ビッキー「デュランダルが喋った」フィーネ「ファッ!?」 作:いつのせキノン
響視点で参りましゅ。
ひとつめ
真っ黒な衝動が押し寄せてくる。
力を放てと、立花響に強要する。
響がその呪いのような衝動に無意識に突き動かされて、あの赤いシンフォギアを纏う少女に向かって
このままではいけない。けれど、身体は自分の思い通りには動かせてくれない。
嗚呼、ダメだ、この力は――――!!
【おっと危ない】
「――――へっ!?」
……あ、あれ? 暴走が、おさまった……?
【ヤッッッッッハロォォォォォォォォォォォォォォッッッッ!!!! やぁやぁやぁやぁお嬢ちゃん!! おはよう!!】
「えっ、あ、おはよう、ござい、ます……?」
おはよう? なぜ? 反射的に返しちゃったけど……っていうかどっから聞こえるの!?
【声が小さいぞぅ!! 挨拶は大きな声で元気に!! 挨拶は絶対の礼儀だ、古事記にもそう書かれている】
「はぇ? ぅ? あ、ごめんなさい……」
古事記ってそんなこと書かれてるんだ……初めて知った……。
【はいそういう訳でもう一度!! おはよう!!】
「お、おぉぉっ、おはようございますっ!?」
【いい挨拶だァお嬢ちゃん。流石はオレを起こしてくれた子だネ!!】
お、起こしたぁ……?
どこから声がするんだろ……こんな元気な人司令とかしかいないけど全然違うし……。
「え、あの、誰ですか……?」
【おうおうおうおうおうおうおう!! 手元で喋ってるのにキョロキョロしながら探れると傷付くぞぅ】
「手元でって……これ、デュランダルじゃ……?」
【そう、オレだよオレ。あいあむどぅらんだぁぅ、どぅーゆーあんだすたん?】
あ、あいどんとあんだすたん……。
「――――ってぇ、いやいやいやいや!! なんで聖遺物が喋るんですか!? 幻聴!?」
【失敬な!! 昨今の聖遺物ぐらい喋るわい!!】
「聞いたことないよそんなの!! ああ、わたしってそんなに疲れてるのかな……この歳で自主的に精神科に通うことになるなんて……」
【なんで頑なに信じようとしてくれへんねん!! いいじゃん喋ったって!! 話し相手いないからすっげぇ寂しかったんだよぅ……ここは1つ、声が聞こえてる人ってことで雑談と洒落込もうじゃないの。ゆるふわ女子トークしよーぜ!!】
「どう聞いても女子っぽい要素ないんだけどなぁ…………って喋ってる暇じゃない!! まだ戦闘中!!」
そうだよ何で幻聴に律儀に返しちゃってるかなわたしってば!!
「おい、気は済んだかよ」
あっ。
「……み、見てました……?」
「戦闘中に1人でぴーちくぱーちく喋りやがって……なめてんのか?」
「あぅ」
ばっち見られてんじゃないですかああああああああああああああああああああああああ!!!!
めっちゃ恥ずかしい……顔が熱出した時より熱い……っ。
「いっ、今のは忘れて!! 一時の気の迷いっていうか疲れからかっていうか……とにかくっ、わざとじゃないの!! 変な声が聞こえて……!!」
「今更御託を並べんな!!」
ああああああ違うの!! ほんとなんだってばぁっ!!
【大変そうだねぇお嬢ちゃん。なんならこのデュラさんが力を貸してやろうじゃんか】
「ちっ、力を……?」
【そそ。取り敢えずこう、気合入れながら振ってみ? 斬撃飛ばすやつできるよ。カッコいいの】
「う? 言ってることよくわかんないけんだけど……」
【カーッ!! ダメだねぇお嬢ちゃん、ロマンが足りてない!!】
「そっ、そう言われてもぉ……!!」
「だぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!! いつまでもこっち無視して独り言ぬかしてんじゃねぇよ!!」
「へっ? うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?!?!?」
ひぃぃぃぃっ!? なんか刺々した鞭みたいなの飛んでくるんだけどぉっ!?
【やることが派手だねぇ。――――そう言えばお嬢ちゃんや。オレを使おうとしたんじゃないのかい? 久々に起きたからてっきりでっかいのぶっ放すのかと思ってたんだけど】
「今話しかけれてもよくわかんないって!! ……って、もしかして最初のあれを止めたのって……!?」
【いやはや、なんか嫌そうだったから違うのかなって思って干渉やめたの。だって嫌でしょー操られるの。デュラさんは詳しいんだ】
「そ、そうなん――ふぬっ、くぅっ!? とっ、とりあえず喋るのやめて避けるのに集中したいんだけど!!」
【むぅん、デュラさんを使えばすぐに戦闘とか終わるよ? ここら一帯蒸発するだろうけど。なんだろーね、あのでっかい棒とか金属の塊。煙いっぱい出てるけど】
「ダメ!! そうやって壊してばっかじゃ……!! あとここは工場地帯だから建物がいっぱいあるの!!」
【ふぅん、工場ねぇ。言ってることよくわからんわ】
「じゃあ何で聞いて――――あっぶなっ!?」
【おー、よく避けたね今の。流石だお嬢ちゃん。ところでなんだかんだでお喋りに付き合ってくれるお嬢ちゃんのお名前教えてくだせーな】
「名前って……っ、今、――――もうっ、立花響です!!!!」
【タチバナ・ヒビキ……なるほど。それじゃあビッキー。早速このデュラさんが
くっ、攻撃が飛んでくる……!!
「そんな、避け切れない……っ!?」
盾ッ、みたいなのは……ない!!
――――あっ、
「くっ、これなら――!!」
【は? 何して――――オオオアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァッッッッツアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッッッッ!?!?!?!?!? いったあああああああああああああああああああ!! いった!! アッ!! アツイ!! 痛い!! アーッツ!! いたっ!! アツェ!! アッ!! アッッッツ!! 当たったとこ痛い!! 痛いしアツゥイ!! しぬぅ!!!!】
「!? ごっ、ごめん!! つい、出来心で……!!」
「なァッ!? 直撃したのにビクともしてねぇのか!?」
【バカ!! バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカァァッッ!!】
「そんなにバカって連呼しなくてもいいじゃん!?」
【いきなり盾にされたら誰だって文句の1つや2つ言いたくなるに決まってんでしょうが!! おのれゴルゴム、ゆ゛る゛さ゛ん゛!!】
「ああああッ!? ごめんなさい謝ります謝りますから!! なんか変な力解放するの止めて――――――――あっ」
ひ、光が逆流するぅぅぅぅっ!?
う?
「こっ、ここは……!?」
「あらおはよう。随分とうなされてたわね」
「りょっ、了子さん……」
目を覚ましたら医療機器に囲まれたベッドの上だった。
まだすっきりしない頭でここに来る前のことを思い出そうとすると、真っ白な場面しか浮かんで来ない。
「あ、あの、了子さん、なにがどうなったんですか……?」
ちょうどベッドの隣に椅子を置いて座っていた了子さんにたずねてみる。
「簡単に言うと、デュランダルから溢れたエネルギーの衝撃波でもろとも吹き飛んだわ。そして爆心地にいた貴方は見事に気絶……。そのおかげと言ってはアレかもだけど、襲撃者はダメージを受けて撤退。デュランダルは盗まれずに済んだわ。ただ輸送作戦は失敗して基地に蜻蛉返りよ」
「……すみません、デュランダルと喋りすぎて、わたしが変なことしなければ……」
「……えぇ、デュランダルとしゃべ……えっ?」
……あれ?
「……あのデュランダル、喋ってましたよね?」
「ファッ!?」
ふぁ?
「――――んっんんっ。失礼。も、もう一度お聞かせ願えるかしら?」
「え、ああ、はい。あの、変なこと言ってるかもですけど、わたしの気のせいじゃなかったとしたら、デュランダルが喋ってたんです」
幻聴じゃなければ……。
「……にわかには信じがたいわね」
「結構大きな声で喋ってたっていうか、叫んだりもしてたんですけど……聞こえなかったんですか?」
「残念ながら、私はさっぱり。確かに貴方がすごい独り言を言ってたのは戦闘に紛れて微かに聞こえてたのだけど」
え、じゃあやっぱり幻聴……? わたし独り言叫びまくる変な人扱いになるんじゃ……。
「……もしかしたら、デュランダルに接触したから、なのかもしれないわね。肉体的な異常はないから確認のしようがないのだけれど。またデュランダルに触ってみるのが確認としては一番早いのかもしれないわ」
あぁ、了子さん優しい……っ。ちゃんとわたしのことを考えてくれてるなんて……!!
「取り敢えず、回復したら時間を見つけてデュランダルに接触してみると良いわね。私の方でも調整して立ち会ってみましょうか」
「あっ、ありがとうございます、了子さんっ!!」
「どういたしまして」
病室を出て行った了子さんの背中を見送ってため息。
いやはや、まだ精神科は時期尚早だったみたいだ。よかったよかったぁ。
【安心しきってるとこアレだが、そろそろ喋ってもいい?】
「どぉうわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっはぁぁぁっ!?!?!?!?」
だ、誰!?
【へいへいビッキー、あんだけ言葉交わしておいて誰ってのはないんじゃないのぉ?】
声がする方は自分の胸元。けれど、入院着の下には胸の傷があるだけ。
「え、どこ……もしかして、デュランダル……?」
【そうよー、皆のアイドルことデュランダル様やでー】
ぬぬぬぬぬぬ、とか自分で言いながらなぜわたしの胸の傷からデュランダルが!?
「ちょっ、ちょいちょい待って!! あっ、胸がっ、貫かれてるゥッ!?」
大丈夫じゃない!!
【傷付いてねぇから安心しなって。ちょっと溶け込んでるだけだから。全然痛くないでしょ?】
……あ、でも確かに痛くも何ともない。異物感もないし……。
胸からにょきっとタケノコみたいに刃の先っぽだけ出してるデュランダル。違和感がすごいからいっそのこと全部出てきてくれた方が嬉しいんですがそれは。
【うむ、誰もいないみたいね】
そう言ってデュランダルはわたしを傷つけることなく、胸の傷のところからするりと抜け落ちた。掛け布団の上にはあの大剣デュランダルと同じ形・模様のナイフくらいの刃が転がる。
「……ちゃっちくない? というか、なんでわたしの胸の中に?」
【ちゃっちいのは仕様ぜよ。いわば分身って感じでね。大本は二課に管理されてるよ。しかし、せっかく喋れる子が現れたんだから傍にいたいなーって思うのは普通っしょ? だから人間的に言えば感覚共有できる小さいハード創ったワケ。ビッキーの身体に潜れるのは……君らの言葉で言えば適合者って言葉が一番しっくりくるか。ガンちゃんには悪いけど相乗りさせてもらってるのよ】
え、えぇ……? じょうほうがきゅうにいっぱい……こんらんする……。
「よ、よくわかんにゃい……」
【猫ビッキーにわかりやすく噛み砕けば相性だよ相性】
「そっか、なるほどぉー……ってなるワケないじゃん!?」
【おぉう。どしたの急に。デュラさん大声でびっくりしちゃうよ】
「全然わからないこと尽くしで混乱してるんだよ!! もうちょっとこう、高校生にも優しい言葉で!!」
【これ以上ないくらいにわかりやすくしてたつもりなんだが、ビッキーはおつむ大丈夫?】
「失敬な!! これでも立派な高校一年生ですけどぉ!?」
【“コーコーイチネンセー”とやらどういう称号なのかは知らんけど、ビッキーがちょっと抜けてる子ってのは流石のデュラさんもわかっちゃったよ】
このナイフ失礼にも程がある!!!!
【まー落ち着けって。今現在、この世にはデュランダルが2つある。ビッキー所属の二課が保管するデュランダルと、そっから伸びた末端デバイスの
「それはまぁ、何となくわかったんだけど……なんでデュランダルは意志を持ってるの? 完全聖遺物だから?」
【最初に言ったやん、「昨今の聖遺物ぐらい喋るわい」って】
……あー、そう言えばそんなことを言ってた気がしなくもない……。
「で、でも、わたしのガングニールは喋らないし……翼さんとかも天羽々斬が喋ったなんてことは一言も……」
【あー、そういうこと。そりゃあ
そうなんだ……じゃあ完全聖遺物なら基本喋る、と……。
【それに、例え喋ってても聴こえるのは適合者ってやつだけだ。だから、オレの声が聞こえてるのもビッキーだけってこったな】
「そっ、それって、わたしが人前で完全に独り言言ってることにならない!?」
何それ傍から見たらただのイタい人じゃん!! 恥ずかしい……。
【あーでも好き好んで喋るのはオレくらいだと思うぞ?】
「……? なんで?」
【そりゃあ、聖遺物ってのは道具だ。その存在意義は所有者の意思に従う事であり、サポートくらいはするけどオレらが所有者に意見するってのは違うだろ】
…………そう、なのかな……。
「じゃあ、デュランダルは喋るの好きなの?」
【好きっつうか、もうそういうモンとして確立されちまってるって方が正しい。デュランダルの特性は共鳴によるフォニックゲインの生成だ。それ相応の量を扱うし、そんでもって生成するエネルギーは純粋で莫大だからな。あらかじめある程度の志向性を持たせたモンにしてから創らねぇと暴発しちまう】
「? どういうこと?」
【エネルギーを定義するのさ。デュランダル自身が強い自我を持つことで、フォニックゲインはデュランダルのモノとなる。オレの自我の元に置くことで、火薬を保護するようなものさ】
「じゃあ、デュランダルが自我を持たなかったら?」
【そうさなぁ……近場にいた奴に生成されたエネルギーが流れ込んで、そいつが破裂するんじゃねぇか? もしく内側から溶け出すとか】
おぉう物騒だな!! とか言ってケタケタ笑うデュランダルに、わたしは肝を冷やした。
悟ったのは、初めてデュランダルを握ったときに流れ込んできた黒い感情。あれはわたしを突き動かす破壊衝動と、膨大なエネルギーだったんだ……。
もしあのままエネルギーを流し込まれていたら……その先を想像して鳥肌が立った。
【っと、笑ってもいらんねぇかい。そういやビッキーには最初、まんまエネルギー流しちまったからなァ。そこはすまなんだ、久々に歌が聞こえて舞い上がっちまった】
デュランダルは声音を真剣なものにして謝ってきた。なんというか、機械的な切り替えだと思う。そこがわたしみたいな人間と、創られた自我の違いなのかもしれない。
「まぁ、そこは結果オーライってことで。わたしも無事だし……無事……うん?」
無事? わたしが?
「――――いやいやいやッ、全っ然無事じゃないじゃん!! 最後のアレは何!? 急に爆発したけど!? アレのせいでわたし気絶してたし!!」
【腹いせに決まってんじゃん。デュラさんを盾に使っておきながらよくもまぁビッキー言い切るねぇ】
「お腹ないのに腹いせって……」
【だまらっしゃい!!】
「ひっ!?」
【危ないのはわかるしデュラさんが頑丈なのもわかるけどねぇ!! 痛いんだよ!? その辺り考えて扱って欲しかったなァ!! ぷんぷん!!】
なんか思いっきり意見されてる気が……道具の存在意義とはいったい……うごごご……。
てかぷんぷんって……。
【――――ふぬ、足音。ビッキー、誰か来たぞ】
「!? まずいっ……デュランダル、どこにしまえば……!?」
【さっきみたいに胸に入れてよ。ぬるっといくよ?】
「もうちょっと言い方どうにかならないのかなぁ!?」
【ほれ、はようはよう】
「ぬぅぅ!! イラつくけど仕方ない……!!」
ええいままよ……!!
掴んだナイフ状のデュランダルを胸に当てる。
と、抵抗もなく水に沈み込むようにデュランダルは胸の中に溶けて行った。同時に、声も聞こえなくなる。
……そっか、取り出さないとデュランダルは喋れないんだ……。
…………これ、ずっとしまっておけば別に五月蝿くならないのでは……?
【変なこと考えてるとシリアスな場面で飛び出すゾ】
「ちょっ!? 出てこないでってば!?」
「立花さん? どうされました?」
「へぇあぇッ!? いいいいいいえいえいえいえいえ!! なんでもないですっ、はいっ、なんでも!!」
「? そうですか……」
危うく看護師さんにバレるところだった……。
もう、次から色々と話し合っておかないと……師匠にも報告する必要ありそうだし……。