ビッキー「デュランダルが喋った」フィーネ「ファッ!?」 作:いつのせキノン
【
いざカ・ディンギルが起動したら急にメタ発言をかましてくれちゃったよデュラさん。せっかくシリアスだったのに何でこういうこと言うかなこのペーパーナイフ……。
時刻は既に夜。わたしと翼さんとクリスちゃんの前には了子さん――ネフシュタンの鎧を纏ったフィーネがいる。
なんでも了子さんは過去に翼さんの歌によってフィーネに魂を塗り潰されてしまったとのこと。
その全てはカ・ディンギルを完成させるため。今まさに
カ・ディンギルとは、月を破壊するための砲台。デュランダルをエネルギー生成装置の核として起動、そのエネルギーをもってして、月を破壊する。月の破壊の先――そこにあるのは、バラルの呪詛を解呪すること。人類の相互理解を阻む、かつて創造主と呼ばれたものが作り上げた統一言語を消失させる惑星型装置。
…………反芻してみたけどよくわかんない……。
【ははぁ、なるほどなァ。うーん……】
「どしたのデュラさん。まだシリアスをぶち壊すの?」
【シリアスブレイカーなデュラさんはお喋りするか搭載機能を使うくらいしかできないのでね。序盤から飛んでクライマックスまで喋らなかったんだからええやん?】
「状況的にわたしデュラさんと喋れる余裕なくなりそうだからスルーしちゃうよ?」
「おいバカ。なにまた独り言を……」
「立花。この状況でそれは流石に……」
「アッ、またイタイ人に思われてるゥ!? デュラさんこれ以上わたしをダメ人間にするのヤメテ!! これから仕事だから!!」
「ああ、そう言えば……デュランダルが喋るなどと世迷言を報告していたなァ? 結局治らず終い……精神でもやられたか?」
【すごい言われ様。ビッキー嫌われ過ぎじゃない?】
「知らないよォ!!」
誰のせいだと思ってんの!?
「……ハッ、まぁ騒ぐほどのことでもない。さっさと事を成すとしよう。カ・ディンギル、起動」
漫才してる間にカ・ディンギルにエネルギーが灯って光り始めた。
あー、あれ見た目だけでわかる。やばいやつだ。
【おっほ。エネルギーガンガン生成してるねェ】
「デュラさん、わかるの?」
【わかるも何もデュラさんの本体だしなぁ。起動しちゃってるから誰でも使えるし。あのフィーネちゃんとやら、デュラさんから創ったエネルギー全部カ・ディンギルに吸わせちゃってるねぇ。あと1分くらいで満タンになるんじゃない?】
ど、どうすればいいの……。
【私にいい考えがある!!】
「とてつもなく不安になるセリフだけど一応聞かせて」
【ビッキー、デュラさんは何だと思う?】
「ここでクイズ……!?」
【ささ、答えてみなさいな】
「ぬ……デュラさんは、デュラさん……え、どゆこと?」
【ぬーん、そういう哲学的なことじゃなくてもっと根本的なことよ、ビッキー。デュラさんは何でできてるでしょうか、的な】
「デュラさんは……デュランダル、完全聖遺物、ペーパーナイフ……」
【最後のは聞かなかったことにしておいてやろう。その特性は?】
「エネルギーの無限生成、励起状態なら誰でも操作可能……あと紙が切れる」
【ブレないビッキー好きよ。で、既に対抗策は答えたな】
「え、いつ? エネルギー生成は関係ないし、紙が切れて、誰でも使えて……」
……誰でも使える……?
「……デュラさん、誰でも使えるんだよね。今ここで、わたしが使うことだってできるんだよね?」
【いぐざくとりー】
だったら!!
胸からはみ出していたデュラさん取り出す。
「デュラさん。今すぐエネルギー生成を中断して!!」
【あいさー、お安い御用で】
生返事のような声が返ってきた――――直後、カ・ディンギルから聞こえていた稼働音が徐々に小さくなって、光もおさまっていく。
「な、ァ!?」
「え、何だ!?」
「立花、今のは……、」
ほ、ほんとに上手くいった……!!
「すごいよデュラさん、やっぱりただのペーパーナイフじゃなかった!!」
【最初っから言ってるじゃんよォっ!!】
「貴様ッ、何をしたァッ!?」
「っ!?」
あぶなっ!?
【ぎゃああああああ!! バッ、痛い!! オレで弾くなバカァ!!】
あ、ごめん、咄嗟に……!!
【何で2回も鞭でぶたれにゃならんねん!! 1話でもやったじゃん!!】
「でもデュラさんが固いおかげで助かるんだよね……!!」
鞭を回避。
わたしも翼さんもクリスちゃんもシンフォギアを纏って
「クソ、なぜだ!! なぜデュランダルが制御を受け付けない!?」
「デュランダルなら、わたしが使ってるからですよ!!」
「あり得ない!! デュランダルの制御権は完全に私が掌握していた!! 外部から干渉などは――――まさか……!?」
と、
「その手にあるソイツは……っ、ソイツがっ!!」
あ、気付かれた。
【いやぁ流石はフィーネちゃん。状況把握が早いねぇ】
「言ってる場合!?」
【まぁまぁビッキー落ち着けって。このデュラさんが彼女の手に渡ったら、流石にもう止められんぞ? デュラさんは道具だからネ、持ち主の意向に従うまでよ】
「じゃあしばらく胸に潜るってことは!?」
【ご都合主義的なこと言うけど、それだと制御権はまたあっちに移るよ?】
「ですよねー!!」
「立花!! 取り込み中らしいとこだが、カ・ディンギルのチャージを停止できるのか!?」
「できますよ翼さん!! わたしの片手が塞がることになりますけど」
「できるんなら最初からやれよ!!」
「ついさっき知ったんだけど!?」
「この前から時折手に持ってぶつぶつ言っていたので気になっていたが……ソレでカ・ディンギルを止めているのか」
「はい。だからこれが奪われたら今度こそ月が破壊されちゃいます」
「じゃあソイツが奪われる前に、あのけったいな塔をぶっ壊せばいいんだな」
「シンプルに言えばね!!」
「わかった、独り言の件は後でじっくり聞いて精神科にやるから今は目の前に集中しろよ!!」
「独り言じゃないってば!?」
翼さん、クリスちゃんと肩を並べて
3人で視線を交わす。それだけで意図は伝わる。……自分でもちょっとカッコいいって思っちゃったよ。憧れちゃうよねこういうの。翼さんとは何となくできてたけど、クリスちゃんともできるとすっごく嬉しかったり。
【ほう、即席コンビネーションか。大したモンじゃねぇの】
でしょ、すごいでしょ!! でも今歌ってて対応できないから黙っててほしいなぁ!!
【あ、歌ってて対応できないのね。うん、じゃあデュラさんが喋り続けてあげよう!! ――――王の話をするとしよう】
あ、それ多分ネットとかで散々見たことあるやつだ!!
【とある王に仕える騎士がいた。……あっ】
まだ序盤なのに急に詰まってるよデュラさん。
【これ王様の話じゃないわ、騎士の話だわ】
王じゃないんかーい!!
【そう、騎士だ。お前なんで鎧着てんの? って感じに頑丈な身体してんの。槍とか剣とか鎧貫通すんのに身体には刺さらないとかいうおかしな身体ね。でさー、アイツってば又聞きの女王に「惚れた!!」とか言って勝手に旅し始めるわ、恋が実らないかと思えば全裸で発狂するわでそれはもう大変でね】
間奏。
「その話長い?」
【まだ人物紹介しかしてない時点で察して?】
なんでもっと素直な自我を入れなかったんだろう……。
【で、結構じり貧だけどどうする?】
そう、
かくあるべきは、陽動。
翼さんと合わせて一気に距離を詰める。ヘイトがわたしに集中する隙に、翼さんがとにかく切り込んで、わたしが一定の距離でとにかく逃げ続ける。
「ダブルでお駄賃くれてやるッッ!!」
フリーのクリスちゃんがすかさずカ・ディンギルへ向けて大型ミサイル2発を射出する。
「させるかァッ!!」
それでも
――――そして、ここからッ!!
「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!!」
わたしがカ・ディンギルを叩くために!!
鞭はミサイルを落とすために一本使っていて戻すまでにラグがある。だから、警戒する鞭はもう片方だけ。
けど、それは翼さんが何とかしてくれる!!
「行くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「させんッ!!」
背後で固い物同士がぶつかり合う音をBGMに腰部ブースターを点火。
最速で、最短で、まっすぐに、一直線に!!
「稲妻をぉぉぉぉぉぉぉ握り潰すようにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッッ!!!!!!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!??」
拳の一撃をォッ!!
「――――撃つッッ!!!!」
わたしの一撃が、カ・ディンギルに炸裂する。
固い物に当たった感触は一瞬。次の瞬間には轟音と共にカ・ディンギルが崩壊する音が鼓膜を叩いた。
【ヒューッ!! やるじゃんビッキー!!】
「うん!! これでッ、月の破壊は阻止したッ!!」
【――――ところで、ビッキーって飛べたっけ?】
「……飛ぶ?」
【足元見てみ?】
手の中からデュラさんに言われて足元に視線を動かす。
――――足場が、ない。
「どうしようデュラさん、わたし飛べない!!」
【知らんがな】
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ落ちるううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
次回、エピローグ