皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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キャラ崩壊注意!

いろんな意味で!!


踊る会議、シドの追憶

 

 

ミリテス皇国首都“帝都イングラム”総督府会議室。

 

最上階にあり、大きな窓による解放感溢れる部屋は、ずんよりとした重苦しい空気に包まれていた。

 

そこでは武官、文官の各部門の責任者が集まり、長いテーブルに左右に別れて座っている。

 

彼らは皆、未曾有の状況を報告に来ていたのだ。

 

 

しかし現状、何もわかっていないことしかわかっていないため、必然的に――――――

 

 

 

「どうなっているのだ!!」

 

「私に聞かれてもわかるものか!!」

 

「だが原因として考えられるのはクリスタルの消失くらいだ、ペリシティリウムは何か知ってるんじゃないのかね?」

 

「それを言うなら軍部! アルテマ弾で消失した大地は、どこへ行くのかね?」

 

「……何が言いたい」

 

「アルテマ弾は“爆発”でも“分解”でもない“消滅”だ。なら、消滅した大地は質量保存からしてどこかに移動した、と考えるのが妥当」

 

「つまり、君らが後先考えずに発射したアルテマ弾が原因なのではないのかね?」

 

「あの時は! あれ以外方法が!!」

 

「ルルサスの出所も、対抗手段もわかっていたのじゃろう? せっかく納品したアレも使わずに自国にアルテマ弾を落とすとは……嘆かわしいのう」

 

「貴様らァ!!」

 

「だいたい私はアレ落とすの反対だったのよ」

 

「意見表明すらしなかった奴は黙れ!!」

 

「ごめ、話飛ぶけどレイモン大将、ドラゴン襲撃に中型艦載艇だして飛行型鋼機出さなかったのはなんで? 救援間に合ったからよかったものの、予想被害総額ヤバかったよ?」

 

「アルテマ弾の影響で電気系統が一時麻痺し、射出口が動かなくなったからだ。もっとも、本当にアルテマ弾の影響かは知らんがな」

 

「それは何か?! 我々が虚偽の報告をしたとでも!?」

 

「ふん、そう聞こえたなら謝ろう」

 

 

会議は今、タンゴ的サンバなロンドでコサック中。

 

 

それも仕方がない。

想像してもみてほしい。

 

朝起きて、爽やかな空気の中カーテンを開き朝日の代わりに宇宙空間が広がっている。

 

 

↑くらい訳が解らない状況に立たされているのだ。

会議に出席出来たことを誉めてもいいくらいだ。

 

精神の安定のために動き続けているだけかもしれないが。

 

 

と、そこへ重厚な扉が開く重い音が響き、全員がそちらを向く。

 

 

「…………」

 

 

無言で入ってきた壮年の男。

 

男は全身から覇気をみなぎらせ、ゆっくりと全員の顔を静かに見つめる。

 

この状況下でも微塵の動揺も見せないその男の姿に、集まった者達は安堵する。

 

 

皇国元帥シド・オールスタイン。

 

ミリテスを今までになく強化し導いてきた指導者。

 

シドはコツ、コツと歩き、窓際、長テーブルの主役の席の前に立ち、

 

 

再び、ゆっくりと不安げな顔の者達の顔を見渡す。

 

そして静かに目を瞑り、また、再び開く。

 

 

左手を軽く握り、中指と人指し指を立て左目の横に持って来て横ピースし、

 

 

「チョリィーッス!! ご存知シド・オールスタインだおー☆(キラッ)!!!」

 

 

 

 

 

静寂、いや、時が止まったのかもしれない。

 

誰も、何も言わず、ただ

魂が抜けたかのよう。

 

 

「…………あっ、蝶々」

「ということは夢なのだな」

「んだよ夢かよ」

「俺この後会議あるんだよね」

「奇遇ね、私もよ」

「やれやれ、とっとと起きねばのう」

「ルルサス騒ぎでゴタゴタしてましたからねぇ……ほぼ寝てないんですよ、ここんとこ」

「じゃ、起きたらもっかい集合で」

「「「異議なーし」」」

 

 

ぴっ、ガラガラガラガラガシャン!!

 

突然、扉の前にシャッターが降り、出ていこうとした者達の行く手を阻む。

 

 

振り返ると、シドが長テーブルの下に手をやりそこのスイッチを押していた。

 

そしてまたゆっくりと姿勢を戻し厳しい表情を浮かべ口を開く。

 

その瞳は、間違いなく怒りを宿していた。

 

「……突拍子もないこと、驚天動地なこと、目を疑うこと、頭がおかしくなったかと疑うようなこと、夢だと思ってしまうようなこと。どれも本当は己のすぐ隣にある」

 

一度区切り、

 

「はるか昔、第一次玄白戦争で玄武の騎士はこう言っただろう」

 

“何で、鉄の塊が空飛べんのん?”

 

「地を駆けることしか知らぬ奴等は目を疑っただろう」

 

 

また区切り、

 

 

「そしてまた、第二次玄白戦争で白虎の航空部隊は言っただろう」

 

“ハハハ、弓矢て”

 

「鋼鉄の翼が、弓などという原始的な武器に落とされたのだ。悪夢を見ていると思ったに違いない」

 

 

ここでまた区切り、シドは一同を見渡した。

 

「この二つの出来事には共通点がある……何かわかるか」

 

誰も、答えない。

 

その気迫に襲われ口を開くことさえ出来ない。

 

先のふざけた発言が本当に幻だったかのようだ。

 

ゆっくりとシドは拳を握り、答えた。

 

「認め難きを受け入れたことだ」

 

拳をテーブルに叩きつけ叫ぶ!!

 

「玄武の騎士は! 空を飛ぶ兵士の存在を認め前に進んだ!! すなわちクリスタルの武器だ!!」

 

「白虎の兵士は! 騎士の力を認め前に進んだ!! すなわち鋼機だ!!」

 

「さらに白虎はフィニスの時すら乗り越えた!!!」

 

「我々は! 今まであらゆる困難を受け入れ、相対し、乗り越え前進してきた!! 進歩してきたのだ!!!」

 

ギロリと見渡しながら更に叫ぶ!!

 

「それを何だ貴様ら! 今すべきは責任の追及か?! 原因の調査か?! 違うだろう!!」

 

「受け入れろ! 我々は今未曾有の危機に立たされている!!」

 

「だが諦めるには早すぎる! 混乱するには遅すぎる!! 状況は既に動いている! だがミリテスは、白虎は何も終わっていない!!」

 

その言葉を聞き徐々に、しかし確実に眼に力が入る官僚達。

 

「知を抱きし鋼の腕(かいな)よ! 今こそそれを振るう時だ!! 進歩の時代が来たのだ!!」

 

 

 

「「「「「オオォッ!!」」」」」

 

「「「「「ミリテス皇国に栄光あれ!!」」」」」

 

 

その喝采を聞きシドは満足そうに微笑する。

 

「では報告を聞こう、ペリシティリウム!」

 

「ハッ!! 火力、水力、風力、光力発電、全て順調に稼働中です。 また、クリスタルの消失前に貯めることが出来たエネルギーはドームの最低限のシステム維持分を除き、全ての工場の稼働電力5年分といったところかと……」

 

「5年か……その後代替エネルギーで動かすとしたらどうなる?」

 

「動かすこと自体は問題ないのですが、クリスタルエネルギーの電力への変換比率は1:10000ですので……」

 

「エネルギー不足は避けられない、か……糧食生産局長、食料工場は稼働しているか?」

 

「ハッ!! 問題なく稼働中ですわ」

 

「もし全クリスタルエネルギーを食料工場のみに使えばどのくらい持つ?」

 

「……15年、くらいかと」

 

「街の電力は代替エネルギーだけで賄えるか?」

 

「はい、暖房が要らなくなりましたからね……ただ代わりに暑いですが」

 

「ん? 暑い……水はどうなっている?」

 

「……そのことですが、シド様、水源が枯れました」

 

「なんだと!?」

 

「正確には消えました。汲み上げのポンプの先が途切れているのを確認しました。現在水道の循環システムは順調に稼働しておりますが、何かあった時に対応できるかどうか……」

 

「……わかった。レイモン大将、ドームの防衛システムは復旧したか?」

 

「ハッ!! 既に完了しております」

 

「通気機構は動いているのか」

 

「もちろんです。24時間体制で動かしております」

 

 

「うむ……………………………………………………………………」

 

 

長い沈黙。

 

目を瞑り黙考するシド・オールスタイン。

こうなると彼は何も反応をかえさなくなるため、皆黙ってシドを見つめた。

 

やがて、

 

「……………………うむ、纏まった」

 

そういって指示を下し始める。

 

「レイモン大将、軍を動かし帝都周辺を調べろ。空中戦艦を使って地形確認、町、人の有無もだ。もし居たら接触は慎重に行え。戦闘はなるべく避けろ」

 

「ハッ!!」

 

「ペリシティリウムは代替エネルギーを市街地に、クリスタルエネルギーを工場に当てろ。ただし食料工場の方を優先だ」

 

「水は最優先事項だ、新たに専門の部署を―――いや、水源探知機があったな、鉱山勤めだった連中に水源を発掘させろ。ただし、ここは火山地帯だ、マグマを堀り当ててくれるなよ」

 

「ハッ!!」

 

「この危機の発表は今日の午後だ。隠してもすぐにばれるからな。政権放送の用意を頼む」

 

「ハッ!!」

 

「……最後になったが皆、皇国のため、白虎のため、最後まで私と戦ってほしい」

 

「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」

 

一拍の間も置かぬ肯定の敬礼。

 

武官も文官も一斉に右拳を心臓の位置に置く。

 

「ありがとう……ミリテス皇国に!」

 

 

「「「「「「栄光あれ!!!」」」」」」

 

 

 

 

「あ、そうそう」

 

「はい?」

 

シドは退室しようとしていた皆にまた声を掛けた。

 

「今日、ここで見たアレは最高機密だ。もし誰かに喋ったら――――――」

 

 

パリン!

 

 

ガラスが割れる、軽く小さい音。

 

 

シド以外の全員が窓を見ると、そこには小さな丸い穴。

 

壁に目を向けると、煙を少し立てる小さな丸い穴。

 

 

「―――事故が起きるぞ?」

 

「「「「「「ハッ!!」」」」」」

 

 

再び、それはそれは美しい敬礼が為された。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

(何とか纏まったな)

 

 

官僚全員がいなくなり、静かになった総督室。

 

長テーブルの奥にある自分の執務机に座り、フカフカの黒椅子の手元にあるスイッチ、『液化強化剤噴霧装置』を切り室内の空調を動かす。

 

 

これを使いシドは部屋での演説を成功させたのだ。

まず頭を真っ白にし言葉が染み易くする。次に気迫を叩きつけ舞台に引きずり込む。最後に強化剤の興奮作用で纏めあげる。

 

 

 

 

それらを駆使して混乱を静めたシドは、

 

 

 

(やべーよやべーよマジどーしよう)

 

 

実はかなり混乱していた。

 

 

手を組み、目から下を隠すように(シ○ジ君のネグレクトしてる父親みたいに)して机に肘でもたれている。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ちょーマジやばい。原作崩壊にも程がある。

 

え? 口調おかしい? キャラ崩壊してる?

 

そりゃそうでしょ。

 

だって俺、転生者だもん。

 

前世で零式やって、鋼機に憧れを持ちながら大人になって、いろんな機械を造って70歳で死んだ。

 

死因はまぁ、仕事で兵器開発とか趣味で鋼機開発とかやってたら―――

 

 

勇者に殺された。

 

 

いやまぁ何言ってるかわかんねえだろうけどマジだ。

 

なんか、召喚されて、世界の戦争のもとが世界最高最強の軍需会社である我が社っつか俺で、死んでもらうってどんな超理論?!

 

と思ったから殺し返そうと頑張ったけど負けた。

 

我が社ごと潰された。

 

享年70歳。

 

ラストは勇者もろとも自爆。

『ふはははは!! 儂を倒したところで争いは終わらん! 争いこそが人の本質だからだ! 儂はそれの効率をよくしてやったに過ぎぬ!! 儂が消えても世界は、人間は争いを止めぬ!!!』

 

『それでも俺は、希望を捨てない!』

 

うん、やりたかったんだ。こういうの。

 

で全てが光に包まれる中、勇者の足下に魔方陣がポン。

 

たぶん転移陣。つまりル○ラ。キメラ○翼とか?

 

FFで例えろって? なんかあったっけ?

 

ま、いいや。

 

で、目が覚めたら赤ん坊。

 

テンプレ展開→あ、ここミリテスだ→俺シド!?→よしっ!原作ぶっ壊してやる!!→……あれ?崩壊しすぎ?←今ここ。

 

 

どうしてこうなった。

 

 

「神は余程人を弄ぶのが好きと見える」

 

あのクソババアに鎧ライダー、やっぱさっさとアルテマっとけばよかったか?

しかし確殺の自信が無かったからな。

 

……どうせ転生ならチートみたいなものがあればよかったのに。

 

出来たのはせいぜいドームと、クリスタルエネルギーによる作物量産とバクテリア食料開発、あとは鋼機の歴史を早めたくらいか。

 

 

ん?

 

前二つはお前じゃないだろって?

 

俺だよ、全部俺が建てた計画だよ。

 

 

よしじゃあ最初から語ろうか。

 

幼少期飛ばして少年期くらいから。

 

 

そう、あれは始めて皇帝に会った時のこと、俺はこう思ったんだ。

 

 

(ダメだこいつ)

 

 

一目瞭然、暗君だった。

こりゃカトルも見限るわ。

 

典型的な死にかけの独裁者の目をしていた。

納品の時とかによく見たことがある。

自分の無力さに絶望してて、それでも名を残そうとすることをやめられない、諦められない亡者。

 

このままこいつに任せてたらマジでミリテス終わる。

 

だから、まぁ軍人になって、人生経験活かして出世して、それから二つの計画書を野心豊かな技官の部屋に放り込んだ。

 

案の定、そいつは自分の案として皇帝に献上←こいつ暗殺されて皇帝に手柄横取りされる。

んで、実はその計画書、わざと使用するエネルギーを多目に書いた。

 

白虎クリスタルを疲弊させるために。

 

 

もちろんそれだけでなく、こっそり俺がC機関改造してアルテマ弾を造ったのが原因でもあるけど。

何でそんな簡単に作れるって?

おいおい、台所用品あれば核反応だって起こせるんだぜ?

軍に居れば言わずもがなさ。

あとはご都合主義とか?

 

ちなみにその試作品は“滅びしヴァイルの地”っていう僻地に不法投棄した。

 

んでクーデター→大成功。

憐れ皇帝は心労に倒れお隠れに、ってな。

 

そして新たな希望の光、シド・オールスタイン元帥指導のもと、クリスタルは元に戻り、生活水準が眼に見えて良くなりましたとさ。

 

その後は軍需会社の現役研究者兼元社長兼故・会長になった経験使って兵器開発、鋼機開発、代替エネルギー開発。

 

ついでに0組みたいなの育てて―――

 

うん、だいたいこんな感じか。

 

 

え? 転生者なら戦争を回避しろ? まずは市民を助けろ?

 

 

うん、それ無理。

 

 

代替エネルギーや食料生産工場だけじゃとても建て直せなかった。

白虎の現状は予想以上に酷過ぎた。

 

 

そして何より、玄武は目障りだった。

 

 

……俺は、道端で餓死者が転がってるのを見てようやく自分がゲームに入り込んだのではなく、この世界に生きているのだと実感した。

だから、ミリテスを、オリエンスで最も豊かな国にしようと思った。

その為にフィニスの時、世界の終焉を利用しようと決めた。

 

 

フィニスの時を乗り越えることさえできればクリスタルは無くなる。

 

朱雀は翼をもがれ、蒼龍は飼い犬に腕を喰われ、白虎は叡智を失う。

 

ただし、玄武は違う。

 

 

奴らは、強靭な肉体と、長き歴史に磨かれた技こそが武器。

 

成る程、強靭な肉体は衰えるだろう。

だがそれは何世代も後だ。

更にクリスタルに強化された武器は何時までも残る。

 

故に、消えてもらった。

 

 

後は時間との勝負だ。

 

C機関に貯蓄したエネルギーが切れる前に朱雀領ルブルムを滅ぼす!!

 

 

そしてその豊かな大地を、我ら白虎のものとする!!

 

 

↑というのが“創世計画”の内容だったんだ。

 

 

ちなみに、俺は審判者にされないよう超圧縮小型アルテマ弾を携帯していた。

 

いざとなったらクソババアと鎧ライダー、フィニスのクリスタルもろとも終生二度目の自爆を敢行する予定だった。

 

 

ホント、どうしてこうなったのやら。

 

 

……ん? このアルテマ弾、電池に出来ね? 原子力発電みたいな。

 

とりあえずやってみっかな。

 

 

ええと先ずは…………

 




というわけで、歴史改編の種はこんな感じ。
予想してた方もいるでしょう。

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