるバレル。

 

「ストライカーで壁とサンドイッチしてもまた会ったし、コロッサスで頭をかち割ってもまた会ったし、ヘルダイバーで踏み潰してミサイルで吹き飛ばしてもまた会ったし、ブラックバーンで蜂の巣にしてエネルギー砲で消し炭にしてもまた会ったし……あとまだ試してないのは……」

 

「ぞのへん゛に゛じろ゛、行ぐぞ」

 

 

また始まった無駄話に呆れたように言ったセフティーは、背中に阿呆のように大きい(縦二.五メートル、幅三十センチ、厚さ二センチ)肉切り包丁を軽々下げ、右手にこれまた大きな機関砲『試製二一式20mm多銃身機関砲』を冗談のようにひょいと持ち(普通は強化兵が両手と全身で必死こいて持つ)、左手に『試製二一式160mm対人無反動砲』をオモチャのピストルのように(普通は両手で持って肩で支える)装備して、ガシャンガシャンと歩き出した。

 

しかも結構なはや歩き。

 

 

残された三人も慌てて後を追った。

 

「じゃあな、マズル!」

「後でね!」

「それでは失礼します!」

 

バタバタと駆けていく三人にマズルはパタパタと手を振り、

 

「みんな、行こう」

 

 

山猫たちを引き連れ、巨大な狙撃砲を引き摺って、狙撃ポイントに向かうのだった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

一方その頃、ペリシティリウム白虎、その廊下を失踪する影があった。

 

 

『こちらペリシティリウム!! 壱号機、エネルギー低下!! 原因不明!!』

 

『こちらペリシティリウム!! 参号機、出力 80%、75、70、ダメです! 止まりません!!』

 

「玖機関と出力計以外の機器をパージしろ! だが60%を切ったら大容量C機関を接続充電しろ! 時間が無いぞ急げ!!」

 

 

白い軍服を羽織った、覇気のある壮年の軍人が報告に対し指示を返しつつクリスタリウムに高速で移動している。

 

通信機器を背負った強化服の兵士に背負われ、その通信機にしがみつくようにして指示を出しているのだ。

 

背負われている壮年の軍人の名は、シド・オールスタイン元帥。

 

ミリテス皇国の最高司令官にして実質上の最高権力者だ。

 

背負われるシドは情けなさに対し悔しげに顔を歪める。

 

「くっ! せめて儂が30代ならな!!」

 

「仕方ないですよファザー、寄る年波には勝てません」

 

「抜かせ! まだ現役だ!!」

 

 

シドを背負う強化服を着込んだ兵士、トリガー大佐は、重い通信機器と人一人背負っているにも関わらず凄まじい速さで廊下を疾走する。

 

 

『壱号機出力60を切りました!! 大C機関接続!!』

 

『参号機出力60切りました! 大C機関接続します!!』

 

 

「ぬぅ! 早すぎる!! 弐号機、何か問題はあるか!?」

 

『シド様? こちらは異常ありません。水力は問題なく稼働中、火力、光力はともに現在停止してあります』

 

「全て点検しろ! 前線! 外の様子はどうだ!」

 

『ハッ!! 外部カメラはノイズがひどく、耐熱ガラス越しでは煙により外の様子はわかりません!』

 

「戦闘用意をとらせろ、奴等は短距離なら瞬間移動してくる。壁の内側と油断するな! 第二射はしばらくできん、全ての防衛システムの稼働を許可する!! ヴィジランティも使っていい!!」

 

『ハッ!!』

 

「シャルロ中佐! アレは出撃可能か!?」

 

『シ、シド様!? は、ハッ!! いつでも可能です! 戦略小型アルテマ弾も搭載完了しております』

 

 

「よし! そのまま待機だ!! 医務室!! クンミの容態は?!」

 

『体力、精神力ともに非常に消耗しておりますがエリクサーにより治療中です。復帰にはもうしばら『私はもう復帰できる! いいから離せ!!』(ガッシャーン!! ドゴーン!!)『人海戦術で取り押さえろ!』『医者舐めんな!!』……しばらくかかります』

 

「治療を続けろ!クンミ! 30分はそこを離れるな!! わかったな!!」

 

「ファザー、着きましたよ」

 

バリバリと白い電光がそこら中を這いまわる、翡翠の光に満たされた部屋。

 

その中央奥には巨大なクリスタルが様々な機械に取り付かれ、エネルギーを搾り取られていた。

 

 

 

「よし! 状況は?!」

 

「出力低下30%を切りました!!依然原因不明です!!」

 

「大C機関の充電率は?!」

 

「接続した300基の大C機関に充電を行っていましたが出力低下につき充電効率が悪く、100基を新型C機関10000基に交換接続、充電の完了したものからさらに交換して順次充電しております!!」

 

「よくやった! 参号機、聞いていたな!?」

 

 

『ハッ!! こちらも半充電完了した大C機関100基を新型C機関と交換充電します!』

 

そのときシドは壁に背を預けて立つ男に気づいた。

 

「ニンブス!! 貴様は何か知らんのか!」

 

白虎を模した仮面をつけ、白虎を表すマークが印された特徴的な肩飾りの軍服に身を包むその男。

 

白虎ルシの一人、名をニンブスといった。

 

寡黙なるルシは静かに口を開く。

 

「…………クリスタルは使命を果たした。故にこの結果は当然だ」

 

「なに……? ならばフィニスの時は、終わったのか?」

 

 

ニンブスは、沈黙したまま、ゆっくりと頷いた。

 

 

「そう、か……終わったか…………」

 

 

そう言ってシドも静かにクリスタルを見上げた。

 

 

「時代が、変わるな」

 

 

クリスタルが、断末魔の如く一際強烈に輝き、

 

 

ビキッ……ビシッ…………ッパァアアアン!!!

 

 

 

粉々に砕け散り、光の粒子となって消えた。

 

 

新しい時代が始まろうとしていた。

 

 

 

 

…………だが誰が予想できただろう。

 

 

その新時代の姿は、誰も彼もの予想を裏切っていたなどと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(だが……そうなると、だ)

 

 

そんな中、シドは心中で思う。

 

 

(いったい誰が審判者になったのだ?)

 




答え:軍令部長
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