能力者学園 -Abilitist High School―   作:ふじっちょ

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第1話 能力者学園

 

—テラス—

 シュウは1年上の先輩、女形(めがた)トクサブロウと食堂のテラス席でお昼を食べていた。この学園は食堂の隣に数十のテラス席が併設されていて、春の天気の良い日ともなれば生徒達でいつも繁盛(はんじょう)している。

 シュウは生姜焼き定食を、トクサブロウは天丼(単品の唐揚げ付き)を食べていた。シュウの後ろの席では、女子6人がわいわいがやがや楽しそうに話していた。たぶん1年生だろう、とシュウは背中越しに思った。声に入学したての初々(ういうい)しさというか、ワクワク感の様なものがあった。シュウは、自分にはこういう思い出がなかったなぁと不意に思った。というか、シュウの学年はシュウ以外みんな精霊の操り人(スピリットマニピュレーター)で、しかもみんな女子だった。

 しばらくして、シュウの後ろの女子達が急に騒ぎ始めた。

 「おい!!神田!!、後ろ見てみろ」

トクサブロウの言葉にシュウは何事かと思って後ろを振り返ると、さっきまで談笑していた1年生と思われる1人が(つる)というか、(いばら)というか緑色をした太い枝状のものを自由自在に空に伸ばしていた。というか、これは彼女(このこ)の意思というより()()の意思といった方が正しいだろう。彼女は精霊の操り人で、まだ精霊と自分を上手くコントロールできないのだろう、とシュウは咄嗟(とっさ)に思った。それが証拠に、彼女は空高く伸びた1本の蔓の先端で“(それがし)”という女性が普通使わない1人称を使っていた。蔓は所構わずあちこちから、ニョキニョキと空高く伸びている。彼女と一緒にいた女子達の場所を中心にして。

「先輩!!先生を呼んで来て下さい!!」

「分かったぜ!」

 トクサブロウはシュウと違って特殊な能力(アビリティー)を持たないでこの学園に入学してきた。いわゆる、能力を持ちたくて入学してきた生徒だった。しかし結局、能力は何一つ習得できなかった。

 「火炎放射(フレームレディエーション)!!」

 シュウは(ふところ)から短い(つえ)を取り出してそう詠唱(えいしょう)した。すると、杖から炎が()()して辺りから伸びている蔓を燃やしていった。その時、空を飛んで彼女の頭をポンと軽く(たた)いて正気(しょうき)に戻した女子()がいた。その女子()は、正気に戻ってまっさかさまに落ちる彼女を拾い上げた。シュウの魔術よりも先に。

 「あとは頼みましたよ~」

 シュウはその女子に手を振った。その時、先生が2人こちらに向かって血相抱えて来た。

 「神田、おまえが収拾(しゅうしゅう)してくれたのか?」

 シュウの背後から女性の低い声が聞こえた。

 「はい」

 シュウはそう言いながら振り返った。そこには1年e組担任の槻木(つきのき)先生と、同じく1年e組副担任の錠前(じょうまえ)シンフォア先生、それにトクサブロウがいた。さっきの低い声は槻木先生である。

 「あ~あ、ノルティスさんの仕業(しわざ)ね」

 錠前シンフォア先生が辺りを見ながらそう言った。辺りには煙が何本も立ち上って燃え落ちた蔓が至る所に散らばっていた。錠前シンフォア先生は少しの事には動じない性格なのか、いつもこういう調子である。

 「しかし、神田がいてくれて良かった」

 槻木先生はもう慣れているのか錠前シンフォア先生の発言を()にも()めないで、シュウに礼を言って話を続けた。

 「この一件を引き起こしたのは、アイカ ノルティス=ガルヴォーディナスという私達のクラスの生徒だ。そして空を飛んでいたのが、高下アスネだ。これまた私達の生徒。神田には迷惑を掛けた。本当にすまん。…、それから、大事(おおごと)になる前に対処してくれてありがとうな」

 「…、いえ…、偶然いあわしただけですから…。」

 「神田君、ノルティスさんはまだ精霊を完全には(あやつ)れない女子()なの。」

 錠前シンフォア先生がそう言った。

 「要するにノルティスさんの感情が精霊に影響を与えすぎてる、と?」

 精霊は“操り人(マニピュレーター)”自身が理性や感情をちゃんとコントロールしてこそ、その能力を充分に、()つ効果的に発揮できる。そのコントロールができないと、精霊は“操り人”の(わず)かな感情の揺らぎにも敏感になってしまって能力を暴発させてしまう。悪くいえば、精霊に身体(からだ)を乗っ取られている状態だ。さっきの彼女がまさにその状態である。(ちな)みに、4年生ともなれば精霊や“操り人”の基礎知識は知っていて当然である。

 その時、女子2人がこちらにやってきた。というか、1人の女子()がもう1人に連れられて。

 「先生…、ごめんなさい…。」

 連れられてやってきた様な女子が、そう先生達に深く頭を下げた。かなり気を落としている。

 「ケガがなくて良かった」

 錠前シンフォア先生がそう(なぐさ)めた。

 「ノルティス、ここにいるのが、おまえの“暴発”を大事になる前に()()めてくれた4年生の神田シュウだ」

 槻木先生がそう言った。

 「神田先輩、ありがとうございました!」

 彼女は先生達に下げていた頭を上げて、俺の方を向いてもう1回深々と頭を下げた。彼女の肩にちょこんと乗っているイタチかテンか何かの小動物(ペット?)も、一緒に頭を下げた(というか、お辞儀に近かったが…)。

 「どういたしまして」

 「高下もありがとな」

 「私はちょうど渡り廊下で本を読んでましたから…。」

 もう1人の女子は1年生とは思えない口調で言った。俺には彼女がただので言ってるのか、一応助けてあげただけなのか分からなかった。

 

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