(くそくそくそ。何でこの私があんな奴らに……!)
夢は、一哉の筋トレ器具を使って筋トレをしていた。
(私には何が足りないの……?力……?頭脳……?)
奴らの顔を思い出すだけで、血管が
夢は、今、徒陰の捜査から離れている。夢は、徒陰と聞いただけで、怒りに震えてしまっていた。なのでボスは、夢を任務から外した。夢は、徒陰までとはいかないが、ボスにも怒りを覚えた。私は何度もボスに任務に参加したいと申し出たが、
夢は自分の力を認めて貰いたくて、今日単独潜入を決意したのであった。
そして、満月が輝く深夜十二時。夢は、前に仕掛けた発信機を使って、奴らの行動を見たが、マンホールの上でGPSの信号がが切れてしまう。
(ん?マンホール?そうか!奴らのアジトはマンホールの中、つまり、下水道だ!)
夢はマンホールを開け下水道に潜入した。
(私は二度とあんなヘマはしない!)
そう思い細心の注意を払い、奴らのアジトを探した。意外とすぐに見つかった。そこはブルーシートで隠されているだけで、何とも簡易なものだった。人の気配は無く、暗く悪臭に満ちたそこは夢たちのアジトと真反対だった。
夢はそこでヤバいものを見てしまった。それは筒状の容器の中に青色の液体が入った物だった。
「何……これ?」
「見ちまったか……」
夢は振り向き攻撃をしようと思ったが、遅かった。首元の痛みと共に気を失った。
気がつくと、私は椅子に縛り付けられていた。
「起きたか?」
焔は夢を見ずに話し掛けた。夢は唐突に、
「あの液体は何なの?」
「聞いても、信じねえだろ」
「良いから言いなさい」
「良いかな?師匠」
「ああ良いとも」
そこには、まさに師匠と呼ばれるにふさわしい強者の風格がある人物が立っていた。
「じゃあ、話すけどあの液体は俺らの希望なんだ」
「希望……?どういうこと?」
「順を追って話すよ。まずはこの国の首相にしてお前のボス、國崎敏正の本当の狙いからだ。奴はまずこの国を自分の手で完全に支配したがってる」
「え?」
(どういうこと。ボスが、この国を支配する……?)
「ボスはもう国を支配してるじゃない」
「支配といってもあくまで国の行政権を握ってるってだけだ。奴がしようとしているのはそんなものじゃない。自分の手による全国民の武力的支配。つまり、奴に忠実なロボットの様な軍隊を創って国民を思うがままに動かすという事だ」
「そんなの無理に決まっているじゃない!」
「それが無理じゃないんだ」
「え?どういうこと?」
「二〇〇〇年に始まったP3。ここで生まれたのは、失敗作と成功作。奴が起こそうとしているのは、成功作による世界の支配。ここから先は何が言いたいかわかるだろ?」
「……まさか!そのためにボスは失敗作を殺そうと?」
「ご名答」
「でもいくら集めたことで成功作には勝てないじゃない。人員だって失敗作が圧倒的に不利」
「そのために、この液体。この液体は、俺たちのP3細胞を殺すことができる。はずだ」
「はず?」
「あと一歩何だけどな。その一歩がわからねえ」
夢は、考えた。
(何で私にこんなことを言うの。罠?でもどうも嘘に聞こえない……)
「お前、振ってこないから言わなかったけどよ、服を脱がせたのは、手荷物検査だ。気にするな」
「気づかなかった……。興奮しないの?」
気づいたら私は変な事を言っていた。
(何言ってんのよ私……)
「興味ない」
「この谷間見ても!?これでもEカップあるのよ!」
「どうでもいい」
(何なのよ、あいつ……!)
「なんか言いたいことは?」
「私に興味……」
「違う。そっちじゃない。液体についてだ」
「あ、わかった。私の能力で作って欲しいのね?」
「簡単に言えばな」
「敵にこんなこと言うなんて、自白しているようなもんじゃない!」
「そうだよな、わかった」
そう言って、焔は縄をほどいていた。
「え?」
「だったら、あんたに用はない。ここをチクってもここは使わねぇから、意味ないから」
そう言って、背中を押された。
「敵が目の前にいるのに帰るわけ……」
「去れ」
焔の言ったその声は、威圧感に満ちあふれていた。夢は振り向かずにここを後にした。
なんなのあいつ。声を聞くだけで私は本能的にあいつを恐れた。それだけあいつは人を超えた獣の様に思えた。
夢は本部へ戻ろうとした。が曲がり角で急に首を掴まれた。そして、壁に叩きつけられた。壁は軽くヒビが入った。
「何してんだぁ、夢ぇ?」
そこには一哉と義正がいた。
「これは…」
「父上に報告だな」
その言葉を聞いた瞬間に腹に痛みを感じ意識がプツリと途切れた。
目覚めると、目の前にボスがいた。
「すいません」
「何故謝る?」
「お前は密かに計画していた作戦を台無ししたが、何か情報は?」
「情報……」
私の頭の中にあの液体が浮かんだ。でも、何故だか言う気は無かった。
「…ない……のか、じゃあお前を一生言うことを聞くようにしてやっても良いんだぞ?何なら、お前の学校の生徒を全員殺しても良いんだぞ?」
「見ました!奴の顔を!」
私の嘘はこれが限界だった。
「ほほう、知ってる顔か?」
「同じクラスの狐火火叢です」
頼む。違ってくれ、狐火君には申し訳ないが、付き合って貰おう。
「だそうだ、義正」
え?
「実はな、もう学校の生徒達を殺しているんだ。君が言ってくれて、犠牲が減った」
「父上、こいつも焔と名乗っています」
携帯越しに義正の声が聞こえた。
「やめてやめてやめて!!これ以上友達を傷つけないで!」
そう言って私はボスに殴りかかった。だがその拳は軽々しく止められていた。無数の手で。
「これは、私、いや国への反発と見受けるが?」
「違う、違います!」
「こいつも独房『Never』に連れていけ!」
私は再び気を失ったのであった。