警察本部 零課   作:もののあはれ

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三十四 回想 水嶋海人

 「タカって言う人、とってもいい人だったね…」

 「あぁ…」

 佐助は、頷いた。

 「海人ってどうやって、炎司と出会ったの…?」

 「僕が炎司と出会ったのは、中学生のときだった。弁慶もその頃だよな?」

 弁慶は静かに頷く。

 「もう七年前か…」

 

 海人が炎司と出会ったのは、炎司が中学生のときだった。

 海人は、三歳で能力に目覚めるが、類い希なる才能を発揮し、政府の監視のもと、海人は研究室に入り浸っていた。

 海人は、生まれてすぐ親が国に受け渡していたので、名前など存在しなかった。そのため研究室では、名前で呼ばれることはなく、(ほとん)どが“おい”とか“お前”とかだった。

 そんなある日、研究室の主任が話し掛けてきた。それは、ヘラクレスの心田操太朗だった。心田は、研究員の実績は勿論、戦闘経験も計り知れず、それが故に今の地位を獲得した。

 心田は、海人に歩み寄りこう言った。

 「これが終わったら、私の部屋に来なさい」

 語尾が少し強めだったのは、気のせいだろう。

 すっかり日は暮れ、研究も終わり、海人は自分の部屋に戻ろうとしたが、あの言葉を思い出し、海人は、心田の部屋に行くことにした。

 ドアを開けると、心田が座っていた。

 「やあ」

 海人は、心田の挨拶を無視して、ソファに腰掛けた。

 「話って何ですか?」

 海人が心田に問い質した。心田は、静かに口を開けた。

 「単刀直入に言う。君は殺される」

 海人はあまりにも突然過ぎて、拍子抜けしてしまった。

 「何でですか?」

 唇が震えてしまった。

 「理由は言えない。今すぐここから逃げてくれ…!」

 そのとき、研究室から警報音がなった。

 「まずい。ここが全封鎖されてしまう!」

 「僕なら、大丈夫ですよ、排水溝から出れば…」

 「聞いてなかったのか?全封鎖だぞ、排水溝も封鎖だ」

 海人は、慌ててここから出ようとする。

 「待ってくれ!」

 「何なんですか!行かせたり、止めたり…!」

 「もしも出られたら、大道寺という人を探せ!その人なら、君を助けてくれる」

 海人は頷き、外に向かって走りだした。

 「“不可視(ロストアイ)”」

 海人の存在は消えた。

 (君が追われているのは、「古典型」で幻獣種だからじゃない。君があの薬を作ってしまうと危険視されたからだ。逃げろよ)

 

 海人は走り、何とか外へ出た。そこには、警察、ヘラクレスもいた。

 海人は、研究所の近くの川に逃げ込んだ。

 逃げているときに考えたのは、大道寺という人は予想だが、「古典型」を匿っている可能性。もしそうならば、人目につかないところ。つまり、森林。

 海人は、森林に繋がる水路を泳いだ。サイレンの音は、もう聞こえてこない。

 (久しぶりに動いたから、腹減ったな…)

 海人は陸に上がり、木に寄りかかった。海人は目を閉じた。そのまま海人は眠りについた。

 気付くと夜が明けていた。空腹も増していた。動ける気がしない。海人は辺りを見渡した。すると、そこに芋虫がいた。海人はそれが、とても美味しそうな何かに見えた。思わず芋虫に手が伸びる。

 しかし、その手は止まった。誰かが海人の腕を握っている。逆光で顔は見えない。しかし、その黒い顔を見ると、なぜだが安心できた。そのまま海人は、気絶してしまった。

 

 目が覚めると、天井があった。横を見ると、一人の男が居眠りをしていた。きっとこの人が、僕を助けたのだろう。そう思った。

 すると、「起きたか」と、向こうの方から男の声が聞こえた。

 「あなたは、もしかして、大道寺さんですか?」

 その男は、何度を頷き、

 「わしが大道寺だが?」

 「良かった…!実は…」

 僕は、これまでのことを全て話した。大道寺は何回も頷いた。

 「操太朗がか…。よく、生きててくれた…!」

 なぜだか知らないが、ここが僕の居場所だと本能が僕に語りかけていた。

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