炎司は何とか目的を果たしたので、炎司の能力を使って二人を回復させた。
「あいつは!?」
戯介は急に起き上がり、炎司に聞いた。
「目的は果たした。あいつは消えた」
「まぁ、めでたしめでたしか……?」
「とりあえず茂を担いで基地に戻るか」
炎司たちは重傷だった茂を担ぎ、開いたままの鏡の世界へと戻った。
基地に戻ると、すぐに佐助が迎えてくれた。
「どうだった!?」
「何とかなったよ……」
奥から大道寺が来た。
「まさか入江がいたとは……。君達をもっと見ておくべきだった……」
「大丈夫」
大道寺と話していると、奥から物凄い勢いで憾咲夢が走ってきた。
「無事で良かった!」
そう言って憾咲は抱きついてきた。
「何してんだ……」
「ごめん、つい……」
憾咲は照れていた。
(何なんだあいつは……)
ひとまず、國﨑敏正の計画の一部を防いだことに安堵した炎司たちは少しだけ平和になると思っていた。だが、日本はまだ平和の欠片もなかった。
次の日の朝、炎司はいち早く起きた。嫌な夢を見たからだった。それは、大道寺が殺される夢だった。最近炎司は夢が現実になることがあった。
「やめろ……。師匠……、死なないで……」
「どうした炎司……?」
そこにいたのは大道寺だった。大道寺もうなされていたようだった。額に汗をかいていた。
「師匠、夢ですか?」
「炎司、わしの夢は予知夢であると前に言ったよな?」
炎司は首を縦に振った。
「最近儂は、儂が殺される夢を見るんじゃ」
炎司の目が見開いた。
(俺と同じ夢……?)
「じゃあ、師匠……」
「あぁ、儂はもう死ぬ」
師匠が死ぬ……?そんなわけ無い。
師匠は強いんだぞ?
世の中で一番正義感が強いって本気で思う。
なのに。
なのに。どうして。
「嫌だ……」
絞まる喉から出てきた言葉はそれだけだった。
「運命じゃ。人間は運命に逆らっちゃいかんのだ」
「でも……!」
「儂はな、もう十分生きた。もう後悔は無いんじゃ」
大道寺の目は落ち着いていた。
「俺は、嫌だ!師匠がいなくなったら、誰が徒陰をまとめるんですか!?」
「お前だよ、炎司」
「そんなのダメだ!」
「良いかよく聞け炎司よ。子というものはいずれ、独り立ちをする。遅かれ早かれその日は必ずくる。でもな…」
大道寺は炎司の頭を撫で
「お前は若すぎる……」
「オヤジ……」
(ああ。そう呼ばれていたのはいつまでだったかな……)
大道寺は炎司が大きくなると徹底的に鍛えさせた。大道寺の能力上鍛えるのは簡単だった……。
それは、大道寺と炎司がまだまだ若かった頃。
敏正率いる軍との戦闘に向け、炎司や戯介を鍛えていた。
大道寺の家系は、代々大道寺拳の使い手であり、格闘技業界では有名だった。大道寺拳は、日本の空手、柔道を始め、歌舞伎の足取りまでも使われている。それに加え、大道寺の能力千里眼によって、敵の攻撃を判断することができる。要するには、相手の行動をよく見て次の攻撃を予測する力が鍛えられた。
「判断が遅いぞ!炎司!」
「だって、オヤジの能力じゃ無理ゲーだよ」
「甘ったるいこと言うな!」
「相変わらず鬼畜だな」
戯介は、二人を見ながら呆れ顔で言った。
「お前らはいずれ巨悪に立ち向かうことになる……。私がいなくなっても、巨悪は生きているかも知れない……」
「死なないでよ、オヤジ」
炎司は涙目で私を見た。大道寺は炎司の頭を撫で
「馬鹿、死ぬわけないだろ!私を誰だと思ってるんだ」
大道寺は炎司に微笑みかけた。炎司も大道寺に微笑みかけた。
夜は明け、みんなは大道寺に呼ばれた。
「君達を呼んだのは他でもない」
みんなに緊張が走る。
「儂たちは今から國﨑敏正率いる日本政府に決戦を挑む!このままでは新たな犠牲を生む。儂らでそれを食い止める。良いか?」
みんなが頷いた。
「よし、じゃあ、メンバーの振り分けを行う。徒陰は全員で本拠地に攻め込む。草木君は安静に。他のみんなは憾咲君と協力して薬の開発を。決行は明日の夜明けと共に。良いか?」
みんなは静かに頷くだけだった。
そして、決戦の夜明けの十分前、午前四時五十分、炎司たちは準備をしていた。
「炎司……!」
炎司は後ろから名前を呼ばれたので振り向いた。そこには憾咲夢がいた。
「絶対に帰ってきてね」
炎司は大道寺のように憾咲の頭を撫で
「俺は死なねぇよ、夢」
夢は顔を赤くし下を向いてしまった。炎司はその姿に背を向け歩いていった。