THE IDOLM@STER ORENO UTAWO KIKE!! 作:サブマリンストリート
私がその人に出会ったのは卒業式の3日後。
丁度私が二人の妹のためにケーキを買いに出かけた時だった。
その時の私はと言うと
(なーに買おうかなぁ…)
大事な妹たちのためにケーキ選びをしている真っ最中でした。
「んー…」
「あの〜」
「紀の好きな王道のショートケーキも捨て難い…」
「あの…」
「だからといって美雲が必ずしもショートケーキが好きとは限らないし…」
「あ、あの!」
「へ?」
いけない、私とした事がケーキ選びに夢中になりすぎて声かけられてた事に気付かなかった。
声をかけてくれたのは少し細めな男性だった。
「えっと、ここのケーキ屋さんはエッグタルトがオススメですよ…って言おうと…」
「そうなんですか!わざわざありがとうございます!」
これで笑顔になる妹たちを想像すると自然と笑みが零れる。
でへへ…
「そ、それともう一つお話があるんだけど…」
「へ?なんですか?」
「その事についてなんだけども、とりあえずお店を出てから話しましょう」
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今日僕がここのケーキ屋に寄ったのは予定内だったのだが、彼女と出会う事になるのは予定外であり想定外だった。
そもそも彼女は何者なのか。
それを説明するには少しばかり長い話をする事になる。
今より少し前、ある中学校の文化祭のある出し物の様子が某大型動画投稿サイトにアップされた。
その動画はアップされてから二ヶ月もせずに削除されてしまったため今はもう見ることは出来ないが、かなりの人気だった。
そしてその動画の内容は『謎のシンガー バサラ』によるライブの様子だ。
『バサラ』と自称している人物は右目だけが隠れるように下ろされ、後ろは結われている髪型と小さな丸サングラスが特徴の女性のようだ。
学園の生徒達も知らされてなかったようで突然の事に驚く生徒がいればどこか慣れているような様子の生徒もいた。
コメント欄にいたその中学の生徒に、「バサラは二年前、私が二年生の頃の文化祭で突然現れた文化祭限定のシンガー、私が卒業した後も登場していたなんて知らなかった」と言われていること、学園の制服を着ていることから、この学園の生徒の誰かなのだろうと推測される。
動画内で歌われた歌は全て彼女オリジナルの曲のようで作詞作曲全て彼女のものだとするとかなりの才能の持ち主と思われる。
そして何より僕の心を掴んだのはライブ前のパフォーマンスだ。
「オレの事を知りたい?そんなもん、オレの歌を聴けば分かるじゃねーか!行くぜ!オレの歌を聴けぇぇっ!!」
この言葉に、僕は心を奪われてしまった。
そしてこの動画を見て以来、僕は彼女の素性を明かす事に仕事以外の全ての時間を費やすようになったのだ。
そして調べ始めてから早半年、ようやくその素性がわかった。
そう、『謎のシンガー バサラ』の正体は目の前にいる彼女、熱気 鈴 本人なのだ!
多分…99%くらいの確率で…
それがわかってからは早かった。
必要な書類をまとめ、ご家族の元へ伺う前にケーキを…と思って行きつけのお店へ入った所彼女と鉢合わせた、という訳なのだ。
落ち着け、僕。
こういうのはまず第一印象が大事なんだ。
「実はあなたに…その…」
「?」
彼女はきょとんとした表情で僕を見つめてくる。
「その…サインお願いします!!」
「はい…?」
やってしまった。
何をしてるんだ僕は!?
今日ここに来たのはそんな理由じゃないだろう僕!!
「いや、その、サインが欲しいのはやまやまなんだけど今日の目的はそうじゃなくてね?えっと…」
名刺を取り出し彼女に手渡す。
「僕は
「アイドル…?あの歌って踊るやつですか…?」
「そう、そのアイドル。そして今日僕が君に会いに来た理由は…言うまでもないかな?」
さあ、どう出てくるバサラ!
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(えぇ…)
私は今、大事な選択肢の前だということは理解出来た。
と、とりあえず無難に行こう
「え、えっと…こういうのは両親とじっくり話し合ってから決めたいかな…って」
「わかった、今から伺っても大丈夫かな?」
(ひえぇぇ…この人、目が本気だよ…
ていうかじっくり話し合ってからって言ったのに今から伺ってもいいかって…)
私は絶賛大パニックだった。
色々あって私の家に行く事に
母さん、どんな顔するんだろ…
「あら、良いじゃん鈴。歌は上手いし可愛いんだからやってみなよ!」
「そーだよね、ダメだよね。」
「こーら、現実から逃げないの!もちろんやるかやらないかは鈴次第だけど、母さん反対はしないよ!」
(ヤバい、このままだと本気でアイドルデビューさせられかねない!しかもあの一条さんの様子からしてバサラの方面での活躍を期待されてる…!)
「うっ…でっ、でも父さんはまだ良いって言ってくれてないからさ!まだ保留…でしょ!母さん!」
「そうだね、まあ父さんの事だから反対はしないと思うんだよねぇ…」
我が家では決め事において必ず父親の許可が無ければいけないというルールが決められている。
私の今後について大きく関わる事だから許可も取らずに決定などしたら大目玉は免れないだろう
「まあ鈴がそう言うと思って母さんは父さんに連絡を入れてありまーす!」
「え゛」
「丁度メールも返ってきたし読み上げるね『一条さん、俺としても鈴のアイドルデビューは基本的には賛成です。ただ、これだけは守って欲しい事があり、それが守れないのなら絶対に俺は鈴をアイドルデビューさせません。』」
仕事自体は出来る人なのらしいが気に入らない上司をぶん殴ったりだの色々と問題を犯している人らしい。
私としては何故そこまでやってクビにならないのかある意味不思議ではあるのだけど。
「『守って欲しい事、それは鈴に常にバサラとしての活動を強要しない事。ただそれだけです。』だって!」
正直驚いた。
あの父さんがこんな事を言うとは思ってなかった。
おおかた、父さんの事だから二つ返事で快諾すると思っていた。
「さて鈴、父さんからのOKも降りたよ?勿論、あの条件を一条さんが守ってくれると約束してくれるなら、だけどね。」
母さんが一条さんに視線を送ると一条さんはコクコクと頷く。
「一条さんも約束してくれてる、あとは鈴次第だよ?私達…少なくとも私と父さんは鈴の意思を優先するよ。やりたくないならやりたくないって、そう言えばそれ以上は何も言わない。鈴はどうしたい?」
真剣な目の母さん。
私もその目を見つめ返す。
そしてゆっくりと言葉を紡いでいく。
「私は、今の私に、アイドルなんて大層なものが務まるなんて正直思えない。」
務まらない。と
私が言ったのは力不足の現実。
でも、この
「でも、そんな私でも、これから変わって、アイドルとして恥ずかしくない存在になれるかもしれないなら、私、やるよ。」
今の私がダメならば、未来の私が相応しくあれば良い。
これからどう変わるかは私次第。
なら、うじうじ悩むより全力出してやるんだ。
全力出して、それでもダメなら更に頑張ればいいんだ。
「うん、私は歌う。ううん、歌わせてください!私が、いや…」
母さんがいい笑顔で私の事を見ている。
そして1人の
「オレが歌で世界を震わせてみせる!!」
熱気 鈴、アイドル始めました