皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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第一次帝都防衛戦

 巨大機動隔壁要塞『アウターヘイヴン』、通称機動ドーム。

 

 新ミリテス首都を覆うこれはただの天蓋ではなく、三層からなる巨大な要塞だ。

 

 一番外側が第一層、一番内側が第三層。

 

 第一層は他国やモンスターの侵攻に備え機関砲や要塞砲、鋼機の出撃ゲートなどがあり、一番分厚い。通称第一防衛ライン。

 第二層は鋼機や予備兵力の待機場兼最終防衛ライン。幾つもの隔壁で通路を蟻の巣のような迷路にできる。

 第三層は第一層への補給線かつかなり最終防衛ライン。ここ突破されたらかなり終わり。

 第三層の内側、つまりドーム内部は、外周基地(ホント最終防衛ライン。ここ突破されたらホント終わり)、工場地帯(マジ最終防衛ライン。ここ突破されたらマジ終わり)、市街地(一貫の最終防衛ライン。ここ突破されたら一貫の終わり)、総督府(もう最終防衛ライン。ここ突破されたらもう終わり)に分かれている。

 

 ちなみに何故第一のすぐ後に最終防衛ラインがあるかと言うと本当はあと幾つかドーム外に在ったのだがルルサスに全て破壊されアルテマ弾で消し飛んだから。

 

 

 閑話休題。

 

 

 そして今襲撃されているのは第一防衛ライン上部と北側である。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「来たぞぉ!!」

 

「近付かせるな!! 撃ちまくれぇええ!!!」

 

 乾いた発砲音がそこら中で鳴り響き、飛行する巨大な生き物を近付かせまいとする。

 

 ドームの至るところから回転式トーチカがせりだし、緑の制服に緑のヘルメット、視覚補正グラスを備えた皇国一般兵たちが、銃身と剣が一体となったような四一式15mm自動小銃を撃ちまくる。

 

「ギャアアアアアアス!!!」

 

 だが迫り来る影は止まらない。

 

 燃えているかのように紅い鱗、血の雫の如き瞳、人など丸呑みにしそうな口、背に生える真紅の翼は風を捉え、力強い四肢は疾く獲物を引き裂かんと逸るかのように隆起している。

 まさに西洋そのままのドラゴンがトーチカに接近する!!

 

 15mmの口径は人の身なら粉々に出来ても、二十メートルを越える巨大なモンスターには余り効果が無い。

 単発ならまず鱗に弾かれ、集中的に撃てば傷つけ血を流させることは出来ても致命傷には至らない。

 むしろそれはドラゴンの怒りに火を灯し油を注ぐ結果となる。

 

 

『グギャアアアアアアス!!!』

 

 

 血にまみれながら突進し、せり出したトーチカに取り付くドラゴン。

 銃眼となる開口部に息を吸い込み奥にはチラチラと炎が舞う口を突き付ける。

 

 それを見た皇国兵は恐怖に顔を歪め、

 

 

「今だぁああああ!!!」

 

 銃眼の陰に隠れていたロケット砲兵が飛び出し、ロケット弾を撃ち込む!!

 綺麗に口の中に吸い込まれたロケット弾は体内に侵入、起爆。

 爆風に腹を食い破られたドラゴンは、断末魔すらなく地へと墜ちていった。

 

 

「「「「「いよっしゃああああ!!」」」」」

 

「油断するな! また来るぞ!!」

 

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 第三層中枢に位置する総司令部では、帝都防衛線総指揮官レイモン大将が次々に飛び込む報告に指示を返していた。

 

『ドラゴン、種類の特定不能! 新種です!!』

 

『こちらC12!! 地上からモンスターの大群! でかいトカゲの群れだ!! 火を吹いてるぞ!』

 

「航空部隊から報告! 首都近郊の地形、気候がおかしいそうです?」

 

「北以外の要塞砲は引っ込めろ、どうせ当たらん! 地上はコロッサスで迎撃しろ! 機関砲!! 空の奴等を近付かせるな!!! 地形がおかしい? 後にしろ!! 気候はバクライリュウでも来たんだろう!!」

 

「D4、竜が取りつきました!!」

 

「叩き落とせ!! ヴィジランティを全機出せ! 何としても制空権を奪取するのだ!!」

 

『こちらイネス大尉、ヴィジランティ出撃する!!』

 

「こちら司令部! 貴官のヴィジランティに敵と補給ポイント、ドームの装甲の薄い位置を送った! 戦果を期待する!!」

 

『こ、こちらエマージー大尉!ヴィジランティ、 出ます!!』

 

「こちら司令部! 貴官は送信したルートで敵を粉砕せよ!!」

 

『こちらバレル少尉! 敵を粉砕して来ます!!』

 

「こちらしrちょっと待てぇ!! 何故貴様が居る!?」

 

『代わってもらいました!! あとA11番、B1番隔壁でノア待機中です!』

 

「〜〜〜ッ!! ええぃ!時間が惜しい! 貴様はそのまま出撃! 敵を遊撃し撹乱せよ!!」

 

『ハッ!!』

 

「A11、B1隔壁も開け!」

 

「よろしいのですか!? このような勝手を……」

 

「構わん!」

 

「……わかりました、増援を送り次第隔壁を開放します」

 

「頼む……まったく厄介な連中だ、そのくせ結果だけは残しおる」

 

 そうレイモン大将は忌々しげに、しかしどこか安堵し苦笑するように口角を吊り上げた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「粉砕! 粉砕!! 粉砕!!! 」

 

 あれが噂に聞く『恐慌』のエマージー大尉か……すごいなぁ、めくら撃ちに見えるのに的確にドラゴンを一ヶ所に集めてる。

 

 で大出力エネルギー雷球砲。

 殲滅どーん。

 

『クンミ様が守られたドーム! トカゲに触らせるかああああ!!!』

 

 あっちも激しいなぁ……主に告白が。

 いくらドームが頑丈だからって翔んだり跳ねたりするのはどうかと思う。

 落ちたらどうしようとか考えないのかな?

 

 ま、いいや。

 

 今僕が乗るのは、高機動型重装陸戦鋼機『ヴァジュラ』、その後継機である帝都防衛用高機動型重装陸戦鋼機『ヴィジランティ』。

 

 その長い名前の通り、かなりのハイスペック機。

 

 従来の二足鋼機に比べ、蠍のような六本の足を持つ脚部。

 速射性の高いマシンキャノンを二つ腕のように備え、高性能な索敵センサーを搭載した胴。

 尻尾みたいなエネルギー供給パイプは先端部が大型ミサイルを兼ね、さらに最終兵装として大出力C機関から錬成されるエネルギーで雷の爆弾を発射する。

 

 唯一の欠点は燃費とコストくらい。

 燃料は帝都(ここ)ならいくらでも補給できるし、量産できなくても質と、腕でカバーできる。

 

 とくに、後者はこの僕ならね!!

 

『じゃ、行くよ!!』

 

 隔壁が開かれると同時にピョンと外に飛び出す。

 

 地上八十メートルから(テへッ☆)。

 

 マシンキャノンを下に向けて乱射ァ!!

 

 同時に尻尾でドームを引っ掻きながら速度を緩め、乱射の反動も使ってはいドォン着地ぃー!

 

『アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』

 

 トカゲ! トカゲの群れだ!!

 

 た・い・あ・た・りィーーーヤッフゥーー!!!

 

 小型ミサイルばら蒔きながら突進突撃特攻轢殺轢殺轢殺轢殺轢殺ゥ!!!

 

 

 テンション上がってキターーー!!

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 ドームの上部にある厚さニメートルにも及ぶ隔壁がゆっくりと開いていく。

 

 曇天の空の下、対空砲火による光の筋と飛び回る無数の影を見渡すその場所に、ずしゃり、ずしゃりと重低音を響かせ、要塞のごとき銀色の重武装達が姿を表す。

 

「ヴゥー……ハー……」

 

「敵……敵は空かきひひひひヒヒヒ」

 

「来いぃ、来いいぃぃトカゲどもぉおおお!!!」

 

 微塵も正気を感じさせない、闘争本能のみを声に乗せて叫ぶ巨漢の兵士たち。

 

 全身を隙間なく覆う、(理論上)あらゆる攻撃を跳ね返す特殊装甲に、大抵の生き物は易々と両断されるであろう大人の背丈ほど肉切り包丁。

 

 

 番外者。

 

 

 滅びし玄武の地に生き残っていた屈強な玄武兵を捕縛し、薬物などによる洗脳と肉体改造によって生まれた兵器(・・)だ。

 

 もはや自分が誰かも忘れ、解き放たれればただただ殺戮のみを求めて戦場を徘徊する。

 数はそれほどいないので全体数は少ないが、特攻から拠点防衛までなかなかに幅広く使用できる。

 ただし、たまに僅かに正気を取り戻したり狂ったりして味方にも襲いかかったりするので運用には注意が必要である。

 

 そんな、数人の番外者たちの中心に一際巨大で異様な番外者がいる。

 

 普通の番外者よりもデカい三メートルという、クリスタルの恩恵と生物学のハイブリッド。

 特別にあつらえられた特殊強化戦闘装甲服。

 標準装備の肉斬り包丁に加え、そこらのモンスターならたちまち粉々にできるであろう『試製二一式20mm多銃身機関砲』と『試製二一式160mm対人無反動砲』……ようはガトリングガンと連射可能なロケット砲を装備している。

 

 無論、セフティー准佐である。

 

「……」

 

 セフティーは無言のまま、開いた隔壁に飛び込んできた5メートル級のドラゴンに凄まじい猛火を浴びせた!

 

 特殊強化戦闘装甲服に内蔵された『試作射撃補佐システムカメラ』、通称『スフィア・アイ』による演算制御の射撃が寸分の狂いなくドラゴンを攻めたてる!

 

 鉛の嵐は鱗を貫き榴弾は肉を掻き混ぜていく。

 

 飛び込んできた勢いのまま地に倒れたドラゴンに群がった番外者たちは、各々が持つ肉切り包丁で狂ったようにドラゴンに斬りつけていく。

 

 薬物によって強化されたその怪力は勢いよくドラゴンの鱗を砕き肉を断っていった。

 

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! 殺すぅううう!!」

 

 一人の番外者が血濡れの肉切り包丁を振り上げ空へと豪速で振った。

 すると血が衝撃波と重なり水圧の刃と化し、未だ空にあった別のドラゴンに深い傷を与えた。

 狂っても玄武兵、体に染み付いたその技に狂いはない。

 

 ドームに開かれた空白は、ドラゴンを飲み込む口となった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 場面変わって再び地上のバレル少尉。

 

 

{ピーピーッ、ピーピーッ}

 

(ん? もうエネルギー切れ? 早すぎないかな?)

 

 

『(ザッ……)バカモノ!! なんて無茶な戦い方だ!! オーバーヒートまで起こしてるじゃないか! 貴様は一度戻れ! これは命令だ!!』

 

(えぇー……)

 

 心の底から不満な思いを抱くが、それを声に滲ませぬようバレルは通信に応えた。

 

「よろしいのですか?地上はあらかた片付けましたが空は……」

 

『かまわん、援軍が来た』

 

 

(援軍? もしかして……)

 

 

 その言葉に、バレルは六つの複眼のようなカメラで空を見る。

 

 

 そこには白緑の閃光を引く白き翼、鋼鉄の天使が映っていた。

 

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