三十六 氷の脅威
「みんな、炎司との思い出たくさんあるのね!」
夢は、みんなに微笑みかける。
「何だか、炎司に会いてぇな……!」
「やめろよ……!炎司はもう……!」
みんな、酒のせいか涙もろくなっていた。夢はふとテレビに目をやった。
『速報です。日本の南極探知機しぐれが、超巨大軍事基地のようなものを発見したという情報です。日本政府を含め、世界政府も認識が無いという正体不明の基地は……』
夢はそんなニュースを見て、どうでも良いと思っていた。
(もっと良いニュースはないの?例えば、日本を救った英雄、死んではいなかった!?みたいなの無いの!?)
そんなことを思いながら飲んでいたら、閉店時間になっていた。みんなと別れた夢は、千鳥足になりながらも帰路を辿った。
夢は歩いていると、周りの温度が急激に冷えていることに気付く。夢は、辺りを見回す。
(ヘラクレスの郡谷凍斗か?いや、しかし、あいつは刑務所だし、能力は失っているはずだわ……)
何かに気付いた夢は、
夢は、どんどん後ずさっていく。氷の物体もどんどん近づいていく。昔の夢だったら、一撃で破壊していたであろう。しかし、今の夢は能力を失った一般人だ。敵うはずがなかった。平和の為に失った能力がないせいで自分の平和が侵されるなんて考えもしなかった。
氷の物体が右腕を振り上げた。思わず、夢は
目の前に、“燃える刀”を持った人がいた。その人が氷の物体を斬っていた。氷の物体は融けて、気付いたら蒸発して無くなっていた。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
その人は、夢に手を差し伸べた。夢は頷き、その手を握った。
「私の名前は、
そう言って、夢は風間という人の家にあがった。そこは、まるでお城のような家だった。こんな広いのに、一人暮らしだそうだ。
「とりあえず座って。温かいものの持ってくるから。紅茶で良い?」
夢は頷いた。
広すぎる広間に置かれた小さなソファ。そこに腰掛けた夢は、今まで起きた出来事を思い返していた。お酒のせいで記憶が曖昧なところはあったが、あの物体だけは鮮明に覚えていた。
現実に戻ると、風間が紅茶を差し伸べていた。
「憾咲夢さんだよね……?」
「なぜ私の名前を?」
「そりゃまぁ、有名人だからね。私達の救世主だからね」
夢は、口元が緩んでしまった。
「あの氷の物体って何なんですか……?」
夢は、思い切って聞いてみた。風間は、一つ間を置いてから
「君は、南極で軍事基地みたいなものが発見されたのは、知っているかい?」
夢は頷く。
「そこでは、日本はおろか、世界すら知らないことが行われている。それは、氷に生命を組み込ませる実験だ」
「そんなこと、国のお金がなくても、出来るんですか……?」
「私達にまだ能力があった時代、そういう類の能力があったんだと思うよ」
「何で氷何でしょうか?」
「別に何でも良かったんじゃないかな。たまたまそこに氷があっただけかも」
少しの沈黙が生まれる。
「私達は、こいつらを
「私たちはどうしたら、良いんでしょうか……」
「UMAを倒すには、このような炎を帯びた特殊な武器が必要なんだ。ただの炎じゃ融けない。私はこれを、“
「私も戦わせて下さい!」
「君には危険すぎる」
「でも、だって見てるなんて、できない!」
風間は息を吐き、言った。
「君ならそう言うと思ったよ。最上業は、剣だけじゃない。ほら」
そう言って、腰から出てきたのは、炎のデザインが施されたリボルバーだった。
「君はこれを使って。これなら、間合いを置きながら闘える」
夢は、リボルバーを持った。他のに比べ軽い気がする。
「そのリボルバーは弾が炎だから、弾は∞(むげん)だ。とりあえず、今日は帰って休んでくれ。細かいことは後日に」
そう言って風間は、夢を家まで送ってくれた。
風間が家に帰ると、そこには、炎司がいた。
「起きていたのか、顔見せれば良かったのに」
「ばーか。こんな顔見せられるかよ」
そう言って、炎司たちは目を合わせて笑っていた。