仮面ライダーソーシャル 戦う歌姫達と爆死する少年   作:BF・顔芸の真ゲス

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撃槍と爆走と絶刀

「うぇ!?うぇぇぇ!?何この姿!?プリキ○ア!?」

 

突然変化した自分の姿に、思わずそんな事を呟きながら慌てる。最近出来た友達の一人なら、『アニメじゃないんだからっ!』って言いそうなこの状況。どうしたものかと思いながら前を見ると、ノイズがジリジリと私に近付いて来ていた。

 

「ど、どうすれば……!」

 

ーーいいから歌え!思いっきり歌うんだ!

 

また、頭の中であの人の声が聞こえた。でも歌うって言ったって、一体何を歌えば良いの!?

 

ーー自分の思いを全部ぶちまけろ!そいつがお前の歌になる!

 

(自分の気持ちを、思いっきり!)

 

「〜〜♪」

 

自分の思い、頭に浮かぶ言葉を片っ端から声に出す。最初は出鱈目に並んでいただけの言葉が段々と纏まっていき、一つの歌になった。

 

(凄い……何だか分からないけれど、力が湧いてくる!)

 

歌を歌い始めてから感じる、身体の奥底から熱いものが湧き上がってくるような感覚。さっきまでの疲れは何処へやら、私の身体はこれまでに無いくらい軽くなっていた。

 

歌を歌いながら、女の子を抱き抱えて大きく飛ぶ。普通ならあり得ないくらいの距離を一息で飛び、そのまま危なげなく地面に着地する。

 

「わっ!お姉ちゃん凄い!」

 

女の子が目を丸くしてそう言うが、そんな顔をしたいのは私だ。この格好になった途端、どんな事でも何となく出来そうな気はしていたけれど、まさかここまで飛ぶとは思わなかった。

 

(ホントに、どうなってるの……?)

 

自分に何が起こっているのかはさっぱり分からないが、今自分がやるべき事ははっきりと分かる。

 

(何とかしてこの子を安全な所へ運ばなきゃ!)

 

今の自分なら、この子をシェルターまで運ぶ事が出来る。そう考えて駆け出したけれど、すぐにノイズに囲まれる。

 

(だったら……!)

 

さっきみたいに思いっきり跳んでノイズを飛びこえようとしたけれど、空にもノイズが居たので出来なかった。

 

「っ邪魔を、するなぁぁぁぁ!!」

 

前を塞ぐノイズを蹴り飛ばし、強引に道を作る。蹴り飛ばされたノイズは二、三メートルくらい空中に飛んで炭化して消滅した。

 

(ノイズを倒せた!?でもこれなら、いけるッ!)

 

両腕でしっかりと女の子を抱え、前を行くノイズ達を足を使って倒していく。ノイズが女の子に少しでも触れる事の無いよう細心の注意を払っての攻撃だから効率は悪いけれど、しっかりとノイズを減らしていっている。

 

「もう少し、もう少しだから!」

 

「っ、お姉ちゃんあれっ!?」

 

「……ッ!」

 

ノイズの集団を抜けた先に居たのは、十メートルは軽く超えているだろう大きさの巨大なノイズ。しかも悪い事にその巨体がシェルター方面への道をぴったり塞いでしまっている。

 

「そんなっ……!」

 

飛び越えて来たノイズ達も続々と私の後ろに集合し始めており、もう蹴散らして走り抜けれる程の量ではなくなってきた。退路も完全に絶たれた、詰みだ。

 

「ここまで来て……諦められるかぁッ!」

 

それでも、私は諦める訳にはいかない。折れそうになる心を奮い立たせ、私は巨大ノイズへと突撃しようとした。

 

「ーーその心意気は評価に値するけど、死にたくなければそこから動かない方が良いわよ」

 

「お、おい待て翼!?テメェ一体何をーー!?」

 

【キメワザ!】

 

【爆走!クリティカルストライク!】

 

(OMO)「ウワアアアアァァァァァァァ!?」

 

ーーその瞬間、何処か聞いた事のある二つの声が聞こえ、それと同時に私の目の前を黄色い何かが猛スピードで横切っていった。

 

「アアァァァァァァァ!?」

 

私の横を横切った黄色いバイクはノイズの集団を跳ね飛ばし、最後は巨大ノイズに激突して大爆発を起こした。

 

【会心の一発ゥ!】

 

「……え、え?」

 

「うん、中々良い感じに決まったわね」

 

突然の出来事に頭が追いつけずに呆然とする私の横で、さっさとバイクを捨てて脱出していた青髪の女の人、風鳴翼さんが良い笑顔でそう言った。

 

……ん?翼さん!?

 

「へ!?へ!?何で翼さんが此処に!?しかも私みたいにプリキュ○みたいな格好して!?」

 

「呆けない、慌てない、騒がない。今貴女がやるべき事はその子を何が何でも守り抜く事よ。ノイズの相手は私達がするから、貴女はその子を守る事だけに集中しなさい」

 

「は、はいッ!でも私『達』って……?」

 

「それはね……早くこっちに来なさい檜山、あれくらいで気絶する程軟弱な貴方ではないでしょ?」

 

「……檜山?」

 

凄い聞き覚えのある名前を翼さんが口にした瞬間、爆煙の中からさっきの黄色いバイクが一人でに走って来て、翼さんの所までやって来た。

 

「俺を乗り捨ててノイズに突っ込ませといて俺に言う第一声がそれかテメェ!?もう少し丁寧に扱え!バイク使いが荒いんだよテメェは!」

 

「貴方バイクじゃなくて人でしょ」

 

「それが分かってんならバイク以上に丁寧に扱えよ!轢き殺すぞこの野郎!」

 

「私は女よ。それに貴方が轢き殺すべきは私じゃなくてノイズ。間違えないで頂戴」

 

「くっそ正論なのが超ムカつく!」

 

「バイクが喋った!?というかこの声……まさかこのバイク幸助君!?」

 

「……嫌な予感はしてたんだがやっぱお前だったか立花。まあ詳しい話は後でしてやるから、取り敢えず大人しくしてろ」

 

目の前の黄色いバイクから聞き慣れた幸助君の声が聞こえた。やや呆れたようなその声は、私が何かバカをやらかした時に溜息を吐きながら説教をする幸助君そのものだ。

 

「何かもう色々あり過ぎて頭が破裂しちゃいそうだけど、分かった。大人しくしとく」

 

「よろしい。それで立花、一つだけやって貰いたい事が有るんだが……その辺に何か変わった物が転がってはいないか?」

 

「変わった物?そんなの……あ!もしかしてコレ?」

 

幸助君に言われた通りに辺りを見回すと、変わった形をしたオモチャが転がっていた。それを拾い、幸助君の恐らく目であろう部分にヒラヒラとかざしてみせる。

 

「そうそうそれそれ。それを俺の身体の所にあるホルダーに入れてくれないか?あ、入れる前にスイッチを押すのを忘れるなよ」

 

「……?分かった。こう?」

 

【ギリギリチャンバラ!】

 

カチリとオモチャのスイッチを押すと、そんな音声と共に何やらかっこいい音楽が流れてくる。

 

「そうだ、それで良い。後はそれを俺の身体に挿してくれればそれでOKだ」

 

「身体に……挿す……」

 

「……何を想像したのかは聞かないし聞きたくもないが早くしてくれ。そろそろ翼が暴れたくてうずうずしてる」

 

「……っ!?わ、分かった!?」

 

「人をまるで斬り裂き魔みたいに言うのやめてくれないかしら?」

 

一瞬頭に浮かびかけた薔薇色の光景を振り払い、バイクに取り付けられたホルダーに差し込んだ。

 

「三速!」

 

【ガッシャーン!レベルア〜ップ!】

 

【爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク〜!】

 

【アガッチャ!】

 

【ギリ!ギリ!ギリ!ギリ!チャンバラ〜!】

 

中々にリズミカルな音声と共にバイクが変形し、人型に変わる。

 

「やっと人型になれた……もうレーザーにだけはなりたくないぞ俺は」

 

「……次はもう少し優しく乗るわよ」

 

「仮にまた変身する事があってもテメェだけは絶ッ対に乗せねえ!」

 

「……何かもう、何でもありだね檜山君」

 

「トランスフォー○ー!トランス○ォーマーだ!本当に居たんだ!コンボ○?バンブル○ー?それともス○ースクリーム?」

 

「……上二つはまあ分かるが何で三つ目それ選んだし。全部違うからな。俺は仮面ライダーソーシャル!トランスフォーマーじゃないからな」

 

幸助君の変形に目を輝かせる女の子に若干押されながら幸助君はそう言った。

 

「その名前、無いような物でしょ。今は仮面ライダーレーザーの姿なんだし。貴方本来の姿なんて弱すぎて使わないじゃない」

 

「おう翼、喧嘩売ってんなら買うぞ?まあ、それもこれも全部こいつらを片付けてからだ。やるぞ翼!」

 

【ガシャコンスパロー!】

 

何処からか弓を取り出し、幸助君はそう言う。

 

「……前衛は私が務めるわ。檜山は後方から私の支援と、その子達の身の安全の確保をお願い!」

 

それを受け翼さんは手に持っていた刀を構えると、ノイズの集団へと素早く駆けていく。

 

「防人の剣の閃き、見せてあげる!」

 

近くにいるノイズというノイズをバッタバッタと斬り捨てながら、翼さんが言った。まるで時代劇の殺陣のシーンのようなその光景に、私も女の子も思わず現状を忘れて見惚れてしまった。

 

「……当たれッ!」

 

幸助君も翼さんに負けず劣らずの凄い動きでノイズ達を射抜き、数を減らしていく。私の記憶が確かなら幸助君は弓道なんかはやっていなかった筈だけど、何であんなに当たるんだろう。

 

「ーー幸助君危ないッ!?」

 

翼さんの剣戟と幸助君の射撃から運良く逃れていたノイズが、幸助君に襲い掛かる。間合いは完全に内側に入られていて、幸助君の矢が間に合わない。このままじゃ幸助君がやられてしまう。

 

「……ふっ!」

 

当の本人である幸助君は全く慌てた様子も無く、冷静にノイズの攻撃を躱す。そして持っていた弓を二つに分離し、鎌として使ってノイズをバラバラにした。

 

「……喧しいぞ立花、あれくらいでデカイ声出すな」

 

「でも、今の危なかったよね!?怪我したらどうするつもりなの!?」

 

「ライダーやってる以上、多少の怪我は避けられん。俺の事は良いから、今は自分の事だけ考えてろ」

 

「そんなの……っ!後でお説教だからね!」

 

「……分かったよ」

 

そう言って幸助君はまた鎌を一つに合体させて弓に戻してノイズを撃ち抜いていく。向こうの方では翼さんがノイズを斬り払っていて、その時に生まれた黒い粉末が風に乗ってこっちまで飛んでくる。

 

「数が多いな……翼!大技で一気に決めるぞ!」

 

「私もそれに賛成よ。良い加減鬱陶しいと思っていた所なの。ちゃんと合わせなさいよ、檜山」

 

「ハッ!合わせるのはテメェだよ翼ァ!」

 

【ガッシャットォ!キメワザ!】

 

勢い良く幸助君が上空へと飛び上がり、その周囲に無数の光の矢を発生させる。それと同時に翼さんも上空に飛び、青く輝く光の剣を大量に発生させた。

 

【ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!】

 

【千の落涙】

 

光の矢と剣は同時に地上に降り注ぎ、生き残っていたノイズ全てを凄まじい光で包み込んだ。光が収まった時、ノイズは全て消し飛び、ただの一匹も残っていなかった。

 

【会心の一発ゥ!】

 

【ゲームクリア!】

 

「す、凄い……!」

 

「プリキュ○のお姉ちゃんと仮面ライダーのお兄ちゃん、凄い!ノイズぜんぶやっつけちゃった!」

 

圧倒的な勝利。さっきまで私がやっていたような危なっかしい戦い方とは違う、完璧な戦闘。何が何だかよく分かっていない私にもこれだけは分かる。二人は、私よりも遥かに強い。

 

「ふう、これにて一件落着だな。立花、そろそろ二課の奴らが来る。事後処理やら何やらで結構時間がかかるから、帰りが遅くなるって小日向に伝えとけよ」

 

変身を解除した幸助君が、そう言って私に向かって毛布を投げてくる。

 

「わぷっ!」

 

「もう夜になる。夜は冷えるからな、羽織っとけ」

 

「う、うん。ありがと。……それで幸助君、色々聞きたい事があるんだけど」

 

「うーん、答えてやりたいのはやまやまなんだがな。結構話長くなるから、事後処理とか諸々が終わった後にしてくれないか?」

 

「うん、そういう事なら分かったよ」

 

本当は今すぐにでも聞きたかったけれど、先にやっておくべき仕事があるんだからしょうがない。今まで幸助君が私達に嘘を吐いた事は無かったので、きっと正直に全部話してくれるだろう。

 

毛布を羽織って、空を眺める。暗くなり始めた空にはチカチカと星が光って、月も姿を見せ始めていた。

 

「……あったかいなぁ」

 

毛布の温もりに誰かの体温を重ねながら、私は幸助君達が作業をしている光景をじっと見ていた。

 

 

 

「ーーそれが、何でこうなったのおぉぉぉ!?」

 

黒服の二課の職員達に囲まれ、腕に手錠を付けられた立花が涙目でそう叫んだ。

 

「一般人の救助を手伝って貰っておいて悪いけれど、貴女をこのまま大人しく返す訳にはいかないの。貴女にはこれから我々特異災害対策機動部二課の本部まで同行してもらいます」

 

「という訳だ立花。悪いが大人しく同行して貰うぞ」

 

「だからってこんな犯罪者みたいな扱いしなくても良いでしょ!?この手錠すっごい重いんだけど!?」

 

手錠をブンブンと振り回しながら立花がそう言う。危ないからあまり振り回さないで欲しいんだが。

 

「色々あんだよこっちにも。道中で俺の事についても説明してやるから、今は大人しくしてくれ」

 

俺がそう言うと、立花はまだ納得してはいないようだが大人しくなった。

 

「それじゃ、出発するか!」

 

大人しくなった立花を車に乗せ、同じように自分も車の座席に座る。俺がシートベルトを着用したのを確認すると、運転席にいた緒川さんは車を発進させた。

 

「さて、三つまで質問を受けるが何を聞きたい?」

 

本部までの道中、三本の指を立てながら約束通り立花に問いかける。立花は少し悩むような表情を見せ、すぐに真剣な表情で俺の方を見た。

 

「じゃあ一つ目!私や翼さんが着てたアレは何なの?」

 

「それは今此処で聞くよりこれから行く場所に居る奴らに聞いた方が分かりやすいから俺からは答えられないな。あと二つな」

 

「答えられなくても数に入れるんだ!?」

 

「当たり前だ。残り二つ、しっかり考えて発言しろよ?」

 

「う〜、じゃあ二つ目!私や未来は名字なのに、何で翼さんだけ名前で呼んでるの?」

 

何でしっかり考えて発言しろって言ったのにそんなどうでもいい事に質問権を使うんですかね?立花のアホさ加減に呆れながら俺が口を開こうとした途端、それまで助手席で目を閉じていた翼の奴が突然口を開いた。

 

「それには私が答えてあげる。今私達が向かって居る二課の司令を務めているのは私の叔父、風鳴弦十郎よ。檜山は基本的に人を名字で呼ぶけど、同じ名字が二人以上いる時は紛らわしくないよう名前で呼ぶみたいなの」

 

「ほえ〜、成る程〜」

 

「何でお前が答えるんだよ翼……」

 

「私はただ独り言を呟いただけよ。だから今のは質問の答えじゃない、まだ質問権は二つ残ってるわ」

 

「なっ!?テメェ……!」

 

俺が睨みつけるのを軽く無視し、翼は再度目を閉じた。

 

「……兎に角、まだ私は二回質問出来るって事だよね?それじゃあ改めて二つ目!幸助君はいつから今日みたいな事をしてたの?」

 

「……」

 

どうしたものか、と俺は思案する。馬鹿正直にあのライブの時からと言えば説教が増える気がするし、かと言って嘘を吐けば助手席の翼に訂正されるだろう。

 

「……二年前、あのライブの時からだ。あの時お前を助けた茶色のヤツは、俺だ。……まあ、お前以外誰一人として守る事は出来なかったけどな」

 

起こってしまった事実は無くならない。過去を変える事は出来ない。俺が沢山の人の命を救えなかったという事実は覆る事は無い。あれだけ仮面ライダーになって人々を助けるんだなどと息巻いていながらあの始末。あの日あの場所で救えなかった命は、十字架として俺が一生背負い続けねばならないのだ。……まあ、世の中には電車に乗って時間を旅するライダーや、天の道を行って過去を変えるライダーも居るから一概に変えられないとは言えないのだが。

 

「……そう、なんだ。あの日から、ずっと……」

 

「先に言っておくが、俺が戦う理由とあのライブは関係無いぞ。この手に戦う力が、人を守る為の力がある。それが俺の戦う理由だ。お前が気にするような事は一切無い」

 

立花が何やら暗い顔をしたので予防線を張っておく。あのライブが関係してないとは言えない部分が有るのは事実ではあるが、仮面ライダーの力を手に入れた時点で俺はライダーとして戦う気満々だったのだ。変に気にされて落ち込まれると困る。

 

「そら、残る質問権は一つだ。ちゃんと考えて発言しろ」

 

「……うん。えっと、じゃあ……」

 

「悪いけれど最後の質問はまたの機会にして頂戴。着いたわよ二人共」

 

シートベルトを外しながら翼がそう言う。翼の言う通りいつの間にか車は止まっており、目的地である二課の本部のすぐ近くまで来ていた。

 

「あれ?私達その二課って所に来たんですよね?何でリディアンの教師棟に?」

 

「着いて来れば分かるわ。行くわよ檜山、緒川さん」

 

「何でお前に指図されなきゃいけないんだよ……」

 

「まあまあ幸助君。そんなに機嫌を悪くしないで下さい」

 

「緒川さんは翼に甘いんだよ……。おいどうした立花、とっとと着いて来い。ボサッとしてると置いてくぞ?」

 

「わ、分かった!」

 

建物の中へと入り、どんどんと先へ進む。やがて突き当たりにたどり着き、緒川さんがカードキーを使ってエレベーターのドアを開ける。

 

「うわぁ……何か秘密基地みたいだね……」

 

「みたい、じゃなくて秘密基地なんだよ。手すりにちゃんと捕まってろ。ここのエレベーターは速いぞ」

 

「え?速いって一体ーー」

 

立花が俺に質問するより先にエレベーターが動き出し、立花の姿が一瞬ぶれる。どうやら俺の忠告は一足遅かったらしい。

 

「わああぁぁぁぁぁ!?」

 

立花の絶叫に耳を塞ぐ。こいつの声はデカイ。元気なのは構わないんだが、狭い室内で叫ばれると鼓膜にくるから困る。

 

「ぁぁぁぁぁ……あれ?」

 

急降下が終わり、エレベーターの速度が遅くなる。それと同時にエレベーターから見える景色が一変し、黒一色だった景色が、鮮やかに彩られた壁画のような物へと変わる。

 

「綺麗……!」

 

「古代メソポタミア文明をイメージした壁画、だそうだ。その時代にこんな立派なもんがあったのかは学の無い俺には良く分からんが」

 

「幸助君中学の頃の歴史の成績悪かったもんねー」

 

「うるせぇ!昔の事なんざ覚えなくても生きていけるから良いんだよ!」

 

第一学校で習う事の何割が社会で役立つんだよ。特に数学だ数学。XやらYやらサインやらコサインやらを日常で使う奴が生徒の中にどんだけいるんだ。少なくとも俺は使わない、よって高校行かなくても問題無い(暴論)。

 

「景色に見惚れたり談笑するのは構わないけれど、緊張感だけは持っていなさい。今から私達が向かう所に、微笑みなど無縁なのだから」

 

「……っ」

 

翼の真剣な表情に立花も緊張したような表情を浮かべる。まあ確かにヘラヘラ笑ってやってける職場では無いのは分かる。だが翼よ、忘れては居ないか?

 

「……着いたわ。ここがーー」

 

「立花響君、ようこそ二課へ!」

 

『いらっしゃ〜い!』

 

ここの大人達は、皆こんな感じなんだぞ?

 

「……へ?」

 

「…………はぁ」

 

エレベーターから出た途端にクラッカーによる歓迎を受けて立花が素っ頓狂な声を出し、翼が頭痛を堪えるように頭を抑えた。俺と緒川さん?そりゃもう苦笑いだよ。だってこうなるって薄々分かってたもん。

 

「良く来てくれたな響君!色々あって疲れただろう、まずは飯にしようか。色々用意して有るんだが、アレルギーとかは無いかな?」

 

「ああいえ、特に無いですけど……」

 

「オペレーターの友里です。喉乾いたでしょ?あったかいもの、どうぞ」

 

「あ、あったかいものどうも……」

 

「同じくオペレーターの藤堯です。怪我とかはしてないかい?一応医務室から救急箱持って来たんだけど」

 

「あ、はい、大丈夫です……」

 

次々と話しかけてくる二課の面々に、響が困惑した表情で答えを返していく。うん、その気持ち凄い分かる。俺も初めて二課に来た時こんな感じだったもん。

 

「……友里さんは飲み物勧める前にまず手錠を外してやって下さい。それと藤堯さん、現場で軽く立花の応急手当をしたので怪我は問題ありません。最後に司令、あんた仮にもここのリーダーなんだからファーストコンタクトくらい威厳のある感じにしてくれ。それと櫻井女史、どさくさに紛れて手錠姿の立花とツーショット写真撮ろうとするな」

 

「あら、バレちゃった?」

 

「へ?ってうぇぇ!?いつの間にぃ!?というか何やってるんですか!?」

 

「何って、記念写真よ記念写真。あ、私は櫻井了子よ」

 

「あ、どうも。……それはそれとして!手錠付けた状態での記念写真なんて嫌です!きっと悲しい思い出として残っちゃいます!」

 

「そこなのかよ……」

 

立花の何処かズレた答えに思わず溜息を吐く。いやそこじゃないだろう、もっと別に言う事あるだろ。

 

「というか!何で皆さん私の名前知ってるんですか!幸助君から聞いたんですか?」

 

「我々二課の情報収集能力はこの国でもトップクラスなのでね。君一人の個人情報など簡単にーー」

 

「現場に転がってた鞄の中の学生証見ただけだろうが」

 

「……空気を読んでくれ士君」

 

「生憎、空気を読むのは苦手なんでね。俺は門矢士、自分の世界を探して旅をしているカメラマンだ」

 

「あ、はいどーも。っていうか鞄!何勝手に人の鞄の中身見てるんですか!?」

 

尤もなお言葉である。年頃の女の子の鞄を勝手に拝見し、あまつさえ個人情報を手に入れる。字面だけ見たら百パーセント犯罪だ。いや実質犯罪スレスレなんだけれども。

 

「悪いな立花、こっちにも色々あるんだ。今度ふらわーで奢ってやるから許してくれ」

 

「うん許す!」

 

「許されたのか……」

 

門矢士が呆れたような表情を浮かべるが、これが立花だ。こいつのチョロさは、二年間の付き合いの俺が良く知っている。

 

「それじゃあ早速始めましょっか!響ちゃん、ちょっとこっち来てね〜?」

 

「……?えっと、何をするんですか?」

 

「簡単な身体検査よ。という訳で、脱いで?」

 

「……え?」

 

「だぁから、脱いで?此処で」

 

「………………え?」

 

櫻井女史の爆弾発言に響が固まり、二課の面々が溜息を吐く。この人はこういう事を何の恥ずかしげも無く言えるから凄い。此処で脱げとか酷すぎる。此処にいる二課の面子は大体が男なんだぞ。

 

「いやいやいや!?検査をするのに服を脱ぐのは百歩譲って理解出来ますけど、何で此処で脱がなきゃいけないんですか!?私女の子ですよ!?」

 

「男の子とか女の子とか関係無いわよぉ、人間生まれた時は男も女も皆すっぽんぽんなんだから。ほら、脱いだ脱いだ!」

 

「い〜や〜!?助けて幸助く〜ん!?」

 

「…………俺は退室しとくわ」

 

「じゃあ俺も」

 

「すいません、僕も退室しますね」

 

「俺も退室するか」

 

「俺も退室しよう。翼、了子君が暴走しないようにしっかり見張っておいてくれ」

 

「了解です、叔父様」

 

「え!?もしかして誰一人として助けてくれないの!?」

 

すぐ側で聞こえてくる立花の悲鳴を聞こえなかった事にして、男衆は面倒事から逃げるように退室する。ただ退散していく男衆の中で唯一翼にフォローをお願いしておくあたり、流石司令だ。

 

 

 

「酷い目に遭った……。翼さんが助けてくれなかったら、人に見せられない恥ずかしい部分までじっくり観察されてたよ……」

 

「……災難だったな」

 

「ホントだよ!?幸助君何で助けてくれなかったのさ!」

 

二課からの帰り道、帰りが遅くなる立花を送っていく道中で立花に責められる。だって仕方ないだろ、あの人の相手面倒臭いんだもん。

 

「はぁ、今日はどっと疲れたよ……。ノイズには襲われるし、プリキュ○には変身するし、翼さんも○リキュアだったし、幸助君はトラン○フォーマーだったし……色々な事が有り過ぎて頭が弾け飛びそうだよ」

 

「トランスフォー○ーじゃなくて仮面ライダーな。あの時もそう名乗っただろうが。後アレはプリ○ュアじゃない」

 

翼みたいなプリ○ュアが居てたまるか。キュアサキモリとかどんなシリーズに出せば良いんだよ。

 

「それだよそれ!私結局アレについて教えてもらって無いんだけど!?」

 

「ぎくり」

 

やはり有耶無耶には出来ないか。正直なところ、立花にはこっち側には関わらせたくないんだが。変に関わって危ない目に遭わせてしまったら小日向に合わせる顔が無い。

 

「……明日、身体検査の結果が出る。その時に多分話す事になるだろう。だから今は聞くな」

 

「……な〜んかはぐらかされてばっかな気がするけど、まあ良いよ。幸助君を信じて聞かない事にする」

 

「そりゃどうも。……今日の事、小日向には言うなよ」

 

「分かってるよ。私が今日の事を話したりしたら、未来が危ない目に遭っちゃうかもしれないんだよね?」

 

「……そうだ」

 

まだ詳しい説明をしていないにも関わらず、立花は俺の言う事を素直に聞いてくれた。立花は馬鹿ではあるが、こういう時に鋭いからあまり馬鹿に出来ない。馬鹿なのに馬鹿に出来ないというのも中々に矛盾しているが。

 

「何となくだけど分かったよ。幸助君が今まで私や未来に隠してたのって、私達の事を守ろうとしてたからなんだよね?だから、ずっと一人で戦ってたんだよね?」

 

「別に一人で戦ってた訳じゃない。翼も居たし、士さんも居た」

 

「そういう意味じゃなくて……ああもう!何て言っていいか分かんないよ!?兎に角、私ももう関係者なんだからもう隠し事は無しだからね!未来は駄目でも、私なら相談に乗って上げられる事もあるかもしれないんだから!」

 

「……分かったよ。ほら、着いたぞ」

 

漸くリディアンの学生寮に着いた。大した距離では無かった筈だが、立花と話して居た所為で大分疲れた。

 

「絶対だからね!絶対隠し事は無しだからね!それはそれとして、送ってくれてありがとうね幸助君。それじゃあ、また明日!」

 

「立花」

 

元気良く挨拶をして寮に入っていこうとする立花の背中に声を掛ける。

 

「明日の身体検査の結果がどうであろうと、話を聞いたらそれで終わりだ。お前はこれまで通り小日向と一緒に学校に通って、これまで通りの生活を続けろ。今日起きた事、明日聞くであろう事を忘れて、平和な日常の中で生きていけ。お前がこっち側に来る必要は無い」

 

その言葉に立花は一瞬歩みを止め、また直ぐに歩き出して寮の中に消えていった。

 

「……はあ」

 

全く、人生って奴は最悪だ。いい予感は悉く外れる癖に、悪い予感だけは百発百中だ。ずっと巻き込まぬようにと思っていた立花が、まさかあっちの方から非日常に巻き込まれに来るとは思わなかった。

 

「これも神の悪戯って奴なのかねぇ……」

 

この世界に転生してから性根が腐っていると分かった神様の事を頭の中で浮かべながら、俺は暫くぼんやりと空を見上げて居た。

 

 




おまけ〜その事の響〜

「た、ただいま〜……」
「響!こんな遅くまで何処に行ってたの!?ノイズが出たっていうし、私心配したんだからね!」
「え、え〜っと……」
(うわ〜、やっぱり怒ってたよ未来。上手く誤魔化さないと……)
「そ、それがさ!CDを買って帰る途中で偶然幸助君とバッタリ会ってさ!折角だから二人で遊びに行こうって事になって、それで気がついたらこんな時間になったといいますか……」
「……ふぅん。幸助君と、そうなんだ……」
「う、うんうん!そうなの!」
「幸助君と遊んでたんだ、私抜きで」
「いや、未来には悪いと思ったんだよ!?でも幸助君と会った事自体偶然だったし……」
「……ずるい」
「へ?」
「何でもないよ。疲れたでしょ、お風呂沸かすから待っててね」
「うん!ありがとう未来!」
(良かったぁ……。何とか誤魔化せたよ……)

「……ん、メール?……小日向からか」
『今度は私ともお出かけしてね? 未来』
「……どんな誤魔化し方したんだ、あの馬鹿は?」

おまけその2〜幸助がこれまでの話で変身したライダー一覧〜

仮面ライダーソーシャル(星0)
ソーシャルドライバーを使って変身するソーシャルの基本フォーム。スペックは歴代ライダーの中でも最低クラスであり、ブランク体やプラットフォームなどにも遥かに劣る性能となっている。

ライドプレイヤー(星1)
最初のガチャ変身で変身したライダー。スペックは軒並み低いが、経験を積む事でレベルアップしてどんどんと強くなっていく。ちなみにライドプレイヤーは複数体おり、劇中でエグゼイドからガシャットを奪って武器を使っていたライドプレイヤーは全て別個体扱い。その為同じ星1でも違うライドプレイヤーが出たりして、他のライダーが更に当たりにくくなっている。本ガチャの外れ枠。

仮面ライダーケタロス(星2)
大気圏から落下した初代仮面ライダーメテオ。クロックアップによる高速戦闘が可能な為、星2の中では割と使いやすいライダー。

仮面ライダーレーザー(星3)
二代目バイクライダー。星3の他にも星4、星5にもレーザーがおり、星4はドラゴナイトハンターZを使ったレーザーレベル5、星5はプロトガシャットを多数扱うレーザーターボになる。今回出た星3はレベル1、レベル2、ギリギリチャンバラを使って変身するレベル3の三つの姿になれる。

たい焼き名人アルティメットフォーム(星1)
翼との会話の中で名前だけ出ていたライダーで星1ライダー最弱のネタ枠。というか本来ライダーですらないのだが、ブレイドのゲームの隠しキャラとして出ていた所為で神様にライダー扱いにされた。武器は熱々の鉄板。上級アンデットにダメージを与えた代物だが、長期間使用すると冷めてただの鉄板になる。
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