「炎司は俺らにとって、恩人だもんな!」
戯介が弁慶の肩を叩きながら言った。
「あぁ……。恩人だった」
弁慶が炎司に出会ったのは、海人と同じ中年生のときだった。
弁慶は、森で生まれた。というのは、自我が芽生えたときには、森にいた。食べ物は、何と動物が与えていた。それは弁慶の能力の“麒麟”がお陰で、能力上、全動物の長ということになる。弁慶の能力は、自身の任意で人を殺した者の生命を奪うことができる。
弁慶は言葉が話せる。それは、森に度々やって来る作業着を着た複数の男たちと、重機と呼ばれる動く鉄の塊。弁慶はその人たちが話す言葉を真似て、言葉を覚えた。
その人たちは、木々を薙ぎ倒し、コンクリートを流し込む。弁慶と動物は、心を痛め、悲しみ、人間を憎んだ。
そんなある日、一匹のリスが人間の前に立ちはだかった。人間はチェーンソーでリスを切りつけた。首と、体が分裂したリスは、別々に転がっていった。
その瞬間、弁慶は憤りを感じた。リスを切った人は白目を向いて、倒れた。
弁慶は、この能力で、人間に復讐をしようと考えた。弁慶は回復もすることができるので、分裂したリスを回復させた。
次の日、弁慶は、人間たちの目の前に立った。
「“
すると、人間から、動物の霊が続々と現れた。
「それは、全て、あなたたちが殺した動物の霊だ!」
人間たちは精気を奪われて、どんどん倒れていく。
これは、のちに“森の怒り”として、作業員の間で語り継がれた。
弁慶が十四歳になった頃、森は、焼かれてしまった。やむなく森を去った弁慶は、隣町の森へ行った。
その森が、炎司たちのいる森だった。
弁慶が来た森は、動物はいなくとてつもなく静かだった。なのに森に活力を感じた。弁慶は、木の実などで空腹を
弁慶は夢を見ていた。温かい炎が身体を包み込んでいるような、夢だった。
弁慶は目が覚めた。弁慶は、誰かの家の中にいた。
「大丈夫か……?」
赤毛の少年が話し掛けてきた。
「ここは……?」
弁慶は、赤毛の少年に問いかけた。
「お前の居場所だ」
それを聞いた瞬間、涙が流れた。
今まで何か足りないと思っていた心をその言葉が埋めたような感覚だった。何で今まで人を恨んだのか、過去の自分を恨んだ。
「名前は……?」
赤毛の少年が言う。
「ない……」
「じゃあ、今日から、弁慶だ!雷電弁慶。うん、良い名前だな」
一人で自問自答している少年を見て、思わず笑みがこぼれる。
「君の名前は……?」
勇気を出して振り絞った言葉は、
「神木炎司」
という簡単な返事で済んでしまったので、また微笑む。
弁慶は、炎司に誓い、人殺しはせずに大切な人を守るためにこの力を使うと決めた。