ミューズの頑張り物語   作:月日星夜(木端妖精)

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第十四話 "二年後"

――愛してくれて、ありがとう。

 

 

 それは、見知らぬ誰かが誰かにあてた感謝の言葉。

 

 

――ありがとな。生きててくれて。

 

 

 それは、見知らぬ誰かが誰かにあてた感謝の言葉。

 

 

 

 小さい頃に見た記憶。

 私、まだそれが何かわからなくて、なんにも感じていなかった。

 何も知らなかったから、理解できなくて……。

 

 

 けれど、私は知った。

 革命軍のみんな……サボさんやコアラさん。

 海軍のみんな……サカズキさんや、ミサゴさん。

 そういう人達と触れ合って、私の世界が大きく広がると、考えられることも見えるものもたくさん増えて……私は私の中にある記憶の意味を知った。

 

 そうして気付いたんだ。

 私が誰かの記憶を持ってこの時代に生まれた意味。

 最初に出会ったのがサボさんだった理由。

 

 

 いつしか私はそれを私の生きる理由に据えた。

 

 だって、そうでしょう?

 私が生まれたのが運命なら、サボさんが私の命を救ったのも運命で、私が海兵になったのも運命で、私が麦わらの人を好きになったのも運命で、力を持てていたのも運命で。

 

 ならば私のやる事は決まっている。

 この流れにのって、私にしかできない事をやり遂げるんだ!

 

 

 ……そう、思っていたのに。

 

 

 

 

「申し訳ございませんっ!!!」

 

 破砕音がそこかしこで響く中、大地に伏して、地面に額を当てるくらい、深く頭を下げる。

 肌が引き攣るような痛みが体中を駆け巡って背が跳ねるのをなんとか抑えて、地面に額をこすりつけた。

 振袖の中でだらんと垂れる異物を放って置いて、左手だけで手をついて。

 

 こんなことしたってなんの意味もない。

 私の気が少しまぎれるだけだなんて事はわかってる。

 

 そもそも哀しみに暴れ回るルフィさんには私の声なんか届いてない。

 この森に入る時だって、「今のルフィ君には、きみの声は届かんかもしれん」ってジンベエさんに言われた。

 私の顔なんて見たくもないだろうって皇帝さんに言われた。

 

 けれど、だからって、指をくわえて彼が痛みに嘆く姿を眺めていることなどできなかった!

 だから、暴れる彼に近づいて声をかけた。

 救えるはずの命を救えなかったことを謝りたい。

 

 だって私が!

 ……もっと、ちゃんと、本気で止めようとしていれば……わたしっ、結局自分の事しか考えられてなくて!

 「自分の中の素敵なものを伝えたい」なんて、それは結局自分のためだけで……ずっと昔から……最初からあの人を救う事に力を傾けていれば、もっと何か別の運命を辿れたはずなのに!!

 

「はぁっ、は、だから――」

 

 声の限りに叫んでも、ルフィさんはこちらを見もせずに無茶苦茶に暴れていて、それが悲しくて涙が溢れた。

 私が泣いたってなんにもならないのに。泣きたいのは彼の方なのに。

 ほんとうに……わたし……。

 

 ばかみたい。

 

 

 

 やがてジンベエさんが彼を止めると、私のとは違う声が森中に響き渡った。

 

 

 

 

「君」

 

 太い幹に体を預け、何を考えるでもなく深い森の向こうを眺めていれば、声がかかった。

 そっちに顔を向けるのもおっくうで動かないでいれば、声をかけてきた人が目の前に座って、顔を覗き込んできた。

 

「酷い怪我をしてるじゃないか。手当をせねばならないな」

「……いりません」

「そうもいかないだろう。胸の傷は浅いが凍傷を起こしている。左肩に風穴は開いてるし、右腕は黒焦げだ。そのままでは、君は……」

 

 死ぬぞ。

 

 ……なんて言われても、心に響く何かはなくて。

 溜め息をついたその人が、静かにその場に座り込むのに、幹に背を押し付けて距離をとる。今は誰の顔も見たくない。

 

 治療なんていい。死ぬのもいい。

 もう、ぜんぶ、よくわかなんない。

 

「では、君に……"礼を言いたい"という男がいる、と知ったなら……どうかな?」

「……私に?」

 

 お礼なんて言われるような事は、なんにもしてないけど……誰が?

 ……おじさんが、だろうか。

 そう思って目線を上げれば、そこにいたのは……"冥王"さんだった。

 

 ……そういえば、彼が来て、ルフィさんを鍛えたりするような記憶を見た覚えがある。

 たぶん、ずっと子供の頃だ。とっても怖い大きな動物達が夢に出てきて、起きてもまだ恐怖が残ってて、お母さんの布団に潜り込んだのを覚えてる。

 暖かい腕に抱かれて、頭の上にお母さんの声があって、それがとっても安心できたから、なんでもない日でも「怖い夢を見た」って嘘ついて何度も潜り込んだりした。

 

 ……思い出しても意味のない記憶だった。

 

 

「何もわざわざ出向かなくともっ……!」

 

 ザアッと木々がざわめいて、その向こうから女の人の声が聞こえた。

 ……男の人じゃない。やっぱりお礼を言いたい男の人がいるなんて嘘だったんだ。

 どうしてそんな事を言ってまで私に治療を促すのかわからなかったけれど、一瞬浮きかけた体は地面に落ちて気力を無くし、視線も膝に落ちた。

 

「──」

 

 ……いや、落ちる前に、目の前に横向きの人の顔があるのに思考が固まる。

 それはどう見てもルフィさんの顔だった。

 そしてどう見ても左側から頭だけが伸びてきていた。

 

 目が合うと、特に表情の変わらないその顔はひゅっと戻っていって、木々の向こうでゴムの音を鳴らした。

 

 胸が脈打つ。冷や汗が背中を濡らして、左腕だけで膝を掻き抱いた。

 布越しの機械に押し付けた腕の血の巡りが悪くなって、気分が悪くなる。

 

 できるなら見たくない顔だった。

 だって、申し開きのしようがない。合わせる顔も無くて……。

 

「なあ、今大丈夫か?」

 

 だというのに、彼はやってきた。

 包帯に巻かれた痛ましい体を物ともせず、顔の横に挙げていた手を下ろすと、私の横に膝をついた。

 ばつが悪くて視線を逸らす。でも、体ごと向きを変えるのは失礼すぎてできなかった。

 そんなことをすれば、きっと気を悪くさせてしまうから。

 

「酷い傷だ……なんで包帯も巻かねぇで」

「い、いいんですっ」

 

 他所を向いて、彼じゃない、どこでもないところへ言葉を投げる。

 こんなの、もう治したってなんの意味も無いんだから。

 

「でも」

 

 なおも言い(つの)るルフィさんに、必死に頭を振って拒絶する。

 ……ほんとうに、治療はいらない。

 だってこれは……この痛みは、(いまし)めだ。

 馬鹿な私へのばつ。失敗した私に残す痛み。

 

「なんでだよ? ……ほら、おれ食いもの貰って来たんだ。食えよ」

「…………」

 

 何かを近づけられる気配がした。

 でも、とても受け取る気にはなれなくて、体を固くして動かないようにした。

 そうするとそれが離れていって……。

 

 ……呆れられちゃったかな。

 こんな態度をとるのはおかしいって、わかってるんだけど……私、もう、どうしていいかわからなくなっちゃって……。

 生きてる意味もわかんなくなって、誰に何を言えばいいかもわからなくて。

 

「じゃあ、このまま言わせてもらうけどな」

 

 ……何をだろう。

 彼の言葉に気を引かれて、けれど自制する。

 興味を引かれるとか、憧れるとか、好きとか、そういう感情を抱くのはお門違いで、そう思うのなんていけない事で……。

 

「ありがとう! エースを助けようとしてくれて!!」

「――――」

 

 息が詰まった。

 それは、私の失敗そのものだ。

 私が、わたし……なにを。

 

 ……何を言われたのか理解できなくて、無意識に彼の方を見てしまった。

 

 彼は、膝をついて頭を下げていた。

 

「ありがとう!!」

 

 私と同じように、地面に額を当てて、麦わら帽子が落ちるのも気にせず……皇帝さんがあわあわしていてもその姿勢を崩さなかった。

 一瞬で感情が溢れた。

 

「でもっ! わた、わたしっ、すくえっ、な」

「いいんだ」

「……そんな」

 

 救うとか。

 そんな言い方をするのもおこがましいのに、彼に頭まで下げさせて。

 本当、私ってなんなんだろうって思ってしまった。

 今、一番つらいのはルフィさんなのに、気を遣わせて、謝るのは私なのに、ここまで来させて。

 

「ただ、礼だけ言っときたかったんだ。でも、お前が誰にも会いたくないって言うからさ」

「……ご、めんなさい」

「? なんで謝るんだ?」

 

 手当てを、と言ってくれたのはジンベエさんも同じだった。

 トラファルガー・ローに見せれば彼も無碍にはしないだろうって。でも私、動く気になれなくて断った。

 誰にも会いたくないって、わがままを言った。

 

 ……謝るのは、私の人生全部が間違いだったから。

 記憶を見た事があったのに何もしなかった。勝手に楽しい時間を過ごしてた。

 そのせいで助けられなかった。頭まで下げさせてしまって……怒鳴られたっておかしくないのに。

 

 うじうじしてるな、意味ないなって自分でも思うんだけど、どうしても頭のなかのぐちゃぐちゃも胸の中の重い何かも消えてくれなくて、感傷的になって、自分の事もよくわからなくなって。

 見えてるはずの風景も白んでぼうっとしてしまっていれば、何事か話していたルフィさんが、私の顔の前で手を振った。そうすると反応しない訳にもいかない。彼の顔に焦点を合わせる。

 

「なあ、ついてきてほしいところがあるんだ!」

「……?」

 

 彼が言う。

 私にエースさんの死を(とむら)って欲しい。もし思うところがあるならば、一緒に来て欲しいって。

 ……私にその資格があるのか、なんて考えてる暇はなかった。

 彼の笑顔と強い声に、いつの間にか私は頷かされていた。

 

「そうと決まれば、包帯巻かなきゃな!」

「あ……」

「それで飯食って腹ごしらえして、準備しよう! な!」

「…………、……ええ、はい」

 

 手当てしよう、ご飯を食べよう。

 どちらも私が拒絶した事なのに、そのどちらもする事になっていて、私は驚いて、それから、くすりと笑みを零した。

 なんというか、凄い引力……引き込まれると言うか、ぐいぐい引っ張られるというか。

 

 彼の前だと、私みたいなのは吸い寄せられる以外になくて、なんでかそれが凄く気持ちが良かった。

 腕を引っ張られて、彼が見ている道を一緒に走っているみたい。

 私一人じゃ絶対行けないような道を……。

 

 結局彼に言われるがまま着物をはだけて、手当てを受けて――ルフィさんがやってくれた。染みるヘンなにおいのべたべたを胸の傷や肩の傷に塗ってもらって、包帯を巻いてもらって……包帯女(マミー)になった。見かねた"冥王"さんが巻き直してくれた――渡された食べものを口に詰め込んでいれば、私が食べているのを見て食欲がわいたのか、ルフィさんも食べ始めて、競争みたいになっちゃって。

 

 なんだか、楽しかった。

 頭の中が軽くなって、なんにも考えられなかったけれど、とにかく楽しくて。

 右腕は完全に死んでるから切り落として、食べた分のエネルギーを使って"生命帰還"で細胞を活性化させて新しく生やしたら、すっげぇ! って笑ってくれた。

 どうだろう。これくらいは誰にでもできると思うんだけど。

 いやできないだろうって"冥王"さんもルフィさんも笑って、私も笑って……。

 

「蛇姫様! 大変です!! 里に半裸の男が!!!」

「なんじゃと!?」

 

 その後はひたすら頭が痛くなった。

 神様……さっそく地上観光に勤しんでる……。

 案内がどうのって言ってたけれど、私必要ないじゃん。

 

 

 

 

 私は、自分の意思とかそういうのがなくなってしまったみたいにルフィさんについて回る事にした。

 サボさんへの恩返しの機会は失われて、戻る場所も無くしてしまったから、引っ張ってくれるルフィさんが凄く眩しかった。

 

 それで、彼の船旅に加わる事にしたのだ。

 といってもマリンフォードまでの僅かな間だけ。

 ずっと一緒にいさせてもらうだなんて厚かましい事はできる訳がないから。

 

 

 

 船内では九蛇(クジャ)の女皇帝……ハンコックさんとちょっと悪い雰囲気になりながらルフィさんのお世話をして――ルフィさんは鬱陶しがっていたけれど、安静厳守なんだから身の回りのお世話くらいはさせて欲しい――ご飯を作ったり、お歌を歌ったりして賑やかしに徹したりした。

 

 この航海に神様はついてきていない。

 私がルフィさんと一緒にマリンフォードに行くと聞くと、すっっっっごく嫌そうな顔をして、「私は帰る」って月に帰っちゃった。なんでか私の羽衣をひったくって行った。……天女かな?

 

 機嫌を損ねてしまったから、もう地上には来てくれないのかなって思ったけれど、マクシムを置いていったあたり戻ってきそうな気もする。

 ……だからって何がどうという訳でもないのだけれど。

 

 そうして私は、マリンフォードにてエースさんの死を悼み、ルフィさんが仲間にメッセージを送るため、集まった記者達に激写されるのを眺めた。

 

 その後少し席を外させてもらって、こっそりこっそりサカズキさんのお家に帰る。

 もう親しく話す事もないだろうって思ったんだけど、ここまで来たなら何かしたくて、でも顔を合わせればきっと殺されてしまう。

 

 それでもいいかなって思った。サカズキさん怒ってるだろうから、私を殺してちょっとでも気が晴れるなら嬉しいなって。

 でも、今の私はルフィさんにつき合ってるのだから、勝手に死ぬのは迷惑になっちゃうだろうと考え直して、私の部屋から私物を回収して、それから、半紙と筆を拝借して、居間の机の上へ書置きをした。

 

 「ごめんなさい」は違うかな。「ありがとうございました」はなんか変かな。「クソお世話になりました」は怒るだろうな、と悩んで悩み抜いて、結局変にかたっ苦しくて細かくて長くなっちゃって、でもそんなに長く書くつもりはなかったから左に進むにつれてぎゅうぎゅう詰めになってしまって。

 おみやげのお団子は食べて貰えたかな、なんて考えると涙が零れて、慌てて目元を拭った。

 

 ……ばかじゃん。

 悲しくなるために海軍のみんなを裏切った訳じゃないのに。

 勝手にそうして、なのにこんなに悲しくなるなんて……ばかだ。ばかミューズ。

 ……ほら、半紙に涙が染みちゃった。こういう不備、サカズキさん怒るよー。

 もうゲンコツもされないだろうけど。

 

「……、……っ、…………。……」

 

 しばらくその場に正座したままぼうっとして、それから、膝に手を当てて立ち上がり、この家を去ろうとして、でもなんとなく……台所に立って、ご飯を作り置きした。

 冷めちゃうだろうけど、お味噌汁とか。おネギの入った玉子焼きとか。

 

 食べてくださいって伝言も居間の机に置いておく。

 ひょっとしたら、海賊になった奴の作ったものなんか食べられないって捨てられちゃうかもだけど、ううん、それでもいい。私がやりたいからやっただけだし、自己満足のため。

 

 他に何かやれる事はないか、残せるものはないかってうろうろして。

 そんなに時間がないから、焦って考えが纏まらなくて。

 気が付けばひたすら千羽鶴を折って部屋中に飾り付けていた。

 

 ……何やってるんだろう。こんなの絶対に怒られるのに。

 でも作っちゃう。おりおり。

 部屋中折り鶴まみれになってしまった。

 

 あ、そうだ。

 シャワー借りてこう、シャワー。

 さすがに畳に世界地図描くのは憚られるし。

 

 それほどここにはいられないなんて言いながら、お風呂を借りて。

 さっぱりして、すっきりして。

 再び振袖に腕を通した時、この着物を貰った時、幸せでいっぱいになったなーなんて思い出しちゃって、せっかく綺麗にした顔に一筋熱い水が流れて、溜め息を吐いた。

 

 ……はあ。

 ……私って、ほんとは天才じゃないのかな。

 何もかも上手くいくって、みんな笑顔になれるって、なんとなく思ってたんだけどな……。

 

 重い腕がぱたりと落ちる。

 まぶたを閉じて、肌触りの良い、きっと高級な振袖の感覚に意識を傾けると、なぜだか懐かしい顔が暗闇の中に浮かんだ。

 

 お父さんとお母さん。

 優しい声が脳裏に響く。

 

 

──私のかわいいミューズ。

──僕たちの女神。

 

 

 でも私は……誰も笑顔にさせられなかった。

 私は、女神じゃなかった。

 

 ……女神には、なれなかった。

 

 

 

 

「……中将殿?」

「あ」

 

 帰り際、ばったりミサゴさんに出会ってしまった。

 ……とても困る。

 咄嗟に袖で顔を隠したものの、人違いだ、なんて言えるほど私に似てる人はここにいない。

 なので顔を隠したって意味ないし、というか装備で私とばれるだろうし……今さら誤魔化しなど効かないだろう。観念して腕を下ろせば、いつも通り制服姿のミサゴさんが所在なさげに立っていた。

 

「あの、中将殿が海軍を抜けると聞いたのですが……嘘、ですよね?」

「……ううん。ほんと」

「ええっ!?」

 

 相変わらず綺麗な黒髪をさらりと揺らして歩み寄ってきた彼女は、あんまり事情を知らないのか不安げな表情を見せた。……そっと視線を逸らす。慕ってくれていた彼女の顔をまともに見ようとすると、動悸が激しくなって、だめだった。

 

「またまた、中将殿、今度はどのような思い付きを……」

「うそやなんかじゃないんだよ、ミサゴさん。……ほんとにやめたの」

「そっ……な、でも……で、でも……」

 

 私が肯定すると驚いて両手で口を覆った彼女は、その手の内で声をくぐもらせると、「なぜです」と目で問いかけてきた。

 私は答える言葉を持ち合わせてなんかいなかった。

 

 なんでなんて聞かれても。

 馬鹿な私が馬鹿な思い込みで馬鹿なことをしたからとしか言いようがなくて、だからもう戻れないの。

 ……そんなこと話したら、ミサゴさんだってきっと私を馬鹿って言うよ。

 

 なんとなく、それがすっごく嫌だった。

 だから私、彼女を見上げておどけるように笑って、高い声で「海賊になるんだ」と言った。

 彼女は数秒呆けた後に怒りで頬を染め、けれど「すぐそこに"麦わらのルフィ"が来てるんだけど」と続ければ挙動不審になって、「私ルフィさんと一緒に来たんだ。帰るのも一緒」って言ったら素早く周囲を索敵して、私の背中に隠れた。

 ……ついてくるんだね。

 

「あのっ、あのっ、この事はどうかご内密に……!!」

「うーん、私の事を秘密にしてくれるならいいかな」

「あ、それもそうですね! ……うう」

 

 彼女は私が海賊になるのは大反対みたい。

 でも、もう海軍には戻れないってのも察してくれたみたいで、変な顔をしていた。

 ……私を捕まえるつもりはないみたい。

 彼女の中では、まだ私は上司なのだろう。

 

 ……ごめんなさいも言えない駄目な上司なんだよ。

 もう慕う必要はないのに、どうしてぎゅって私の腰を掴むのかな。

 こつんって、頭を押し付けてくるのかな。

 ……私を怒らないのかな。

 

 

 

 

 

 本物のルフィさんを見た彼女は私以上にミーハーだった。

 きゃあきゃあ黄色い声をあげて、でも立場上近づくと後が怖いから近づけなくて、涙目で私にサインが欲しいとねだった。

 ええ……私だってまだ貰ってないのに……。

 いやまあ、ねだれるような間柄じゃないんだけど。

 とりあえず彼女の為に、一応聞くだけ聞いてみた。

 

「サイン? いいよ」

 

 軽い。

 私の分も書いてくれようとしたけれど、どの面下げてって感じだったからさすがに辞退して、預かってたミサゴさんのコートの内側にきゅきゅっと油性ペンで一筆いただく。

 あっ、なんかドクロっぽい絵も追加された。ドクロ……ドクロ??

 ……これ着て仕事するのか……危険な橋を渡るなあ。

 

「ふふ、ふふふ……いいじゃないですか……ふふふふ、ふふふ……」

 

 さっさとコートを返しに行けば、建物の陰で縮こまって待っていたミサゴさんは完全に危険人物になってしまった。

 ……見たくなかった、元部下のもはや犯罪なこんな顔。

 

 

「自分も見たくありませんでしたよ、元上司の泣き腫らした後の顔なんて」

「…………」

 

 トリップしていた様子の彼女に背を向けて戻ろうとすれば、静かな声をかけられて足を止めた。

 目元に手を当てる。涙は……ちゃんとお湯で流したはずなんだけど。

 

 少しの沈黙の後に、そっと問いかける声があった。

 

「……中将殿の正義、なんですよね」

「…………」

 

 正義……。

 私が掲げたのは……。

 ……"自由な正義"。

 

 ……"自由"ってなんだろう。

 身勝手とはきっと違うものだよね。

 縛られないで、どこまでも羽ばたいていけるような、素敵なもの。

 その羽ばたきが残す羽根の一欠けらさえ、私には掴めないような気がする。

 

「……(ちゅう)じょ……ミューズ、さん」

 

 彼女の声には答えられなかった。

 

 だって私、よくわかんないんだもん。

 ほんとは自由がどうとか。

 ……正義とか、悪とか。

 

 どうして私が生まれたのかとか、知りもしない誰かの記憶を持っているのかとか。

 なんで今生きてるのかとか、なんで泣いちゃったりするのかとか。

 どうしてお父さんとお母さんが死ななくちゃいけなかったのか。

 村のみんなが死ななくちゃいけなかったのか。

 

 誰もが優しくしてくれるのはなんでだろう。

 誰かを好きになっちゃうのはなんでだろう。

 

 私が何をしたいのか、何ができるのか。

 どうしたいのか。……どうすればいいのか。

 

 

「……海賊になるんですよね」

 

 ……改めてかつての部下からそう言われると、きゅっと胸が痛んで、胸元の布に手を当てた。

 ……そう。海賊になるの。

 子供の頃にそう決めたから、そうしようって思ったの。

 

「……自分はいつかミューズさんより強くなって、必ず捕まえに行きますからね」

「……好きにして」

「……! ふふっ、そうさせて頂きますね」

 

 顔も見ないまま吐き捨てるように言うだけ言えば、何がおかしいのか小さく笑いを零したミサゴさんの立ち上がる気配がして、私は身を固くした。

 

 さあ仕事仕事。誰かのせいで騒ぎは起きてるし、誰かが抜けたせいで書類が山盛り。

 

 珍しく愚痴る彼女に、それでも私は何も言えず、顔も向けられず、立ち去る事しかできなかった。

 

 

 

 

 女ヶ島に戻る船の中で、ルフィさんに「お前とエースがどんな関係かわかんねぇけど」と話の流れで言われた時、私はなんとも言えない微妙な気持ちに駆られた。

 どんな関係も何も、私とエースさんは赤の他人だ。

 

 それを台所で零せば、そんな馬鹿な話があるかってハンコックさんに呆れられてしまった。

 

 見ず知らずの者のために地位を捨て居場所を捨てて、命を賭けて戦う者がどこにいる?

 ……はっ、まさかお主も"恋"を……!?

 し、死に別れなど、考えただけでも胸が苦しい……!!

 すまぬ、軽率に責め立てた。愛しき者と死に別れて恋を失ったそなたを、(なじ)ったわらわを許してほしい……。

 

 ……とか、誤解が山のように積みあがったけど。

 ちょっと彼女と仲良くなれたのは収穫だ。

 でもルフィさんのお世話は譲らないって怖い顔。

 わかったよ。私は別の事でお役に立つから。

 

 という訳で、動けなくて体力持て余してるルフィさんに余興でワンピースのオープニング曲歌ったら、手を叩いて大喝采。

 電子ピアノも持って来たからある程度の伴奏もあって、それが気に入ったみたい。

 じゃあじゃあ! ってスクールアイドルの曲を歌ったら二秒経たずに眠ってしまった。

 そんなあ!

 

 

 

 

 起きたルフィさんに、どうして聴いてくれないんですか! って詰め寄った。

 こんな事するのは失礼なのに、どうしてか私、自然とそういう風にできてしまった。

 なんなら今からさいっこうの歌を歌うから、聞いて欲しい!

 ……と言ったら、ルフィさん心底嫌そうな顔をした。

 

「ええー、いいよもう。聞きたくねえ」

 

 …………オープニングの曲の時は喜んでたのに。

 どうして私の大好きな曲は受け入れて貰えないんだろう?

 ……きっと笑顔になれるはずなのに。

 ……笑顔にできるはずなのに。

 

「だってお前、歌いたくないって顔してた」

 

 …………。

 歌いたくない顔……ってなんだろう。

 

「そんな辛気臭い顔のやつが歌うのなんて聞きたくないぞ、おれは」

 

 どっさりとベッドに倒れ込んだ彼に、言外に、笑顔じゃないやつの歌が誰かを笑顔にできるはずないって言われたような気がして、私は項垂れた。

 その通りだ。

 私が笑って歌えないのに、人を笑わせられる訳がない。

 

 歌は……もうやめよう。

 

「え、やめんのか? もっと歌ってくれよー! 退屈なんだ、ここ」

「ええ……?」

 

 がばっと起き上がった彼に催促されて、困惑する。

 

 ど、どっちなの、ルフィさん。

 歌っちゃ駄目なの? 歌っていいの?

 わかんないよ、もう……。

 

 

 

 

 ルフィさんが孤島で"冥王"……レイリーさんと修行するって話になった時、私はどうしようかなって悩んだ。

 修行するのに付き合う?

 一人でどこかへ行く?

 

 私、ルフィさんと触れ合って、ずいぶん心が軽くなった。

 後悔はあるけど、まだ自分を信じていられた。

 だからこれからの事は、自分で決められる。自分の意思で未来を選択できる。

 

 ……アイドルになるのもありかなあ。

 顔割れてるから駄目かなあ。

 でもたくさんの人にスクールアイドルの素晴らしさを知ってもらいたいよなー。

 ……なんて、心にもない事を零してみる。

 

 まだ私、人を笑顔にできるような歌を歌える自信はない。

 だって、今まで誰もそんな事言ってくれたことなかったもん。

 「あなたの歌で笑顔になれました」……なんて、一言も。

 

 じゃあやっぱり海賊だ。

 

 海賊王を目指すとなると、ルフィさんに「なら敵どうしだな」って言われて心折られたからしばらくは選択肢に挙げらんない。

 どうしよう。

 ハンコックさんは九蛇の女になれって言ってたけど、それはなんかなー。

 里は賑やかで居心地よくて、みんな優しくて良くしてもらえてるけれど、ずっとここに留まるのは違うと思うんだ。

 

 ……まだまだ考える時間が必要だな。

 ……ちょっと、ルフィさんの様子見に行ってみようかな。

 

 

 

 

 鬱蒼と茂る危険な森に足を踏み入れ、不得手な見聞色を広げて安全地帯までの道を歩む。

 少し開けた空間に、胡坐を掻いて座るルフィさんと、傍に立っているレイリーさんの姿があった。

 

「……! やあお嬢さん。見学かな」

「……はい」

「そうか。いや、君はもう新世界でも生き抜けるほどの覇気を身に着けている。稽古をつけろと言われても困るところだった」

「…………」

 

 朗らかに話しかけてくる彼には悪いけれど、あんまり喋る元気がなくて、うーんうーんって唸っているルフィさんを眺めた。

 目をつぶって苦しそうにしてる。座禅とかいうんだっけ、こういうの。

 いったいその目の奥の暗闇でどんな困難と闘っているのかはわからないけれど……見ていて飽きない。

 ずっと見ていられる気がした。

 ……およそ二年くらいは。

 

「……そっちへ、座りなさい」

「……? はい……」

 

 レイリーさんが大きな木の根元を指さすのに従って、ざらざらとした巨大な根に腰かける。

 布越しに感じる冷たさがちょっと心地良かった。

 

「……ふぅむ。君は……孤独は好きかね?」

「え?」

 

 いきなりの質問に思わず彼の顔を見上げれば、いつも浮かべているのと同じ笑みが目に映った。

 自信に満ちたその表情は"孤独"という言葉からは縁遠そうで、なんで私にそんな事を聞いたのかわからなかった。

 

「どうかな」

「……ぇ、と」

 

 ……考えてみると……。

 私って、ずっと誰かと一緒に生きてきたから……。

 孤独っていうのがどういうものなのか、よくわからない。

 浮かんだ考えをそのまま彼に伝えれば、小さく頷かれた。

 

「そう見える。君は一人では生きられないタイプの人間だと」

「……?」

「はは、難しいかな」

 

 言葉の意味が分からなくて首を傾げれば、一歩近づいて腰をかがめ、視線を合わせてくれた彼が、そっと、寝る前にお話をするような落ち着いた声で語った。

 

「人は誰しも一人では生きていけない。その胸の内に孤独を隠し、強がり立ち振る舞っていてもどこかで誰かとの繋がりを求めるものだ」

「…………」

 

 黙ってじっとして声に耳を傾けていれば、不意に彼は困ったような顔をした。

 そうだな……そうか、なんて一人で納得するように呟いて、その意味さえ私にはわからない。

 

「難しい話ではない。君はまだ子供なんだ」

「……こども」

「そうだ。ほら」

 

 自然な動きで手を取られ、彼が広げた手の上に私の手を重ねさせられた。

 しわしわの手は、でも力強くてとっても熱い。

 血の巡る感覚に私の心は落ち着いて、ゆっくりと息を吐き出した。

 

「まだ、君の手はこんなにも小さい。掴めるものには限度がある」

「…………」

「だが腐る事はない。未来は如何様にも変じていく。……君は」

 

 ──自由だ。

 

 ……いつか、サボさんにも同じ事を言われた。

 私は自由。

 でも自由って何?

 自由だと何ができるの?

 私にはわからない。

 

「なんだってできるさ! 夢を追いたまえよ、お嬢さん。自分の夢を!!」

「私の……ゆめ?」

 

 夢。

 ……ルフィさんの方を見る。

 小さい頃に抱いた夢は、彼に会う事だった。

 その夢はもう叶っている。

 ……本当は、もっと綺麗に、もっと笑い合えるようなかたちで会いたかったけれど。

 

「そうだとも。そして一つアドバイスするならば……決して、一人で歩もうとはしない事だ」

 

 その理由は、先ほどレイリーさんが語って聞かせてくれたように、私が一人で生きていけるタイプの人間じゃないから、らしい。

 

 彼と話していると、そう言われた理由がなんとなくわかってしまった。

 強くなったから、地位があったから、誰かの前に立って動いていたけれど。

 ほんとは私……大きな誰かの後ろにくっついて歩いてるような子だったんだなって。

 

「……ふふ」

 

 ……とてもじゃないけど、王になる器なんて持てそうにない。

 それがどうしてかおかしく感じて笑ってしまうと、レイリーさんが私の頭を優しく撫でた。

 ……そういう風にかいぐりするの、やめてほしい。

 だって、急に涙が溢れてきちゃった。

 

 なんで、悲しくないのに泣いちゃうんだろう。

 みっともない。情けないから、握った手で目元を拭ってぐっと堪えようとすれば、レイリーさんの手が私の腕を掴んだ。

 

「涙を堪える必要はない。いつなんどきも立ち向かう必要はない」

「……ぅ」

「こんな格言がある。"涙は心の洗濯"だ。辛い時、悲しい時、たくさん泣いて気持ちを新たにする」

「っ、う、……ぅぅ」

 

 大人の男の人の声って……その大きな手って、どうしてこんなに安心させられてしまうんだろう。

 触れらていると涙がこられられなくてぼろぼろとあふれ出す。

 こんな場所で泣いちゃ駄目なのに。

 

「付き合おう。好きな場所へ行きたまえ」

「……」

 

 立ち上がった彼に、手で口元を覆いながらこくこくと頷いた。

 その気遣いが嬉しくてなおさら涙が出てきてしまう。

 

 ルフィさんに一声かけたレイリーさんが私の前に立ち、顔だけ振り向いて私を確認する。

 ……声を出せる余裕が無かったから、その背の布を掴んで、彼が歩き出すのに合わせてついていった。

 

 

 

 

 

 

 月に行こう。

 

 

 

 

 2年の歳月が経った。

 あっという間と言うには長い時間。

 月に行ったり女ヶ島に戻ったりの生活を繰り返していた私は、のびのびと育って、現在9歳。

 ……身長もぐんっと伸びた。

 なんと144cm!!

 

 つよい。

 世界獲ったな。

 

 2年前の私が130無かったのを考えると、まるでヤルキマン・マングローブのようににょきにょき伸びたよね。

 めっちゃナイスバディにもなった。

 半年振りに顔を見たルフィさんは、私が自慢げに体を見せびらかすと、上から下まで眺め回してから「変わってねぇな!」と笑った。

 ……変わった!!! めっっちゃ成長したから!!!!!!

 

 ……2ミリくらい。

 

 

 

 この2年、私は特に何もしてなかった。

 女ヶ島特有の料理とか覚えたり歌とか覚えたり素敵な曲を広めたりはしてたけど。

 海に出たりはしなかった。……革命軍に戻ろうともしなかった。

 だって私、本拠地であるバルディゴ? って島がどこにあるのか知らないし、彼らの連絡先も持ってないのだ。

 戻りたくても戻れないし、海賊になるのなら戻っちゃいけない。

 そもそも合わせる顔も持ってないし。

 

 

 海賊になるにあたって、神様の説得は完了した。

 一度地球に行ったからって完全にだらけモードに入ってたけど、色々手段を講じて、最終的にめっちゃべったりしてからあっさり離れようとすると勝手についてくる事に気付いたので簡単な話だった。

 

 

 それから私、死ぬ気で「にっこにっこにー!」の練習をしたのを、ルフィさんに見せた。

 ……私には秘策があったのだ。

 絶対に私の中の素敵なものの魅力を知ってもらいたいって思ってる相手が歌を聴かせるとすぐ寝ちゃうならどうすればいいのか。

 あれだよね。ノリ良く楽し気な動きをすれば一緒にやってくれるよねって思いついて。

 

 ……うん。

 私は偉業を成し遂げてしまった。

 彼としては「冗談じゃないわよーう」ってやるのとおんなじ感覚だったんだろうけど。

 ……うん。

 ルフィさんがやるとハンコックさんも一緒になってやるよね。

 皇帝であるハンコックさんがやると国のみんなもやるよね。

 ……うん。

 

 世界の矢澤は伊達じゃなかった。

 ……ちょっと後悔した。

 

 

 

 

 出航の日だ。

 ルフィさんの目的地はシャボンディ諸島。

 そこで仲間と待ち合わせてるんだって。

 

 ずいぶん仲良くなれた私にお誘いの言葉はなかった。

 だってもう、同じ高みを目指すライバル同士だって思われちゃってたみたいだから。

 

「今ならお前がすっげぇ強いってことわかるんだ。いずれぶつかり合う時がきたら、そん時は全力だ!」

 

 ……なんて、握り拳を突き付けられて、強敵認定されちゃった。

 強さを肯定されるのは嬉しいな。ルフィさんが相手だとよっぽど。

 

「……"耳たぶ"、お前も元気でやれよ!」

「話しかけるな"ゴムの男"……ヤッハハ! いずれこの地上も私の支配下に置いてやる!」

 

 ひょっこり地上に下りてきた神様は、最初はルフィさんと睨み合っていたけれど、特に悪さしてないと普通に会話できるくらいにはなるみたいで、顔を合わせるといつもこんな調子。

 神様はたぶん本気で言ってないんじゃないかな。面倒そうだもん。

 そしてルフィさんは一見友好的だけど神様の名前覚える気一切ないあたりちょっと怖い。

 

 ……でもあだな付けてもらえてるのは羨ましくもあったり。

 私は最初から名前呼びだったからなあ。そんなに特徴ないかなー。

 「壁」とか呼ばれたら大泣きする自信があるから、やっぱいいかな……。

 

 さて、私達は空を行く船マクシムで出航だ。

 神様なしで滞空できるのは、昔月に行った時に勝手に弄ったからだね。

 結構単純な構造だったから私でも改造できました。楽勝。

 

「じゃーなーミューズ! またな!」

「はい! また会う日まで、ごきげんようです!」

「ああ! それと、ありがとうなー教えてくれて! 本当の本当にありがとーなー!!」

 

 なー、なー、なー……。

 小さな船で海を行く彼へ手を振ってお別れする。

 その姿が見えなくなるまで、その声が聞こえなくなるまで。

 ……。

 

 さて、ここからは私と神様の、未知の冒険の始まりだ。

 行き先は特に決まってない。

 

 神様の気の向くまま観光するだけ。

 と言いつつ私が行きたい場所に連れてってくれるのだろう。

 暇を持て余した神様の遊びって感じだから、わりとなんでも言う事聞いてくれるの、私知ってるよ。

 

「お」

 

 ニュース・クーが新しい時代の到来を告げる。

 お金を払って新聞を貰い、ちらっと流し読み。

 うがっ、つまんない話ずらっと並んでてグラッときた!

 ……さっさと手配書見よう。

 

 ルフィさんが4億の大台に到達していた。

 死亡説も流れる中、よくぞここまでって感じだよね。

 それから……ああ、やっぱりあった! 私の手配書!

 びっくりなのは、神様のもある事だよね。あの戦争で大将に攻撃仕掛けたんだから手配されても仕方ないのはわかるけど、いつの間に写真撮られたんだろう……狂気的な笑みを浮かべ手の平を差し向ける凶悪写真の下には、破格の懸賞金が載っていた。

 

「"神"……名前は載ってないね。懸賞金は──5億5600万だって! 初頭手配でこれはすごい!」

「当たり前だろう? 私は神だぞ」

「はいはい神様すごいすごい。(わたし)の方は……」

 

 これもまた、いつ撮られたのかわからないけれど、日差しの中で誰かと喋っているのか、やや上を向いて柔らかい笑みを浮かべた私のバストアップ写真が掲載されていた。あ、たぶんウミサカさんと廊下でサカズキさんのお話してた時のやつだ。「怖い人ですね」、「ですねー」って。ちゃんとお話すればほんとはそう怖い人じゃないってわかるんだよ。顔は怖いけど。顔は怖いけど。なんて話しては盛り上がっていた。

 

 でもでも、これじゃあ全然海賊って感じがしない。なんか、穏やかな昼下がりのひと時って感じだ……。

 懸賞金は……うわあ。

 

「"天女"ミューズ 懸賞金6億ベリー……」

「ほう? 生意気な数字だな」

「もうっ、拗ねないの! 私だって驚いているんだから」

 

 のの様棒でつんつんしてくる神様をぺしっと叩いて、改めて手配書をじっくり見る。

 初頭手配でこの金額なのは、元中将だからなのか……金額の決め方とか、そこら辺の事は管轄外だからあんまりわからないけれど。

 それよりも気になるのはその下。

 

 

 そこには──『ONLY ALIVE』の字が躍っていた。

 




TIPS
・『ONLY ALIVE』
生け捕りのみ。

・6億ベリー
懸賞金は政府への脅威度。
行動の意図が分からず何をしでかすかわかったものではないミューズは
完全に危険因子である。
能力者になったら怖いなーとみんな思っている。

・神様
空飛ぶ船とか反則じゃん。
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