ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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黒の剣士編ラストです。
今回は少し長めです。



暗殺者と黒の剣士

とりあえず前回のキリトロリコン疑惑に関しては疑いは晴らしておいた。

ただし、キリトハーレムに新しいメンツが加わったことによる兄の怒りのボルテージは上がったようだったが。

そんな中、俺たち三人はたわいもない会話をしながら目的地まで歩く。

 

「へー、タナトスさんはお兄さんがいるんですか」

 

「いい兄貴だぞー。リアルでは献血とか見たら絶対やってくし、骨髄バンクとかにも登録してるし。まあケンカになるとネジ外れんのと馬鹿みたいに合理主義者なとこを除けば完璧超人だな」

 

「へぇ、お兄さんってリアルでもそんなことしてるのな。……ていうか、あの人もお前みたいにケンカになると頭おかしくなるのかよ⁉︎」

 

「まぁねぇ。兄貴と俺がモテないのもそれが主な原因だって詩乃も言ってたし」

 

《ファミリー》のタナトスはともかく、PoHは中層プレイヤーからも知名度が高い。あえて名前は出さず会話する。

 

「そういやキリト。お前も妹さんいるんだろ?どんな子?」

 

一応リアルの話題はタブーなのだが、《ファミリー》の連中はそれをあっさり破る。

一応このギルドの目的がリアルでパーティーを開くと言うものでもあるため、別にさみしくなることもないし、むしろ早く帰りたいの一心で士気が向上することもあるくらいだ。

 

「あいつか?お前ら程仲は良くなかったかな。ただ、スポーツ好きのゲーム嫌いな子だったな。……おい、さすがに詩乃さんがいるのにお前」

 

「安心したまへキリトくんや。……俺は詩乃一筋だよ。浮気したら刺されそうな感じだから怖いってわけじゃないからな」

 

途中までのヘラヘラした顔から一転、詩乃のことになった瞬間早口になり挙動不審になる俺。その反応に、やや同情した眼差しを送るキリト、シリカ。

それに反論しようと詩乃の魅力を1時間くらい語って聞かせようとした時、モンスターの気配を感じ取った。

 

「来るぞ……用意しろ」

 

背中にある片手剣を引き抜く。ナイフは取り出さない。この程度なら別に必要もないからだ。

 

出てきたモンスターはそのまま言えば“歩く花”だった。

まぁ端的に言えば女子から見れば気持ち悪いの一言に尽きて、シリカはほとんど目をつぶって短剣を振り回していた。

 

結果。

 

気持ち悪いせいでついムチャクチャに繰り出してしまったソードスキルは空を切り、二本のツタがシリカの足を捕まえた。

 

「きゃあああああああああああ⁉︎」

 

ぐるり、と彼女は反転し、逆さまになったシリカのスカートな重力に従って下がりかける。

慌ててその裾を抑えるシリカ。

俺はそれを見て一言。

 

「……まぁ、こうなるよね」

 

「んなこと言ってないで助けるぞ!」

 

左手で裾を抑えながら右手でツタを切ろうとするものの、無茶な体制のせいか全く上手くいかない。

顔を真っ赤にしながらシリカは必死にキリトに叫んだ。

 

「きっ、キリトさん助けてください‼︎見ないで!」

 

「んな⁉︎ちょっと厳しい気が……!おい、タナトス!投剣スキルでなんとかできないの⁉︎」

 

「……あ、やべ。耐久度がやばい」

 

「タナトスさああああああん⁉︎」

 

若干冷や汗をかきつつナイフの耐久度とにらめっこする俺。

そんな問答をしている間にも、巨大花は吊り下げたシリカをぶらぶら振り回す。

そしてついにシリカが決心した。

俺はそれを察し、即座に目を閉じ、見てませんアピールをするために地面に伏せた。

キリトにはとりあえずシリカの方を指差しておく。

 

「なにを…………⁉︎」

 

「いい加減に、しろっ!」

 

シリカはやむなくスカートから手を離し、ツタを切り落とし、着地とともに再度ソードスキルを繰り出し、モンスターを倒す。

そして地面に突っ伏している俺を見てホッとした後、キリトに訊く。

 

「タナトスさんはまぁ、ともかく……見ました?」

 

「……見てない」

 

***

 

その後は徐々にシリカは戦闘に慣れていき、俺は投げナイフを使用せずに済んだ。

俺とキリトは主に戦闘はシリカに任せ、危なくなったら攻撃をパリィするのみの黒子に徹した。

 

シリカはたちまちレベルが一つ上がった。

 

そのうち小高い丘が見えてきた。

 

「あれが思い出の丘だよ」

 

「ま、分かれ道はないし道に迷う必要はないけどモンスターの量が多いからな。気をつけていくぞ」

 

「はい!」

 

シリカは俺たちの戦闘を見て、頼もしいような顔を向けてきている。

恐らく、シリカがメインの狩場としている層から12層も上がってきても俺たちが余裕を失っていないからだろう。

事実、キリトはともかく俺はメインに使用するスキルのうち、体術と投剣を使用していなく、片手剣のみを使用して戦っている。

 

それでも余裕で戦えているのだからこちらに疑問も持っているだろう。

あの階層で何をしていたのか、と。

 

まぁこの冒険が終わったら話してやるか、またはストーカー被害にもあっていたっぽいし、あるいは……。

 

そして、モンスターの群れを抜けた先には美しい花畑が広がっていた。

剣をストレージに入れ、手ぶらになる。

 

歓声をあげるシリカと、その風景を写真に収めているとキリトが俺たちに近寄ってきて、剣を背中の鞘に収めながら言った。

 

「とうとう着いたな」

 

「ここに、その……花が……?」

 

「ああ。真ん中の方にある岩だ」

 

俺はそれだけ言う。それだけ聞くとシリカは駆け出した。

それを微笑ましそうに見つめるキリトに、俺は話しかける。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

キリトもそれに頷く。

本来の目的をここで果たすのだ。

 

そしてシリカの元へ駆け寄ってやると芽が伸びていた。その目はどんどん育ち、花になり。

 

その花をシリカが触ると、アイテム化し、シリカがそれを手に入れる。

 

「これで……ピナを生き返らせられるんですよね……」

 

シリカは涙ぐんでいる。今にもそのアイテムを使いそうだが、街に帰ったほうが安全だと言って街に戻ることにする。

幸い、モンスターは出てこず、シリカは丘を駆け下りた。

 

その道中の橋を渡ろうとした時、キリトがシリカの肩を掴んで止めた。

ドキンとして振り返ると厳しい顔のキリトとアイテムウインドウを操作している俺の姿が目に入った。

 

俺は低い声で言う。

 

「おい、そこでこそこそ待ち伏せてるやつ、出てきたらどうだ?」

 

そこから出てきた顔は、シリカの知っている顔だった。

 

「ロザリアさん……⁉︎なんで……⁉︎」

 

その女性はかつてシリカとパーティを組んでいた女性だった。

ロザリアは唇の片側を吊り上げ、笑う。

 

「へぇ、なかなか高い索敵スキルじゃない剣士さん?……じゃあシリカちゃん。その花を渡しなさい」

 

突然発せられた言葉は、シリカを絶句させた。

 

「な、何を……⁉︎」

 

シリカの頭をくしゃくしゃっとなで付けると俺とキリトは進み出て、口を開いた。

 

「そうは行くかよ、赤毛のおねーさん。犯罪者(オレンジ)ギルド、タイタンズハンドのリーダーに渡せると思うかい?」

 

俺のセリフにロザリアから笑みが消えた。

 

「オレンジギルドって言っても、グリーンのプレイヤーがいたほうが犯罪はやりやすいものなんだ。おそらく昨日の盗聴も彼女たちの仕業さ」

 

そこまで言うとロザリアは笑って、そこまでわかっていたのに、のこのこ付き合うなんて、バカ?と鼻で笑われる。

が、しかし。

 

「バカなのはあんたたちだよ、タイタンズハンド。あんたら、シルバーフラグスって連中、覚えてるか?」

 

「ああ、あの私たちがリーダー以外を壊滅させた貧乏な連中ね」

 

「リーダーだった男は、ある女性を通して俺たちに頼んだんだよ。奴らを黒鉄宮に放り込んでくれってな。殺してくれではなく、牢獄に。あんたに、奴の気持ちがわかるか?」

 

「ハッ、マジになって馬鹿みたい。いるんだよね、本当に死んでるかどうかもわからない、現実で罪に問われるわけもない。そんな世界であんたみたいな妙な理屈を持ち出すような奴。あんたらがどんなに強かろうと、たった三人でこの人数でどうにかなると思ってるの?」

 

現れたタイタンズハンドの人間は10人。シリカが不安げにキリトを見つめる。……こう言う時って基本俺頼りにされないことが多いのが最近の悩みだ。

キリトは優しく微笑むとシリカを優しく撫で、前に出る。

 

「キリトさん……!」

 

その声でタイタンズハンドのメンバーはざわめきだす。

まぁ、知ってるやつは知っているだろう。

 

黒ずくめの衣装に盾無しの片手剣。

 

「黒の、剣士……?ロザリアさん!こいつは《ファミリー》の黒の剣士です……攻略組最強の1人です‼︎」

 

シリカ含め、俺以外の人間の顔が一斉に強張る。

ロザリアも驚いていたが我に返ったようにヒステリックに叫ぶ。

 

「攻略組がこんなところをうろうろしてるわけないでしょ!やってしまいなさい!」

 

そして襲いかかろうと10人が一斉に襲いかかった時、俺の体がブレた。

 

「え……」

 

シリカが言葉をこぼすと同時、ドガガガガガッ‼︎と言う音とともにタイタンズハンドのメンバー全員が吹き飛ぶ。

 

そこに立っていたのは、黒い猫耳付きパーカーに黒いズボンに大量のナイフがつけられるまるでホルスターのようなものが巻きつけられた男。

 

そう。

 

「お前は、お、オレンジ狩りの、暗殺者(アサシン)……‼︎どうして攻略組最強の一角が、ここに……」

 

あー、投剣に体術に、って気をてらった戦いかたしてたら俺もなんか変な異名つけられたなぁ……とそんなことを思っているうちにキリトがその敏捷に物を言わせてロザリアの首筋に剣を置く。

 

「わ、私を攻撃したら、オレンジになるわよ……それでもいいの⁉︎ギルドに所属してるあんたなら……!」

 

「因みにいうが、今回の仕事は俺の兄貴、《ファミリー》団長PoHにも情報は入っている。そうそう、知ってるだろうがうちのギルドにはあの鼠もいる。ここで逃げても……ねぇ?」

 

俺の言葉に真っ青になるロザリア。キリトがぼそり、と、「コリドー、オープン」と呟く。転移結晶よりはるかに値の張る回廊結晶が開かれる。

 

「牢獄の出入り口に設定してある。あとは《軍》の連中が面倒を見てくれるさ」

 

それで牢獄直送の切符が切られた。

 

それを見て、慌てて逃げ出す輩もいたが。

 

「はいはーい、この馬鹿みたいになりたくなかったらさっさと入ってねー」

 

最高レベルの麻痺毒を塗った投げナイフにあえなくやられたその男は俺が思いっきり回廊に投げ込んでやると大人しく従いはじめた。

 

ロザリアも抵抗していたがキリトに放り込まれ、その場は静寂に包まれた。

 

「ごめんな、シリカ。騙すような真似して……街まで送るよ」

 

「あの……足が、動かないんです」

 

どうにか絞り出しました、といった声に思わず笑うキリト。

俺はシリカに手を差し伸べて、ようやくシリカも笑えていた。

 

そして主街区にたどり着き、キリトがあることを思いついた。

 

「シリカ」

 

「はい?」

 

「うちのギルドに入らない?」

 

「え⁉︎………い、いいんですか⁉︎」

 

「もちろんだよ」

 

……おっとぉ、キリトくんが女の子を連れて帰る。これは嫌な予感がプンプンしますね。

 

***

 

結果。

 

「タナトスくん、どう言うことよ!」

 

「俺に言われても……」

 

「キリトが、女の子を連れて帰って来た……⁉︎しかもギルドに入れる……⁉︎」

 

「仕方ないだろ、なんかストーカー被害にもあってたらしいし、そうしたほうがまだマシって言うキリトの判断で、そんなお前らの思ってるようなことはないって!」

 

俺はある栗色の髪のお嬢様と黒髪の清純派女子の二人のフォローをして、この世界にはないはずの胃痛に苛まれることになったのだった。




評価、感想等頂ければ幸いです。

次回は間章、棚坂兄弟とシノンのお話を投稿予定です。
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