警察本部 零課   作:もののあはれ

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三十 最期

 「本当の目的って…?この日本全てを洗脳させて世界を植民地にすることだろ?」

 「私もね、そう思ってたんだけどね、プランBがあったんだよ…!」

 「何だと…?」

 「私には、孫の國﨑笑里(くにさきえり)という子がいてね…。君達より少し若くてね、まだ中学生なんだ」

 「何が言いたい…?」

 思わず眉間にしわが寄ってしまった。

 「えりの能力はね、“ウラン”と言ってね、対外に放出した水分がウランになるんだ」

 「まさか…!」

 「予想できただろう?その水分であっと言う間に核兵器の出来上がりだ」

 そのときの國﨑の笑顔は、狂っていた。

 「しかし、まだ幼く威力が弱いというか、薄いんだ。だから…」

 「えりごと、ロケットに入れて飛ばすんだ…!」

 炎司は耳を塞ぎたくなるように苦しかった。何故こんな惨事に巻き込まれるのだろう。まだ中学生の子どもを簡単に殺そうとする。そんな國﨑の思考に、より怒りが湧いた。

 「ここにボタンがある…。このボタンを押せば、米国にいる人間が全ていなくなる!」

 「こんなことして何が面白い!?」

 「面白い…?」

 國﨑の顔が真顔に戻った。

 「面白くなんかないさ!これは復讐だ!あの日、核爆弾が落ちなければ、こんなことにはならなかった!」

 「だからって、仕返しをするのか…!」

 「はは!私がしなくても、誰かが必ずするだろう!人間はそういうものだ…」

 國﨑はボタンを押そうとした。すかさず、炎司が止めようとする。しかし、止めようとする前に國﨑がボタンを押した。

 警告音と共にアナウンスが発せられている。

 『ロケット発射まで残り三分…。ロケット発射まで残り二分五六秒…』

 アナウンスは、一定のリズムを刻んで、放送されている。

 「このボタンをもう一回押せば、発射は止まる。が…」

 國﨑はボタンを分解してしまった。

 「後は、待つのみ。君は何もできずに嘆け!おっと、ロケットを破壊しようなんか考えるなよ!?外気に触れた瞬間、爆発する設計だがらな!」

 炎司は雄叫びをあげた。と同時に、衝撃波が発生した。その衝撃波に吹っ飛ぶ國﨑。

 「残りの時間で全てにケリをつける…!」

 そう言って、炎司は國﨑向かって襲いかかった。

 

 炎司は國﨑に修復させる暇なく、攻撃を重ねた。自身の体がボロボロになろうとも、止めずに闘い続けた。國﨑を増えた二本腕は炎司によって、吹っ飛ばされ、新たに複製した腕は、入江の能力を失っていた。

 「クソがァ!」

 「ここでお前を倒す!お前がこの世にいる限り、この日本に平和など、生まれしない!憎しみは、また新たな憎しみを生むだけだ!」

 炎司は高く飛び上がった。そして、腕を天高く伸ばした。その拳は燃え上がった。

 「お前をなんか、この炎で燃やし尽くしてやる!」

 國﨑は、口を開き、目を見開いた。

 「焔ァァァァ!!!」

 炎司は、再び雄叫びをあげた。

 「“聖火鉄拳(インフレアカイザー)”!!」

 炎司の鉄拳は、國﨑を捉える。地面には亀裂が入り、あまりの威力に、一キロ先の高層ビルの最上階近くが崩壊した。

 炎司はその場に(ひざまず)く。しかし、まだ炎司の役目は、終わってなかった。

 ロケットは発射まで、一分を切ろうとしていた。

 

 炎司は発射場へと急いだ。発射場に着いたときには残り三十秒を切っていた。炎司は止める方法を考えたが、いくら考えても方法が思い浮かばなかった。

 炎司は耳元の無線に語りかけた。話すことを止めた炎司は、ロケットを見上げる。遂にロケットが発射してしまった。しかし、炎司は諦めたわけでは無かった。炎司はロケットしがみついた。ロケットは、天高く飛んでいく。

 

 「何だあれ…!」

 早番のサラリーマンたちが上空を見上げる。皆、口を開けている。その中に夢や、徒陰の人たちも上を見ていた。

 「炎司…!」

 「大丈夫さ!炎司ならきっと!」

 戯介が言った。その言葉に、夢は涙を流した。

 炎司を乗せたロケットはもう遥か上空へ向かっていた。向きは、米国。やはり、米国に飛ばすように設定されている。方向を変えることすらできないのか。

 だが、既に炎司は決めていた。炎司はロケットを、炎で包んだ。

 ロケットは爆発をした。しかし、音はしない。炎によって、全てがせき止められた。

 「えりちゃん!」

 炎司が呼び掛ける。笑里はうっすらと目を開ける。

 「誰…?死にたくない!」

 「大丈夫だ…!君を絶対に助ける…!一つだけ、お願い、できる…?」

 さすがに炎司でも核の熱には負けてしまう。徐々に炎司が焼けていく。

 「夢って、言う人、に渡して、欲しい…」

 笑里は静かに頷く。

 「よし…!」

 「“焔玉(ほむらだま)”」

 笑里は人が入るサイズの炎に包まれた。

 「よろしく、頼むよ…!」

 そう言って、炎司は炎の外に笑里を飛ばした。ゆらゆらと炎は地に落ちていく。

 (さすがに爆発は防げねぇ…。せめて最小限に…!)

 このとき、炎司は、脳に思い出が蘇っていく。

 (これが走馬灯か…)

 オヤジ。

 佐助。

 海人。

 戯介。

 弁慶。

 茂。

 夢。

 みんな好きだったぜ。

 焔玉が地に着いたと同時に、炎が爆発した。

 「炎司ィィ!」

 夢が叫んだ。

 

 夢は、泣き叫んだ。声が枯れるほど。

 ふと見ると、そこには炎の玉があった。徐々に炎が消えてゆく。まるで、炎司が死んでいくかのように、消えてゆく。

 その中から出てきたのは、一人の女の子だった。

 「誰…?」

 女の子は泣いていた。

 「神木さんが…!」

 神木…?神木って、炎司…!?

 「もしかして、夢さんですか…?」

 私の名前が呼ばれ、ハッとする。

 「神木さんに渡してくれって…」

 彼女が差し出したのは、無線だった。横から、戯介が

 「この無線はな、録音もできんだ」

 夢は、無線の再生ボタンを押した。

 『今ァ、忙しいから、雑だけど許してくれ…』

 炎司だ。間違いない。

 『これを録音したのは、まぁ、なんだ?俺が死ぬかもって思ったからだな…。さすがに俺も、核には敵わねぇよ。だから、今言っておく。みんなありがとう!みんな好きだ。本当は直接言いたかった。まぁ、無理だと思うけど…。みんなに言いたいことは沢山あるよ。でも時間がねぇ。これだけは言いたいことがある。夢。好きだ…』

 そこで録音は、終わっていた。夢は、膝を落とし涙を流した。悲しさと、嬉しさが混ざり合い、体から溢れ出そうになった。




 
 國﨑敏正能力“複製”,“オーバーホール”
 ・複製…複製をすることができる。複製するものは限るがある。
 ・オーバーホール…能力“分解”と“修復”が合わさってできた能力。
 
 國﨑笑里能力“ウラン”
 ・対外に放出した汗や涙をウランに変えることができる。任意で爆破することも可能。
 
 神木炎司/神楽灯能力“九尾の狐”,“正義感”
 ・九尾の狐…自身を九尾の狐にすることが可能。炎も使うことができる。
 ・正義感…自身の正義感が形になってできた能力。尋常じゃない力を得る。
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