皇国の守護銃   作:キノコ飼育委員

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大演説、カトルの苦悩

 

 

ミリテス皇国巨大ドーム内。

 

皇国民は、固唾を飲んでテレビを見ていた。

 

一般兵たちはそれぞれの基地で、持ち場で、テレビやラジオで聞いていた。

 

佐官階級の者達は緊張した面持ちでその場に整列していた。

 

ミリテス皇国総督府前。

 

そこでは皇国元帥シド・オールスタインによる演説が行われていた。

 

 

 

『ミリテス皇国は今、未曾有の危機に立たされている』

 

『我々は、未知なる大地にいる』

 

『信じられないだろうことに、雪に覆われ、極寒の世界に住んでいた我々は今、火山の隣にいる』

 

『さらに月が二つも確認された』

 

『おそらくここは、オリエンスではない』

 

途端ざわめきだす人々。

 

シドは話の先を続ける。

 

『空の月だと言うのにこの気温、生まれてこの方感じたことの無いこの“暑い”という感覚こそがその証拠だ』

 

『我々の緻密な調査により、ドームごと別の場所に瞬間移動したことが判明した』

 

『原因は未だ分かっていない』

 

『そして……』

 

ここでシドは瞑目し、開く。

オリエンスに住まうものなら誰もが恐れることが、現実になったと。

 

『そしてさらに、クリスタルが消滅した』

 

あちこちから動揺の悲鳴が上がる。

 

整列する佐官達もざわつく。

 

そのざわめきが一旦収まるのを待ち、シドは再び口を開く。

『フィニスの時を越え、クリスタル自身が使命を果たしたが故だ』

 

『これにより我らミリテス皇国はクリスタルへの依存から立ち上がらねばならなくなった』

 

『貯蓄されているC機関は僅か20年分しかない』

 

『それまでに我々は生きる術を見つけねばならない』

 

『それが出来なければ……ミリテス皇国は滅ぶ』

 

『何もかもが滅ぶのだ』

 

 

静寂。

誰も、何も言わない。

もはや皇国そのものと言えるドームから音が消えた。

全皇国民が、全皇国兵が息をのみ、何も言うことが出来ないでいた。

 

それも仕方がない。

彼らにとってクリスタルエネルギーが無くなると言うのは、明日から電気がありませんと言われるようなものなのだ。

それも、20年後に必ず。

 

 

―――しかし、ここでまた、シド・オールスタインが口を開く。

 

その瞳に、確かな光を、炎を灯して。

 

 

『……だが諸君、20年前を思い出して欲しい』

 

その言葉に、皇国民の呆然とした頭が疑問符をあげる。

 

『20年前、空を覆い、皇国民全てを囲むドームなどあったか?』

 

『20年前、鉄を吐き出す工場から、食料を量産するなど誰が考えた?』

 

『20年前! 人の身で空に届き竜すら凌駕するなど誰が予想できた!!』

 

『20年前!! 大自然からエネルギーを取り出せるなどいったい誰が想像できた!!!』

 

『20年だ!! たった20年で我らミリテスはここまで進歩した!!』

 

そうだと、誰かが言った。

 

『長きに渡る因縁の玄武を滅ぼし! ルルサスの軍勢を粉砕し! フィニスの時すら乗り越え!! 我々は皆、アギトとなったのだ!!』

 

『この程度の困難などものの数にも入らぬ!!』

 

その通りだと誰もが叫んだ!

 

『皇国民よ! 約束しよう!!』

 

シドは拳を握り高々と宣言する!!

 

『10年だ! 10年でこの状況を打破することを!』

 

『そして誓おう!』

 

『ミリテス皇国の名を、永遠のものとすることを!!!』

 

最後に力強く叫ぶ!!!

 

『ミリテス皇国に、栄光あれ!!』

 

 

 

―――オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

 

―――ミリテス皇国に、栄光あれええええええ!!!!!!

 

 

 

ドーム全てが、歓声によって鳴動した。

 

兵士たちは拳を突き上げ、市民は安堵の息を吐いた。

 

こうして、シド・オールスタイン元帥による政権放送は皇国民を纏め上げ、大成功のもと幕を閉じた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

大歓声を上げる兵士たち、それに応えるシド・オールスタイン。

 

それらを冷たく眺めながらカトル准将は思う。

 

 

 

「…………フン」

 

 

茶番だな。

 

私の前には歓声を上げる兵士達がいる。

 

一際大きく叫んでいるのは……ピエット……お前よくここに潜り込めたな。警備兵としてだからおかしくはないが……。いや、人のことは言えんか。

 

私は今、シド元帥の左斜め後ろ、将官階級の席の端にいる。将官階級は数が少ないからな……。

 

しかしこういう式典は好かんな。

やはり私には前線の空気の方が合う。

 

それにしても10年か……もともとそのくらいがタイムリミットなのだがな。

 

いや、確かにアルテマ弾のエネルギーを再抽出すればそのくらい行くのかも知れんが現時点では分かっていない。

さらにその研究にもCエネルギーは使われるのだ、プラスマイナス0にならんとも限らんぞ。

 

おそらくペリシティリウムには箝口令と情報統制が敷かれているのだろうな。

 

だがその茶番が必要であるのもまた事実。

 

やはりあの男はこの国に無くてはならん人材か。

 

 

…………異世界、か。

 

アルテマ弾などというもので他国を滅ぼし、さらに自国を守ろうとした応報がこれか。

さすがの私も、雲を抜けたら月が二つあった時は目を剥いたぞ。

 

 

それにしても…………しかし……いや……まあ…………アイツに何と説明したものか………………………………フッ。

 

 

お手上げだ。

 

 

さすがに『原因不明で異世界に来て帰れるかわからない、国の意思的には帰る方法模索してないから帰るのたぶん無理』などと言えんしな……。

 

何故、私にこんな因果が……!

 

いや、確かに助けたのは私だが……しかし……。

 

 

よそう。

 

やはり直球でやるしかない!

 

白雷、出るぞ!!

 

 

 

式典が終わった後、私は足早に自分の執務室に向かった。

 

 

 

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