ミューズの頑張り物語   作:月日星夜(木端妖精)

20 / 27
投稿遅れました。申し訳ないです……。

十九話、ルフィが殴り掛かる理由が薄かったので加筆修正しました。

>恩返ししようとしてるなら、止めたくないなって、私は思ったんだ。
の部分から、
>「街の人達は、良い人ばかりだったでしょう?」
の間に加筆しました。



第二十話 妖精の森でサカズキと握手

「団長と私は、従妹の関係なのです」

 

 テーブルについた私達……私とナミさんとウソップさんとチョッパーくんに向けて、コーニャさんがそう説明した。

 

 

 ……動揺した心を落ち着けるため、みんなで机を囲む事を提案したのは私だ。

 沈痛な面持ちで仲間達を見る彼ら彼女らが居た堪れなかったのもあるし、私だって一人でどうしようって考えるのが苦痛だったから、集まっちゃえって思って。

 

「そしてこの国の王家には特別な血が流れているらしく……」

 

 ただ、ナミさん達、そこまで弱ってはいなかった。

 よくもやってくれたわね、全面戦争だ、ほわちょー! って大張り切り。

 この落とし前、きっちりつけなくちゃ気が済まないって感じ。

 ……でも敵怖いよね。めっちゃはやくて怖いよね。私はジャシンの動きがきもくて駄目だった。あ、思い出したらおトイレ行きたくなってきちゃった……紅茶がぶがぶ飲んでるせいかな。でもあったかくてほっとする味、落ち着くんだもん。

 

「私にもその血が流れて……」

 

 ミルクたっぷりの紅茶にお砂糖を少し追加して──魔法を使わずに淹れたものだ。砂糖もミルクも机の上に用意されている──、カップを両手で持って口元に近づけ、ふーふーする。それから縁を唇でちょこっと挟んで少しだけすする。

 あちっ。あちち……もうちょっと冷まそう。

 

「早い話、彼らはその血が欲しいのでしょう。……世界の王うんぬんというのは、初めて聞きましたけれど」

 

 ぽつりぽつりと、あんまり早くないペースで語る彼女に、根気よく耳を傾ける面々。

 コーニャさん、眠たそうな表情に似合うゆっくりとした喋り方だから、少しお話を聞くだけでも時間がかかってしまうみたい。

 

 ただ、彼女に話してもらった内容は、さほど重要ではない。

 彼女は話す事で、私達は聞く事で一度気持ちの整理をしようとしているだけなのだ。

 言わば再起までの繋ぎ。

 

 ジャシンの言ってた約束って? って聞いたり、消沈する彼女を宥めたり。

 ……乱心した王に取り入ったジャシンがこれ以上民衆に危害が及ばぬようコントロールしたり、幼い頃にお城から追い出された王女達の生活を保障した、その代わりに時が来たら身体を差し出してもらう、という約束。

 当時守ってくれる母はおらず、父はおかしくなっていて、街の人達はこれまでの重税や悪政で自分の生活で手一杯。着のみ着のままの王女二人は、その提案を蹴る事はできなかったという。

 

 そこだけ聞けば、まあ、思惑はあれど良い事してるって思えるけど……自分の嫁にって凄いひくし、王女を嫁にしたらジャシンが王様になるんでしょ? ……海賊が王様に、ねぇ。悪い予感しかしない。そういう風になりそうだった国と、なってしまっていた国を知っている身としては余計に不安だ。

 

 それに、リンさんの方は直接的に命を救われた事もあるみたいで……。

 詳しい事を話してくれる様子はなかったけど、それが事実なら、たしかにリンさんが従ってしまうのもしょうがないと思えた。

 ……でもさぁ。

 

「リンさん、取り戻したいよね」

「…………」

 

 連れてかれるの嫌がってたから、今一度気持ちを確認しようと問いかけてみたけど、コーニャさんは濁すようにもごもご口を動かすだけで何も言ってくれなかった。

 ジャシンに猛反発してた彼女だけど、約束ってのをそうやすやすと破れないのだろう。……難しい話だ。感情とか義理とかそういうのが絡んでくると、単純明快にはいかなくて困る。

 

 お前を王様になんかさせるか、約束なんて知るか、恩も知るかってぶっ飛ばしてリンさん取り戻して、めでたしめでたしになれば良かったんだけど、そんな事したら二人とも不義理な人になっちゃう。

 海賊相手なら嘘ついたり約束破ってもいいんじゃないとは思うけど、相手はいつだって同じ人間。割り切れるもんじゃないと思うし。

 

 だんだん口数が少なくなって、喋る元気も無くしてしまった様子のコーニャさんに一言声をかけてから、ナミさん達へと視線を移す。

 

「あの、今さらですけど、お久し振りです……」

 

 あらたまってご挨拶したら、苦笑いを返された。

 さっきは神様がいて挨拶どころじゃなかったけど、一緒にご飯食べたりしてはいたから、今さら挨拶するのは変な気分だよね。

 

 そうえいばドレスローザでも挨拶する機会を逸してしまっていたけど、ルフィさんが私も宴に呼ぼうとしてたらしかったから、いたのは知ってたみたい。

 だから私の顔見て、すぐ私だって気付いてくれたのかな。

 二年前から全然変わってなかったからわかった、とかじゃないよね……?

 

「前もそうだったが、お前は急に現れるなー」

 

 とウソップさん。

 前は、月を目指していた時だったかな。それで落っこちて、彼らの船に遭遇した。

 手当てしていただいて、また月を目指そうって奮起した。

 

「たしか……そう! 前は『月を目指す』って言ってたわよね」

 

 ナミさん、私がしどろもどろで説明した言葉、まだ覚えてくれてたんだ。

 でも失敗して海軍本部に落っこちた。サカズキさんやガープさんに手を引かれて海兵になって、でも……恩返ししたかったから、その機会があったから、海軍を辞めた。

 今振り返ってみると、もっと何か違うやり方があったんじゃないかなって思える。

 ……あの頃じゃそんなの、思いつきもしなかっただろうけど。

 今考えられる何かも、あの時失敗したからこそ思いつくものばかりで、なんの意味もない。

 

 ……ここら辺の話はさすがにする必要はないというか、あんまり面白い話じゃないのでぼかして、その後はどうしてたのって聞かれたので海賊になった後の話に移る。

 といっても、海賊になってからは神様と二人気ままな旅を続けていただけだ。

 

「あのエネルを仲間に、ねぇ……」

「えへへ……あんまり言う事は聞いてくれないんですけどね」

「あー……」

 

 でしょうね、みたいな反応されたけど、それでも驚きは尾を引くようで、少しの間沈黙が下りた。

 

「……そっちは、どうだったんですか?」

 

 今度は彼女達の話を聞いてみる。

 麦わらの一味は話題に事欠かなかったから、記憶がなくとも知れる機会は結構あったけど、実際に経験した本人達が生で語ってくれるのとじゃ温度が違う。

 詳しく……ではなかったけれど、それぞれが仲間になった時やここまでの旅の話を掻い摘んでしてくれた。

 

 ゾウという島であった事は話してくれなかったけれど、私は記憶で知っている。

 だから、ちょっと気になった。そういえばなんでサンジさんいるんだろう、って。

 てっきりゾウにつく前にここに来たのかなって私は思ってたんだけど違うみたいだし……それにしたって、麦わらの一味しかいないのはなんでだろう。

 

 むむむ……事情を知らないはずの私がそれを尋ねるのは怪しすぎる。そんなので不信感を持たれたくない。

 いるならいるでいいや。サンジさんのご飯美味しかったし……。それで、いないのはいないでいい。ミンク族とか忍者とか一度は会ってみたかったし、めっちゃ忍術見てみたかったけど、会わなきゃ死ぬって訳でもないし。

 

 それからナミさん達は、私に聞かせるというよりは、ウソップさんやチョッパーくんとの間で嘆くようにここまでの道のりを話し出した。

 

 ………………。

 

 ……聞く限りでは、だいぶん苦労したようで……。

 ルフィさんの船とローさんの船は、「四皇」百獣のカイドウが占拠するワノ国に向けて出発し、道中トラブルがあって船がはぐれ、合流しようとしていたところでこの島を見かけ、祭囃子と出店で焼かれる肉の匂いに惹かれたルフィさんが上陸を宣言。

 朝方島へ乗り込んで、そして今に至る、と。

 ほんとはすぐ島を発つ予定だったみたいだけど、そうできない状況になってしまった……。

 

 静かに耳を傾けて半分盗み聞きみたいな事しちゃったけど、やっぱり今の話でもなぜサンジさんがいるのかはわからなかった。

 ビッグ・ボス……マムだっけ。からの招待状……結婚式だったかな。そういうのに招かれて、一味は二手にわかれた、と記憶している。

 でも実際はわかれてない。

 

 あ、でも、別にそんなに気にする事でもないか。

 知ってる未来じゃなくなっても構わないって昔に考えたのは私だし、未来が、今この時間が記憶と違う道筋を辿っていたとしても、結局ルフィさんが海賊王になるのは変わらない。うん、変わんない変わんない。

 

 でも、そうだなあ……時期がずれちゃうと、ビッグ・マムと戦うのは大変そう。彼の冒険を邪魔しない程度に力になりたいなあ。……神様せっついてなんとかやってみよう。

 それより今は、こっちの問題を先に解決しなくちゃだね。

 

「そういえばミューズ、あなたも四皇に喧嘩を売ったって……」

「なんかの間違いだよな? そんな無謀な事すんのルフィくらいだよな!」

「うんうん」

 

 と三人。

 ……残念ながら事実ではあるけど。

 

「はい。私はそんな事しません」

「ですよねー。それが普通なのよ……」

「うちの船長ときたら──」

「でも神様はやりました」  

 

 ガタ、ガタ、ガタ。椅子の動く音が三つ。

 ……なんか心なしか距離をとられた気がする。

 地味に傷ついたので紅茶をぐいっと一気飲み。席を立ち、紅茶を淹れ直す。

 

「みなさん、お代わりはどうですか」

「ごめんね、いただくわ」

「そうか、そうだよな。あっちの方かー……」

「大変だなー、ミューズ……」

 

 ちょっと声に不満が出ちゃったみたいで、困ったように笑われながら、カップが三つ差し出された。大変……が何を差してるかわからなかったので、愛想笑いで誤魔化す。

 

 それぞれに紅茶を注いで、コーニャさんの分もいれる。

 ……ずーっと聞きに徹してぼうっとしてるけど、大丈夫かな、コーニャさん。

 ……大丈夫な訳ないか。リンさん連れていかれるのすっごく嫌がってたもんね。気が気じゃないよね。

 

「さ、そろそろ作戦会議といきましょ!」

「おう。ルフィ達をこのままにしとく訳にはいかねぇ!」

「ごめんな。おれ、さすがに呪いは治せなくて」

 

 コーニャさんの様子もあって、三人はぱっと切り替えると、さあどうしようかって話し出した。

 私も自分の席について、一度部屋の中を振り返って、呪われてしまったみんなの後ろ姿を眺めてから、作戦会議に参加する。

 雑談でだいぶん気持ちもリフレッシュしたから、もう大丈夫だ。

 

 いったん体勢さえ整えてしまえば、後は野となれ山となれ。

 というか基本私はワンオンワンというか、一人で色々できるので乗り込んで暴れるのは容易い。

 黒い人、たしかに速いけどなんか私に能力効かないみたいだったし、そうするともう雷人間とか光人間を相手するのと大差ない。戦い方はある。

 

 ……あー、でも、あれだよなあ。

 黒い人、魔法じゃなくて能力って口走ってたよね。それって絶対悪魔の実の事だよなあ……。

 だからジャシン、私から戦鬼取り上げたんだと思う。

 なら、次触れられたら私止められちゃうかもしれない。……というかさっきあそこで撤退されなかったらみんな固められちゃってたのか。結構ピンチだったんだな―……全然そんな感じしなかったけど。

 ……なんで黒い人逃げたんだろう?

 

「ねぇ、あの黒い人って誰だかわかる?」

 

 ただ、悪魔の実の能力と断定するのはまだ早い。だってこの国には魔法があって──もっとも使えるのはごくごく少数のようだけど──黒い人は魔法を使うと言われていたのだ。だからコーニャさんに問いかけてみる事にした。

 ジャシンが私から刀を奪ったのがたまたまで、黒い人が魔法の事を能力って呼んでただけなら、悪魔の実と思って海水でなんとかしようとして、魔女さんが忠告した通りみんな溶かしちゃったりしたら目も当てられないからね。

 

「ポペペ、です。ジャシンに付き従う忠実な部下……それ以外の素性は、はっきりとは……」

「あいつがリンちゃんのお姉さんを固めちゃった、魔法使い?」

「はい。……触れたものから時間を奪い……自分の時間を自在に操る、黒い魔法使いです。その魔法を用いて素早く動いていたようですね」

 

 ……やっぱり悪魔の実じゃね? って雰囲気が私達の間に広まった。

 しかしほんとに魔法かもしれない。

 うーん……。

 

 それから、紅茶を飲みながらちょっとずつみんなと話し合ったのだけど、悪魔の実の能力か、はたまた本当に魔法なのかは断定できず。

 コーニャさんが悪魔の実の事を知らなかったのが痛い。どっちなのかがはっきりしてればこっちもとるべき姿勢を決められたんだけど。

 

「……」

 

 なんとなく、机の向こう側。壁際に立つ一人の少女を眺めた。

 はっきりした金髪は短く揃えられていて、幼さを濃く残した顔立ちはリンさんとそっくり。

 特徴のない布の服とエプロンを身に着けたその子は、両腕を広げて誰かを庇うようにして立ち、強い視線を斜め上へと投げかけていた。

 

 彼女が、セラスさん。セラス・ミルフィーユ。

 上の倉庫から下ろしてきた──特に意味はないけれど──彼女は、どうにも私と同い年くらいに見える。

 

「……セラスさまがご健在だったなら、御年22歳になられていたでしょう」

「"呪い"にかかってると成長も止まっちゃうんだな」

 

 そこら辺、興味を引かれたのか、少し感心したような声音のチョッパーくん。

 使いようによっては医療にも大いに利用できそうな能力だ、だって。

 今ルフィさんが死んじゃわないのも、固められてて毒が回っていないからだそうで……うん? いつの間に検診したんだろう。

 ……最初にみんなが動かないのを確かめてた時か。

 

 呪いが解けさえすれば、魔法である程度中和させる事はできるとコーニャさんが言ってくれたので、やっぱりまずは呪いを解くのを優先しなくちゃ。

 

「…………」

 

 物言わぬ少女が灯りに照らされている。

 

 彼女、今も私達のこと見えてるのかな。

 固まった緑色の瞳には私達が映っているけど、こちらからじゃいくら覗き込んだって、何を思っているかなんて読み取れなかった。

 

「呪い、解いてあげたいな……」

 

 ぽつりと呟けば、そうね、そうだなって、みんな同意してくれた。

 私の気持ちは、たぶん安い同情とかそういうのだけど……助けたいって思っちゃったんだもん。そうしたいって思ったなら、そうするのみだ。だって私は自由なんだから。

 

 ……あ、自由といえば。

 お城行ったら、リンさんに教えてあげなくちゃ。

 恩に縛られた考え方ばかりしちゃいけないよーって。

 

 

 

 

 呪いを解く確実な方法なんて一つしかなかった。

 それは、魔女のお薬。

 あれなら目の前で実証されてる訳だし、確実にみんなの呪いを解けるだろう。

 だから魔女の住む森へ行く事になるのは当然の流れだった。

 

 私達がいた砦には、四つの出入り口がある。東西南北に当てはめると、南が海岸への扉で、北が王国側。東と西が森へ出る扉になっている。

 王様が築いた高い壁は、この"妖精の森"と呼ばれる森林を挟むようにして海側と街側に二重に伸び、円状に島を覆っている。

 

 指を振って固く扉を閉ざしたコーニャさんが私達を振り返る。

 

「準備はいいです?」

「ええ!」

「さっさと魔女んとこ行って、薬を貰わなくちゃな!」

「道案内にコーニャがいるんだから迷う心配も無いし、結構楽勝なんじゃないか?」

「……そうだと、いいですが」

「えっ……ちょ、ちょっと、なにその懸念顔……」

「おれの"ヤバイモノセンサー"がにわかに反応しだした」

「おれも嫌な予感してきたぞ……」

「その、森には魔女殿のかけた魔法が数多あり、怪物が徘徊するという噂もあって、その屋敷へ辿り着く事は困難と聞きます。私も実は、行った事はなく……」

「え」

「え」

「え」

 

 あ、綺麗に三人の声が重なった。

 ……道案内が道案内でなくなってしまった……そういや一緒に来ると言ってくれたコーニャさん、案内するとは一言も言ってなかったな、うん。

 まあ、森が安全でなさそうってのはなんとなく気配でわかってたから、そっちに動揺は無いけど。

 ……でももし見聞色で何も感じていなくても、昼間っから馬鹿みたいに薄暗くて変な動物の鳴き声がくぐもって響いてくるこの森に入るのには勇気がいると思った。私も一人ではあんまり入りたくないな。

 

「この中で戦える人ー!」

「おれは無理だ……今突き指した」

「え、大丈夫かウソップ。ちょっと見せてくれ」

 

 やばそうだよーというのを彼女達に伝えたところ、いきなり手を挙げて声を出すナミさんにびくつく私とコーニャさん。

 えっと、いちおう戦えると思うので……控えめに手を挙げてみれば、それにならってか、コーニャさんも手を挙げた。

 ──それじゃあ私達は砦で待ってるから、お薬よろしくね!

 ……とか、ナミさんが言い出したけど……。

 帰っちゃうの? ほんとに? って見てたら、気まずそうに「冗談よ」と発言を取り下げた。

 

「ほら男ども、気合い入れる! あいつら私達の仲間なんだから、私達がやんなくてどうすんのよ!」

「そ、そうだよな。それに怪物ったって、おれはそんなもんごまんと見てきた。今さら怖かねぇ!」

「そうだ! おれも強くなったんだ!」

 

 ふん、と鼻息荒く気合いを入れ直す三人に、弱気の虫は退散したみたいだ、と微笑む。

 ……仲間が一気にやられて、腰が引かない訳がないよね。私だって神様やられたりなんかしたらビビっちゃうと思うし。

 けど、彼らはもう大丈夫みたい。

 

 改めて私達は森に向き直り、どこまでも続く木々の合間の暗闇を見据えた。

 

「それじゃ、行きましょう!」

 

 おー! と声が重なって。

 さて、私達はコーニャさんを先頭に、鬱蒼と茂る森へと気合いの乗った一歩を同時に踏み出した。

 

 一秒ではぐれた。

 

 

 

 

「ナミさぁーん……コーニャさぁーん……」

 

 サクサクと落ち葉を踏みしめ、時々木の根を乗り越えながら森の中を歩く。

 声を出せば不思議と良く通るのに、返事はないし、どころか彼女達の声も聞こえてこない。

 ……森に魔法がかかってるとは聞いてたけど、一歩でも足を踏み入れたら強制的に瞬間移動させられるとは聞いてないよ……。

 

 みんな大丈夫かなあ……こんな事なら神様に見聞色の覇気習っとくんだった。……いや、教えてくれないだろうけど。

 

「ウソップさぁーん……チョッパーくーん……」

 

 うう、心細い。

 私って一人で生きてけないタイプなんだよー。誰かと一緒にいなくちゃ寂しくて死んじゃうよ。

 冗談抜きで胸が潰れるような感じがしてて、息苦しいし……ううう、不安だ。

 

 何が出てきたってやっつけられる自信はある。ただ、誰かといたいだけ。

 孤独って本当に敵なんだなぁって実感した。

 

 ぴょろっと飛んできた一つ目蝙蝠を手の甲で叩き落したり、いきなり動き出した根が突き刺してくるのを蹴り折ったりしつつサクサク歩いていると、見聞色に引っかかる大きな存在感があった。

 それが怪物なのか、はたまた別の何かかはわからない。というか具体的にどこにいるのかも特定できないのは……この森の不気味な雰囲気が原因なのかな。

 

「同志よ」

「──!?」

 

 ふと耳元で聞こえた声に、振り向きざまに右足を振るって空気の刃を飛ばせば、少し遠くにある太い木の幹にズバンと切れ込みを入れた。

 そろり、足を下ろす。……思わず攻撃しちゃったけど……えーと、今の声は?

 

「同志よ。そのまま聞くが良い」

 

 声の指示を無視してサクサクと音源に向かう。

 私、これでも耳は良い方だ。どこから喋ってる声が聞こえてるのかくらいはわかる。

 人一人隠して余りある、しかしこの森の中ではそう珍しくない太さの木の、裏側。

 そこに誰かいる。

 

 誰かというか……この声は……。

 

「ミューズ。お前は革命軍の同志ミューズで間違いないな」

「え?」

「……えっ」

 

 あ、なんか予想と違う事言われたから素で反応しちゃった。

 この声、絶対あの黒い人でしょって思ったんだけど……いや、今の半音上がった上擦った声、耳に新しいから間違えるはずないよ。

 

「エヴェイユ村の生き残り……」

 

 それは、私の生まれた村の名前だったような。

 そして私が唯一の生き残りなのを知っているのは革命軍の人達だけだ。

 簡単に調べられるもんでもないと思うし……本物の革命軍の人、なのかな。

 

「……まあ、革命軍では……ある……?」

 

 ……のかな? いや、あった、が正しいと思うんだけど。

 私自身は海賊になったつもりだ。しかし革命軍を抜けた事になってるかは定かではない。

 サボさんは明確にそこら辺のことは言わなかった……けど、いや、でも二年と数ヶ月経ってる訳だし……抜けた事になってるんじゃないかなぁ。

 じゃあなんでこの人私を革命軍の同志だ、なんて言ったんだろう。

 

「……同志よ」

 

 小さな咳払いの後に、やや疑問形の声がかけられた。イントネーションのせいで「どうしよう?」って言ってるように聞こえて、首を傾げながら樹木まで辿り着き、幹に手を添える。

 ……しかし革命軍か。革命軍の人がなぜジャシン……新世界の海賊の部下やってるんだろ。

 

「わたしは革命軍、特殊潜入調査部のアンサ・スペクト」

「……ぽぺぺ?」

「そ、それは偽名である……!」

 

 アンサ・スペクトさん……ぽぺぺ、偽名だったのか。……え、偽名でこれ名乗るの? この、なんかコミカルでかわいい感じの名前を。……もっと他にいいやつ思いつかなかったんだろうか。

 

「わたしの事などどうでもよいのだ……! 同志のよしみで、情報と忠告を持って来た」

「忠告……?」

「そちらを先に聞きたいならば話してやる」

「……いや、情報ってのをお願いします」

 

 とりあえず、ここは聞きに徹する。

 騙されてるってのも考えにくいし、もしそうだったとしても話を聞いてからぶちのめせばいいだけだ。

 この人倒せば呪いは解けるかもしれないんだし。……いや、すぐ倒しちゃうとルフィさんが危ないから、そこら辺加減しなくちゃいけないのか。私、加減苦手なのになー。というか加減して勝てる相手なのだろうか?

 

「ベギリニィ・ジャシン。この男についてどこまで知っている」

「名前と、この世界の王になるって目的」

「そうか。ではまずそこからだ」

 

 姿を見せないままのアンサさんが淡々とした声で語る。

 新世界出身の旧時代の海賊、ジャシン。懸賞金は6億6千万……ここ十二年間で一度も上下していない、と意味深に言われても、いまいちピンとこない。

 

 そういえばジャシンは私を格上って言ってたけど、懸賞金って強さを示すもんじゃないし……どうしてそんな言葉が出てきたのかも気になる。

 初対面で相手の実力を見抜くような力が彼にはあったのだろうか。

 私はー……大きいな、強いなってくらいしか感じなかったんだけど。

 

「……何をしていても1ベリーも上がらない……政府とのパイプがあるからだ」

「……」

 

 七武海でもないのに政府と繋がってるんだ。……でもそれを教えられても、どう反応していいのかわからない。繋がってるから、なんだろう。簡単に捕まらない?

 ハテナマークばかり浮かぶ私の心の内を察してくれたのか、彼は早々に難しい感じの話から手を引いてくれた。

 

「食べた悪魔の実は「ヘビヘビの実」、モデル"ヤマカガシ"。毒蛇だ」

「ああ、それで毒出せるんだ……手からも?」

「奴の能力は覚醒している。異常なタフさの他に、体の一部分にのみ蛇の形を出現させる事ができる」

「……"超人系(パラミシア)"みたい」

 

 あの手をパクパクさせる仕草、そういう意味だったのね。なるほど、ルフィさんの拳を掴んだ時に"噛んだ"わけだ。

 

 それから、アンサさんが語るのを聞くに、ジャシンという男の継続戦闘能力は相当高いらしく、並の打撃や斬撃は武装色に阻まれてダメージすら通さず、毒なども通じず、能力による拘束も抜け出してしまうらしい。

 

「"パネパネの実"の能力者によってこことは異なる次元へ飛ばされた時、奴は脱皮してこちらに戻ってきた」

「だっぴ? あの、抜け殻作る……」

「その脱皮だ。これを行ったジャシンは万全の状態に戻る。詳しいことはわからないが、ほぼ無敵のタフネスさだ」

 

 重い打撃や鋭い斬撃で傷つけ追い詰めても、脱皮されたら全回復。どれほどのスピードがあろうが自分一人では攻め切る事ができないんだとか。だから機を窺ってる、とアンサさんは話に区切りをつけた。

 

「わたしはこの国を奴の墓場にするつもりだ」

「え、でも一人じゃ倒せないって、今……」

「一人ではない。同じ目的を持つ戦士は育ち、強力なバックも得た。あとは決起の日を決めるのみという時にお前達が来たのだ」

 

 それは……タイミングが悪いというかなんというか。

 

「ゆえに、お前達は早々にここを立ち去るといい」

「そういう訳には……刀とり返さなきゃだし。っていうか、あなたの魔法でみんな固められちゃってるんだけど?」

「……悪魔の実の能力だ。わたしは"トキトキの実"の時間自在人間。触れた者の時間を奪うなど造作もなく……開放するのもまた同じ」

 

 だが、今すぐ解放すれば困るのはそちらのはず、と言われて、そりゃそうだと頷いた。

 ルフィさんの毒、魔法じゃ完全に解毒できないみたいだし、それ以前に今砦には誰もいない。

 できるなら解いてすぐ回復させてあげられるような状況を整えておきたい。

 

 ……あれ? ひょっとして、ルフィさんが毒にやられたのを見て彼を固めてくれたのだろうか。

 

「そうだ。ジャシンの援護をすると見せかけてお前達に手を貸した。時間の牢獄に囚われた者は例外はあれどもはや(ムクロ)も同然になり、死した者にジャシンは興味を示さない」

 

 折を見て船に乗せ、海に流し、任務を終えてから能力を解除するつもりだった、と説明する彼に、私は一度空を見上げた。枝葉に遮られた薄暗い空。

 つまり、何度も動揺してた姿は演技だったのか。たしかにちょっと、わかりやすすぎるというか、わざとらしかった……。

 

「どうも、ありがとうございます。助けていただいたみたいで……」

「いや。お前を止める事ができなかった。ゆえにかなり強引な撤退になってしまった。現在わたしの信用度はやや落ちている」

 

 あ、そうだった。それが悪魔の実の力である以上、海楼石によって打ち消されてしまうから、私にかからず彼は動揺して……あれ? 動揺は演技なんじゃ……。

 

「と、当然演技だ。わたしは常に冷静沈着な男……現に瞬時に次の手を打っただろう」

「……私の名前聞いて噴き出したり、私に蹴られそうになって大慌てしてたのも?」

「あれは……まさか話に聞いていた同志がこんなところにいるとは思わなかったからだ。それとお前、自覚ないのか……」

 

 ……なんのかな?

 幹の向こう側から聞こえてくる声に若干の呆れが含まれているのを感じながらふと浮かんだ疑問を口にする。

 

「十二年前の、この国の王女様に呪いをかけたのは……」

「そうしなければならない理由があった。この件に関してはそれ以上詮索するな。計画に響く」

 

 む、そんな事言われてもな。リンさんの苦悩を目の前で見た私には、聞くなと言われても納得いかない。

 いかない……けど、ここで反発するほど私も子供ではない。

 胸に噴き出たもやもやを横に押しやって、話題を変える。

 

「信用度下がったって、大丈夫なの? 正体ばれたりしない?」

「そんなヘマはしない。わたしとジャシンの付き合いも浅くないしな……。ジャシンはああ見えて慎重な男だ。その心の内を誰にも明かさない。だが……穴が無い訳ではない。奴も人間だ。そうである以上、独りでは生きていけない。だからわたしが潜り込めているのだ」

 

 ははあ。私と同じタイプなのかな。そうは見えなかったけど……。

 ジャシン率いる大蛇船団は十二年前より超少数精鋭に絞られ、現在構成員は二名だと彼が言った。

 首領のジャシンと部下のポペ……アンサさん。少ないけど……国に潜り込むならそっちの方がいいんだろうな。

 

「ジャシンとの戦いは熾烈を極めるだろう。出来るだけ早く去るが良い」

「革命軍が、どうして王国を救うような事を?」

 

 感じた疑問をそのままぶつけてみる。

 そりゃあ、人となりによっては救う道を選ぶ人はいるだろうけど……みんな気の良い人達ばかりだったから、たくさんいるだろうけど。

 そんな強い奴をわざわざ倒しに行こうとするのはなんでだろう。革命軍にとって重要な要素がこの国にはあるのかな。

 

「いや、この国をジャシンの手から守ることは、すなわち世界を守ることになるのだ。……そのために、わたしは戦うのだ」

「世界を……?」

 

 急にスケールが大きくなった。

 いや、ジャシンが語った事も同じくらいでかかったか。この世界全ての王。それって世界政府も海軍も、四皇及び海賊達全てを敵に回すって事だし。

 それほどのリスクを負ってまで、この国で何がしたいんだろうか。気になる……。

 

 なので素直になんでどうしてと疑問をぶつけてみれば、少しの間黙り込んでいた彼は、おもむろに問いかけてきた。

 

「"エンドポイント"というものを知っているか」

「新世界を壊しかねないもの、だったかな」

「うむ。それがこの王国の真下にあるのだ」

 

 ……下?

 え、でもエンドポイントって火山みたいな形してて、全部繋がってて、数も場所も判明してるもののみなんじゃ?

 ……というか、王国の真下って、どういうことだろう。上手く想像できなくて頭がこんがらがってくる。

 

「ここに君臨する事でジャシンは全てを手に入れるつもりなのだ。海の命を握られれば多くの者が動き、敵対か恭順か……いずれにせよ厄介な事になる。時代の転換どころの話ではなく、その先にあるのは混沌とした世界のみだろう」

「……それを止めるために、ですか」

「……奴の能力も、その思考も度し難い。もし奴が気紛れを起こせば吹き飛ぶ世界などわたしはごめんだ」

「それは同感。……そういう話なら私もジャシンを止めたいし、そいつにもお城にも用がある。ここは協力するのが正解じゃあ──」

「勘違いするな」

 

 目的が同じなら手を組もう。そう提案しようとして、冷たい声に打ち切られた。

 

「わたしはお前達の味方ではない。わたしは自分の使命のために動いているだけだ。目的を果たすためならば今の地位を死守し、邪魔をすると言うのならば全力でお前達を排除しようと動くだろう」

「いや、邪魔なんて……」

「今、ジャシンの前に立ちはだかられては困るのだ」

 

 言ってることはもっともだけど、そう簡単には引き下がれない。

 私はやるって決めたし、ルフィさんは動き出したらまたお城に突撃して行きそうだし。

 神様と同じで、私じゃ絶対に止められないタイプの人なんだから。

 

「そんなギスギスする必要ないよ! あんな蛇みたいなやつ、ルフィさんが絶対ぶっ飛ばしちゃうんだから」

 

 再度手を組もうと提案してみたけど、差し出した手を受け取ってもらえる気配は無かった。

 

「"麦わら"か……ふっ、誰もが一目置く男。次々と国の闇を暴き、打ち払ってきた……わたしも期待したいものだ」

 

 柔らかな声音は、ちょっとだけど期待を含んでいるように感じられた。

 

「────!!」

「ん……今の」

 

 ふいに遠くで誰かの声が響くのが聞こえてきた。

 悲鳴だ。ナミさん達の。

 遅れてゴロゴロと雷鳴が鼓膜を震わせるのに、んん? と首を傾げる。

 神様……?

 

「ゆけ、かつての同志よ。お前の仲間達の下へ行くには、ひたすら右へ走るといい」

 

 轟きと悲鳴が混じって混沌としているあちらの様子を考えていれば、アンサさんがそう教えてくれた。

 声の方じゃなくて、右に……それも、ひたすらに?

 まあ、変だもんね、この森。アドバイス通りにさせてもらうとしよう。

 

 幹へ向き直ってぺこりと頭を下げる。ここまで良くしてもらったならちゃんとお礼しないとね。

 

「ありがと、フードのおじさん!」

「おじさ……!? な、なに、礼には及ばん。ああそれと、ひ、もう一つ忠告しておくぞ……!」

「なんですか?」

 

 彼が言い終わるか終わらないかくらいの内に駆け出そうとして、忠告という言葉に足を止めて振り返る。

 ……なんだか随分躊躇っているような雰囲気があった。

 何かあるなら早めに言ってほしい。急がなくちゃなんだから。

 

 やがて、アンサさんは意を決したように、その"忠告"をこちらへ投げかけた。

 

 

 

──下着くらい……身につけたらどうだ。

 

 

 

 

 

 森の中。

 同じ景色の中をひたすら走り続け、そこに息づく動植物や霧とか靄とかを吹き飛ばしながら、先ほどアンサさんに言われた言葉を思い返す。

 

 ……風邪をひく、なんて言われてもさ、振袖着る時は肌着下着つけないのがワノ国の常識なんだよ。

 改めて指摘されるとたしかにちょっと恥ずかしいけど、そういうしきたりを知らないって思われる方が恥ずかしいな。

 なので私のこのスタイルは、これでいいのです。

 

 ……あっ、ルフィさん以外の人の停止状態、解除して欲しいって言えてなかった。

 それに、海水大丈夫なのかも聞きそびれてた。

 質問言うタイミング逃しちゃったな……変な事言うからきょとんとしてたら、その内にいなくなっちゃってて。

 まあ、魔女さんにでも聞けばはやいか。

 

 ざあっと木々がざわめく。

 薄暗い中に白い光が現れて、壁のように私に迫り、それを潜り抜けると……。

 

「おわああああ!!」

「きゃああああ!!」

 

 けたたましい音と悲鳴の混じる戦場に到着した。

 

「みなさん、ご無事ですか!」

「ミューズ、無事だったのかー! こっちは大変なんだ!」

 

 ぴょーんと跳躍してきたチョッパーさんが小さな姿に戻りながら声をかけてくれたので、小さく笑いかけて返事とする。

 ナミさんとウソップさんは転げまわったり武器を振り回したりして奮闘していた。

 その中には、いつの間にかマントを装備してレイピアを構えるコーニャさんも混じっていて、良かった……みんなと合流できた、と胸を撫で下ろした。

 

魔法闘技(マジックアーツ)"極光鎧(ライトメイル)"!」

「6000万V(ボルト)"雷獣(キテン)"」

 

 フェンシングのように構えたレイピアを指揮棒のように動かしたコーニャさんが魔法か何かを使ったみたいで、その体から眩い光を放った。数秒せずそれは収まり、けれどコーニャさんの姿に変化はない。どういう技かはわからなかった。

 

 彼女は、半目ではあれど汗まみれの必死な顔で前方へ飛び込むと、低い唸り声に似た空気の音を伴って、ドドッと駆けてきた大きな獣の上を前転しながら通り抜けざまに切り裂いた。真っ二つにされた雷の獣が姿を保てなくなって消えて行く。

 スタッと華麗に着地してレイピアを振り降ろし、風切り音を鳴らす彼女の下へ駆け寄る。

 

「コーニャさん、大丈夫?」

「ミューズ……んっ、へいき」

 

 平気……には、あまり見えない。鎧っぽい制服のスカートの端とか焦げてぼろぼろで大きく足が見えてるし、その肌のそこかしこに火傷みたいなのを負っていた。

 でも、多少息を乱しているだけで戦闘続行に問題はなさそう。手に持つレイピアもさっきまでは刀身が真っ黒に染まっていて、今、それがすぅっと消えて行ったのを見るに、コーニャさん結構強いんだろう。

 

 遠くを見据えたまま返事をしてくれた彼女に倣って、私も向こうの方を見てみる。

 巨人でも暴れ回ったかのような惨状が広がっていた。軒並み木は折れたり焦げたりしてるし、地面なんかミキサーで掻き混ぜたようにボロボロだったり、なんか固まってきらきらしてたり。

 

 そのまっただ中に、耳をほじくりのの様棒を持って立つ神様がいた。

 ……雷鳴が聞こえた時点で嫌な予感はしてたけど、神様何やってるの……。

 

「ミューズお前あいつの仲間なんだろ!? なんとかしてくれ!!」

 

 どたどたどたっとウソップさん達もこっちへ駆け寄ってきた。武器を構えたりしつつ私達の後ろへ隠れる。

 三人とも、さほど傷は無いみたいだけど、土とか枯れ葉とかくっついてて汚れていた。

 うーん、言ってやめてくれるかなあ。なんで攻撃仕掛けてきてんだろう。

 

「神様ーっ、機嫌直してー! うさぎのリンゴ作ってあげるからー!」

「……?」

 

 作ると喜ぶうさちゃんリンゴ、この切り札を切ってみたけれど、神様はくいっと首を傾げただけで返事さえしてくれなかった。

 ……なんか、妙だな。

 

「コーニャが先頭に立ってくれてるからなんとかなってるけど、捌くので精いっぱいで……」

「おれ、何もできねぇ~……」

 

 怪我はあまりなくとも精神的な疲労が酷いのか、二人とも息が荒くて、今にもへたり込んでしまいそうだった。応援の意味も込めて「かっこよかったです」ってナミさんに囁けば、まあねって笑い返してくれた。さっき私が来た時、神様の電撃を棒でいなしてたの、ほんとに格好良いなって思ったんだよ。

 チョッパーくんは……ナミさんやウソップさんの緊急回避手伝ってたみたいだし、何もできてないって事は無いはず。

 

「神様ー、私の事忘れちゃったのー?」

「貴様など知らん」 

「ありゃりゃ、変なの」

 

 とりあえず神様止めなきゃと思って声かけたら、冷たいお返事。

 何それ意味わかんない。そういう冗談は好きじゃないよ。

 

 腰に手を当てて溜め息を吐けば、神様はおもむろにドドドドンッと太鼓を叩いた。高まるエネルギーに、辺りが青白く照らされ始める。

 

「MAX2億V(ボルト)"雷鳥(ヒノ)"!」

「──っ!」

「あ、コーニャさんいいよ、私がやる」

 

 甲高い鳴き声を伴って飛翔する雷の鳥に対応しようと飛び出そうとしたコーニャさんを制し、彼女を押し留めた手で帯の左側に隠された電気製造機に触れる。

 それから大きくジャンプして、思いっきり左足を振り抜く!

 電気を伴う空気の刃……!

 

「「嵐脚」"雷鳥(ヒノ)"!」

 

 半円の斬撃がすぐさま雷の鳥を形作る。その大きさは向こうの雷鳥(ヒノ)と同等。

 ぶつかり合った二つの大エネルギーはバリバリとやかましく響き渡って、誰を傷つける事もなく消滅した。

 しゅたっと下り立ち、みんなにVサイン。おおっと小さなどよめきを返された。

 

「……なんだと?」

「もー、神様変だよ。MAXが2億V(ボルト)なんてさ」

 

 今の神様のマックスパワーは6億を超えていたはず。懸賞金に合わせたパワーを出すぞーって張り切ってたもんね。

 そんな神様のエネルギーを提供して貰ってバージョンアップした"びりびり電気製造機くん13号"は、以前と比べて桁違いのパワーアップを遂げている。具体的には2億V(ボルト)"雷鳥(ヒノ)"が放てるくらい。

 代わりに大技使う前と使った後はしばらく使用不可になるんだけどね。エネルギー貯めるには時間がいるのです。

 そしてこの電気製造機と神様とで合体技も予定していたり……ふひひ、夢が広がるぜ。

 

 なんて一人で笑ってたら、電撃びりびり飛ばしてきたので回し蹴りで打ち払った。

 うーん、刺激が弱い。神様なんか弱くなってない?

 というか……あれじゃん? 偽者とかそういうのな気がしてきた。

 

「ちょっと試してみるか……みさなん、流れ弾にご注意を」

「ミューズ、何するつもり……?」

 

 コーニャさんの問いに言葉では答えず、お茶目にウィンクしておく。帯右側に挿している「陽扇(ひおうぎ)」を抜き取って、額より上くらいの高さから真っ直ぐ神様へ向けて構える。

 さあ神様、真偽判断といこうじゃあないか。私にやられたら偽者確定。日頃いじめてくれる鬱憤返させてもらうとしよう。

 

 ザリッと腐葉土を削り、体全体をバネに見立ててパワーを溜める。

 見据える先に一直線。ミューズ、行きます!!

 

「"革命舞曲(ガボット)ボンナバン"!」

 

 武装色で真っ黒く染めた扇を刀代わりに、地を蹴って高速の突進突きを繰り出す。

 数メートルも十数メートルも同じもの。瞬き一つの間に詰められる距離。途中で空気を蹴りつければさらなる加速を生む。

 けれど相手は雷である神様だし、見聞色の使い手だ。はっきり私の動きを捉えていて、顔狙いの刺突を体を横に捻りながら避けると、のの様棒で扇を打ち払った。

 

 んんー……やっぱり神様、弱い? このくらいほんの少しの動きで避けられるもんだと思うけど。

 

 ガアンと腕が弾かれる。その反動に抵抗はしない。勢いを利用してその場で数回転。地面が削れるほどコマのようにぐるぐる回って、ぴたりと止まる。持ち上げた右足は赤熱し、強い熱を放つようになった。

 "悪魔風脚(ディアブルジャンプ)"……あちちっ。ちょっと熱強すぎたかも。

 

「"腹肉(フランシェ)"──」

「!?」

 

 着物の裾が大きく広がる。片足を軸にうんと伸ばした右足が神様のお腹にめり込んでいく。

 神様対策『特に何も考えずてきとうキック』が当たっちゃうあたり、やっぱりこの神様は弱いな。

 

「"シュート"!!」

「ぐおっ!!」

 

 覇気による攻撃を受けたのはこれが初めてなのか、驚愕を露わに吹き飛んでいく神様を前に足を下ろし、扇を逆手に持って、左手でその半ばを包んでお腹の前へ。

 腰を落として、お次はこれだ。

 

「一刀流、居合──」

「……!」

 

 ザァッと両足と片手をついて減速した神様が私を睨みつけるのに、抜刀、突撃。

 

「"獅子歌歌(ししソンソン)"」

 

 腰に据えた手に扇をすっぽり差し入れておしまい。

 背後で聞こえた斬撃音と手応えから、神様防御はできたみたいだけど、攻撃当たっちゃってるね。

 こういうの、時々突発的かつ一方的に始める訓練じゃ全部当たらないんだけどな。

 

「お」

 

 バリッと空気の震える音がしたので、右斜め前へ手を伸ばしてそこへ出現した神様の太鼓を引っ掴む。

 うん、まあ……割と長い付き合いだし、移動先とか勘でわかっちゃうよね。

 

「──!? きさ」

「"ゴムゴムの"~!」

 

 掴んだ手とは反対の手を後ろへ伸ばし、稼働域限界まで捻る。

 何事か言おうとした神様は即座に離脱を図ろうと一瞬体に電気が走ったけど、あいにく武装色で実体捉えてるから逃げられやしない。そしてそれが隙になった。

 

「"ライフル"!」

「!!」

 

 容赦なく頬へ向けてぐりぐり回転……してないけど、とにかく回転パンチを叩き込み、同時に掴んでいた手を離せばぽーんと吹き飛んでいった神様が地面に倒れた。

 ……勝ち!

 

「ミューズちゃん強いっ!」

「わわっ」

 

 大の字になって沈黙してる神様にむふんと息を吐き出せば、ナミさんに抱き着かれてびっくりしちゃった。

 みんなが集まってきて口々に労ってくれるのに照れた笑いが出てしまう。

 

「ほんとに船長なんだな……あいつの上に立ってるってのを聞いて半信半疑だったが、これ見せられちゃ納得だ」

「すげーなミューズ! なんでみんなの技使えるんだ!? わかんないけど、みんながいるみたいで心強いぞ!」

 

 やーん、そんなに褒められたら溶けちゃうよ。

 ……う、ほんとに恥ずかしい……。小っちゃくなっちゃいそう。

 

「天女……待てよ、天女……こないだ手配書見たような……」

 

 7億? と呟いたウソップさん、自分で言って自分でどっしぇーって驚いてる。

 ああうん、手配書ね。たしか、私の懸賞金、7億7800万だったと思う。悪い事してないのに上がるのが不思議。……完全に神様のとばっちりじゃない? というか、ああ、神様懸賞金アップしすぎじゃない? って不貞腐れた事もあったけど、そっか、四皇に喧嘩売りまくって世界の海のバランスぶっ壊そうとしてたからあんなに上がってたのか。

 ちなみに神様現在10億超えです。11億、えー、200万だったかな。船長の私よりずっと高いとか納得いかない。

 

「……あれ? 神様消えてる……」

「あの者は……土に還りました」

 

 ふと、倒れてたはずの神様がいなくなっているのに気づいて呟けば、コーニャさんが見ていたらしくそう教えてくれた。すぅっと土に溶け込むように消えちゃったんだって。

 ふむふむ……やっぱりこの森に魔女さんがかけたっていう魔法で生まれたような感じの神様だったのかな。

 

「みなさん、そのまま……治療いたします」

「わ……綺麗……」

「おお、なんかあったかいな」

 

 コーニャさんが指を振って、ふわふわした蛍みたいな光を振りかけてくれた。

 そうすると少しだけあった疲れが抜けて、みんなも怪我が治ったみたい。

 汗だくだったコーニャさんも、破れてた服と一緒に元通り、身綺麗になった。

 

 緊迫の一戦を切り抜けて、みんな少し気が緩んだみたい。このチームなら何が来てもこわかないって上機嫌。

 私が予想以上に強かったの、嬉しいみたい。コーニャさんもさっきの戦いで頑張ってたから凄くかわいがられてた。半目でかいぐりされてるコーニャさん、かわいい。

 

「……なに? なんか」

「近づいてきてる……」

 

 そんな風にじゃれながら、さあ進むぞってなったところで、また森がざわめきだした。

 ドシンドシンと地面が揺れる。……大きな何かがこちらへきている。

 

「あまぁいお菓子を寄越しなァ……!」

 

 太い木を大きな手で掻きわけて顔を覗かせたのは。

 

「それができなけりゃ財宝ありったけ寄こしな……!!」

「び、ビッグ・マム……!!」

 

 はたして、四皇の一人だった。

 

 

 

 

 パニックになるナミさんに感化されるように焦るウソップさんとチョッパーくん。

 コーニャさんはよくわかっていないようでレイピアを構えていたけど、私は軽く構えるのにとどめてその巨大な影を観察する事に徹した。

 

「許しゃしないよ……財宝を寄越しなァ……!」

 

 そう、影なのだ。

 巨人と見まごう巨体を持つそれは、両の瞳だけをぎらぎら輝かせている影の人間だった。

 ぎょろぎょろと蠢く気味の悪い目が私達を順繰りに見ては、地を揺らして少しずつ近づいてくる。

 

 ……いやいや、こんなところに四皇が来たりはしないでしょ。というかビッグ・マムってこんな姿じゃなかったし。

 三人は満場一致で逃げるべきだっていったけど、これ、多分魔女さんの魔法だろうから、なんとかなると思う。

 さっきの神様も、初めて会った時くらいの強さだったし。

 ……そういえば、なんでそんな弱さだったんだろう? どうせ魔法で出すなら今の強い神様の方が良いはずだ。

 なんか理由があるのかな。

 

「お、おおおい何戦おうとしてんだ! 四皇と今ここでぶつかるなんて馬鹿げてる!」

「そうよ、私達じゃかないっこない!」

 

 ある意味それは冷静な分析なのかもしれないけれど、そこまで引け腰になる必要はないと思う。というかナミさんの怯えっぷりが酷い。ウソップさんの方がまだましで、逃げようとしながらも武器を構えてるし、撃つし。

 ……変だと思ったので、ナミさんに問いかけてみた。

 

「どうしてあれがビッグ・マムだと?」

「え? そんなの……とにかくそうなのよ! 魚人島での事を根に持ってるんだわ……!」

 

 断定するのか。……ううん、ナミさん魔法にかかってない? そういう感じの。

 

「おーかーしー……! ざーいーほーうー……!」

 

 魔法ならコーニャさんだ。振り下ろされた影の拳を、飛び上がって蹴り返してから、そういう魔法無いかってコーニャさんに聞いてみれば、幻惑系ではないでしょうかと教えてくれた。

 もっともコーニャさんが使う幻惑系は対象が一人に限定され、あくまで幻で触れられない。

 でも自分に魔法の力を与えてくれた魔女さんが使う魔法ならば話は別かも、って。

 

 癇癪を起こした子供のようにめちゃくちゃに暴れる影の攻撃を足でいなし、捌き、打ち返しつつ、腕を組んで考えに耽る。

 ……こういうの、記憶で見た事がある気がする。

 ほら、いわくつきの森では自分を写し取った分身が襲い掛かってくるとか、心の内の強敵を生み出してくるとか。

 

 ……あの神様は、空島の時の強さだったっぽいし、それを知ってるのはナミさん達だ。コーニャさんは神様知らなくて、私だと今の強さで出てくるはず。

 そして、今"粗砕(コンカッセ)"で叩き伏せたビッグ・マムはと言えば、魚人島で認識したナミさんの中のビッグ・マムっぽい。

 

 そしてどうにもこの影は怪物染みている。どれだけ攻撃を加えても立ち上がり、おかし、財宝と同じ言葉を繰り返しては暴れている。

 これはたぶん……ナミさんの印象が影響しているのかも。

 この無敵の強さもナミさんの影響? 四皇なんだからめちゃくちゃ強い、自分達だけでは絶対かなわない……みたいな。

 

「ナミさん、ビッグ・マムってどれくらい強いと思う!?」

「えっ!? 今それ聞くの! そりゃ……エネルを一蹴したミューズちゃんが苦戦してるんだから……とんでもなく強いに決まってるじゃない! 相手は「四皇」なのよ!?」

 

 だいぶんてんぱってて言葉も荒いナミさんだけど、聞けば答えてくれた。

 そういう認識かー……たしかに私も幾つか攻撃受けてしんどくなってるけど、別に苦戦はしてないんだよな。

 だってこのビッグ・マムの影、力も速さもあるけど、技がないし、キレもない。なんというか……とにかく強いだけで、現実味が無いというか。

 

 三色の光と共に突きかかったコーニャさんが拳に弾かれるのを横目に、影に蹴りを入れ、最大までチャージした黄猿のレーザーを打ち込む。ピュンッと放たれたそれは影を突き抜け、遠くに巨大な光の半球を生み出した。

 暴風がこっちにまで到達するのに合わせて離脱をはかる。ぎょろりと私を狙う影の瞳に"JET(ピストル)"を叩き込めば、目を押さえてもんどりうった。

 

「ほら、全然強くないよ! 七武海と比べるならどのくらいだと思います?」

「え……く、クロコダイル?」

「うん!」

 

 追撃にお腹の上にずどんと飛び乗り、冷気製造機を叩いて影へ両手を添え、簡易"氷河時代(アイスエイジ)"で凍らせて動きを鈍らせる。

 その中でナミさんに声をかければ、彼女は自分の頭を押さえてそう答えた。……クロコダイルか。まあ、でからっきょでも天夜叉でもなんでも良いんだ、無敵の四皇でさえなければ。

 "鷹の目"って言われたらちょっと困ったかもだけどね。

 

「嘘でしょ……」

 

 ざあっと砂が広がる。さっきまでビッグ・マムだったものは、だいぶんサイズダウンすると、離れた位置で元七武海のサー・クロコダイルの姿を作り出した。

 かと思えば下半身を砂に変え、鉤爪を振りかざして迫ってくるのに、カウンターで頬をぶん殴って打ち返す。打撃の瞬間に"大神撃"をぶち込めば……オッケー、ノックアウトだ。

 

「……どういう事なんだ……デカブツがクロコダイルになったぞ……」

「魔法じゃないですかね、魔女さんの」

「魔法コエー!」

 

 コーニャさんが言ってた通り、土に還っていくクロコダイルを眺めながら会話する。たしかに、こんな事ができる魔法という力は怖い。

 強い神様出されたら私じゃどうしようもなくなっちゃうし。

 ……あ、またなんか出てくるな。そういう気配がする。

 

「下がって。また何か来ます」

 

 疲労しているナミさん達と、コーニャさんも後ろに下げて、何者かを警戒する。

 からくりがわかったならもう怖くないのか、私の指示に従いながらも、三人は引く意思なく戦闘態勢に入っていた。

 

 ジュワジュワ……。ドロドロ……。

 なんとも不思議な音が近づいてくる。同時に、ヘンな臭いが漂ってきた。

 ……嫌な予感がする。

 なんか、すっごく嫌な予感がするんですけど。

 

 だって聞き覚えのある音だし、覚えのある臭いだし!

 こっちにきてるのは、まさか、ひょっとして……。

 

 半ばから折れて倒れている木が突然燃え上がる。と、それを溶かしながら歩んでくる人影があって。

 

「"大噴火"ァ!!」

「びゃああ!?」

 

 ごうっと飛んできた灼熱の拳を、咄嗟に羽衣を引き抜き振ってなんとか弾く。武装色に染まった羽衣にちょっとついちゃってる熱の残りを振り払い、姿を見せた人へおそるおそる視線を移す。

 

「ミューズゥ……折檻じゃあ!」

「ひええええ!!? さかじゅ、サカズキおじさまだああああ!!!!」

 

 ほらあああやっぱり嫌な予感当たった!! なんでサカズキさんなんで!?

 やだああ久々に見ても顔が怖いいいい。ドロドロって半分マグマになってて周りのもの燃えたり溶けたりしてる。すっごく怒ってるんだ……!

 

「こ、今度は海軍の大将か! ミューズ、大丈夫か……?」

「無理、むりです、やばいよお!」

「ちょ、しっかりしてミューズちゃん!」

 

 何が出てきても大丈夫って思ってたけど、サカズキさんとか無理無理、腰が引けちゃうから!!

 折檻とか言ってる! ゲンコツやだあ!

 

「ミューズゥ、なぜわしらを裏切ったァ……!?」

「ひうっ、そっ、それは……ぇと、あの……」

「今度という今度はただじゃあすまさん! 尻出さんかい!! 百叩きじゃあ!!!」

「やだあああ!!! こわいよおおお!!!! おじさま変な事言ってるよおお!!! こんなのサカズキさんじゃないいいい!!!!

「今夜は眠れんと思え、この馬鹿ミューズがァ!!」

 

 もはや逃げるしかない。あっちょっ、と誰かの声が聞こえたけど、サカズキさんに勝てる訳ないのでいの一番に逃げ出した。……サカズキさん完全に私をロックオンしてる!! いや、予想してたから逃げたんだけど、それにしたって嫌だぁ!

 

「"大噴火"ァ!!」

 

 宣言通り本気でお尻を叩きにきているのか、放たれたマグマはグーではなくパーだった。

 

 ……誰か……。

 

 誰か助けてぇええ!!!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。