という他の人と一拍遅れた喜びのままに昔ぼんやり考えていた設定で作成、投稿。後悔はしていない。
無限の蒼穹にそびえ立つ空中城アインクラッド。
全100層からなるその城に、二人の男がいた。
草木も眠る丑の刻。
男たちはただ一心に武器を振るい続け、モンスターを狩り続けた。
モンスターが突撃してくるがひらり、と軽い身のこなしで躱し、モンスターのHPを全損させる猫耳付きフードを被った、頰にθのペイントがある中性的な顔立ちの少年。
トリッキーな動きで次々に屠っていくポンチョを着てフードを目深に被った野性味溢れるハンサムな青年。
ただただ殺戮の現場と化すその場所にいる二人の目はらんらんと光っていた。
そして新たなモンスターがPOPした時、男たちは口の端をニヒルに釣り上げ、言い放った。
–––It's show time.
***
『ソードアート・オンライン。
VRMMORPGである本作は完全なる仮想世界を構築するゲーム機、ナーヴギアを装着して体験できる全く新しい歴史を変えるとも言われるゲームです!
本日より千人のみのベータテストが始まります!
ベータテスターに当たったラッキーな皆さん、楽しい一ヶ月を!』
美人女子アナウンサーがそう締め、俺の見たかった特集が終わるとテレビを消し、俺は兄と共にナーヴギアを手に取る。
「「詩乃。じゃ、楽しんで来るわ」」
「うわ……あんたら、そんな幸せそうな顔、初めて見たわよ……サムズアップまでして」
「あはは、当たり前じゃん?せいぜい友達作れるよう努力して来るよ」
「だなぁ……お前と詩乃がぼっち過ぎて兄貴としては少々心配だから是非友達を–––」
「や、やかましいわ。なんで普段友達がいないかって言ったら俺に誰も近づいてこないからだ」
「私にもその外国の人らしいフレンドリーなコミュ力が欲しいものね」
慌てて抗議する俺とジト目の詩乃は口々に文句と言う名の言い訳を言う。
「詩乃はともかく、樹はただの戦闘狂だから怖がって誰も近づいてこないだけだろ」
「…………さて、行きますか、兄貴」
「くくっ、OK」
目をそらして言う俺に笑いながら兄貴は応じる。
「晩御飯までには戻りなさいよ。作っとくから」
俺は頷くとベッドに横たわる。
兄と共に頷きあい、口元を緩め、ゲームスタートの合図となる言葉を言った。
「「リンク・スタート」」
***
一ヶ月後。俺こと棚坂樹は一ヶ月前となんら変わらず、東京のとあるアパートに兄と二人暮らしをしている。
実家は神奈川の川崎にあり、割と近いのだが兄の大学と俺の高校が東京にあるので親元を離れ暮らしている。
もっとも、親も海外にいることが多いのだから別に実家にいても……といった具合である。
「おーい、詩乃のーん。今日の朝飯何ー?」
そんな俺たちだが、お隣さんとものすごく仲がいい。
「次その呼び方したらあんたの飯苦手なトマトをふんだんに使ったフルコースにしてやるからね」
お隣さんの名前は朝田詩乃。
子供の割には可愛いというより綺麗という言葉が似合う彼女は俺より二つ年下の十四歳だ。
都内の中学に通う彼女は過去にとある事件を経験したせいで銃に対して恐怖心を持つPTSD、心的外傷後ストレス障害を持っていた。
それを街中で発作を起こしていた彼女を救った後に聞いた兄と俺は詩乃のそれを治すために協力した。
この件を本人に了解を取った後、両親に相談したら両親も協力を申し出、海外から様々な案を一緒に考えてくれた。
結果、多少銃に対する恐怖心はあれど、出会った当時のように自分を見失うほど恐怖したり嘔吐することはなくなった。
おかげで俺たちは仲がかなり良くなり、半同棲みたいになっている。
……正直打ち解けすぎた感は否めないが。
「それ俺もトマト嫌いだから勘弁しろよ……。
Good morning。朝から仲がいいな、二人とも」
「ヴァサゴさん。どうにかできないんですか、この愉快犯」
本気で嫌がっているようには見えないのだが、口では抗議する詩乃に苦笑するこの兄の名は棚坂ヴァサゴ。
かつて両親が海外に旅行に行った時に親に臓器売買をされかけていたところを保護。親代わりになり、俺と一緒に育てた。
それこそ最初は「Don't touch,Jap!」と邪険に扱われたものだが徐々に丸くなり、今ではいい兄貴である。
そんな俺たちだが、俗に言うゲーマーというやつで、今日はずっと楽しみにしていたゲームの正式サービス開始の日だった。
その名もソードアート・オンライン、略してSAO。
|仮想世界大規模オンラインロールプレイングゲーム《VRMMORPG》の一種である。
頭から顔を覆うヘッドギア型ゲーム機であるナーヴギアが五感全てにアクセスし、その意識をデジタルデータの世界に送り出す。
現実と完全に隔離された、仮想現実のもとで行われるゲームである。
要するに、映画名探偵コナン『ベイカー街の亡霊』に出て来るコクーンを小型化したものであり、前評判は上々。
ナーヴギアが発売され、とりあえずコナンファンは狂喜乱舞。
コナンファンはOld time londonが発売されるのを待ち望むと言う展開になった。
–––閑話休題。
ベータテストに応募した三人だったが。
結果だけで言えば、当たった。
俺と兄が。
初めて見たよ、詩乃の表情が『無』になったの。
と、のちに俺にしみじみと語らせたその外れた詩乃は。
漫画やアニメならそのまま塵芥となり、風に吹かれて行きそうなそんな顔をしていた。
なんとか詩乃をなだめ、ベータテストも無事終わり。そして今日は待ちに待った正式サービス初日。
「……なぁ、頼むから妬みで俺たちに悪戯するとかやめてね」
「さすがに立ち直ったわよ……」
「あの時の詩乃はひどかった。樹が珍しく本気でおろおろしてたしなぁ……。結局SAO買えなかったし」
しみじみとする兄に恥ずかしそうにする詩乃。
確かにベータテストに俺と兄が当たった時とソフトが買えなかった時は流石に俺も全力で焦った。
ベータテスターの権利を詩乃にあげようとしたくらい焦った。
レイプ目の笑顔で「そうだ、死のう」とどこぞの
「まぁ、あの後の樹のおろおろ具合で逆に私は冷静になったんだけどね……。
確かにゲーマーの樹がそこまでするってかなり私やばかったのかしら」
「無自覚かよ……。ゲーマーじゃなくても「そうだ、死のう」なんて言いだされたらそりゃ焦るわ。
……っと、そろそろ始まる時間だ。兄貴、行くべ」
ナーヴギアを装着してベッドに横たわる。
「リンク・スタート」
虹のリングをくぐり、ソードアート・オンラインが始まった。
俺の作ったキャラの名前はThanatos。
身長はリアルの俺と変わらず178cm。髪は少し長めでリアルの俺に少し手を加えたくらいの違いしかない。
リアルの自分と違う点はリアルの自分より少し年上に見えるように工夫し、頰にθのメーキャップを入れたくらいだ。
このθは、Thanatosを古代ギリシャ語にした際の表記であるθάνατοςの頭文字をとっただけである。
キャラ作成を終え、遂にゲームを始める。
***
第1層 始まりの街
「おぉ……何度見てもすんごいな、これ」
始まりの街に転移してきた俺は、兄と合流する目的があったのだが、SAOの世界のあまりにもリアルなグラフィックにベータテスターにもかかわらず思わず感嘆の声を漏らす。
ハッと我に帰ったところで、兄と合流するための合流地点へ向かう。
「兄貴〜!」
「お、来たか」
兄と合流した俺は手早く装備を整え、フィールドに出る途中、見知った顔があった。
「おーい、ベータテスト以来だな、キリト」
俺はその知り合い、ベータテスターのキリトに声をかける。
「!……タナトスに、おにーさんか。久しぶり」
「相変わらずのおにーさん呼びなのな」
兄のその言葉に思わず苦笑してしまう俺とキリト。
兄のそのコミカルなプレイヤーネームより、どうしても『おにーさん』やら『兄貴』やらがしっくりきてしまうのがこの人のおかしなところだ。
準備をしようと動き出したその時。
「おーい、そこの人たちー!その動き、ベータテスターだよな⁉︎
ちょ、ちょいとレクチャーしてくれよ!」
と、顔の前で手を合わせお願いしてくるバンダナを巻いたビギナーの男。
俺とキリトと兄は顔を見合わせる。
「じゃ、そういうわけだから、キリト」
と俺が言うと兄貴と声を合わせ、両手を上げながら。
「「
おれとあにきはにげだした!◀︎
うまくにげきれた!◀︎
後ろから「ちょ、ちょぉ⁉︎」なんて叫び声は聞いてない。
聞いてないったら聞いてない。
評価、感想等頂ければ幸いです。