警察本部 零課   作:もののあはれ

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二章
三十二 回想 猿飛戯介


 宴会はもう三時間も経っていた。みんなベロンベロンに酔っている中、夢は戯介の思い出話をしていた。

 「俺が炎司と出会ったのは…」

 

 炎司と戯介が出会ったのは、炎司が四年生、九歳のとき。炎司が戯介と佐助を助けたときだった。

 戯介と佐助は、元々別の街で育ち、たまたま森で出会ったのである。

 戯介が生まれた街は、P3のせいで能力値で身分が貴族、平民、下民と、はっきり別れてしまった。

 戯介の本名は、猿谷晴泰(さるたにせいだい)。今となっては意味が無い。

 戯介は下民で、ただでさえ貧困な平民から、金品や食料を奪っていた。

 そんなある日、戯介に能力が目覚めた。それが“孫悟空”だった。そのとき貴族の間で流行っていたものがあり、それが無法戦闘競技大会、通称ヘルが流行っていた。この闘いは数少ない失敗作だけを使い、殺し合いをして勝者を賭けて競い合うゲームである。

 戯介の親は、よく貴族と商売をしていたため面識があり、戯介の親は戯介を専属戦士として、長年の間、闘わせた。戯介は、“孫悟空”という幻獣種と恵まれた能力のお陰で、六歳のときにはヘルの最強戦士となり、周りからサルと呼ばれるようになっていた。

 

 「お前は、人間のクズだ!」

 今日戯介と同じ牢屋に入った男が言ってきた。戯介にとっては慣れっこだ。

 「お前に弟を殺されたんだ!」

 男はどうやら、戯介に弟に殺されたそうだ。男は、見た感じ二十代ってとこだろう。

 「殺してやる…!」

 「良いか?俺も殺したくて殺してはいない…!」

 戯介はその男の胸ぐらを掴んだ。

 「いくらお前と共闘するからって、お前なんかとしてくねぇよ!」

 ヘルはこのとき、新しく共闘ルールが生まれた。その男に名前はなく、役員にはシャチと呼ばれていた。大方、能力は“シャチ”だろう。

 戯介とシャチは、幾度となく共闘を続けた。最初は、戯介ばかり狙うシャチだったが、日が経っていくとシャチも段々戯介の心を開いていき、半年が経つ頃には最高の相棒のような関係になっていた。連携技は完璧だった。

 そんなある日、戯介が九歳のときだった。突然シャチが戯介にある提案をさせた。それは、このヘルを抜け出すということだった。ここ、ヘルは、地下牢獄となっており、抜け出すには、一つしかない出口を目指すことになる。その出口は、厳重に監視されており、脱出を図ったものはいたが、脱出ができたものはいなかった。

 「出れるわけがないよ」

 「いや、行ける!」

 シャチが冗談を言っているようには見えなかった。

 「詳しく聞かせて…?」

 「俺の超音波で調べたんだけどな、出口とある場所だけ返りが違ったんだ!」

 「ある場所って…?」

 「そこはな、昔、戦士の死体を処理する場所だったんだけどな、死体が多くて埋められなくなって、今は焼却処分となったらしい。その場所は、今は、この町一番の貴族“モアービー家”が奴隷を捨てる穴になっている。そこからなら脱出できるはすだ!」

 「決行は…?」

 「明日!」

 戯介はシャチの目を見た。迷い無きその目。戯介はその目に引き寄せられた。戯介は、シャチとハイタッチを交わした。

 

 そして、決行の翌日。戯介たちは、戯介たちは牢屋を容易く壊した。戯介は咄嗟に、周りの牢屋も壊していった。牢屋の囚人たちは、牢屋が壊れると、暴れ牛のように暴れた。勿論、監視員は大勢来る。そのかわり、あの場所が手薄になる。そういう考えだった。そして、あの場所に着いた。戯介が如意棒で、壁を破壊すると、そこは暗い暗い通路が繋がっていた。

 「先に行っててくれ」

 シャチが言った。戯介は何も言わなかった。

 「必ず来いよ!」

 戯介は走って行った。戯介が処理所につくと、そこは、異様な所だった。

 人間が山積みになっていた。それよりゾッとしたのが、山積みになっている人たちが息をしていること。

 (まだ生きているのか?)

 「久しぶりに人だな…」

 壁に横たわっている人が話してきた。

 「おじさんは…?」

 「儂の名前は、郷田寿朗(ごうだとしろう)。儂たちは、モアービー家の元使用人じゃったんじゃよ…」

 (やっぱり…!)

 戯介はある提案をした。

 「おじさんたち、ここから出てみる?」

 おじさんの目が見開いた。

 「出れるのか…?」

 戯介は頷いた。

 すると、処理所にいた人たちがどんどんと起き上がる。戯介は、驚いた。まだこんなにも体力があるのかと。

 「頼む…!」

 戯介は、觔斗雲を使って、上にある穴を指さした。おじさんたちは頷いた。

 「ありがとう…!坊や!名前は?」

 「サルって呼ばれてる…」

 「このご恩は必ず…!」

 戯介は、微笑み、全員を見送った。

 全員を見送った後、戯介も行こうと思った。それにしてもシャチは遅い。

 戯介は、觔斗雲を置いていき、シャチが来たら出れるようにしておいた。そして戯介は、穴の外へと出ていった。

 

 戯介は、久しぶりに外へ出た。昔とそんなに変わらなかった。

 戯介は觔斗雲を使って、遠くの方へ向かおうとすると、後ろから、誰かの言っていた声に反応した。

 「罪状!脱獄を図った及び、監視員の殺人により、厳正に処罰する!罪人シャチ!」

 戯介は咄嗟に振り向く。そこには、牢獄で暴れていた囚人数名とシャチが死刑台の上に立っていた。

 (何で、捕まってんだよ…!シャチ!)

 そのとき、戯介はシャチと目が合った。すると、シャチは微笑んだ。戯介はそれがお別れの合図だと気が気でなかった。

 戯介はシャチの方へ向かった。

 「最期に言い残す言葉はあるか!」

 監視員はシャチに言った。すると、シャチは口を開いた。

 「生きろ!」

 その言葉を聞いた瞬間、戯介は止まった。瞳から涙がボロボロ出てきた。

 次の瞬間、シャチたちは足場が落とされた。

 

 戯介は走り続けた。觔斗雲を使わなかったのは、足を使いたかったからだ。

 戯介はとにかく走り続けた。気付けば、田舎のような風景から、都会のようなビルが立ち並ぶ風景と変わった。人混みをかき分けながら戯介は走った。気付けば雨が降っていた。辺りも緑が生い茂っていた。そこでようやく空腹を感じた。

 戯介は仕方なく行く宛てなく歩き出した。途中、逃げ出してきた男の子と一緒に歩いたが、遂には倒れてしまった。

 そのとき助けてくれたのは、炎司という少年だった。

 目が覚めると、大道寺という人もいた。戯介という新しい名前もくれた。戯介は運命を感じた。それは、助けて貰ったからではない。炎司という少年がシャチと容姿が瓜二つだったのだ。

 戯介は、炎司に一生ついていくと決めたのだった。




 シャチ能力“シャチ”
 ・シャチができることができる。超音波出したり、物凄いスピードで泳いだり。
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