「今から明かそう。徒陰の秘密を」
大道寺政宗は目を閉じ、語り始めた。
それは二〇〇〇年のまだまだ世界が僅かに均衡を保っていた頃、大道寺は国からある命令を授かった。それがP3。日本は強くなって他国を屈伏させたいそうだ。昔の日本の富国強兵の思想のように。
大道寺には唯一無二の親友がいた。それが國﨑敏正だった。彼とは家が近くほぼ毎日のように一緒にいた。共に理系へも進んだ。
十五歳のときに経験した第二次世界大戦で使用された原子爆弾の恐ろしさは今でも憶えている。大道寺はこのP3の実験に反対だった。またあの時のようなことをするのか、そう思った。
しかし、敏正は違った。敏正は、原爆で恋人と弟を失っていた。大道寺は敏正の熱意に負け、やむを得なく実験を行った。
しかし、当時は人間の遺伝子組み換えなど神の領域だと思われていたので実験は困難を極めた。現七十歳の私達でも、到底かなわなかった。
だが私がふと見つけた菌を調べると、ある過程にたどり着いた。
「この菌なら人を人ではなくすることができる」
この菌は、人の脳に寄生し脳に信号を送る機能を我が物にし、寄生した体を活性化させる菌、
大道寺はこれをリーパ菌と呼ぶことにした。大道寺はこのことを敏正に話すと、敏正は大道寺の考えに心底驚いていた。
「これなら、最強の人間を創ることが出来るぞ!」
どうやら、敏正にも試したいことがあったようだった。
それから大道寺たちは実験を重ねた。
敏正は菌と菌を合わせ、新しい菌を作ることだった。敏正が発見したのは、アナゲンニシ菌と言って、菌を複製することができ、遺伝子として子孫を作ることができる菌だった。それを合わせて、できた菌をP3菌と呼び、人間の細胞と合わせながら、数多くの子孫を作っていくことで、人間の体に適した菌を作ることができた。
しかし、自身が持っている動物の遺伝子が強調されてしまう作用が発現してしまう実験体が多く、自我はあるものの、凶暴性が増しており、
ある日、大道寺自身が実験体に名乗り出た。
試作品のP3を投与すると、体が燃えていると勘違いするほど熱くなり、骨がミシミシと太くなっている実感があった。筋肉がモリモリと
ここで二人は、実験に成功したと実感した。
「敏正、やっと出来たな……!」
「まさか、政宗が最初の成功者とはな!」
それから国はこの菌を汎用化、国民に投与するように義務付けた。だが、生まれてしまった失敗作は離島に隔離された。
自分に菌を投与してから一週間程経った時のこと、私はあることに気づいた。それは未来が見えるようになったことだ。
これはどうやらP3の副作用で、自身がなりたいことをイメージしたときの記憶が具現化したものだとわかった。
私は、この能力を千里眼と呼んだ。どうやら敏正にも能力があったらしく彼はそれを複製と言っていた。
しかし、P3成功からしばらくして離島から失敗作が抜け出すという事件が起きた。その頃に出来た国の直属精鋭部隊「ヘラクレス」による殲滅が始まった。ヘラクレスとは、強力な能力を持つ連中を集めた部隊である。数は五人。当時は人間戦車とも呼ばれていた。
しかし、帰ってきたのは僅か三人。その三人もかなりの重傷だった。
大道寺は、それから独自で失敗作を研究する事にした。勿論、敏正にも国にも秘密で。
P3成功の二〇〇五年から二年後の二〇〇七年、ある山奥で大道寺はある一人の少年に会った。その少年は酷くやつれていた。大道寺は自身の飲み物を与え、自分が住んでいる空き家に寝かした。十分後その少年は目を覚ました。
「やぁ、やっと起きたか!いやぁ、生きてて良かった!」
「おじさん、だれ……?」
「私は大道寺政宗だ。坊やは?」
「名前なんか覚えてない……」
「そかそか。じゃあ、私が名前をつけてあげよう……」
「待って!」
大道寺は少年の声に反応した。
「こんな姿でも、優しくしてくれる……?」
そう言って少年は、急に炎に包まれた。
「おい!坊や!大丈夫か!?」
炎の中から現れたのは狐だった。しかも尻尾が九尾ある狐だった。
「坊や、まさか失敗作なのか……?しかも古典型……」
「どう?おれを国に差し出す?」
少年の声はひどく冷たく少年が今までどのように生きてきたか、身に染みて分かるようだった。
「大丈夫だ。私は君を殺したりなんかしないし、国に差し出したりなんかしない!」
「ほんと……?」
少年は瞳に涙を浮かべていた。
「それよりお腹、空いたろ?飯にしよう!さ、早く戻りなさい」
そう言うと、少年は人の姿へと戻った。
「パンで良いかい?」
少年は静かに頷いた。
大道寺と少年は椅子に座りパンを食べた。大道寺は急に激痛を感じ椅子から倒れた。
「おじさん!」
どうやら、散策中に木で切ったところに人体に有害な樹液が入った。そう思った。
「おじさん、動かないでね!」
そう言って、大道寺のすねに手を当てた。すると、大道寺のすねが燃えだした。
「おい!いくら壊死を防ごうとして燃やそうとしたって、それはやばいぞ!」
しかし、少年の炎は私のすねを燃やすことなく温かった。そして、みるみるうちに私のすねは回復していった。
「凄い……。これも君の能力なのか……。凄いな、炎司!」
「えんじ……?」
少年は首を傾げている。
「そうだ!今日から神木炎司だ!お前は、神のように凄いからな!」
「……んふふ、良い名前だね!」
「だろ?」
大道寺と炎司は微笑んだ。
翌年、大道寺は炎司を小学校に入学させようとしたが、苦労した。まず役所への能力通達。
大道寺は、昔の功績を武器に何とか炎司を申請した。次に、炎司が誤って能力を発動しないように教え込んだ。炎司は覚えがよく、難なく約束を守ってくれた。
そして炎司が四年生の頃、大道寺の家に二人の子どもを担いで帰ってきた。
「どうしたんだ炎司!」
「山中で見つけた。多分俺と同い年で、幻獣種だ」
「ひとまず寝かせよう」
間もなくして二人は目覚めた。
「おぉ!起きたか!」
「ここは……?」
「大丈夫だ。君達にとって一番安全な場所だ」
「ありがとうございます」
「それより君達、名前は?」
二人とも首を横に振った。
「お前ら、今までどうやって生きてきたんだ?」
「僕の親は、僕たちを使ってドロボウさせてるんです。でも今日は、人が見つかんなくて、森で虫とか食べてました」
「よく生きててくれた。君達はこの世界の希望だ」
「お前らの能力は?」
「俺は超大型鳶です」
「僕は孫悟空です」
「すげぇな」
「確かに。君達大分凄いよ」
「オヤジ」
いつからか炎司は大道寺のことをオヤジと呼ぶようになっていた。
「名前どうする?」
「そうだった!何が良い?」
「俺ずっと服部半蔵が好きで……」
「僕はずっと猿飛佐助が好きで……」
「じゃあ、今日から君は服部佐助で、君が猿飛戯介だ!」
「オヤジ、雑」
そうして、新たに二人の息子ができた。
そして、その四年後、炎司達が中学に入学の年と同年に敏正が総理大臣となった。