とある場所において

?「転生するなら、その世界で最も強くなりたいです」

神「いいよっ!」

?「やったー!!……あれ、アイエェエエ!?ナンデ、ナンデカイジュウ!?」

導入はこんなもん。


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1体目:『あいとゆうきのおとぎばなし』と『公害怪獣』

日本近海で最も深い湾。

 

伊豆半島先端にある石廊崎と御前崎を結ぶ線より北側の海域『駿河湾』の海底に溜まったヘドロの上で産声を上げた“おたまじゃくしのようなナニカ”はしみじみと思った。

 

【生きているって、素晴らしい】と。

 

 

 

 

我輩の名前はヘドラ。

 

怪獣王映画に出てくるシリーズ最凶の敵役怪獣である。うむ、強い方の『最強』ではなく、恐ろしいという意味での『最凶』なのであしからず。

 

とはいっても、我輩は前世が人畜無害の人間だった記憶があるので、人間を殺すのも殺されるのも嫌なのでこうやって日本列島近海の海底をのそのそ移動してヘドロを食い漁って生活している。

 

我輩としての意識を取り戻したのは落下しはじめた隕石状態の時のこと。

 

摩擦熱で真っ赤になる中、燃え尽きて死んでしまうんだと泣き叫んだのは黒歴史だ。何とか日本近海に落下して肉体を得て生を実感していたら、まさかの怪獣転生。長いこと海底で泣き喚いたのはいい思い出だ。

 

物は考えようだとポジティブに生きることにした我輩は少しずつ分裂と増殖と合体を繰り返して大きくなっていった。ま、さすがに日本に上陸しようとは思わなかった。

 

下手に陸地に行って戦車でバカスカ撃たれたり、冷凍光線を受けてカチンコチンになったりするのは嫌だし、魔女狩りのように燃やされるのなんて想像したくないし、何より怪獣王と鉢合わせなんてしたら『まっはすいんぐ』されて寿命がマッハだ。……まっはすいんぐだけに。

 

そう思っていたのだが、我輩の幼体の一個体が東京湾から姿を消した。

 

どうやら研究者に捕獲されてしまったらしい。テレパシー的なナニカで助けを求める一個体を救う為に日本海側にいた我輩は急いで引き返してきたのだが、東京湾のどこから上陸しようかと迷っている我輩に捕獲された一個体から連絡が来た。

 

【いえすろりーた、のーたっち】。

 

意訳すると、「危険はない、むしろ楽園」。

 

どうやら、我輩の幼体を捕まえたのはウサギのようなカチューシャをつけた銀髪ロリっ子だったらしく、水槽に入れられて定期的に餌ももらえるところで成長を観察されているとのこと。カエルか何かと勘違いされているようだ。

 

捕獲された一個体に危険はないことを聞いた我輩はまたヘドロを採取するために海底へ潜ろうとしたのだが、その途中見慣れない生物の残骸が放置されていたのでとりあえず体を触手のようにして触れてみた。

 

結構毒素も強くなってきたかなと思っていただけに、触れても融けないで存在している生物の残骸の姿にむしゃくしゃした我輩は、触手の先端をフォークのように尖らせ、突き刺したあと大きく口を広げて(※イメージです)丸ごと取り込んでやった。そして体内で強力な酸と毒を精製し、その生物の強固な装甲もまとめて跡形もなく消し去ってやった。それで溜飲の下がった我輩は鼻歌混じりで海底に向かったのだった。

 

 

 

◆社霞◆

 

【うっしゃー、わがはいのかちー!】

 

【わがはいにかかれば、けせないせいぶつなどおらんのだー】

 

【へどろ、うまうま】

 

水槽の底の方で身動きしない大きなおたまじゃくしから無意識に発せられる言葉。その言葉を日記帳に記す私。

 

軍人の人がたまたま生物の存在できない死の海となった東京湾を散歩していた際に、見つけ捕獲されてきたこの子はまず食べられるかどうかを判別するために研究者であった香月博士の下へ持ってこられました。

 

最近疲れていた博士はおもむろにメスを取り出して突き刺したけれど、素早くメスから手を離しました。どうしたのだろうと見てみれば金属性のメスはジュウジュウと白い煙を上げながら融けていっていたのです。「こんなもの食えたもんじゃないわ」と興味を無くした博士の背を見ていた時でした。

 

【ぎゃー!ここにいたらころされる!おおきなわがはい、ここだー!たすけてー!へるぷみー!】

 

【とうきょうのどこかだー!たすけてー、しにたくないー】

 

と、頭を劈くような悲鳴と一緒に声が聞こえてきたのです。しかも、自分よりも大きな仲間に助けを呼び、相手もそれに答えたような言葉でした。

 

私はこの子を置いて去ろうとしている博士を呼び止めて、この子を飼育したいと申し出ました。すでにこの子に対して興味を失っていた博士は面倒くさそうにしながらも、大きな水槽と魚を育てる上で必要なものを一式、揃えてくれたのです。

 

研究室から私の部屋へ移動したこの子は最初、訝しげに私を観察していました。しかし、しばらくすると私に対して警戒を解いてくれて、終いには大きな仲間に助けに来る必要はないと告げていました。

 

しかし、【いえすろりーた、のーたっち】とは一体、どんな意味を持っていたのでしょうか?

 

そういえば、観察していて気付いたことなのですが、最初は一匹だったこの子はある日2体に分裂し、その翌日にはまた1匹になっていたのです。が、大きさが倍になっていました。どうやら、この子は分裂と合体を繰り返すことで大きくなる個体だったようです。

 

 

 

当初の目的通り食べられる魚だったら、夢のような生物だったのに残念で仕方ありません。

 

 

 

 

この子の生物名が分かったのはそれから暫く経った後のことでした。

 

両生類のカエルの幼体のおたまじゃくしと聞いていたので、いつになったら大きなカエルになるのだろうと観察していた私の部屋に白銀さんが遊びに来てくれた時のことです。部屋の天井と同じ高さほどある巨大水槽の底の方でじっとしているこの子を見て、白銀さんはギョッとした後で水槽にへばりついて、踵を返して部屋の外へ出て行ってしまいました。

 

遊んでくれるものと期待していた私はへにゃりとウサ耳と垂らし、しょんぼりと肩を落としていたのですが、白銀さんは香月博士を連れて戻ってきました。

 

「先生!こいつが何物か分かっていて霞に飼育させているんですか!?」

 

「はぁ?何よ、ただのおたまじゃくしでしょ。私は忙しいのよ」

 

「違います!こいつは【公害怪獣ヘドラ】の幼体です!なんで映画の中の怪物がこの世界にいるんだよっ!」

 

「ちょっと、白銀。意味が分からないわよ」

 

「夕呼先生、こいつは本当に洒落にならない怪物なんですよ!分裂と増殖と合体を繰り返して、際限なく大きくそして強くなっていく。俺が知識として分かっているだけでも、人間の技術では倒せない。というか、BETAとの戦いで疲弊してしまったこの世界の人類ではどうやっても倒せない化け物なんです」

 

白銀さんは『終わった……』と壁に力なく凭れ掛かりずるずると座り込んだ後、がっくりと項垂れてしまいました。リーディングしなくても、深い悲しみに囚われてしまったことは分かります。

 

その時でした。香月博士にメスを刺された直後のように、この子の焦った声が聞こえてきたのは。

 

【ふおぉぉ……。やべぇ、わがはいたちのことをしるにんげんがあらわれるなんて】

 

【ろりっこがみられなくなるのはつらいけれど、もうそろそろしおどきか?】

 

【“ほんたい”はいやがるだろうけれど、“じゃくてん”をしられるまえにころさなければならない】

 

水槽の底の方で大人しくしていたおたまじゃくしさんが忙しなく動き始めたのを見て、あまり時間が残されていないことを察した私は意を決し話しかけました。

 

「『あの、私とお話しませんか、おたまじゃくしさん』」

 

【ほえ?】

 

私は実験の過程で与えられた能力を使っておたまじゃくしさんと会話を試みました。香月博士と白銀さんが後ろの方で固唾を飲んで見守っています。

 

【わかるのかい、わがはいのことばが?】

 

「『はい、聞こえていますし、分かります。以前、香月博士にメスを刺された後、必死に助けを呼ぶ声が聞こえていたので助けたんです』」

 

【おお、あのときか。……すまないな、かえるではなくて。たのしみにしていたのだろう?】

 

「『そうですね、少し。それはともかく、私たちは貴方たちと交渉したいです。白銀さんが知っている貴方たちの弱点を生涯に渡って隠し通す代わりにお願いがあるんです』」

 

【おねがいとはもしや……べーたとやらのことか?】

 

「『はい。BETAの親玉を倒して欲しいんです。後は人類で何とかしますので、お願いします』」

 

 

 

 

 

トラックの荷台におたまじゃくしさんを載せて、かつてこの子が発見された東京湾に来ました。

 

生を感じられない死の海。昔はずっとずっと綺麗な青色だったらしいのですが、私がそれを見ることはこの先、数十年はありえないことらしいです。その時、おたまじゃくしさんの声が聞こえてきました。

 

【おお、きたきた……】

 

おたまじゃくしさんの言葉を聞いた私がじっと沖の方を見ると海面から、ごぽごぽと白い気泡が湧き上がり、その直後大きな大きな怪物が姿を現しました。情報としておたまじゃくしさんが成長した『公害怪獣ヘドラ』を知る白銀さんは、『最低でも原作の5倍はでけぇ』と両手で顔を覆って泣いていました。

 

【とりあえず、かしゅがるってところにいたやつらはわがはいがぜんぶとかしてきた。で、そこからかえるとちゅう、おいしそうなたいきおせんぶっしつやほうしゃのうぶっしつがただよっていたからかたっぱしからたべてきたから、ちかいうちににんげんもすめるようになるとおもう、ってさ】

 

大きな方の言葉を翻訳してくれたおたまじゃくしさんが荷台から飛び降りて東京湾の海に潜りました。その直後、顔を出したおたまじゃくしさんは言いました。

 

【うみはもうすこししたらきれいになるよ。ゆうがいぶっしつはすべてわがはいたちがたべてしまったからね】

 

【べーたもわがはいたちにはかなわないということがわかった。うみのそこをいどうするのであれば、わがはいたちがとかしてしまうまでのこと。けど、おぼえておくといい。このうつくしいあおのほしであるちきゅうをよごすのであれば、わがはいたちはかならずげんきょうであるにんげんをひとりのこらずころすそんざいであるということを】

 

【できれば、きみがそのなかのひとりにならないことをいのっているよ、やしろかすみ】

 

そう告げて、おたまじゃくしさん、いえヘドラは私たちの前から姿を消しました。

 

後に反応炉を調査した結果、BETAの指令系統が箒型であることが判明し、その頂点がすでになくなっていることを知った人類は新たな戦術、新たな兵器を駆使してBETAに打ち勝つことが出来ました。

 

しかし、宇宙にはまだまだBETAがいます。これからも私たちの戦いは続くのです。

 

 

 

 

まぁ、地球の海に落ちたBETAのユニットは展開する間もなく、尽く溶かされてしまっているようです。この青く美しい水の惑星が好きな公害怪獣の手によって。

 


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