「ク、クリスタルが……」
「クリスタル反応、完全に消滅……」
呆然と、技官は報告する。
建国より数百年に渡って国を支えたクリスタルが、力の源が自分の目の前で砕け散ったのだ、無理はない。
『こ、こちら参号機、玄武クリスタルの完全消滅を確認…………し、指示を願います』
絞り出すような声が通信機から流れる。
それに返事をせず、シドは静かに目を瞑り、再び開くとニンブスに振り返った。
「……ニンブス、ルルサスは消えたと判断していいな?」
「…………災いは去った」
「そうか……クリスタルが消えたなら、貴様らルシはどうなるのだ?」
「…………いずれ身に宿したクリスタルの力が尽き、唯人となる…………これからは死する者の記憶も失われることはない」
「……クリスタルから解放された貴様は、これからどうするのだ?」
「………………それを語る言の葉はない」
「そうか……」
シドはゆっくりとトリガーの背負う通信機器を起動させ、チャンネルをオープンにする。
「全軍に通達、私は皇国元帥シド・オールスタインである。ルルサスの脅威は去った。我々はフィニスの時を乗り越えたのだ!!」
ドームを揺らすような歓声がここまで伝わってきた。
――――――――――――――――――――――――
『我々はフィニスの時を乗り越えたのだ!!』
私の乗るガブリエル、その通信機からこの報がもたらされた時、私も頬が緩むのを実感した。
「ふん、ならば我々はアギトとなったのか」
アギト、救世主……か。
だがもし皇国からアギトをひとりだけ選ぶとすれば、それは間違いなくシド・オールスタインだろう。
あの男が元帥になってから全てがとんとん拍子に進んでいった。
新型鋼機も、新技術も、作戦の展開までもあの男の言った通りとなった。
……ではあの計画も、実行されるのか?
『(ザッ……)カトルか?』
噂をすれば、か。
「ハッ!! カトル・バシュタール准将、ガブリエルにて待機中です!! どうされましたかシド様」
『プライベート回線だ、楽にしてかまわん。……それより予想通り、クリスタルが消滅した』
!!……やはりか。
「……では?」
『うむ……「創世計画」を始めねばならん』
「この事はいつ?」
『三日後だ。徐々に消滅したことにする』
つかの間の安息、ということか。
「……私は、これより兵を労い、休息を与えることにします」
『うむ、苦労をかける……そうだ、あの子達はどうだった?』
……真面目な、重々しかった口調が、いきなり子を自慢する親の声になった。
見えなくとも知っている、あの顔がだらしなく緩んでいるのを。
「……クセは有りましたが非常に有能で、朱に対しても拮抗しておりました」
『そうだろうそうだろう!! ん? (いややはり先生役の意見も聞きたいのだ、お前たちの実力を疑ってなどおらんよ)……おぉ、そうだ、そちらに残りのノアはいるか? いるならこちらに来るよう……いや、やはり俺が直接連絡をとる』
「小声でも聞こえておりますぞ……全く、贔屓もほどほどに。特に軍の規律をよく乱すので最低限TPOを守れるようにシド様から言っておいてください。示しがつきませんので」
『うむ! ではな!』
通信が切れる。
「……全く、どんな因果を辿ればこんな応報になるのだ」
いったい何故私が先生役なのだ。
教導官ならフェイスの方が向いているだろうに。
…………それにしても、だ。
考えぬようにしてきたが……実に奇妙だな。
これまでの戦い、シド様は常に時代の先を見越し先手を打ち続けてきた。
それはもう、因果に応報が下っている、というより、あれはまるで――――――
『(ザッ……)カトルか!? そこにいるよな!』
う! この、バカでかい能天気な声は……
『俺だ俺俺!! 今同期で飲みに行こうって声かけてんだよ!! カトルも行こうぜ!!』
「カロン曹長……今は任務中で、私は上官なんだが……」
『固いこと言うなって!! ピエットもフェイスも来るってよ!』
やれやれ、相変わらず押しの強いことだ。
「わかったわかった、帰投しだい合流しよう」
『(カロン!! このバカモノ!! 私用で軍回線を使うな!!) げぇっ!! 親父! (任務中だ! シャルロ中佐と呼べ!!)(ブツッ!)』
切られたか。
ふん、カロンにはとんだ応報が下ったな。
さて、私も帰投し(ウ〜〜ゥ〜〜ウ〜〜)!!!
突然の警報、そして回線が繋がる。
『こちら第一防衛ライン! 攻撃を受けている!!』
「なんだと!? 敵は?!」
『竜!! 敵はドラゴンの群れだ!!』
ドラゴン!? 蒼竜か!? だが何故だ!!
……いや考えるのは後だ!!
「もたせろ!! すぐに向かう!!」
C機関を作動させ、宙へと舞い上がる。
『第一航空師団、空へ上がれ!! 友軍を助けるぞ!!』
『『『『『ハッ!!』』』』』